生物学 第9回 多細胞生物への道① 和田 勝 1 細胞の構造 2 細胞膜の構造 細胞膜は、電子顕微鏡で観察すると 、上の写真のように二重の膜です。 3 細胞膜の構成要素 脂質とタンパク質から構成される。 脂質は以下のように分類できる トリアシルグリセロールなどの 中性脂肪 単純脂質 複合脂質 グリセロリン脂質、 グリセロ糖脂質など 誘導脂質 4 中性脂肪 H H-C-OH H-C-OH + H-C-OH H O R1-C O O R3-C O O - - H O O H-C-O-C-R1 R2-C-O-C-H H-C-O-C-R3 5H O R2-C O - Rは長い 炭化水素 の鎖。途中 に二重結合 を含むこと もある。 リン脂質(phospholipid) フォスファチド(phosphatide)とも言う H O O H-C-O-C-R1 R2-C-O-C-H O H-C-O-P-O-X H OX=コリン、セリン、エタノールアミン、 イノシトールなど 6 フォスファチジルコリン O H R1-C-O-C-H O CH3 H-C-O-P-O-CH2-CH2-N+-CH3 R2-C-O-C-H OCH3 O H 細胞膜の主要な成分 7 フォスファチジルコリン 頭部 極性 尾部 非極性 のように簡単に あらわすことが できる 8 フォスファチジルコリンを フォスファチジルコリンをぎっしり 並べると、、、 9 脂質の二重膜 水分子 脂質 二重膜 lipid bilayer 10 水分子 脂質二重膜の性質 分子の性質 例 透過性 疎水性分子 N2、O2、炭化水素 自由に透過 極性のある 小分子 極性のある 大分子 H2O、CO2、グリセロー ル、尿素 自由に透過 イオンや電荷 を持つ分子 アミノ酸、H+、HCO3-、 Na+、K+、Ca2+、Cl-、 Mg2+ ブドウ糖などの単糖類、 透過できない 二糖類 11 透過できない 浸透圧 1.溶媒(水) と溶媒+溶質 (水溶液)を 入れる 2.水も溶質 も自由に行 き来できるの で、溶質は 拡散によっ てしだいに左 側へ移動 3.時間が経 つと、両側の 濃度は同じ になる 全透膜 12 浸透圧 3.半透膜に かかる圧力 と水の移動 しようとする 力がつりあう 1.水と水溶 液を入れる 2.水は半透 膜を通って 移動できる が溶質はで きない 半透膜 13 4.この圧力 が溶液の浸 透圧に該当 する 浸透圧 この圧力を かけておけ ば、浸透は おこらない 半透膜 14 脂質二重膜の性質 水のような溶媒分子は自由に通す が溶質は通さない膜を、半透膜 (semipermeable membrane)という。 浸透圧溶血(hemolysis)は、赤血球 膜のこのような性質で説明できる。 溶血の原因は、この他免疫性溶血や毒素 などによる溶血など、多岐にわたる 15 浸透圧溶血 高張(hypertonic) 低張(hypotonic) 等張(isotonic) 水 縮む 赤 血 球 水 変化なし 16 破裂 選択透過性 しかしながら、半透膜の性質だけでは 細胞は生きていけない。 細胞の活動にとって必要なグルコー スの取り込み、タンパク質合成の原料 となるアミノ酸の取り込みなど。 そのための通り道が、タンパク質でつ くられている。その結果、選択透過性 (selective permeability)が生じる 17 細胞膜のまとめ 1)細胞膜は脂質の二重膜が基本構造 2)脂質の二重膜は半透膜である。 3)膜タンパク質によって選択的透過性 が生まれる。 18 膜タンパク質 細胞膜に埋め込まれたタンパク質を、 とくに膜タンパク質と呼びます。 膜タンパク質の膜貫通部はαヘリック ス構造で、脂質二重膜と接する部分 の側鎖は疎水性。 αヘリックス構造が何本か束ねられた 構造をとる場合が多い。 19 脂質二重膜とタンパク質 親水部 αヘリックス 疎水部 20 親水部 タンパク質の行き先の違い 21 膜タンパク質の合成と埋め込み リボソームでタンパク質合成される が、細胞膜へどのように送られるか 1)膜タンパク質であることを示すシグ ナル配列がmRNAの先頭に存在する 2)リボソームで合成されるときに、rER の膜に一部が埋め込まれる 3)膜に埋め込まれたままゴルジ装置 へ 22 rERの表面で N末端が細胞外にある場合 23 rERの表面で N末端が細胞内にある場合 24 細胞膜のモデル 脂質二重膜に膜タンパク質が浮 かんでいる(流動モザイクモデル) 25 細胞膜のモデル 膜タンパク質の性質によって、細胞膜 の性質が決められます。 