メディアとしてのカラオケボックス

修士論文 平成14年度(2002年度)
メディアとしてのカラオケボックス
――内部空間における力学の微視的研究
「インターネットとマスメディア」プロジェクト所属
政策・メディア研究科
プロジェクト・ミーティング発表資料 2003年1月31日
重本 憲吾
本論文のキーワード
1、カラオケボックス
2、セルフ・プレゼンテーション
3、記号論
4、メディア空間
5、メディア文化
(関連の深い研究者=M・フーコー、
R・バルト、E・ゴッフマン)
2
本論文の概要



なぜ90年代、日本でカラオケボックスが急速に
国民的娯楽になり得たのかを、その内部空間の
意味や力学に着目することで、ミクロ社会学的に
解き明かしていく試み
主にミシェル・フーコーの空間論や、記号論の概
念に依拠して分析が進められる
新聞・雑誌における言説や、SFCの学生への質
問紙調査、グループ・インタビューの結果も適宜
参照する
3
実施した質問紙調査と
グループ・インタビューの概要





日時:2002年12月3日
対象:慶應義塾大学(湘南藤沢キャンパス)伊藤
陽一教授の研究会に所属する19~23歳の学
生
人数:計21人(うち男10人、女11人)
実施内容:2グループに分けて質問紙調査とグ
ループ・インタビューを実施し、カラオケボックス
をめぐる様々な質問に対して意見を求めた。
対象学生たちのカラオケボックスに行く頻度は、
平均して1年間に約7.5回
4
問題の所在(1)
従来のカラオケ論の限界




「なぜ人は歌うのか」といった漠然とした問題設定
カラオケとカラオケボックスを混同
カラオケボックス全体を取り巻く事象を広く考察
(音楽産業論、比較文化論)
社会評論的、エッセイ的な論じられ方
→「説得性」と「普遍性」に欠ける
5
問題の所在(2)
カラオケ市場の急速な拡大
(億円)
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000 (年)
(2002年 自由時間デザイン協会「余暇活動に関する調査」より)
6
問題の所在(3)
2001年度カラオケへの性・年齢別参加率
(%)
90
80
70
60
平均47.2
50
男性
女性
40
30
20
10
0
10代
20代
30代
40代
50代
60代以上
(2002年 自由時間デザイン協会「余暇活動に関する調査」より)
7
問題の所在(4)
ミリオンセラーのCDシングル
(CDシングル数)
25
20
15
10
5
0
1990
1992
1994
1996
1998
2000
(年)
(2002年 社団法人 日本レコード協会調べ)
8
問題の所在(5)
カラオケランキングのジャンル別の再ランクイン数
2001年度10月
第2週のTOP20
総合 20曲中
2002年度10月
第2週のTOP20
4曲のみ再びランクイン
(secret base~君がくれたも
の~/ZONE 、fragile /Every
Little Thing ほか2曲)
18曲が再びランクイン
演歌 20曲中
(天城越え/ 石川さゆり、 珍島物
語/ 天童よしみほか16曲)
(2002年 セガカラ調べ)
9
問題の所在(6)
カラオケボックス流行の原因を解き明かしていく際
の本論文の視点



90年代に爆発的に普及したカラオケボックス
は、同時に、若者を中心に、音楽CD、音楽番
組、カラオケボックスにおける選曲などの面で、
次々に新たな消費のスタイルを生み出してい
る。
90年代の人々は、カラオケボックスを新たなメ
ディアとして捉え、そこに新たな意味づけを
行ったのではないか?それこそがカラオケボッ
クス流行の主因ではないか?(峻別)
内部空間の力学に焦点を絞り、フーコーや記
号論に依拠して微視的かつ具体的に考察
10
「監視空間」としてのカラオケボックス(1)
後天的に設置された〈窓〉


