-ポストペトロリアム―石油に替わる資源は存在するのか? 伊藤弘樹 藤井智子 渡辺光哲 1 はじめに.調べようと思ったきっかけ ●最近ガソリン代が高くなったのは石油が 減ってきているからなのか? ●ガソリン以外の燃料や電気で走る自動車 の開発は今どれくらい進んでいるのか? ●もし石油がなくなったら日常生活に不 可欠なプラスチック製品はどうなるの か? 2 発表内容 1.石油を取り巻く現状 2.石油の代替発電エネルギー 3.石油の代替燃料 4.プラスチック 5.まとめ-今後石油をどう使っていくか 3 1.石油を取り巻く現状 ○世界の原油産出量(1997) 南アメリカ 7% アジア 4% その他 4% ヨーロッパ 7% 中東 49% 旧ソ連 7% アフリカ 8% 北アメリカ 14% 参考:東京電力・「総合的な学習の時間」環境学習ブック 「資源・エネルギー」データベース 4 ◆中東を除いて石油を輸出している主だった地域は、 旧ソ連のロシア、北海のノルウェー・イギリス、アジアで はインドネシア、アフリカではリビア・ナイジェリア、中 南米ではメキシコ・ベネズエラなどがある。 ◆現在、これらの輸出石油は総数で中東を上回って いる。しかし埋蔵量を考慮すれば、石油消費国が、今 後も中東以外の石油産出国に供給依存を高めていく ことはきわめて難しい。 ◆輸出量シェアでは2010年に中東が半数を占めると 予測されている。 5 問題点 ●石油産出国と石油消費国の不平等 産出量/輸出量(百万トン) 中東:1054/886 アメリカ:396/49 旧ソ連:359/100 ヨーロッパ:295/266 その他:1263/1173 ○中東各国が経済成長 →自国で石油をたくさん使うようになる →消費国に輸出しなくなる or 価格を高くする →紛争の火種に? 6 日本に目を向けるとーーーー 日本の石油の主な輸入先(1996) マレーシア メキシコ 1.7% 1.7% その他 4.1% 中国 4.9% インドネシ ア 6.6% 中東各国 80% 7 1994年の時点で45.8年(石油) Ex. 石炭----------219年 天然ガス----------62年 石炭以外は100年持たない? 日本はエネルギー資源の80%を輸入に頼っている 8 ○利用状況 原油を加熱分解すると揮発油、灯油、ナフサ、 軽油、重油などになる。 揮発油(ガソリンなど)→自動車の燃料 灯油→家庭暖房用燃料 ナフサ→プラスチックや石油化学の原料 軽油→バスやトラックなどのディーゼル自動車の燃料 重油→火力発電所や工場での燃料 9 揮発油 21% その他 10% 灯油 11% 重油 33% 軽油 18% ナフサ 7% 参考 石油化学工業協会「石油化学工業の現状」1996年度版 10 2.石油の代替発電エネルギー 2010年までに世界のエネルギー需給は 50%UP …OECD諸国:30%UP 旧ソ連・中東欧:6%UP 発展途上国:120%UP 各エネルギーのシェアの変化 …化石燃料:ほぼ横ばい 石炭・石油:39%→37% 天然ガス:22%→24% 再生可能新エネルギー : 1% 11 2010年までに世界の石油消費は 40%UP …OECD諸国:20%UP にもかかわらず… OECD諸国の石油生産量減少 =依存度58%→ 世界の石油供給のシェアの変化 …中東・ベネズエラ:30%→ 70% 50% =そのほかの地域の産油能力の低下 12 エネルギーのベストミックスの条件 ①特定のエネルギーに過度に依存しない ②供給安定性 ③経済性 ④環境への負荷 13 BUT 政府の考える2010年のベストミックスは… 太陽電池な ど 石油 2% 10% 地熱 2% メタノール 0% 水力 11% 原子力 42% 石炭 15% 液化天然ガ ス 18% 14 政府のめざすベストミックスは、 条件を満たしていない! ①特定のエネルギー(原子力)に依存している ②供給安定度が低い←事故の可能性 ③廃棄物の処理などにコストがかかる ④周辺地域への放射能もれ ほかのエネルギーに重点をおくべきなのでは? 