電気回路学講義資料

電源の内部インピーダンス(抵抗)とは?
もし、1.5Vの乾電池の等価回路が以下のようなら、
この電池に1Ωの抵抗Rを繋いだ場合、
抵抗Rで消費される電力Pは、
+
2
1.52
P

 2.25 [ W]
R
1
E
RR =1μΩ
=0.1Ω
=1Ω
E
(1.5V)
この電池に0.1Ωの抵抗Rを繋いだ場合、
抵抗Rで消費される電力Pは、
-
乾電池の等価回路は、現実的には
このような形で表すことはできない
2
1.52
P

 22.5 [ W]
R
0.1
E
この電池に1μΩの抵抗Rを繋いだ場合、
抵抗Rで消費される電力Pは、
2
1.52
P

 2.25 [MW]
R 106
E
供給電力最大の法則
電源の内部インピーダンス
I
Z0=R0+jX0
R
E
電源側 負荷側
I
E
Z0  Z
R で消費される電力 P は、
Z=R+jX
負荷インピーダンス
jX
2
PRI
R
電圧源型
V
V
J
Y0=G0+jB0
GY=G+jBjB
E
2
Z0  Z
2
J
Y0  Y
 E
2
R
( R0  R ) 2  ( X 0  X ) 2
(ノートンの定理)
G で消費される電力 P は、
P  GV
電流源型
(テブナンの定理)
G
2
J
2
Y0  Y
2
 J
2
G
(G0  G ) 2  ( B0  B ) 2
供給電力最大の法則
ここでは電圧源型についてのみ扱うが、電流源型についても同様に扱える
[1] R 一定、X 可変の場合
R
2
P E
より、X = −X0 の時に P が最大となる
( R0  R) 2  ( X 0  X ) 2
[2] R 可変、X 一定の場合
R
2
P E
を R について微分し、dP/dR = 0 から、
( R0  R) 2  ( X 0  X ) 2
R  R02  ( X 0  X ) 2 と求まる
もっと簡単に求めるには、
R0
jX0
R0
R
E
jX0
jX
電源の内部インピーダンス
E
jX
R
電源側 負荷側
2
2
2
電源と負荷とのインピーダンス整合 R0  ( X 0  X )  R から上記が求まる
供給電力最大の法則
[3] R、X 両者可変の場合
R0
jX0
P E
R
2
R
( R0  R) 2  ( X 0  X ) 2
で、
X = −X0、 R = R0 の時に最大となり、
E
jX
Pmax  E
2
4R0
Pmaxは、電源から取り出し得る最大の電力で、電源の固有電力または
有能電力と呼ばれる。
この場合、電圧源Eが発生している電力は、 P0  E 2R0 であるから、
P0の半分が電源自身のインピーダンス(R0)で、残りが負荷で消費される。
2
取り出し得る最大電力を電源から取り出したいのなら、電源の内部イン
ピーダンス Z0の複素共役の値の負荷インピーダンス Z0* を繋げばよい。
ただしその場合、半分の電力は電源内部で熱になって消費される。
乾電池の経済的な使い方
+
単一、単二、単三乾電池などの場合、E =1.5V
E
ri の値は電池のサイズや種類によっても異なるが、
一般的に ri (単一) < ri (単二) < ri (単三)、
ri (アルカリ乾電池) < ri (マンガン乾電池) となる
-
今仮に、E = 2V、 ri = 1Wの電池を考えてみよう
ri 内部抵抗
この電池に R = 1Wの負荷抵抗を繋いだ場合
乾電池の等価回路
1A
1W
1Wh
ri =1W 1W
1Wh
E =2V
R =1W
負荷抵抗 R に流れる電流は、1A
従ってこの場合、 負荷抵抗 R で消費される電力も
内部抵抗 ri で消費される電力も共に等しく 1Wとなる
つまりこの場合、電池から取り出し得る最大電力
を取り出していることになる
電池の性能として重要なものに電池の容量がある。容量とは電池に蓄えられている
エネルギー量のことで、容量(mAh)=放電電流(mA)×放電時間(h)で与えられる
例えば 1000mAhの容量の電池の場合、1Aの電流を流し続けると、1時間でなくなる
従って上の例の場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1Wh
同じく 1Whのエネルギーが、電池の内部抵抗で熱となって消費される
乾電池の経済的な使い方
0.5A
0.25W r =1W
0.75W
i
0.5Wh
1.5Wh R =3W
E =2V
次に、この電池に R =3Wの負荷抵抗を繋いだ場合を
考えてみよう
この場合、負荷抵抗 R に流れる電流は 0.5A
従ってこの場合、 R で消費される電力は 0.75Wである
一方、内部抵抗 ri で消費される電力は 0.25Wとなる
1000mAhの容量の電池の場合、0.5Aの電流なら2時間流し続けることができる
従ってこの場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気エネルギーは1.5Wh
一方、 電池の内部抵抗では、 0.5Whのエネルギーが熱となって消費される
0.2A
0.04W r =1W
0.36W
i
0.2Wh
1.8Wh R =9W
E =2V
じゃあ、負荷抵抗 Rが 9Wの場合どうなるのか、考え
てみてください
1000mAhの容量の電池の場合、0.2Aの電流なら5時
間流し続けることができる
この場合、電池がなくなるまでに負荷が消費する電気
エネルギーは1.8Wh
一方、 電池の内部抵抗では、 0.2Whのエネルギーが熱となって消費される
インピーダンス整合
インピーダンス整合条件とは、 |Z| = |Z0|
Z0= R0+jX0
E
特に、Z = Z0* 即ち、 R = R0, X = −X0の時を
Z= R+jX
左側 右側
共役整合と言い、この時電源から
最大電力を取り出せる
Z  Z0
Z  Z 0*

