教科書

講義の予定
はじめて学ぶ建物と火災
第1章 建物火災に対する安全
第2章 火災は意外と多い ー 火災の実態
第3章 ものが燃える ー 火災の現象
第4章 火災の被害を小さくするために
第5章 火・煙から人をまもる ー 避難安全
第6章 火災の拡大を防ぐ ー 延焼防止
第7章 火災に耐える建物をつくる
教科書と参考書
2階建て共同住宅の火災
2階の窓から
火炎と煙
1階から
出火
木造2階建て住宅の火災
隣家の2階
に延焼
中層共同住宅の火災
出火階のベランダ
から火炎と煙
高層共同住宅の火災
出火階のベランダ
から上階へ延焼
大規模店舗の火災
中の物品が燃えて
黒煙をあげている
大規模店舗の火災
はしご車による
消火活動
鉄骨造の大規模倉庫の火災
中の物品が燃えて
濃煙熱気が充満
鉄骨造の工場の火災
中の物品が燃えて
濃煙熱気が充満
第1章 建物火災に対する安全
1.1 建物と火災
・人類と火:山火事や溶岩などで火を知る
→ 暖房,採光,調理,防御,宗教,消却など
・都市の不燃化:明治の「お雇い外国人技士」
がレンガ造,石造,RC造,土蔵造
・白木屋百貨店火災: 1932年12月6日9時頃
日本橋の8階建で4階玩具売場から出火
最初の高層耐火建築物の火災,死者14名
→ 防火壁や防火シャッター,避難階段など
白木屋(1931) 最初の百貨店
RC造8階建
1932年白木屋百貨店火災
1932年白木屋百貨店火災
4階(出火階) 死者1名
1932年白木屋百貨店火災
5階 死者1名
1932年白木屋百貨店火災
6階 死者6名
1932年白木屋百貨店火災
7階 死者6名
1.2 建物によって異なる火災成長
建物火災の一般的な時系列
① 有炎燃焼か燻焼火災が発生する
← 身近な人が早く消火する(ぼや)
② カーテンや周りの可燃物に引火し,火炎が
高くなり室内に煙が溜まる ← 消しにくい
③ 火炎が天井や壁に広がる
← 木造は上階の床や屋根が燃え抜ける
④ フラッシュオーバー現象が生じて部屋全体
が1000℃近い高温で燃え続ける
室内火災の一般的な進行
室内火災による温度とガス濃度
酸素が
急激に
不足
CO濃度が急激に上昇
フラッシュ
オーバー
1.3 建物の火災に対する安全
・ 防火の第一の目的:人命の安全確保
← ビル火災は焼死よりも煙による死者が増加
・人間の高温空気の生存:高さが1mの火炎の
放射熱150℃では 30秒で大やけどを負う
・一酸化炭素の中毒:無臭だが吸い込むと血液
中のヘモグロビンと堅く結合し呼吸障害
・1970年の建築基準法の改正:
防煙設備や階段などの竪穴の防火区画
火災の進行過程と対策
救助と保護のタイミング
1.4 火災に対する安全の備え
・ 火災の発生:簡便のために,いかなる空間でも
火災は発生するものと考える
・想定する火災規模:同じような建物で通常発生
する最大規模の火災
・人間の判断:人間はミスを犯す動物と考える
フェイルセーフ:ミスをしても被害を少なくする
フールプルーフ:ミスを犯させにくくする
・リスクの移転:火災保険 → 最大金額の
およそ1/1000を毎年保険会社に支払う
フェイルセーフ&フールプルーフ
フェイルセーフ&フールプルーフ
被害程度・発生頻度とリスク処理
防火対策
火災保険
建物の火災リスクの対処方法
建物が備えるべき火災安全性能
消防設備の活用状況
安全性とコストの最適化
竣工後の対策コストと安全性
第2章 火災の実態
2.1 市街地大火の歴史と対策
・ 明暦の大火(1657): 3月2~3日
江戸の大半を焼失,死者約10万人
→ 火除地や広小路の設置
土蔵造や瓦葺屋根の奨励(桟瓦1674年~)
・ 銀座の火災(1872):明治5年2月26日
2920戸を焼失,死者3人
→銀座レンガ街の建設を布告(防火対策)
銀座のレンガ街
レンガ家屋
ガス灯
レンガ敷きの歩道
銀座4丁目の交差点
大通りの幅は15間(27.3m)
銀座のレンガ街
レンガ造は内部湿度がひどく
明治10年に987棟で終了
東京の大火での焼失家屋数
M14年以降は焼失家屋が激減
神田の駿河台付近の建物
M14年東京に
防火令が公布
主要幹線道路沿い
の建物は不燃化に
改修を命じる
2.2 今でも火災は多い
・年間の出火件数:平成17年で約3万件
→ 約60%の17,000件が住宅から出火
・出火率=3~4:人口1万人当りの年間出火件数
・火災による年間の死者数:1,611人
→約70%の1,129人が戸建住宅での火災
・住宅火災での死因 → 逃げ遅れ:約63%,
着衣着火:6%,再進入:2%(28人)
・住宅用火災警報器の普及率と死者数:
アメリカやイギリスでは死者数を半分にする
建物火災による死者数
住宅火災で死に至った経緯
住宅用火災警報器と死者数
死者数
が減少
火災警報器の
普及率が上昇
2.3 放火による火災(第1位)
・新宿歌舞伎町ビル火災:2001年9月1日1時
→消防法改正:防火管理と違反是正,罰則強化
3階の唯一の避難階段で放火→死者44名
→自動火災報知機の電源を切る,
避難階段(経路)が一つのみ,避難誘導せず
・放火の原因:放火犯は社会的・心理的状態が
深く関わる,保険金目当て,テロ(2001年NY)
・放火の対策:防犯対策と一元化して安全・安心
社会へ,監視カメラの設置,安全パトロール
新宿歌舞伎町
雑居ビル火災
2001年9月1日
午前1時頃
死者44人
2.4 建物の防火対策
アクティブ対策
① 出火防止:
感知器の設置,火気管理
② 延焼防止:消火器,屋内消火栓,
屋外消火栓,スプリンクラーの設置
③ 煙拡散防止:
排煙設備,可動式防煙たれ壁
④ 避難支援:救助袋,はしご車,誘導灯
2.4 建物の防火対策
パッシブ対策
① 非損傷性:耐火構造(準耐火構造)
防火構造(準防火構造)
② 避難経路の確保:
廊下 → 付室 → 階段 → 地上
③ 延焼防止:防火区画や防煙区画の設置
④ 遮炎・遮煙性: 貫通部の遮断,
開き目地処理,変形亀裂の防止
アクティブ対策とパッシブ対策
アクティブ対策とパッシブ対策の例
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