労働保険の概要

労働保険の概要
西川社会保険労務士事務所
所長
西川 敏彦
労働保険の適用
労災保険
●適用事業とは
原則 : 労働者を使用する事業
(事業を開始したときに保険関係が成立する)
適用除外: ・国の直営事業(四現業、印刷、造幣、郵政etc.)
・官公署(非現業の国・地方自治体の事務職)
・船員保険の被保険者
●暫定任意適用事業とは
個人経営の農林水産業で使用労働者が常時5人未満の事業
(危険作業を伴う一部事業は適用事業)
一般の事業所は労働者を使用すれば適用になる
(法人・個人、事業所規模にかかわらない)
労働保険の適用
●労働者とは
『事業に使用される者で、賃金を支払われる者』
・雇用形態(常用・臨時・パート・アルバイト・日雇)を問わない
・国籍を問わない(不法就労者も労働者)
●労災保険の労働者とならない者は
・業務執行権のある法人の取締役、中小事業主
・左官・大工などの一人親方
・自営業主とその家族従事者
(他の従業員と労働条件が同じで、事業主の指揮のもとで仕事
をしていれば、労働者として認められる)
特別加入の制度で労災保険の適用が受けられる(法人の取締役除く)
労働保険の適用
雇用保険
●適用事業とは
労働者を使用する事業
(事業を開始したときに保険関係
が成立する)
●暫定任意適用事業とは
個人経営の農林水産業で使用労働者が常時5人未満の事業
一般の事業所は労働者を使用すれば適用になる
(法人・個人、事業所規模にかかわらない)
労働保険の適用
●被保険者とは
適用事業所に雇用される労働者
●被保険者とならない者
・65歳を超えて新たに雇用される者
・季節的に雇用される者
・1年未満の期間雇用される者で、週所定労働時間が30時間未満の者
・週所定労働時間が20時間未満の者
・日雇労働者(認定を受けると日雇労働被保険者)
・4ヶ月以内の季節的事業に雇用されるもの
・国・都道府県・市町村の事業に使用される者の一部
・船員保険法の被保険者
パートタイマーも一定の条件を満たせば被保険者となる
労働保険の適用
雇用保険の被保険者の範囲
対象
被保険者になる者
法人・団体役 業務執行権がなく、指揮監督
員
を受け、一般の労働者同一条
件で賃金を受けている者
事業主と
次の条件を満たす同居親族
同居親族
・事業主の指揮命令に従う
・労働条件が労働者と同様
・取締役などの役職でない
季節労働者 季節的業務に4カ月以内の期
間で雇用される者
パートタイマー 労働条件が文書で定められ
・週所定労働時間20時間以上
・1年以上継続雇用される
・年収90万以上が見込まれる
外務員
職務・給与など総合的に判断し
て雇用関係が明確な者
臨時内職的に 右記以外の者
雇用される者
在日外国人 永住者、定住難民、戦前からの
居住者(朝鮮・台湾)
65歳以上の者 65歳未満から継続して雇用さ
れている者
被保険者とならない者
・代表取締役、代表社員
・取締役
・監査役
・事業主
・左記以外の同居親族
当初から4カ月を超える期間
で雇用される季節労働者
左記の条件に当てはまらない
者
事業主と委任関係にある者
・賃金で家計を賄なわない
・反復継続して就労しない
・短期滞在者(観光など)
・国内就労できない者
65歳以上で新たに雇用された
者
参考
実質個人事業の
代表者・同居親
族も同様
4カ月を超える
と被保険者
平成元年以前は
22時間以上
労働保険の適用
●被保険者の種類
1.一般被保険者(一般の従業員)
2~6に該当しない被保険者
2.短時間労働被保険者(パート・アルバイトなど)
・週所定労働時間が20時間以上30時間未満
・1年以上継続して雇用されることが見込まれる
・年収が90万円以上見込まれる
・労働条件が明確に定められている(就業規則、雇入通知書など)
3.高年齢継続被保険者
