エンドホストの動画像フィルタリングを用いた アプリケーション層 QoS マルチキャストの実現 中村嘉隆 山口弘純 廣森聡仁† 安本慶一‡ 東野輝夫 大阪大学 大学院情報科学研究科 †大阪大学 大学院基礎工学研究科 ‡奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 研究目的 ネットワークの普及によりグループ通信需要増加 電子会議アプリケーションの実現 複数ビデオの同時並行配信 要求されるビデオの偏り Internet 2003/6/4 DICOMO2003 2 実現手段 ユニキャスト 利点 現状のインターネット上で利用可能 欠点 グループの増大により非効率になる • A 付近のリンクでは全受信者分のデータが通る a b d c 2003/6/4 DICOMO2003 3 実現手段 IP マルチキャスト 利点 経路管理等の特定のサーバを必要としない データの重複がないため効率がよい 欠点 インフラの整備問題(対応ルータ等) a b d c 2003/6/4 DICOMO2003 4 実現手段 アプリケーションレベルマルチキャスト(ALM) オーバレイネットワーク上でエンドホストが配信木を管理 エンドホスト間ユニキャストトンネリングで構築 トンネリング間のパケット複製、転送で実現 a c b d a b d c 2003/6/4 DICOMO2003 5 アプリケーションレベルマルチキャスト 利点 マルチキャスト用のインフラが不要 ユニキャストトランスポートプロトコルが利用可能 a c b d a b d c 2003/6/4 DICOMO2003 6 アプリケーションレベルマルチキャスト 欠点 エンドホスト付近の帯域制約,データ重複 エンドホスト離脱によるネットワークの流動性 a c b d a b d c 2003/6/4 DICOMO2003 7 ALM に関する従来研究 Overcast,CAN,RMX 大規模グループにおける効率的な配信 HBM 移動端末向けの安定したオーバレイネットワーク構築 Narada,ALMI,Yoid 小規模グループでの単一ビデオの配信 会議アプリケーションも対象としている 電子会議に必要な性質と考えられる,複数ビデ オを同時継続的に配信するものはない 2003/6/4 DICOMO2003 8 研究目標 電子会議アプリケーション向け ALM プロトコル設計 配信経路木の効率 経路のパスストレスを短く • パスストレス:2 ノード間オーバレイリンク上ユニキャストホップ数と 実リンク上最短ホップ数比 配信木の多重度(ツリーストレス)を少なく オーバレイネットワーク堅牢性 離脱・障害への対応 各参加者のビデオに対する要求度を反映したビデオ配信 ネットワーク利用効率の高いビデオ配信 要求の棄却率を低く 利用帯域を多く 2003/6/4 DICOMO2003 9 Emma (End-user Multicast for Multi-party Application) 特徴 遅延と帯域をメトリックとした配信経路木構築 離脱・障害時の配信経路木維持 ユーザの要求度を考慮したビデオ配信 各参加者の各ビデオへの要求度をプリファレンスとして各参 加者が設定(持ち点配分方式など) 話者の映像はプリファレンスを上げ,話者以外の映像はプリ ファレンスを下げるなど 帯域制約により転送制御が必要な場合 →全参加者のプリファレンスの総和を最大化するように行う 2003/6/4 DICOMO2003 10 配信経路木構築 ソースベースのスパニング木に継ぎ木方式で構築 新規参加ノードは遅延の短い数ノードとオーバレイ構築 各ソースごとに配信経路木構築 遅延制約を満たしながら,(パスストレッチ制限) リンク帯域をメトリックとして構築(ツリーストレス分散) c 2 2 a e 1 1 2 d 3 数字はリンク帯域を抽象化したもの ホップ数制約を 2 とする 2 b 2003/6/4 DICOMO2003 11 離脱・障害管理 各ビデオ配信木の葉ノードから、自らの空き帯域情報をビデオ維 持要求に付加して親ノードに送出 空き帯域情報を受け取ったノードは子ノード集合の空き帯域情報 からホップ数の小さい数個を選んで親ノードに送出 a b,c,d b,f,i g,h,l b i,j,k 1 ノードは 3 リンクまで 許容 2003/6/4 i c e g,l,m f g j k DICOMO2003 l d h,n h m n 12 離脱・障害管理 あるビデオ配信木についてノード e の親ノード b が離脱した場合 ノード b の親ノード a に a 以下の空き帯域情報を問い合わせる 空き帯域情報内の各ノードに再接続要求を送出 1 ノードは 3 リンクまで 許容 2003/6/4 i a a,c,d b,c,d b が離脱 c d e f g j k l DICOMO2003 h m n 13 離脱・障害管理 あるビデオ配信木についてノード e の親ノード b が離脱した場合 ノード b の親ノード a に a 以下の空き帯域情報を問い合わせる 空き帯域情報内の各ノードに再接続要求を送出 a,c,d ソースからの配信を維持したまま,速や