これまで所与のものとされてきた、カラオケボッ
クスにおける〈窓〉に注目→歴史を遡ってみると、
実際には、カラオケボックスの〈窓〉は後天的に
設置された
1980年後半、密室での少年の非行行為が問
題化し、自治体の条例や業者の自主規制に
よって〈窓〉の設置が義務化
11
監視空間としてのカラオケボックス(2)
自治体による〈窓〉の設置義務化の例
設置基準
(1)窓
ア 1箇所の窓の大きさは、個室の床面積の20分の1以上とする
こと。
イ 窓の前面に透明ガラスをはめ込み、個室内部が見通せる構
造とすること。
ウ 通路に面した壁面に設置すること。
エ カーテン等で個室内部の見通しを妨げる設備を設けないこと。
(「草加市カラオケボックスの設置等にかかる指導要綱」より抜粋
=下線引用者)
12
「監視空間」としてのカラオケボックス(3)
カラオケボックスの〈窓〉の機能の特殊性


ホテルや自動車などの〈窓〉
「見る」ことに積極的意味があり(採光、換気、眺望)、内部
者に主体性やプライベート性が確保されている
カラオケボックスの〈窓〉
「見る」ことには消極的意味しかなく、内部者は常に受身
の存在であり、〈窓〉を通して外部からの恣意的な視線に
さらされる(=もともと非行の監視が目的)
13
「監視空間」としてのカラオケボックス(4)
監視システムとしての〈窓〉~業者の運用例
(問い)カラオケボックス内での非行行為を防ぐために、どんな取り組みをして
いるのか。特に、構造上の監視体制はどうなっているのか。
防犯上、当然各部屋に設置した窓の大きさは考慮している。外から、一目
で室内全体が見渡せるようにしている。ただ、お客様のプライバシーの問題が
あるので、カラーフィルムを張るなどの工夫はしているが、いずれにしても室内
を見渡せる透明性は確保している。ただ、当社の場合、各部屋に監視カメラを
設置して一元的に監視しているので、見回り時間や回数に関しては、各店に
対して徹底はしていない。ただ、監視カメラの存在は、お客様には告知してい
ないし、部屋でその存在も目に触れないようカモフラージュしている。業界でも
珍しい防犯への真摯な取り組みとはいえ、お客様には反感をもたれる可能性
があるからだ。
(全国に300店舗を展開する大手カラオケチェーンの事業運営部による回答
電話インタビュー/2002年11月21日)
14
「監視空間」としてのカラオケボックス(5)
視線の内面化による効率的監視
内部の人々にとっては「見られる」意味しかなかった
〈窓〉だが、実際は管理者が積極的に「見て」いるわけ
ではない
 〈窓〉により内部の人々が外部からの視線を意識化・
内面化することにこそ意味がある・・・〈窓〉の存在その
ものが監視上の効果をもたらす
 M・フーコー『監獄の誕生』における「一望監視装置」
(囚人の効率的な管理を目指した監獄形態)とのアナ
ロジー
→「監視空間」としてのカラオケボックス

15
「強制空間」としてのカラオケボックス(1)
参加者の能動性が排除される空間-Ⅰ

「聞かされる空間」
暗がり・大音響・密閉性・複合レジャー施設なし
→一定時間、大音響に耳を傾けざるを得ない

「歌わされる空間」
参加者は順番に歌うことが求められる
(cf.強制を糾弾する数多くの投稿記事)
16
「強制空間」としてのカラオケボックス(2)
「歌わされる空間」へ異議申し立てをした投稿例

(投稿)君津市 草場三保子(主婦 46歳)
「カラオケ指名パス証明書 ○○○殿 右の者はリズム感不良のうえ高音部
発声困難のため調子が外れ、時に奇声を発することがあります。宴席では、
料理の味覚を損なう恐れがありますので、人前での歌唱は遠慮させるべき
であることを証明します」--こんな証明書が欲しいな。 過日、めでたい席
に夫の上司から夫婦で招待されました。宴たけなわ、カラオケで盛り上がっ
ています。歌は下手でも、私は、この雰囲気は大好きです。楽しく手拍子を
合わせているうち、とうとう順番で私たちが指名されてしまいました。 どうし
よう、本当に歌えないのです。しつこい指名に、とうとう私はハンカチで顔を
覆ってしまいました。席は一瞬、白けて沈黙しました。 夫婦何組かが招か
れ、夫の家庭サービスぶりを見せていただくという話でしたのに、一緒に歌っ
てあげると言う主人の励ましにも応じきれず、このありさまです。私は主人に
恥をかかせたのでしょうか。下手な歌を披露して、出席者の笑いを誘えば良
かったのでしょうか。 帰宅後主人に「今日のこと怒ってる」と聞きましたら、
返事は「うーん、怒ってないよ」。でも私の気持ちは晴れません。
(朝日新聞「声」1991年12月22日)
17
「強制空間」としてのカラオケボックス(3)
参加者の能動性が排除される空間-Ⅱ