を反射係数と言う
或いは  ' 
Z  Z0
Z  Z0
Z0 = R0の時、 = ’
'
2
:電力(パワー)反射率
Pmax を負荷に向かう電力
' Pmax
2
負荷から
反射され
る電力
P を負荷で消費される電力とすると、
Pmax  P   ' Pmax より、
2
P
の関係が成り立つ
Pmax
P: 負荷で消費
される電力
1  '' *  1  ' 
Z = R+jX
インピーダンス整合条件においては、負荷で消費
される電力は最大となり、特に共役整合において
は、負荷に向かう電力 Pmax は全て負荷で消費さ
れ(P = Pmax )、反射電力はゼロとなる
2
信号源からの電力取り出し
例えば放送局などで、送信機から信号電力を取り出してアンテナへ送る場合
← アンテナの記号
送信機
そこで整合回路を用い、整合回路の左右のイン
ピーダンスが等しくなるようにしてやれば、送信
従って、これらを直接接続しても
機の電力を効率よくアンテナに伝えることがで
きる |Z0| ≫ |Z| のため、信号電力はア
整合回路
ンテナに殆ど伝わらない
jwL
Z
Z
1
1
jw C jw C
送信機の終段真
一方、アンテナ
空管の出力イン
のインピーダン
ピーダンス Z0は
ス Zは通常50W
ただし、このインピーダンス整合がとれるのは、ある特定の周波数
w の近傍のみ。
通常数kWと高い
や75Wと低い
周波数が大きくずれると、インピーダンス整合条件は崩れる
Z0
Z0
インピーダンス整合回路
インピーダンスが不整合状態の左右の
回路間で、電力または信号を効率良く
伝達させるために、インピーダンス整
合(マッチング)回路が用いられる
ZL ≠ ZR ZR
ZL 整合回路
例題8.7 L型インピーダンス整合回路の例
jX1
Zin
jX2
jX2 Zout
|Zin| < |Zout|の時
Zin
jX1
|Zin| > |Zout|の時
TVアンテナ用各種インピーダンス整合器(75⇔300Ω変換用)
(マスプロ社製)
(マスプロ社製)
Zout
(ビクター社製)
L形インピーダンス整合回路
問題
特性インピーダンスの値が300Wのフィーダーを、特性インピーダンスが75Wのア
ンテナにL形インピーダンス整合回路を介して繋ぎたい、具体的にどのような整
合回路となるか? ただし、使用する周波数は1MHzである。
ヒント |Zin| > |Zout|なので、以下のL形整合回路を用いる
Zin, Zout などは、リアクタンス分を含まない実抵抗 Rと考えてよい
1
jX2
フィーダー
Zin= 300W
jX1
1’
Zout= 75W
アンテナへ
整合回路
端子1-1’から右を見たインピーダンスが300Wとなるような X1, X2の値を求め、
それに対する具体的素子をあてはめれば良い。
X1がコイル L, X2がキャパシタ Cの場合と、その逆の X1が C, X2が Lの場合の
2通りの実現方法が考えられるので、両方の場合について求めよ。
L形インピーダンス整合回路
1
解答
インピーダンス整合を行うには、
端子1-1’から右を見たインピー
ダンスがR1(300W)になればよい
jX2
jX1
R1= 300W
従って、
1’
jX 1 ( R2  jX 2 )
 R1
R2  jX 2  jX 1
  X1 X 2  jR2 X1  R1R2  j ( R1 X 2  R1 X1 )
上式が成り立つには、
 X 1 X 2  R1 R2
X
R1
 1 
X 2 R1  R2
上式からX1, X2 を求めると、
R2
R1  R2
X 2   R2 ( R1  R2 )
X 1   R1
(ただし、複合同順)
R2= 75W
L形インピーダンス整合回路
X1 > 0, X2 < 0の場合、右に示すような
L と Cからなる整合回路となる
X 1  wL  2 f L  R1
 L
X2 
1
2 f
jX2
R2
R1  R2
1
1