15 天然ガス ①未開発 ②国際的需給の安定性 ③環境への低影響 世界の消費は60%UP …非OECD諸国 3倍 16 「ハードエネルギーパスからソフトエネルギーパスへ」 ↓ ↓ 高密度・集中型 =原子力・化石燃料など 低密度・分散型 =再生可能な自然エネルギー源 しかし… 2010年の段階で予想されるソフトエネルギーパスのシェアは 1% 問題点①:長い先行期間 問題点②:予想されるローリターン 問題点③:のがれられないハイコスト 問題点④:中東諸国の石油輸出に依存した単一経済構造 17 実用化できるソフトエネルギーパスは… ソ-ラー発電 2010年までに電力コストが25円(kw/時)に 生産規模によっては21円(Kw/時) (火力発電のコストは11円) つまり… ソーラー発電への環境補助金5円+火力発電への環境税5円 =ソーラー発電は完全な競争力がある! 18 日本国内のソーラー発電設置可能量:2億700万kw うち一戸建て住宅:7千800万kw (一戸あたり3kw発電可能として計算) しかし現在発売されている「ゼロエネルギー住宅」はすでに 9.9kw設置可能 少なくともすべての一戸建て住宅の設置量が2010年までに 2倍に さらに… 休耕田の活用=現在の休耕田の半分しか活用できない としても2億2400万kw 合計5億900万kw! 19 電気エネルギー TOYOTAのRAV4etc... 開発の歴史は古い 航続距離、バッテリー重量などの問題 アルコール燃料 (GAIAX) ガソリンと混ぜて使用する 排気ガスに有毒物質が含まれる? 太陽電池 (ソーラーカー) 資源が豊富 供給安定性が問題(雨天時など) 20 問題点 1.給油に代わる補給手段の確保 2.安全性の問題(交通事故の時etc・・・) 3.資源枯渇は避けられない? → 石油を採掘以外で作り出す 21 ブラジル サトウキビの生成カスから出る廃棄物を利用 南アフリカ 石炭を液化→石油の代わりに使用 京都 天然ガス、または家庭用油の廃油 資源枯渇に対応、リサイクルの点でも有効 22 ガソリンエンジン+電気モーターで動く自動車 お互いの短所を補うことで高効率化 高燃費率とクリーン性が高い 現時点で実用化されている TOYOTA プリウス HONDA インサイト 23 4.プラスチック ○プラスチックとは プラスチック[plastics] 可塑性があり、加熱により軟化し、任意の形に成型 できる有機高分子物質の総称。天然のものと合成 品があるが普通は後者(合成樹脂)をさす。フェノー ル樹脂・メラミン樹脂・ポリエチレン・ポリ塩化ビニル など数多くの種類があり、日用品・機械部品・建築 材料などに広く用いられる。 <大辞林第二版(三省堂)より> 24 ○プラスチック製品ができるまで 石油は炭素が長くつながったもので、このままでは使いにくいので、沸点の差を利用して 分離(加熱分解)して、ナフサ、灯油、軽油、重油などにする。 ナフサをさらに加熱分解して炭素が2,3個の長さにし、沸点の差を利用して分離すると、 プラスチックの原料のモノマー(単量体とも呼ばれる。エチレン、プロピレンなど)になる。 モノマーは多くの場合常温で気体や液体で、刺激臭があったりしてそのままでは利用でき ない。そこで、これを一千万~数万個重合させて、常温で固体で安定しており生物に無害 なプラスチックにする。(多くの場合、重合反応が速やかに進むような触媒を加えたり、モノ マーを溶かすような液体を使ったり、高温にしたり、圧力をかけたりする。) 重合してできたプラスチックは、粉状だったり高温で溶けた餅のようになったものなので製 品に加工する時に必要な添加剤などを高温で加えてプラスチック材料(粉末のままかペレ ットと呼ばれる粒)にして出荷される。 出荷されたプラスチック材料を加工してプラスチック製品が完成 25 ○身の回りのプラスチック ~何にプラスチックが使われているのか~ 医療機器 履き物 0.1% 1% 玩具・レ ジャー 1.7% 家具 1.7% その他 20.2% 農業 2.2% 機械部品 家庭用品 輸送 8.1% 8.5% 4.1% 包装 30.2% 建築 10.1% 電気・電子 12.3% 参考 日本の需要部門別プラスチック消費比率 1994年実績 工業調査会「プラスチックス」 26 ○石油がなくなった場合の対策① プラスチック製品の代替品:生分解性プラスチック 植物などから作り、自然界の中で分解するプラスチック。使用中は通常の プラスチックと同様の機能、性質を持ちながらも、使用後(廃棄後)は自然 界(土中や水中)の微生物の働きによって低分子化合物、最終的に水と二 酸化炭素に分解されるプラスチック。 石油の使用量を減らすという観点からではなく主にエコロジーの観点から 注目されている。