「同調させられる空間」
場の雰囲気に合わせる必要性
(グループ・インタビューでの発言)ぜんぜんふさわしい曲ではないの
に、タンバリンを渡されることがある。「嫌だな」とは思うが口に出す
わけにはいかないので、曲に合わせて、さも楽しそうに叩いている
(男)。

「選び取らされる空間」
場に集う参加者を、「今現在歌を歌っている人」「歌っていない人」の
みに峻別→自己表現手段として歌を選び取らされる(cf.曲数や音
響設備の充実を謳い合うカラオケ店)
→「強制空間」としてのカラオケボックス
18
「セルフ・プレゼンテーション空間」
としてのカラオケボックス(1)
生じる重大な疑問と、それに対する答え
(問い)なぜ90年代の人々は、「監視空間」「強制
空間」というネガティブな特徴をもつカラオケ
ボックスに好んで通っているのか?
(答え)カラオケボックスを、「セルフ・プレゼンテー
ション空間」として新たに意味づけたから。
→そこにおいて、不快空間は娯楽空間へと反転
19
「セルフ・プレゼンテーション空間」
としてのカラオケボックス(2)
見出されたもうひとつの意味
「監視空間」
第三者からの視線の可能性をもたらす(視線の
もうひとつの意味=「快楽」)
 「強制空間」
聞かされる
→聞かせられる
歌わせられる →確実に順番が回ってくる
同調させられる→観客の好意的な態度を保証
選び取らされる→表現手段が限定され、体系性
や戦略性が高まる

20
「セルフ・プレゼンテーション空間」
としてのカラオケボックス(3)
空間に新たな意味を見出された過程の図式化
否定的イメージ
監視空間
&
強制空間
セルフ・プレゼンテーショ
ンのための「視線」「機
会」「従順な観客」「戦略
性」が用意されていると
いう発見
新たな
意味づ
け
肯定的イメージ
セルフ・プ
レゼンテー
ション空間
21
「セルフ・プレゼンテーション空間」
としてのカラオケボックス(4)
(確認)公共カラオケとのメディア性の違い
公共カラオケ(カラオケバー、居酒屋、公園、ホールな
どでのカラオケの総称とする)
監視空間⇔視線の開放性
 強制空間⇔移動の自由、歌いたい人だけが歌う、
歌うことのみが目的ではない
 セルフ・プレゼンテーション空間⇔余興空間
→カラオケボックスと公共カラオケは、異なる空間
力学を持つ、異なる娯楽/メディア

22
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(1)
記号論の援用


歌を歌い合うことでセルフ・プレゼンテーションを行う仕組
みを、記号論を用いて考察する(運用)
カラオケボックスにおいて歌われる「歌」を、シニフィアン
(記号表現)とシニフィエ(記号内容)によって成り立つ「記
号」として捉え、記号としての歌のもつ意味の2つの次元
(デノテーション・コノテーション)や、記号の解読のために
発信者と受信者の間で共有されているコードやコンテク
ストについて分析する
23
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(2)
記号の発信-受信プロセスの基本図
コード
[発信者]
伝達内容
解読 [受信者]
記号化
メッセージ
メッセージ
伝達内容
[ 経路 ]
コンテクスト
(池上嘉彦『記号論への招待』39ページより作成)
24
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(3)
歌の記号としての優秀性
種類が豊富
 安価で手に入る
 誰にも親しみやすい
 特別な技量なしに発信可能
→カラオケボックスに集う万人に、効果的なセルフ・
プレゼンテーションへの道を開く

(cf.衣服、自動車)
25
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(4)
「コード」の機能を果たすもの