 R2 ( R1  R2 )
wC 2 f C
 C
1
 1.23109 [F]
2 f R2 ( R1  R2 )
X1 < 0, X2 > 0の場合、右に示すような
L と Cからなる整合回路となる
1
R2
R1  R2
jX2
jX1
1
1
R2
X1 

 R1
wC 2 f C
R1  R2
2 f R1
L
27.6 mH
R2
1
75
5

300

2
.
76

10
[ H]
6
R1  R2 2 110
300 75
R1
 C
C 1230 pF
jX1
L 20.7 mH
C
919 pF
 9.191010 [F]
X 2  wL  2 f L  R2 (R1  R2 )
 L
1
2 f
R2 ( R1  R2 )  2.07105 [H]
インピーダンス整合
[4] X/R一定、|Z|可変の場合
n:1
Z0= R0+jX0
Z0
n2Z
E
E
スピーカー
高インピーダンス
アンプ
Z= R+jX
(一定)
Z = 8W
マッチングトランス
n:1
左側を見たインピーダンス: Z0
Z0
右側を見たインピーダンス: n2Z
E
Z
左側 右側
左右を見たインピーダンスの絶対値が等しい時、
つまり n2|Z|=|Z0| の時、インピーダンス整合条件
従って、負荷 Z で消費される電力は最大となる
インピーダンス整合
演習問題(8.17)
R で消費される電力が最大となるように R の値を定めよ
r
E
jx
r
R
−jX
E
電源側 負荷側
jx
−jX
R
−jX を電源側に含めて考え、電源側と負荷側とのインピーダンス整合条件を求め
ればよい
電源側のインピーダンスは、
 jX (r  jx)
r  jx  jX
r 2  x2
これの絶対値に R を等しくとると、 R  X 2
r  ( x  X )2
インピーダンス整合
例題 8.8 以下の回路で、R で消費される電力が最大となる可変回路素子の値を求めよ
電源側 負荷側
電源側 負荷側
jX0
R0
E
電源側 負荷側
R
E
jX0
R
J
R0
R
(a)
(b)
(c)
電源側、負荷側での
インピーダンス整合
([4]のケース)と考え
て、
電源側、負荷側での
インピーダンス整合
([4]のケース)と考え
て、
電源側、負荷側での
インピーダンス整合
([4]のケース)と考え
て、
R = R0
R = X0
R  R02  X 02
インピーダンス整合
例題 8.8 以下の回路で、R で消費される電力が最大となる可変回路素子の値を求めよ
jX0
E
R
(d)
R 一定、X 可変の[1]
のケースと考えると、
X0 = 0
−jX
jX0
E
−jX
(e)
R
J
jX0
R
(f)
この問題を電圧源型で考え この問題も (e) と同様に電
ると、実部も虚部も X の変
流源型として考える。
数となってしまい、解析的に
解けない。その場合は、電
圧源を等価な電源源に変換
し、電流源型として考えると、
解析的に解けるようになる。
インピーダンス整合
まず、(e)の問題を電圧源型(インピーダンス)で考えてみよう。
電源側 負荷側
負荷インピーダンス
jX0
jX0
−jX
E
E
R
 jRX RX 2  jR 2 X
Z