脂質二重膜は海のようなもので、タ ンパク質は氷山のように浮かんで いて、動くことができるのです。 26 細胞膜のモデル 膜タンパク質には、貫通型、表在型、 一部埋め込み型があります。 アクチンフィラメントは、表在型タン パク質を介して貫通型タンパク質と 結合できます。 膜タンパク質の細胞外に面した部分 からは、糖鎖が出ていることが多い。 27 細胞膜のモデル 脂質二重膜が流動性を示すのは、脂 質分子が移動できるからです。 コレステロールが埋め込まれると、 膜の流動性が減少します。 グリセロリン脂質以外にも、細胞膜を 構成する脂質がある(セラミドなど)が 今は省略する。28 貫通型膜タンパク質の種類 1.細胞間の接着・結合に関するもの 2.チャンネルタンパク質 3.運搬タンパク質 エネルギーを必要としない場合と 必要な場合がある 4.受容体タンパク質 29 細胞間の結合 細胞は独立しているのではない 30 密着結合 細胞同士を 結合タンパ ク質がしっ かり繋ぎ合 わせていま す。 31 密着結合 密着結合のおかげで、膜 に区画(compartment)が 生まれることになります。 32 接着結合 33 デスモゾーム結合 34 ヘミデスモゾーム結合 デスモゾームの半分が基底層のタ ンパク質と結合している 35 ギャップ結合 ギャップ結合のおかげで、細胞 同士が電気的に結合できる。 36 発生における接着の役割 神経管の発生の過程では 37 神経管分化とカドヘリン 場所によって異なるカドヘリンタン パク質が発現します。 その結果、細胞のソーティングがおこる 38 E-カドヘリンの一次構造 1 61 121 181 241 301 361 421 481 541 601 661 721 781 841 1 MGPWSRSLSA TGRQRTAYFS HHHRPPPHQA NKDKEGKVFY AVEDPMEILI AYTILSQDPE AVITVTDTND GQFVVTTNPV NEAPIFVPPE AISTRAELDR FFCERNPKPQ GDYKINLKLM LILILLLLLF EVTRNDVAPT EAASLSSLNS 11 LLLLLQVSSW LDTRFKVGTD SVSGIQAELL SITGQGADTP TVTDQNDNKP LPDKNMFTIN NPPIFNPTTY NNDGILKTAK KRVEVSEDFG EDFEHVKNST VINIIDADLP DNQNKDQVTT LRRRAVVKEP LMSVPRYLPR SESDKDQDYD 21 LCQEPEPCHP GVITVKRPLR TFPNSSPGLR PVGVFIIERE EFTQEVFKGS RNTGVISVVT KGQVPENEAN GLDFEAKQQY VGQEITSYTA YTALIIATDN PNTSPFTAEL LEVSVCDCEG LLPPEDDTRD PANPDEIGNF YLNEWGNRFK 31 GFDAESYTFT FHNPQIHFLV RQKRDWVIPP TGWLKVTEPL VMEGALPGTS TGLDRESFPT VVITTLKVTD ILHVAVTNVV QEPDTFMEQK GSPVATGTGT THGASANWTI AAGVCRKAQP NVYYYDEEGG IDENLKAADT KLADMYGGGE 41 VPRRHLERGR YAWDSTYRKF ISCPENEKGP DRERIATYTL VMEVTATDAD YTLVVQAADL ADAPNTPAWE PFEVSLTTST ITYRIWRDTA LLLILSDVND QYNDPTQESI VEAGLQIPAI GEEDQDFDLS DPTAPPYDSL DD 51 VLGRVNFEDC STKVTLNTVG FPKNLVQIKS FSHAVSSNGN DDVNTYNAAI QGEGLSTTAT AVYTILNDDG ATVTVDVLDV NWLEINPDTG NAPIPEPRTI ILKPKMALEV LGILGGILAL QLHRGLDARP LVFDYEGSGS 赤はシグナルペプチド領域、青は膜貫通部 膜貫通部はすべて非極性アミノ酸であることに注意 39 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 780 840 カドヘリンとアクチン カドヘリンは サイトゾール 部でカテニン を介してアク チンと結合し ている 40 膜タンパク質の発現により このように、細胞表面の接着・結合に 関するタンパク質が発現することに より、細胞膜の性質が変化します。 