CMB非等方性による、 インフレーション起源の背景重力波 のもつ偏極成分の検出法 斎藤 俊, 市來 浄與, 樽家 篤史 東京大学 宇宙理論研究室 博士1年 2007.5/29(火) 『宇宙初期における時空と物質の進化』@東大 arXiv:0705.3701 1 背景重力波の観測計画の現状 インフレーション期の詳細を知る:背景重力波の検出! 振幅 ⇔ インフレーション期のエネルギースケール ◆CMB の偏光Bモードによる間接的な検出 ◆レーザー干渉計による直接検出 BBO (2020年~?) DECIGO (2025年~?) Time order Planck (2008年3月~) Clover, Spider (2010年~?) CMBPOL (2020年~?) 2 CMB観測の現状 WMAP3の結果 Page et al (2006) Bモード検出は観測的に チャレンジングな問題 TT TE TBモード、EBモード データはほぼ 0 理論予測は0 ⇒ null check EE パリティの保存に由来 BB r = 0.3 大 角度スケール スカラー(密度揺らぎ)成分⇒自明 テンソル(重力波)成分は?? 小 3 重力波のパリティとCMB非等方性 重力波の2つの偏極の自由度 : 左巻き成分(L)と右巻き成分(R) 背景重力波のCMBの角度相関パワースペクトルへの寄与 : 各偏極成分のGWBの原始パワースペクトル : 光子の分布関数 , Boltzmann方程式に従う パリティの保存 ⇔ 円偏極がない ⇔ 円偏極 ⇔ TB/EBモードが0でなくなる! TT/EE/BB/TEは変化なし 4 背景重力波と高エネルギー物理 背景重力波におけるパリティ保存の仮定は自明か? ◆通常の一般相対論+素粒子標準模型では、自明 ◆超弦理論、M理論では自明ではない Green & Shwarz (84),Witten (84) (例)Chern-Simon項 重力波の波動方程式 R : Riemann tensor φ: Inflaton Alexander et al (2005) 円偏極! GWBの円偏極成分の検出 ⇔ 標準理論を超えた物理を示唆 5 研究内容 ◆ Lue et al (1999)を改善 背景重力波の円偏極成分に由来するCMBのTB/EBモード のパワースペクトルを計算する 特に、宇宙の再イオン化の影響を含める (CAMB code を修正 Lewis,Challinor,2002) ◆ TB/EBモードのパラメータ依存性を調べる ◆ WMAP3による円偏極成分の制限 Likelihood analysis (COSMOMC codeを修正 ) Lewis&Bridle(2002) ◆ Future forecast PLANCKと理想的な観測器の場合の検出可能性 6 セットアップ 背景重力波(GWB) の円偏極を仮定 重力波のスペクトルの波数依存性は通常のslow-roll インフレーションと同じとする Alexander et al (2005) CMB光子に対する2次的な影響 宇宙の再イオン化を考慮 重力レンズ効果は無視できる fiducial parameters ΛCDM + tensor + r = 0.1のbest-fit (WMAP3データ) 7 TBモードが依存するパラメータ 背景重力波の初期パワースペクトル ●テンソル/スカラー比 ●傾き ●円偏極の程度 左巻きのみ 右巻きのみ 円偏極なし 光子の分布関数 ●再イオン化までの光学的厚み c.f. τ~0.09 (WMAP3) ●他のパラメータ依存性は弱い Zhang et al (2006) 8 結果: ε依存性 (再イオン化なし) TBモード(linear) -1.0 -0.8 0.2 +1.0 1 10 l 100 左 右 1000 εは振幅を変化させるのみ 偏極の向きによって符号が変わる 9 結果: τ依存性 TBモード (ε= -1 )(絶対値の対数) 0 0.05 0.10 0.15 1 10 l 100 1000 大角度スケール(l<10)で振幅が桁で大きくなる! 10 結果: r 依存性 slow-roll consistency relation を仮定 r と n_T は同時に変化: 振幅と同時に傾きも変化する TBモード(ε= -1) (絶対値の対数) 0.1 0.3 0.5 1 10 l 100 1000 11 結果:全CMBパワースペクトル fiducial cosmology + (ε= 0.1 )における全CMBパワースペクトル TT TE EE TB BB EB 1 10 l 100 1000 12 WMAP3データによる円偏極の制限 Likelihood Analysis をマルコフ連鎖モンテカルロ法によってパラメータ 推定 (COSMOMC code を修正, Lewis&Bridle(2002)) 他の宇宙論パラメータも同時に動かす TBとEBに対しては データはWMAP3の結果を用いた (l<17) TB/EBは2007年1月12日一般公開 (http://lambda.gsfc.nasa.gov/) 13 結果:事後確率分布 -1 0 +1 0 +0.5 +1 ◆ 円偏極には有用な制限がつかない、(r,ε)の縮退解けず ◆ 他のパラメータはWMAP3とconsistent ◆ r の上限 r < 0.59 c.f. WMAP3 (no TB,EB) r < 0.65 14 Future forecast が将来のCMB観測器でどの程度決まるのか? そもそも無偏極(ε= 0)の場合と区別できるのか? ◆ PLANCK(2008年開始予定)とcosmic-variance limited の理想的な観測の場合に関して考察 ◆ foregroundのノイズは全て除去できたと仮定 ◆ データを理論値そのものとして、WMAP3と同様にMCMC ◆ Likelihood は以下のものを用いる (l < 100) 15 Future forecast:結果 r = 0.3 r = 0.1 r = 0.05 ◆ 本当の値(横軸)に対して、観測で得られる68%の信頼区間(縦軸) ◆ 赤がPLANCK、黄が理想的な観測器 ◆ r が小さいと、十分大きな εが必要 16 Future forecast:結果(続) cosmic variance がなぜ大きいのか? 大まかに見積もると、 cross-correlationなので、TT×BBの項が効く! ※ 分子第一項は、TBがなくても存在する項 したがって、十分大きなεが必要となる!! 17 まとめ 円偏極をもつ背景重力波を仮定し、CMBのTB/EB モードのパワースペクトルを計算した パラメータ依存性を調べた CMBへの2次的な効果を考慮、特に再イオン化により TBモードの振幅は WMAPのデータを用いて現在の制限 重力波の円偏極成分には有用な制限がつけられない 将来計画での展望 TBモードはcosmic varianceが大きいので、 十分大きなεが必要 18
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