コード=発信者と受信者
がコミュニケーションをす
る際に参照される文法・辞
書(池上)
童謡『大きな古時計』を平
井堅がカバーする以前と
以後の、カラオケランキン
グの大幅な変動から、何
が「コード」の機能を果た
すのか考える
*平井堅『大きな古時計』2002年
8月28日発売、73万枚超の売上げ
8月21日
8月28日
9月 4日
9月11日
9月18日
9月25日
10月 2日
平井堅
童謡
『大きな古時計』 『大きな古時計』
ランク外集計
ランク外集計
不可能
不可能
ランク外集計
ランク外集計
不可能
不可能
ランク外集計
ランク外集計
不可能
不可能
34位(初)
ランク外集計
不可能
10位(↑)
ランク外集計
不可能
10位(→)
ランク外集計
不可能
10位(→)
ランク外集計
不可能
24位(↓)
1位(初)
10月 9日
49位(↓)
1位(→)
10月16日
1位(→)
ランク外集計
10月24日
不可能
(2002年セガカラ調べ)
26
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(5)
平井堅のカバー以前と以後における
『大きな古時計』のイメージの変容
(問い)平井堅がカバーする以前の、カラオケボックスにおける選曲の対象
としての『大きな古時計』のイメージを(2、3の形容詞で)書いてくだ
さい。
・・・懐かしい(8)、古い(6)、子供向け、子供の歌、小さな子供がお
母さんと歌うような感じ(5)ダサい(4)、ウケ狙い(3)
(問い)平井堅がカバーして以降の、カラオケボックスにおける選曲の対象
としての『大きな古時計』のイメージを(2、3の形容詞で)書いてくだ
さい。
・・・流行の曲(5)、良い歌(4)、新しい・選曲しても違和感がない
(各2)
(19~23歳の学生を対象に2002年12月3日に実施した質問紙調査より)
27
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(6)
カバー以前における
デノテーション/コノテーションの関係図
デノテーションは、最大公約数的な辞書に登録されている意味であり、コノ
テーションは、語が喚起する個人的・状況的含意をさす。 (新社会学辞典)
*コノテーション・・・付随する連想、暗黙の意味(高次の意味体系を形成)
カバー以前
【signe】非効果的セルフ・プレゼンテーションとなる歌
【第二の意味体系】
【sa】
カラオケボックスにおける選曲の
対象としての『大きな古時計』
【第一の意味体系】
【sa】
『大きな
古時計』
【sé】
アメリカ民謡
音楽の時間に歌っ
た唱歌
【sé】
懐かしい・古い・子
供っぽい・ダサい
(=コノテーション)
(=デノテーション)
(【sa】=シニフィアン、【sé】=シニフィエ)
28
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(7)
カバー以後における
デノテーション・コノテーションの関係図
カバー以後
【signe】効果的セルフ・プレゼンテーションとなる歌
【第二の意味体系】
【sa】
カラオケボックスにおける選曲の
対象としての『大きな古時計』
【第一の意味体系】
【sa】
『大きな
古時計』

【sé】
アメリカ民謡
音楽の時間に歌っ
た唱歌
【sé】
流行、新しい、
聴かせる
=変容
=変容
(追加)平井堅の
カバーでヒット
『大きな古時計』の歌詞、メロディなど、歌そのものの良さ、絶対的な固有の
要素ではなく、平井堅がカバーしてヒットしているという時流のなかで、記号
のコノテーションがポジティブな方向に変化し、効果的セルフプレゼンテー
ションのための歌(記号)となったことで、多くの人々によって選択された
29
セルフ・プレゼンテーションの仕組み(8)
コード=
マスメディアに支えられた「歌の評価の一覧表」


記号として働く各々の歌の、コノテーションにおける「評
価の一覧表」がカラオケボックスにおけるコードとなる
コードの存立基盤=マスメディア
・新聞記事・コラムによる周辺情報の提供
・90年代における音楽番組(音楽トーク番組)の急増
・雑誌によるマニュアルの提供
・毎日流れる「週間ヒットランキング」

マスメディアによって規定されるコード(評価の一覧表)を
参照することで戦略的セルフ・プレゼンテーションが可能
となる
30
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(9)
「コンテクスト」の機能を果たすもの