こうして細胞間での選別が行なわれ 、分化がおこるのです。 41 チャンネルと運搬タンパク質 どうして特定のイオンや物質だけを通 す選択性が生じるか、不明な点も多い 42 + K -チャンネル K+は水和している→水和が外れて ポアに入り、フィルター部を通って抜ける 43 スクロースポーリン Salmonella typhimurium 44 チャンネルンパク質 電位依存型 K+チャンネル 電位センサー 45 受動輸送と能動輸送 46 受容体タンパク質の役割 47 途中のまとめ ここまで、細胞の外側を包んでい る細胞膜について、いろいろなこと を学びました。ここまでで細胞の基 本的な構造と機能を学んだことにな ります。 細胞は孤立しているのではないの で、細胞と細胞の間で情報交換が 必要になります。 48 細胞間の情報伝達 ここからが、本題。 多細胞生物では、細胞間での情報 交換が重要。それはどのようにして、 行なっているのでしょうか。 49 細胞間の情報交換 ヒトとヒトの間の情報交換の主な手 段は言語で、それぞれの単語に意味 があります。 生体では、この単語にあたるのが分 子で、ここではこれを信号分子(signal molecule)と呼ぶことにします。 50 細胞間の情報交換 ギャップジャンクション 膜表面上分子が直接 情報分子を分泌 51 信号分子による情報交換 神経軸索末端から 周囲の細胞間隙へ 血液中へ 52 ホルモンによる情報交換 細胞がホルモンによる情報を受け取ること ができるのは、そのホルモンに対する受容 体(receptor)を持つからです。 標的器官(細胞)(target organ, target cell) ホルモンの分類 分泌器官による はたらきによる 化学的性質による 53 ホルモンを 化学的性質によって分類 ●水溶性(hydrophilic) ポリペプチドホルモン、アミン系ホルモン 細胞膜を通過できない ●非水溶性(hydrophobic)、脂溶性(lipophilic) ステロイド系ホルモン、甲状腺ホルモン 細胞膜を通過できる 54 受容体のある場所 ポリペプチドホルモンに対しては細胞表面 ステロイドホルモンに対しては細胞質内 55 水溶性ホルモンの作用機構 細胞表面の受容体には ①イオンチャンネル連結型受容体(channellinked receptors) ②酵素連結型受容体(catalytic receptors) ③Gタンパク質連結型型受容体(G proteincoupled receptors、GPCR) ここでは③のGタンパク質連結型受容体につい てまず述べることにします。 56 繁殖に関するホルモン 視床下部-脳下垂体-生殖腺系 (hypothalamo-hypophysial-ganadal axis) GnRH: ゴナドトロ ピン放出 ホルモン LH: 黄体形成 ホルモン 57 Gタンパク質連結型受容体 GnRHの受容体 ヒトGnRH受容体(青い部分は膜貫通ドメイン) 1 11 21 31 41 51 1 MANSASPEQN QNHCSAINNS IPLMQGNLPT LTLSGKIRVT VTFFLFLLSA TFNASFLLKL 61 QKWTQKKEKG KKLSRMKLLL KHLTLANLLE TLIVMPLDGM WNITVQWYAG ELLCKVLSYL 121 KLFSMYAPAF MMVVISLDRS LAITRPLALK SNSKVGQSMV GLAWILSSVF AGPQLYIFRM 181 IHLADSSGQT KVFSQCVTHC SFSQWWHQAF YNFFTFSCLF IIPLFIMLIC NAKIIFTLTR 241 VLHQDPHELQ LNQSKNNIPR ARLKTLKMTV AFATSFTVCW TPYYVLGIWY WFDPEMLNRL 301 SDPVNHFFFL FAFLNPCFDP LIYGYFSL ヒトGnRHは pEHWSYGLRPG-NH2 58 60 120 180 240 300 Gタンパク質連結型受容体 LHの受容体は ヒトLH受容体(赤い部分はシグナルペプチド、 青い部分は膜貫通ドメイン) 1 61 121 181 241 301 361 421 481 