1章のまとめ 宇都 功一 システム開発におけるSEの役割 システム設計とは ・・・ システム要件を定義し、それを実現するシステ ムの機能および構造を具体化する。 ユーザのシステム要求を把握する システム要求を把握する作業=「要求分析」 「要求定義」 「要件定義」 注:要求分析の内容や進め方は一様ではない。 ユーザの検討状況との関係(1) 例:ソフトウェアのライフサイクル SEは開発段階からプロジェクトに参画するが、 この場合は企画の段階での参画となる。 ユーザの検討状況との関係(2) 要求分析は企画と開発の両方の段階で行 われる。 企画から・・・システム開発の目的や対象事業を定める ところ から。 開発から・・・ユーザーからの要求仕様書の説明を受け るとこ ろから。 ユーザの推進体制との関係(1) 最も単純なケース – ユーザの代表者とSEが1対1で対話するため、シス テムイメージを頭合わせしやすい。 – 比較的外乱が少ないが、代表者の背後にいる本 当のユーザの意識をつかめないこともある。 (1)ユーザーの代表者からシステム要求を聞きだす。 ユーザの推進体制との関係(2) 一般的なケース – 複数のユーザグループの代表者からシステム要求 を聞き出す。 – 相反・矛盾する要求を整理してグループ間の調整 を行い、要求を集約する必要が出てくる。 ユーザの推進体制との関係(3) 複数のSEが分担するケース – システム規模が少し大きくなり、ユーザの代表者が 多くなるため、複数のSEが分担して要求分析を行 う。 – コントロールできない不確定要素が一段と大きくな り、作業プロセスも複雑になる。 システムを設計する(1) SEがシステム設計で心得ておくべきこ と ・ユーザの要求をそのまま鵜呑みにしない。 ・ユーザの要求が、必ずしもユーザが求める真 の要求でないことを知っておく。 ・積極的に提案すること。 システムを設計する(2) システム設計で用いる開発技法 ・プロセス中心アプローチ(POA:Process Oriented Approach) 処理手順やデータの流れに注目して現状を分析する。 ・データ中心アプローチ(DOA:Data Oriented Approach) データとその流れの分析に重点を置き、システム設計を進 める。 プログラマへ設計内容を正確に 伝達する システム設計書=プログラム開発を行なうた めの仕様書 システム設計書には、仕様書としての精緻な面と、 関係者に対する新システムのガイドブックとし てのわかりやすさの両面が求められる。 1-2 情報化の動向 新情報革命 経営学者として著名なドラッカーは、現在の情 報化、つまり、コンピュータの発明以来の情報 化を「第4の情報革命」と称している。 またドラッカーは、今後、情報技術(IT)の分野 における重心は技術(T=Technology)から情 報(I=Information)に移行していくと展望してい る。 情報技術のパラダイムシフト 思考の枠組みや考え方(旧体制)が壊れたり、 根本的な変化が生じたりすることを「パラダイム シフト」と呼ぶ。 情報技術分野では、これまで、2回のパラダイ ムシフトが起きている。 1-3 情報システムとは SEが取り組む情報システムはどういうものか。 情報システムの処理形態が発展してきた経緯 企業における業務面から見た情報システム 企業における役割から見た情報システム を紹介する。 情報システムの処理形態 バッチ処理 (データの一括処理) ↓ オンライン リアルタイム処理 (データの即時処理) ↓ データベース処理 (データの共有化と一元管 理) バッチ処理 コンピュータの処理方法 I:入力(Input) P:処理(Process) O:出力(Output) バッチ処理方式 ある期間に収集したデータをまとめて一括処理す る方式を「バッチ処理方式」と呼ぶ。 問題点 プログラムを作るのが難しい。 収集するデータの精度が不完全。 オンラインリアルタイム処理 コンピュータに端末から直接データを入力し、処 理結果が直ちに必要な場所に出力される処理 方式を「オンラインリアルタイム処理方式」と呼 ぶ。 問題点 予測できない使い方をされる場合がある。 データベース処理 業務システムで蓄積したデータや組織が保有 する情報を有効利用するために、それらを整理 してコンピュータ上に保存し、必要に応じて取り 出す仕組みを「データベース」と呼ぶ。 