O-8 酵素糖化・効率的発酵に資する基盤研究 - 新エネルギー・産業技術

O-8 酵素糖化・効率的発酵に資する基盤研究
(財)バイオインダストリー協会 森川 康
1.要旨
本テーマは、セルロース系バイオマスからの燃料エタノールの生産を2015~2020年頃に実用化する上で最大の
課題である酵素糖化・発酵プロセスにおける革新的技術を創成することにより、わが国独自の新規技術の開発を
目標としている。これまでに達成した成果の一部を報告する。
2.これまでの成果
本テーマでは、現在全16法人で図に示したように糖化基盤研究と発酵基盤研究を実施しており、加速的先導技
術の一貫プロセス開発(ア)チームへの貢献を直接目的としている。
糖化基盤研究の役割の一つである、バイオマスのハイスループット解析法の確立や、種々のバイオマス前処理
法、タンパク質定量法および糖化酵素活性測定
法などの標準化等は完了した。
2−1 糖化基盤研究:(イ)糖化システムの解
明による高効率糖化の実現
酵素使用量を少なくすると糖化率が頭打ち
になる現象(頭打ち現象)を見いだし、この現
象が糖化酵素(セルラーゼ)のバイオマスへの
非生産的結合によることを明らかにし、バイオ
マス(セルロースおよびリグニン)側および酵
糖化基盤研究
1. 糖化システムの解明
による高効率糖化の実現
A バイオマスのミクロ
構造および酵素との
相互作用の解析
①バイオマスのミクロ
構造と糖化
②糖化率頭打ち現象の打破
B 酵素回収法の開発
③吸着挙動解析と酵素
回収方法の開発
2. 革新的糖化酵素の創成
D 最適な成分酵素の
探索・評価・改良
⑤成分酵素の機能解明と改良
⑥異種宿主発現
⑦統一的な性能評価
E 成分酵素の最適比率
⑧成分酵素の最適比率の決定
F 高機能酵素生産菌株の
造成と酵素生産研究
⑨革新的糖化酵素生産
菌株の造成
⑩糖化酵素生産研究
C 高濃度糖化
④高濃度糖化の実施
3 効率的C6・C5
発酵に資する
遺伝子情報の
獲得
G 耐酸・耐熱・
キシロース代謝
速度向上遺伝子
情報の同定
⑪耐熱性•
耐酸性遺伝子
⑫キシロース代謝
向上遺伝子
(ア)チームへの貢献
素(各成分酵素)側から、この現象の打破ある
いは緩和を網羅的に解析しており、いくつかの
発酵基盤研究
酵素
糖化
2013. 3
1 mg/g-生成糖
4 円/L-EtOH
(ア)チームへの
遺伝子情報提供
への道筋
成果を見いだしている。
参考図 基盤研究開発の概念図
(ロ)革新的糖化酵素の創成
Trichoderma reesei の生産する糖化酵素中の多数の成分酵素よりも高機能の酵素を幅広く探索し、
これまでに
β-グルコシダーゼ(BGL)やキシラナーゼを含めた数種類の高機能成分酵素を見いだした。また、糖化酵素中の
主要成分酵素は、バイオマス種と前処理法によってそれらの必要性が大きく変わることを明らかにした。
Aspergillus aculeatus の高機能 BGL を組み込んだ T. reesei 変異体の糖化酵素は欧米の市販酵素を上回る糖
化能力を示した。さらに、用いるプロモーターと組み込み方法を最適化した菌株の酵素は、最新型の市販酵素を
完全に凌駕する糖化機能を示した。組換え T. reesei 変異株の大量生産技術の検討も始めている。
2−2 発酵基盤研究:(ハ)効率的 C6・C5 発酵に資する遺伝子情報の獲得
耐酸・耐熱性およびキシロース代謝向上に関する遺伝子情報の取得を目指して、実用酵母の突然変異遺伝子を
次世代シーケンサーによる親株との比較ゲノムにより明らかにし、実用酵母での検証を行っている。さらに今年
度からは比較ゲノムの単純化を目指し、ゲノム配列を明らかにした実用酵母親株を基に上記耐性変異株を構築し
ている。また、キシロース代謝の上流3遺伝子の発現比率最適化を目指した発現制御技術の確立を進めている。
3.まとめと今後の課題
今後は、
(イ)実用的な高濃度糖化での酵素使用量の低減とともに、
(ロ)BGL 組換え酵素のさらなる高機能
化を通じて、どのようにして 1 mg/g-生成糖に近づけるかが大きな課題である。また、
(ハ)酵素の大量生産技術
を確立して、安価な酵素生産の実現や、
(ニ)キシロース代謝向上や耐熱・耐酸性の遺伝子情報および発現制御
技術をいかに早く取得するかなどが重要であると考えている。
92
平成23年度「バイオマスエネルギー関連事業成果報告会」
2012. 2. 2
東京コンファレンスセンター・有明
新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発/
先導技術開発(加速的先導技術開発)
(ウ) 酵素糖化・効率的発酵に資する基盤研究
参画 16 法人
一般財団法人
独立行政法人
株式会社
国立大学法人
公立大学法人
学校法人
バイオインダストリー協会(JBA)