コンテクスト=コードの補正機能
(問い)もし、平井堅がカバーする以前において、童謡『大きな古時計』を
選択しなければならなかったとき、どのような状況を選ぶか?
ウケ狙いで歌うとしか考えられない(男)。
小学校時代の唱歌を歌ってみようというノリになったとき (女)。
→逸脱したコードを選択する際は、歌うときの態度や場の雰囲気を最
大限に利用することで、「ノリに合わせている」「ウケを狙っている」と
いう文脈で違和感なく解釈してもらえるようにすることが確認された。
31
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(10)
コンテクスト=「場の全体的状況」



コンテクスト=各カラオケボックスの内部空間の雰囲気、
ノリ、全体的状況
コードは日本のカラオケボックス空間全体を規定するが、
コンテクストは個別の空間のみに対応
効果的にコードからの逸脱を図ったり、必要に応じてコー
ド自体を修正するといった主体性を持つことができ、実際
の状況に即した戦略的セルフ・プレゼンテーションも可能
となる
32
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(11)
記号の受発信空間としてのカラオケボックスの特質

カラオケボックス空間では、記号発信者は交互に交代
し、記号はその場に記憶としてストックされる
→カラオケボックスにおける記号発信者は、他人によって直前に歌
われた歌や、自分がそれまで歌ってきた歌を考慮に入れながら、
数十分おきに新たに記号を選択する必要がある

ノイズ(メッセージの妨害要因)が極端に少ない
→カラオケボックスにおける記号発信者は、誤った選択により、大音
量で自らの無知と無神経を周囲に知らしめないよう、場の整合性
を維持するために神経を擦り減らす
33
セルフ・プレゼンテーション空間の仕組み(12)
記号の受発信プロセスの修正図
(カラオケボックスの場合)
循環
コード(メディア)
[発信者]
伝達内容
解読 [受信者]
記号化
メッセージ
メッセージ
伝達内容
[ 経路 ] =ノイズ小さい
コンテクスト(場の全体性)
時間の流れ
ストック増
34
セルフ・プレゼンテーション空間
における新たな現象

「記号としての歌」への執着
十八番を先に歌われたときの無力感→歌を聞いてもらえ
なかったことを契機とする新たなタイプの犯罪

加速する世代間の乖離
コードとコンテクストを共有する必要性→限界的セルフ・
プレゼンテーション

変わる機能?
カラオケボックス利用の変化→歌が歌われないことでそ
の空間的特徴が無駄になっている現状
35
結論(1)
カラオケボックス流行の背景



「監視空間」「強制空間」としての性格をもつカラオケボッ
クスは、90年代において、「セルフ・プレゼンテーション
空間」としての意味を新たに見出された
その内部空間においては、歌を「記号」とし、マスメディア
がつくりだす歌の評価の一覧表である「コード」や、場の
全体的状況としての「コンテクスト」を参照することで、戦
略的かつ効果的なセルフ・プレゼンテーションが可能とな
る
→90年代の爆発的流行
「問題の所在」で提示した、音楽CDやカラオケランキング
における新たな消費スタイルは、カラオケボックスにおい
ては、人々は自己本位の欲求ではなく、周囲の動向に神
経症的に従わざるを得ないことを示すものである
36
結論(2)
「カラオケボックスで歌うこと」と
「セルフ・プレゼンテーションを行うこと」の同義化

カラオケボックスにおいては歌を歌うこと自体に意味はなく、それは
セルフ・プレゼンテーションの手段でしかない。その意味で、カラオケ
ボックスは、さらに効率的なセルフ・プレゼンテーション・メディアが発
見されたとき衰退するだろうが、「カラオケボックス的」メディアは今後
も決して消えることはない
【signe】 現代の人々の対人コミュニケーション
【第二の意味体系】
【sa】
カラオケボックスで歌を歌う
入れ替わり可能
【第一の意味体系】
【sa】
【sé】
仲間とカラオケ
ボックスに行く
コードやコンテクス
トを参照しながら
交互に歌い合う
【sé】
セルフ・プレゼン
テーションを行う
37