データベースを構築し、活用するソフトウェアを 「データベース管理システム DBMS(DataBase Management System) データベースを運用するシステムを「データ ベースシステム」と呼ぶ。 1-3 情報システムとは データベース処理 データベース:データや情報を整理してコン ピュータ上に保存し、必要に応じて取り出す仕 組み データベース管理システム DBMS:データ ベースを構築し、活用するソフトウェア データベースシステム:データベースを運用す るシステム また、オンラインシステムを「データベースシス テム」と呼ぶこともある。 企業における業務機能面から見た 情報システム 基幹業務を対象とした 基幹系システムに始まり、 そのデータを活用する情 報系システムへと発展。 基幹系システム 販売管理、生産管 理、在庫管理、財 務会計、人事給与 等 情報系システム 顧客情報管理、商 品情報管理、業績 情報管理 OAシステム ワープロ、表計算、 プレゼンテーション ソフトなど グループウェア 電子メール、電子 掲示板、文書共有 など 企業経営における役割から見た 情報システム 経営者が求めているのは、企業の将来にかか わる情報 企業の情報システムは、データを処理して業務 を効率化することから始まり、経営に役立つ情 報システムの構築を目指してきた。 EDPS (Electronic Data Processing System : データ処理システム) コンピュータの初期に始まった情報ビジネスの 概念。 対象業務:経理計算、給与計算などの個別業 務や部門業務 狙い:従来、手作業で行っていたデータ処理 の機械化・業務の効率化・コスト削減 MIS(Management Information System : 経営情報システム) 1960年代後半に始まった概念で、経営に必要 な情報をあらゆる階層で活用することを目指し た。 対象業務:個別業務を統合した業務・企業活 動全般 狙い:業務の効率化だけでなく、経営面でコン ピュータを活用すること 当時の技術レベルでは実現できなかった。 DSS (Decision Support System : 意 思決定支援システム) 80年代に始まった概念で、MISが狙いとした、 組織の目的に貢献する情報を作り出すという 一面を焦点に絞ったシステムである。 対象業務:企画業務 狙い:経営レベルでの意思決定支援 SIS (Strategic Information System : 戦略的情報システム) 90年代にできた概念で、情報技術を活用して 既存の企業活動を抜本的に再構築することを 目指している。 対象業務:事業活動全般 狙い:業務の効率化よりも、売り上げ増や競 争優位の確立 EC (Electronic Commerce : 電子商取引) 90年代にインターネットの普及とともに急速に 広がったシステム 対象業務:ビジネス取引 狙い:情報技術を活用して、新しい市場機会 を生み出すこと 1-4 システム開発プロジェクト におけるSEの役割 SEの役割の拡大と専門分化 SE・・・ユーザーの要求分析やシステム設計 などの システム開発の上流工程を担当する技術者 プログラマ・・・SEが作成したシステム設計書に基づ いてソフトウェア開発を行う技術者 最近ではSEの仕事の範囲が広がりすぎているため、 SEの定義が曖昧になってきている。 システム構築におけるSEの役割 SEの基本的な役割 1.ユーザーの業務用件の分析 2.システム設計、システム方式設計、システム移 行・運用設計 3.プログラム開発の推進 4.総合テストの実施 5.利用部門に対する本番移行の支援 1ー5 SEに求められる知識と能力 SEの専門性 SEの専門性や能力差は、プログラマほどわか りやすくはない。 ―取り組んでいるシステム内容やユーザレベル に応じて仕事の難易度が異なる ―チームで仕事をするため、チームの結果とSE の能力は必ずしも比例しない 優秀なSEと優秀ではないSEとの違い (1) 優秀なSE 先のことを考えて仕事する トラブルになる前に先手を打つ 涼しい顔をしている 優秀なSEと優秀でないSEとの違い (2) 優秀ではないSE いつも目先のことしか考えずに仕事する トラブルが表面化してから火消しに回る いつも忙しく立ち回る SEに要請される知識と能力(1) SEには幅広い知識と能 力が求められる SEに要請される知識と能力(2) 若手SEはいきなり単独で上級SEの担当する ような仕事を任されることはない 表1-3のような知識と能力を着実にマスターし、 実践経験を積む 担当する部分が次第に増え、開発工程の上流工 程へと拡大していく 仕事の進め方の基本(1) システム開発業務は、 プロジェクト対応なので、基本的に同じ仕事は ない 業務環境、プロジェクトメンバーもその都度変 わる 仕事の進め方の基本をしっかり身につけ、いつも 考えて仕事をすることが大切 仕事の進め方の基本(2) 仕事の進め方の基本 1.PDCAサイクルで計画を立てて取り組む 2.5W1Hで検討項目を洗い出す 3.