R  jX
R2  X 2
Z
jX0
E
RX 2
R2  X 2
R2 X
j 2
R X2
この場合、負荷の実部も虚部も X の変数
となってしまい、解析的には解けない。
従って、アドミタンスで考えてみよう。
インピーダンス整合
電源を等価な電流源に変換して、アドミタンスで考えてみよう。
電源側 負荷側
電源側 負荷側
jX0
−jX
E
jX0
J
R
J
−jX
R
E
jX 0
電源側、負荷側のアドミタンスを各々 Y0, Y とすると、 Y0 
Y
1
1

R jX
2枚目のスライドの電流源型で考えると、 G0  0
B
1
X
1
1
j
jX 0
X0
1
1
B0  
G
X0
R
に相当するので、R で消費される電力が最大となる X の値は、
PG
J
2
2
Y0  Y
2
 E 
G

 
2
2 より、 B   B0
X
(
G

G
)

(
B

B
)
0
0
 0
即ち、 X  X 0
インピーダンス整合
次に、(f)の問題を考えてみよう。まず、電圧源型(インピーダンス)で考えてみる。
電源側 負荷側
電源を等価な電圧源に変換すると、
jX0
−jX
−jX
J
jX0
E
R
R
E  jX 0 J
電源側、負荷側のインピーダンスを各々 Z0, Z とすると、 Z 0  jX 0
Z  R  jX
従って、R で消費される電力が最大となる X0 の値は、
PR
E
2
Z0  Z
 X 0 J 
2
2
R
( R0  R) 2  ( X 0  X ) 2
となり、簡単には求められない。
インピーダンス整合
そこで、アドミタンス(電流源型)で考えてみる。
電源側 負荷側
電源側 負荷側
−jX
J
jX0
jX0
J
R
電源側、負荷側のアドミタンスを各々 Y0, Y とすると、 Y0   j
B0  
即ち、 G0  0
1
X0
G
R
R2  X 2
B
1
X0
B
Y
G
1
R  jX
 2
R  jX R  X 2
X
R2  X 2
R で消費される電力が最大となる X0 の値は、
PG
J
2
Y0  Y
2
 J
2
G
(G0  G ) 2  ( B0  B) 2
より、 B   B0
R2  X 2
即ち、 X 0 
X
電力の保存則
ある回路中の各電源(理想電源)が発生する瞬時電力の総和と、その他全ての
回路素子が受け取る瞬時電力の総和は相等しい (言い換えると、回路中の全
ての素子が出す瞬時電力の総和はゼロである)
コイルやキャパシタ、変成器などのリアクタンス素子は電力を消費しない(一時的
に蓄積することはある)ことを考えると、電源の実効電力の総和は、抵抗素子で
消費される電力の総和に相等しい
テレゲン(Tellegen)の定理
回路の各枝を流れる電流と、枝間の電位差の積の和は0となる
例えば、N本の枝を持つ回路で、 i 番目の枝を流れる電流を Ii (t) 、枝間の電位
差を Vi (t) とし、電流の流れる方向に電圧降下が起こるとすると、
N
V (t )  I (t )  0
i 1
が成り立つ
i
i