銀河面からの酸素(OVII)輝線について 松本浩典(京都大学理学部物理) すざくX線CCD(XIS)による銀河面観測の中から、特に明るいX線天体のない5つの領域のデータを解析した。どの領域のスペクトルにも、 0.57keVに酸素輝線(O VII Kα)を示唆する構造を発見した。これは、低温のプラズマの存在を示唆するのかもしれない。そこで、スペクトル を3温度プラズマモデルでfitしたところ、従来より知られたGalactic Ridge X-ray Emission (GRXE) 起源の2温度プラズマに加え、より低温 プラズマの存在が示唆された。特に3つの領域では、この低温プラズマは7x1021cm-2という大きな吸収を示し、フォアグラウンド放射とは言 い難い。この低温度プラズマはGRXEの新しい成分を示唆するのかもしれない。 1. すざくXISによる銀河面観測 すざく搭載X線CCD(XIS)による銀河面の観測データから、視野内 に既知の明るいX線天体のない下記の5領域をピックアップ。 領域 (l,b) これらのラインはOVII Kαライン(0.574keV)と考えて矛盾はない。 もしそうなら、低温度のプラズマの存在を示唆する。そこで、3温度 プラズマモデル+CXB+6.4keVモデルでfit: NH* APEC + NH*APEC + NH*APEC + NH*CXB + 6.4keV line Chi2/dof=465.35/383 Chi2/dof=374.19/333 Chi2/dof=364.80/361 Chi2/dof=643.94/473 観測開始(UT) 観測時間 Region 2 1 Region 1 -0.3760) (330.3969 2006/9/16 43.7ks 2 (332.0062, -0.1531) 2005/9/18 19.3ks 3 (332.7036, -0.1504) 2005/9/20 21.9ks 4 (8.0447, -0.0445) 2006/4/7 40.7ks 5 (18.4364, -0.8429) 2006/10/19 51.2ks 2.スペクトル解析 Chi2/dof=522.46/414 上記データから、視野内に偶然混入した天体をのぞいて、出来る 限り広い領域からスペクトルを抽出。 それらのスペクトルを、CXB・6.4keV line を含めて、2温度プラズマ モデルでfit: NH*APEC + NH*APEC + NH*CXB + 6.4keV line Chi2/dof=618.03/395 Chi2/dof=502.51/324 領域2, 3を除いて、吸収の大きい低温度 プラズマが示唆される。 Galactic Ridge X-ray Emissionの新 しい成分か? 領域1は、ライン強度が少し大きく、中心エネルギーが少し低く、2 温度フィット時のE<0.8keVの残差も大きい。太陽風の荷電交換反 応の影響が入っているのかもしれない。 3. 軟X線の時間変動 XIS1 0.4-1.0 keV bandのライトカーブをいかに示す。太陽風の荷電 交換反応起源を示すような、フレア状の変動は見られない。 Chi2/dof=503.36/364 Chi2/dof=764.57/476 Chi2/dof=684.95/417 どの場合も、~0.57keV に残差あり。 そこで、ここにGaussian line を加えてfit。 領域 中心値 (keV) 強度 (10-10 ph/cm2/s/arcmin2) 1 0.556 (0.548 – 0.563) 12.37 (9.86 – 16.36) 2 0.575 (0.568 – 0.582) 5.60 (3.87 – 7.42) 3 0.571 (0.563 – 0.578) 6.69 (4.71 – 8.89) 4 0.568 (0.562 – 0.572) 8.33 (6.30 – 10.67) 5 0.572 (0.566 – 0.581) 8.32 (5.94 – 10.64) 4. ROSAT ALL SKY SURVEYとの比較 今回の観測領域と、ROSAT ALL SKY SURVEY band 4 (0.41.0keV) イメージを比較。領域2, 3は大きいスケールの明るい構 造と重なっている。もし、この放射がforeground であり、さらに領 域2, 3のO lineと関連するのならば、吸収が小さいことを説明でき るかもしれない。それ以外の領域は、特に明るい放射はない。 領域5 領域4 領域3 領域2 領域1
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