a かに再接続先を決定 ソースノードからのホップ数等,配信木 c d の効率も悪化しない 1 ノードは 3 リンクまで 許容 2003/6/4 i e f g j k l DICOMO2003 h m n 14 ビデオ配信制御 以下の 2 つの値を比較することで,配信するビ デオ・配信停止するビデオを決定する ユーザ利得 ビデオが新たに配信された場合に得られるプリファレンス総 和 ユーザ損失 ビデオ配信が停止された場合に失うプリファレンス総和 2003/6/4 DICOMO2003 15 ビデオ配信制御 d がビデオ e を要求 ビデオ配信要求を上げていく過程でユーザ利得 集約 a e:9 i 2003/6/4 e:6 b c e f g j k l DICOMO2003 e:3 d h m a:1 e:3 i:2 n 16 ビデオ配信制御 ビデオ a,i が既に配信されている a,i のユーザ損失も同様にビデオ維持要求を用いて集 約されている a:1 a:6 e:9 i:8 1 リンク 2 ビデオまで 2003/6/4 Ii a b c E e f g j k l DICOMO2003 e:6 i:4 a:6 e:3 i:2 d h m a:1 e:3 i:2 n 17 ビデオ配信制御 ビデオ a,i が既に配信されている時,e-b 間で帯域制 約を満たせない a:6 e:9 i:8 1 リンク 2 ビデオまで 2003/6/4 Ii a b c E e f g j k l DICOMO2003 a:1 e:6 i:4 a:6 e:3 i:2 d h m a:1 e:3 i:2 n 18 ビデオ配信制御 b における各ビデオのユーザ利得とユーザ損失を比較 a の損失 < i の損失 < e の利得より a:6 e:9 i:8 1 リンク 2 ビデオまで 2003/6/4 Ii a b c E e f g j k l DICOMO2003 d h m a:1 e:3 i:2 n 19 ビデオ配信制御 e-b 間での a の配信を停止し、 e の配信を開始 a:6 e:9 i:8 1 リンク 2 ビデオまで 2003/6/4 Ii a b c E e f g j k l DICOMO2003 a:1 e:6 i:4 a:6 e:3 i:2 d h m a:1 e:3 i:2 n 20 ビデオ配信制御 e-b 間での a の配信を停止し、 e の配信を開始 a:1 a:6 e:6 a:6 各参加者からの各ビデオへの要求度を a i:4 e:3 e:9 i:8 反映したビデオ配信が可能 i:2 1 リンク 2 ビデオまで 2003/6/4 Ii b c E e f g j k l DICOMO2003 d h m a:1 e:3 i:2 n 21 研究目標 電子会議アプリケーション向け ALM プロトコル設計 配信経路木の効率 経路のパスストレスを短く • パスストレス:2 ノード間オーバレイリンク上ユニキャストホップ数と 実リンク上最短ホップ数比 配信木の多重度(ツリーストレス)を少なく オーバレイネットワーク堅牢性 離脱・障害に対する対応 各参加者のビデオに対する要求度を反映したビデオ配信 ネットワーク利用効率の高いビデオ配信 要求の棄却率を低く 利用帯域を多く 2003/6/4 →Emma/QoS DICOMO2003 22 Emma/QoS 帯域をユニット単位で管理(帯域ユニット) 帯域を効率的に利用できるため,要求棄却率低下などの利点が見込める utility 値×プリファレンスより各値を算出 ユーザ利得( (獲得後の utility – 獲得前の utility)×プリファレンス ) 各ノードで新たに帯域ユニットを獲得した場合 ユーザ損失( (削減前の utility – 削減後の utility)×プリファレンス ) 帯域ユニットを削減された場合 h:単位帯域ユニット 2003/6/4 DICOMO2003 23 Emma/QoS 新たに定義したユーザ利得,ユーザ損失を用いてビデオ配信制 御を行う これにより ユーザの要求に従ったビデオ配信が可能 →最終的にプリファレンスは最大化される 1 つ目のユニットに大きなユーザ利得,損失を与えることで, 多数の配信要求を受入 既配信ビデオの配信停止を回避 →棄却率低下 空きユニットがある限り,帯域ユニットを多数獲得することも可能 電子会議アプリケーションの特徴を満足する 2003/6/4 DICOMO2003 24 ビデオ配信制御 ビデオ a が 2 ユニット,i が 1 ユニット既に配信されている a2,i のユーザ損失はビデオ維持要求を用いて集約 a2:2 ユニット目のビデオ a a2:1 e:6 a i:4 a2:6 e:9 i:8 1 リンク 3 ユニットまで 2003/6/4 Ii b c E e f g j k l DICOMO2003 a2:6 e:3 i:2 d h m a2:1 e:3 i:2 n 25 ビデオ配信制御 ビデオ a,i が既に配信されている時,e-b 間で帯域制 約を満たせない a2:1 e:6 a i:4 a2:6 e:9 i:8 1 リンク 3 ユニットまで 