541 601 661 1 MKQRFSALQL VKVIPSQAFR NLPGLKYLSI LYGNGFEEVQ GLESIQRLIA SKQCESTVRK FLRVLIWLIN QTKGQYYNHA RHAILIMLGG IICACYIKIY VTNSKVLLVL SNCKNGFTGS 11 LKLLLLLQPP GLNEVIKIEI CNTGIRKFPD SHAFNGTTLT TSSYSLKKLP VSNKTLYSSM ILAIMGNMTV IDWQTGSGCS WLFSSLIAML FAVRNPELMA FYPINSCANP NKPSQSTLKL 21 LPRALREALC SQIDSLERIE VTKVFSSESN SLELKENVHL SRETFVNLLE LAESELSGWD LFVLLTSRYK TAGFFTVFAS PLVGVSNYMK TNKDTKIAKK FLYAIFTKTF STLHCQGTAL 31 PEPCNCVPDG ANAFDNLLNL FILEICDNLH EKMHNGAFRG ATLTYPSHCC YEYGFCLPKT LTVPRFLMCN ELSVYTLTVI VSICFPMDVE MAILIFTDFT QRDFFLLLSK LDKTRYTEC 59 41 ALRCPGPTAG SEILIQNTKN ITTIPGNAFQ ATGPKTLDIS AFRNLPTKEQ PRCAPEPDAF LSFADFCMGL TLERWHTITY TTLSQVYILT CMAPISFFAI FGCCKRRAEL 51 LTRLSLAYLP LRYIEPGAFI GMNNESVTLK STKLQALPSY NFSHSISENF NPCEDIMGYD YLLLIASVDS AIHLDQKLRL ILILNVVAFF SAAFKVPLIT YRRKDFSAYT 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 Gタンパク質連結型受容体 7個の膜貫通ドメインをもつ 60 Gタンパク質連結型受容体 61 Gタンパク質連結型受容体 活性化したGタンパク質は、標的酵素である アデニル酸シクラーゼを活性化 活性化したアデニル酸シクラーゼはATPから 環状アデノシンモノリン酸(cAMP)を生成 62 Gタンパク質連結型受容体 cAMPは細胞質中にあるcAMP依存性タンパク質 キナーゼ(Aキナーゼ)と結合して、この酵素を 活性化する Aキナーゼは標的酵素をリン酸化して、その酵素 を活性化する 活性化された酵素は次の酵素を活性化 多段階カスケード反応によって増幅される 63 Gタンパク質連結型受容体 ホルモン (アドレ ナリン) 64 Gタンパク質連結型受容体2 連結するGタンパク質が異なる場合もある 65 脂溶性ホルモンの作用機構 66 脂溶性ホルモンの作用機構 ステロイドホルモンのかたち テストステロン(Ball & Stick model) 赤:酸素、灰色:炭素、白:水素 右はテストステロン分子を横から見たもの 67 脂溶性ホルモンの作用機構 ヒトアンドロジェン受容体(青い部分はDNA結合ドメイン、 赤い部分はホルモン結合ドメイン) 1 61 121 181 241 301 361 421 481 541 601 661 721 781 841 901 1 MEVQLGLGRV QQQQQQQQQQ LECHPERGCV DILSEASTMQ VSVSMGLGVE TEDTAEYSPF DYYNFPLALA GSGSPSAAAS GYTRPPQGLA TARDHVLPID CTIDKFRRKN VSHIEGYECQ ALPGFRNLHV YSQCVRMRHL IIACKRKNPT VQVPKILSGK 11 YPRPPSKTYR QQQQQQQQET PEPGAAVAAS LLQQQQQEAV ALEHLSPGEQ KGGYTKGLEG GPPPPPPPPH SSWHTLFTAE GQESDFTAPD YYFPPQKTCL CPSCRLRKCY PIFLNVLEAI DDQMAVIQYS SQEFGWLQIT SCSRRFYQLT VKPIYFHTQ 21 GAFQNLFQSV SPRQQQQQQG KGLPQQLPAP SEGSSSGRAR LRGDCMYAPL ESLGCSGSAA PHARIKLENP EGQLYGPCGG VWYPGGMVSR ICGDEASGCH EAGMTLGARK