65歳到達前から引き続き同一事業所に雇用される者
4.高年齢短時間労働者
短時間労働被保険者で3の条件のもの
5.短期雇用特例被保険者
季節的に雇用される者、1年未満の短期雇用が常態の者
*1年以上雇用されたときは一般被保険者となる
6.日雇労働被保険者
日々雇い入れられる者、30日以内の期間で雇用される者
*2ヶ月の各月18日以上雇用された場合は一般被保険者
労働保険の適用
適用事業の単位
●一元適用事業と二元適用事業
一元適用事業:労災保険と雇用保険を併せてひとつの労働保険として扱う
(一般の工場、商店、事務所など)
二元適用事業:2保険を別個に適用し、保険料の算定・納付を別に処理する
① 都道府県、市町村の行う事業
② ①に準ずる事業(学校法人)
③ 港湾で港湾運送を行う事業(港湾労働法)
④ 農林水産、養蚕の事業
⑤ 建設の事業
原則は一元適用
→一元的に適用できない事業は例外的に二元処理
労働保険の適用
●継続事業と有期事業
継続事業:事業の期間が予定されていない事業
(一般の工場、商店、事務所など)
有期事業:一定の予定期間に事業目的を達成して終了する事業
(建設の事業、立木の伐採などの林業)
●有期事業の一括
一定の条件を満たすと、年間を通じ事業をまとめて一つの保険関係として
処理する。(条件を満たすと自動的に一括され一つの事業となる)
《一括の要件》
・事業主が同一人
・それぞれの事業が建設の事業または立木の伐採の事業
・概算保険料が160万円未満 かつ
建設事業 :請負金額が1億9,000万円未満
立木の伐採:素材の見込み生産量が1,000㎡未満
・事業の種類が同一(労災保険率表)
・それぞれの事業が同一管轄内で行われる
労働保険の保険給付
労災保険
●保険給付が行われる場合
①業務災害
要件┏業務起因性 ⇒ 傷病と業務の間に相当因果関係がある
┗業務遂行性 ⇒ 労働者が業務に就いている
(使用者の指揮下にある)
┏業務上の負傷
┗業務上の疾病 ━┳災害性疾病(業務上の負傷に起因するもの)
┗職業性疾病(物理的因子、化学物質など)
②通勤災害
通勤とは「就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路
および方法により往復すること」
*通勤災害は災害性疾病に限り保険給付がおこなわれる
労働保険の保険給付
●保険給付の種類
業
務
災
害
本人給付
遺族給付
傷病補償年金
休業補償給付
負
・傷病等級により
支給
・給付基礎日額の
60%を支給
傷
治ゆ
障害補償給付
・
疾
療養補償給付
・療養の給付
・療養の費用の支給
病
治ゆ
・障害等級により
支給
介護補償給付
・常時、随時の介護に
対し支給
死亡
遺族補償給付
・労働者の死亡
葬 祭 料
死亡
労働保険の保険給付
雇用保険
●保険給付の種類
基 本 手 当
①求職者給付(失業労働者の生活の安定)
一般被保険者
技能修得手当
受講手当等
特定職種受講手当
通 所 手 当
寄 宿 手 当
求職者給付
傷 病 手 当
高年齢継続被保険者
高年齢求職者給付
短期雇用特例被保険者
特例一時金
日雇労働被保険者
日雇労働求職者
給 付 金
労働保険の保険給付
②就職促進給付(失業労働者の再就職の促進)
再 就 職 手 当
就職促進給付
常用就職支度金
移
転
費
広域求職活動費
③雇用継続給付(高齢者・女性等の就業援助)
高年齢雇用継続給付
雇用継続給付
育児休業給付
介護休業給付
労働保険の給付手続き
労災保険
●療養補償給付
支払
労
働
基
準
局
療養の
給付請求書
被災労働者
第1病院
労働局
受診
請求書
請求書に証明
労災病院
指定病院
請求書
労働基準監督署
事業主
業務上傷病が治ゆするまで
無料で療養を受けられる。
労働基準監督署
労働保険の給付手続き
●休業補償給付