2003/6/4 Ii b c E e f g j k l DICOMO2003 a2:6 e:3 i:2 d h m a2:1 e:3 i:2 n 26 ビデオ配信制御 b における各ビデオのユーザ利得とユーザ損失を比較 a2 の損失 < i の損失 < e の利得より a2:6 e:9 i:8 1 リンク 3 ユニットまで 2003/6/4 Ii a b c E e f g j k l DICOMO2003 d h m a2:1 e:3 i:2 n 27 ビデオ配信制御 e-b 間での a の 2 ユニット目を削減し、 e の配信開始 a2:1 e:6 a i:4 a2:6 e:9 i:8 1 リンク 3 ユニットまで 2003/6/4 Ii b c E e f g j k l DICOMO2003 a2:6 e:3 i:2 d h m a2:1 e:3 i:2 n 28 ビデオ配信制御 e-b 間での a の 2 ユニット目を削減し、 e の配信開始 a2:1 a2:6 e:6 a2:6 ビデオ配信要求の棄却率を減少させ a i:4 e:9 e:3 ることが可能i:8 i:2 b c d 帯域をユニット単位で管理するため, 利用可能な帯域を効率よく利用 1 リンク 3 ユニットまで 2003/6/4 Ii E e f g j k l DICOMO2003 h m a2:1 e:3 i:2 n 29 シミュレーション結果 スクリプト型言語 ruby によって Emma/QoS シ ミュレータを実装し,性能評価 評価したネットワークモデル Tiers モデルに基づく階層型トポロジ ノード数 200,ユーザ数 55 利用可能なオーバレイ帯域総量は LAN 帯域の半分 総オーバレイリンク容量は 12 帯域ユニット シミュレーションシナリオ セッション開始時にユーザ数急増 その後,ユーザの離脱,参加が繰り返される 2003/6/4 DICOMO2003 30 オーバレイネットワークの効率 リンクストレス 実リンクに配送される単一パケットの重複度 重複が少ないほど効率がよい a c b d a b d c 2003/6/4 DICOMO2003 31 オーバレイネットワークの効率 リンクストレスの分布を評価 ユニキャストでの値と比較 ユニキャスト Emma 物 理 リ ン ク 数 リンクストレス値 最大のリンクストレスがユニキャストの半分で収まっている 2003/6/4 DICOMO2003 32 オーバレイネットワークの効率 パスストレッチ オーバレイ上ノード間ホップ数と実リンク上ノード最短ホップ数比 オーバレイ上ノード間ホップ数 • オーバレイネットワーク上 2 エンドホスト間の最短経路に含まれる実 リンク数 1 オーバレイリンクは複数の実リンクからなるため,オーバレイ上 ホップ数は実リンク上のホップ数より多くなる 1 1 a 2 2 b 2003/6/4 6 3 5 DICOMO2003 4 33 オーバレイネットワークの効率 パスストレッチ分布 0.8 累 積 経 路 数 4 パスストレッチ値 80% の経路で 4 以下で収まっている (実ネットワーク上での遅延の 4 倍以内に収まっている) 2003/6/4 DICOMO2003 34 配信経路木の特性 ツリーストレス(経路木多重度)の分布 オーバレイリンク上の帯域利用効率を示す 累 積 経 路 木 数 ツリーストレス値 90% は最大ストレス値の半分程度に収まっている (おおよそ一様に分散しているといえる) 2003/6/4 DICOMO2003 35 ユーザの要求満足率 要求満足率 =(受け入れられた要求のユーザ利得)/(全要求のユーザ利得値) First-Come-First-Serve 方式と比較 Emma FCFS ユ ー ザ 数 0.8 FCFS 方式に比べ,0 であるユーザ数が少なく,ほとんど 0.8 程度 (低品質ながら複数のビデオを受信可能) 2003/6/4 DICOMO2003 36 ユーザ利得値の変動 ユーザ利得値総和のシミュレーション時間による変動 Emma FCFS ユ ー ザ 利 得 値 ユ ー ザ 数 シミュレーション時間 FCFS 方式に比べ, 高い値を達成し,それを維持している 2003/6/4 DICOMO2003 37 シミュレーション結果 これらの結果より 配信経路木の効率 現在のインターネット上で実現しても問題はない ビデオ配信時の要求棄却率 最高品質ではなくても,多数のビデオを配信可能 ユーザ利得 ユーザのプリファレンスに応じて配信可能 は,電子会議アプリケーションに用いるのに適し ているといえる 2003/6/4 DICOMO2003 38 まとめ オーバレイネットワークにおける複数ビデオの同 時配信時に QoS を分散制御で実現する ALM プロトコル Emma/QoS の提案 Emma/QoS に対するシミュレーションによる性 能評価 今後は実際に Emma/QoS を用いたビデオ配信 時のパケットロス等の計測等を行う 2003/6/4 DICOMO2003 39
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