EPGVVCAGHD WMGLMVFAMG PQEFLCMKAL KLLDSVQPIA 31 REVIQNPGPR EDGSPQAHRR PDEDDSAAPS EASGAPTSSK LGVPPAVRPT AGSSGTLELP LDYGSAWAAA GGGGGGGGGG VPYPSPTCVK YGALTCGSCK LKKLGNLKLQ NNQPDSFAAL WRSFTNVNSR LLFSIIPVDG RELHQFTFDL 68 41 HPEAASAAPP GPTGYLVLDE TLSLLGPTFP DNYLGGTSTI PCAPLAECKG STLSLYKSGA AAQCRYGDLA GGGGGGGGGG SEMGPWMDSY VFFKRAAEGK EEGEASSTTS LSSLNELGER MLYFAPDLVF LKNQKFFDEL LIKSHMVSVD 51 GASLLLLQQQ EQQPSQPQSA GLSSCSADLK SDNAKELCKA SLLDDSAGKS LDEAAAYQSR SLHGAGAAGP GGEAGAVAPY SGPYGDMRLE QKYLCASRND PTEETTQKLT QLVHVVKWAK NEYRMHKSRM RMNYIKELDR FPEMMAEIIS 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 780 840 900 脂溶性ホルモン受容体 69 脂溶性ホルモンの作用機構 ヒトアンドロジェン受容体のホルモン 結合部分の構造模型 細胞質受容体 スーパーファミリー 70 DNAとタンパク質の相互作用 71 DNAとタンパク質の相互作用 結合する タンパク質 水素 結合 72 DNAとタンパク質の相互作用 ホメオドメイン タンパク質 ロイシン ジッパー ジンク フィンガー 73 脂溶性ホルモンの作用機構 Znフィンガー ホルモン応答エレメント(HRE) 5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’ 74 脂溶性ホルモンの作用機構 ステロイドホルモンが受容体に結合 HspがはずれてDNA結合部位が露出 ニ量体となってDNAのHREに結合 下流の遺伝子の転写を促進 タンパク質合成 75 信号分子による情報 このように、信号分子が外から働き かけることにより、細胞内の代謝経 路が動き出したり、変化が起こる。 あるいは、信号分子が細胞内へ入り 、新しくタンパク合成を誘導して細胞 の性質を変える。 76 アンドロジェン受容体 遺伝子の配置 ちなみに第8因子 の遺伝子はここに あります 77 ステロイドホルモン受容体 ダイマーになり、DNA結合領域で Zn DNAと結合する 2+ DNA 78 アンドロジェン受容体 ホルモン結合領域でテストステロンと 結合 79 ステロイドホルモン受容体 全体像 ホルモン結合領域 が向き合っている 水色と 緑色の ダイマー 80 アンドロジェン受容体 プロモーター近く、あるいはずっと上流 に、ホルモン応答エレメント(HRE)とい う塩基配列があり、アンドロジェン受容 体はそこを認識して結合します。 5’ AGGAACAnnnTGTTCT 3’ 3’ TCCTTGTnnnACAAGA 5’ このように回文構造(palindrome)をし ています(nは4種のうち何でもよい)。 81 アンドロジェンの作用 このように、ステロイドホルモン受容体 タンパク質の特徴は、直接、ジンク( Zn2+)フィンガーモチーフでDNAと結合 して、下流にある遺伝子の転写を引き 起こすことができる点です。 82 ステロイドホルモン受容体 この受容体の遺伝子にも突然変異が あります。 男性ホルモン不応症候群(androgen insensitivity syndrome)です。以前は 精巣性女性化症候群(testicular feminization syndrome)と呼ばれてい ました。 83 外部生殖器の分化に必要 発生の時、色を付 けた部分にアンド ロジェン受容体が 発現して、男性の 第二次性徴を誘 導します。 84 アンドロジェン受容体欠損 アンドロジェン受容体が欠損すると、精巣があって も、外部生殖器が女性になってしまいます。 85 アンドロジェン受容体欠損 前の写真のように、顔を隠すのではなく、「堂々と 生きるわ」という人々(WikipediaUSより)。 86
© Copyright 2024 ExpyDoc