アプローチとしては生物分解できるもの(例えばデンプン )をプラスチックに混和する方法と、プラスチック自体を生物で分解できる 物にする方法があり、両者ともすでに試験的に利用されている。 本来自然分解されることがないプラスチック廃棄物も微生物に分解(生分解) させて生態系に取り込むことによって、環境に悪影響を及ぼさず、ゴミ問題の 解決にもつながると思われる。 また、焼却した場合でも熱量が低いため、焼却炉を傷めず、ダイオキシンなど の有害物質が発生しない。 日本では10社以上の企業が、生分解性プラスチックの研究や企業化を行っ ている。 27 生分解性プラスチックとして、 ・微生物が生産するヒドロキシブチレート系ポリエステル ・植物由来天然高分子(セルロース、デンプンなど) ・動物由来天然高分子(エビ・カニの甲羅に含まれるキチンなど) ・天然高分子を原料とした合成高分子 ・もともと生分解性を有する合成高分子ポリカプロラクトン などが開発されている。 28 製品化された例:オーペルコーンシート とうもろこしのデンプンを原材料とし、数種類の生分解性プラスチック をブレンドしてできた生分解性樹脂の軟質系シート。 質感,厚み,強度など 塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン等 に匹敵する。 今まで塩ビやポリプロピレンなどでしかできなかった柔らかい製品に 利用できる。 袋状、布状等にも加工が可能で、裁断性、熱接着性、印刷性に優れ る。 生産および加工ともに、塩ビ製品などを利用している既存設備を使 用できるため、低コストでのオーペルコーンシートへの切替、 移行が 可能。 29 問題点1 ・捨てると容易に自然分解するということは、使用前や使用中 に分解あるいは劣化する可能性があり、高い耐久性が要求さ れる用途には使用できない。 向いていない用途 食品包装(ラッピング)、電化製品、建築など 向いている用途 スーパーの買い物袋、電化製品の梱包材、クレジット カード、歯ブラシ、植木鉢、ボールペン等の筆記具、 食器類など 30 問題点2 ・生分解性プラスチックの生産にもエネルギーが使われる ので、代替すれば石油資源の節約になるとは限らない。 ・ゴミとして埋め立てた場合の分解生成物が必ずしも明確で ない。生分解性ということは食物が腐ることと同じだと考え ると、埋立地に埋めた場合メタンガスの発生、地下水汚染、 特定の微生物のみ増加する、などの可能性がある。 ・生産コストが高い。汎用プラスチックが100~150円/kgで あるのに対して、安くても800円/kgと高価。 ・以上のような理由もあり、生分解性プラスチックは日本で は約2,500~3,000t(プラスチック全体の0.1%程度、1999年 度)通常のプラスチックに比べると極端に少ない。 31 ○石油がなくなった場合の対策② プラスチックの再利用 マテリアルリサイクル 再生利用 再生加工原料(ペレット、破砕品) 再生加工品(棒、板、各種資材) 化学原料(モノマーなど) 固形燃料(冷暖房、発電、産業用) 再生燃料 燃料油(重油、軽油、灯油) 燃料ガス(ボイラー燃料など) サーマルリサイクル 熱回収 ごみ発電(都市ごみ焼却炉) 32 5.まとめ-今後石油をどう使っていくか A.現状維持(※現時点の可採年数は約45.8年) B.エネルギー発電はソーラー発電で代替 燃料はガソリンと電気のハイブリッド燃料 プラスチック製品は、耐久性が要求されない分野では 生分解性プラスチックを使用する(それ以外は石油)。 C.エネルギー発電、燃料、プラスチック製品すべて 別の物で代替する。実現は困難。 Bが現在理想的な選択 33 参考文献 プラスチックのリサイクル100の知識 1997 東京書籍 参考Webページ http://150.12.193.211/Hjss98/energy.htm http://www.people.or.jp/~aupair-cornsheet/mainmenu/index.htm http://www.tepco.co.jp/custom/LapLearn/DB/html/index-s.html http://www.asahi-net.or.jp/~wx7s-yngd/h/hwk0134.html 34
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