ホウレンソウを忘れない 4.タスクの優先順位をつける P-D-C-Aサイクル(1) まず目標を設定し具体的な計画に落とし込む -Plan 次に計画に基づき実行に移す -Do 実行過程で達成状況を測定・評価する -Check 測定結果を受け、必要に応じて軌道修正する -Action P-D-C-Aサイクル(2) Plan Do Action Check P-D-C-Aサイクル(3) 基本的に開発業務の中で何かまとまった仕事 に着手するときに利用する 手戻りが少なく効率よく仕事を進められる 最初の計画段階が重要 1つのサイクルが終了したら反省点を踏まえて 再設計のプロセスから次のサイクルを回す 5W1Hで検討項目を洗い出す (1) 業務上において「5W1H」は必要不可欠 Why Who What When Where How (なぜ) (誰が) (何を) (いつ) (どこで) (どのように ) 5W1Hで検討項目を洗い出す (2) SEの業務 →“数量”を確認することが多い 5W1H + “もうひとつのH” “もうひとつのH”:How many・How much (いくら) ホウレンソウ」を忘れない 「報・連・相 = ホウレンソウ」 ○ 報告 (ホウ) 結論を先に、簡潔明瞭に事実と意見の区別を つけて報告する ○ 連絡 (レン) 上司と関係者に迅速かつ明瞭に伝達する ○ 相談 (ソウ) こじれる前に上司や同僚に相談する タスクの優先順位をつける 開発業務が佳境に入ると、SEは複数のタス クを平行して進めることが多くなる 重要度、難易度、納期などを考慮して、 タスクに優先順位をつける ITスキル標準とは (1) ITスキル標準 「各種IT関連サービスの提供に必要とされ る能力を明確化・体系化した指標であり、 産学におけるITサービス・プロフェッ ショナルの教育・訓練等に有用な“辞書” を提供しようとするもの」 2002年12月 経済産業省 発表 ITスキル標準とは (2) ITスキル標準の構成 ○ ITサービスを11職種 / 38の専門分野と して区分 ○ 実務経験・実績をもとに「達成度指標」を設定 ○ 必要なスキルを教育・訓練に活用する観点から スキル 項目に要素分解 ○ スキル項目ごとに「スキル成熟度」と「知識項 目」を 展開 ITスキル標準とは (3) ITスキル標準とは (4) ITスキル標準とは (5) ITスキル標準の活用例 ○ 企業にとって人材育成・調達を行う際の目安 となる ○ 自らのスキル開発をどのように行うべきかを 判断す る指標となる 業務知識とは? 業務機能に関する知識 ・生産管理の知識 ・販売管理の知識 業務業界に関する知識 ・業界用語の知識 ・同業界の他会社に関する知識 業務知識 座学(理論)と実践 座学 ・専門書で独学 ・仲間と勉強会を開く ・会社の研修や通信講座に参加する 実践 *SE業務に従事している人 ・仕事そのものが実践の場 *SE業務に従事していない人 ・稼動しているシステムの設計書 ・システム設計の考え方 ・先輩に聞いたり、仕事の進め方を観察する 業務知識を身につける 学習計画を作成する 仕事を管理するプロセスでP-D-C-Aサイクルというもの があったが、学習でもP-D-C-Aで学習することにより 効率よく、効果的に学習を進めることができる ・将来のキャリアパは自分で選ぶ必要があるため自分で キャリアパスを考えた学習計画を立てる必要がある ・キャリアパス・学習計画をきめるうえで自分の現在の知 識・能力・得意不得意を考慮しておくことが重要です。 情報処理技術者試験が考えるキャリアパス 情報処理技術者試験 専門分野を作る システム評価 システム評価はシステム監査でおこなわれ、当 該システムが信頼性、安全性、効率性の面か ら現在どの程度にあるかを評価するもの
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