産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、
森林総合研究所、食品総合研究所、
農業生物資源研究所
花王、日揮、Meiji Seika ファルマ
京都大学、信州大学、東京大学、
長岡技術科学大学、熊本大学
大阪府立大学
祟城大学
(一財) バイオインダストリー協会
技術顧問
森川
康
1
研究の目的と目標
セルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産の実用化に向けて
主要課題
1)前処理
エネルギー消費抑制、設備コスト低減、酵素糖化を受けやすい前処理
2)酵素糖化
(セルロース・ヘミセルロース・リグニンの複雑な絡み合った構造であり、
セルロースが結晶構造を取っているため、大量の酵素が必要)
糖化酵素(セルラーゼ等)の使用量低減(酵素コスト低減)
3)発酵
C5 糖(キシロース等)の C6 糖と同時・同速度での発酵
4)その他
加速的先導技術開発の基盤研究として、
革新的糖化酵素の創成(糖化基盤研究)と 発酵課題解決(発酵基盤研究)
を目指して研究開発を実施
2
93
直接目的
加速的先導(ア)チームの一貫プロセス開発への貢献
遺伝子、酵素、微生物、技術情報等の提供
「バイオ燃料技術革新計画」 技術革新ケースのベンチマーク
原料:目的生産バイオマス
規模:10万〜20万 kL/年
糖化工程 酵素コスト低減ー酵素使用量の低減、酵素単価低減
発酵工程
酵素使用量 1 mg-酵素/g-生成糖
酵素コスト 4 円/L-EtOH
C6 と C5 糖の同時利用と発酵菌の高温耐性
エタノール収率 95 %以上
最終目標(2015 年):ベンチマークの達成
現在 8 プロセスが実用化に向けて開発中
(経産省/NEDO、農水省)
日本のバイオエタノール生産プロセス実用化への貢献
3
研究開発全体の概念図
糖化基盤研究
糖化
1. 糖化システムの解明
による高効率糖化の実現
A バイオマスのミクロ
構造および酵素との
相互作用の解析
①バイオマスのミクロ
構造と糖化
②糖化率頭打ち現象の打破
B 酵素回収法の開発
③吸着挙動解析と酵素
回収方法の開発
C 高濃度糖化
④高濃度糖化の実施
酵素
2. 革新的糖化酵素の創成
D 最適な成分酵素の
探索・評価・改良
⑤成分酵素の機能解明と改良
⑥異種宿主発現
⑦統一的な性能評価
E 成分酵素の最適比率
⑧成分酵素の最適比率の決定
F 高機能酵素生産菌株の
造成と酵素生産研究
⑨革新的糖化酵素生産
菌株の造成
⑩糖化酵素生産研究
(ア)チームへの貢献
2013. 3
1 mg/g-生成糖
4 円/L-EtOH
発酵基盤研究
3. 効率的C6・C5
発酵に資する
遺伝子情報の獲得
G 耐酸・耐熱・
キシロース代謝
速度向上遺伝子
情報の同定
⑪耐熱性• 耐酸性
遺伝子
⑫キシロース代謝
向上遺伝子
(ア)チームへの
遺伝子情報提供
への道筋
94
4
研究開発体制
NEDO
JBA
研究開発推進委員会(外部委員、内部委員)
PL
PL(補佐)
長岡技科大(JBA)
JBA
森川 康
小林 良則
研究開発大項目1 糖化
リーダー 京大 杉山 淳司
京都大、信州大、森林総研、東京大
JBA、日揮
研究開発大項目2 酵素
リーダー JBA 小林 良則
サブリーダー 産総研 宮崎 健太郎
JBA、
産総研、製品評価技術基盤機構、
長岡技科大、大阪府大、
農生資源研、食総研
Meiji Seika ファルマ、花王
研究開発大項目3 発酵
リーダー 産総研 鎌形 洋一
総合調整と調査研究
産総研、
熊本大学、崇城大学
JBA
5
基盤研究全体の進行状況
(プロジェクト期間 2008.10 - 2013.3)
〜 2008
(日本)
2011. 12
(現状)
無し
完成済み
2013. 3
(達成見込み)
20152020
「バイオ燃料
技術革新計
画」の酵素糖
化のベンチ
マーク達成
標準化
バイオマスTTP解析、
最適前処理法、
分析法と評価(酵素活性等)
糖化基盤研究
高効率糖化
高機能
糖化酵素
(Trichoderma
reesei)
低酵素使用時
の糖化率頭打
ち現象
ほとんど指摘
無し
解析完了
原因把握
具体的な酵素使
用量低減策
酵素回収
・再利用
膜法など
(経済性?)
吸着現象解析
向流型酵素糖
化法提案
具体的な再利用
法の提案(頭打
ち現象と関連)
バイオマスに
最適な酵素
概念なし
主要成分酵素
に付いて完了
各プロセスに最
適な糖化酵素
酵素使用量
(標準的
糖化)
34 mg
/g-生成糖
酵素大量生産
技術
酵素コスト
(仮定あり)
過去にあり
(データ未公
表)
307 円
/L-EtOH
4 mg
/g-生成糖
2-10 L ジャー
での検討開始
35 円
/L-EtOH
1.5-2 mg
/g-生成糖
3,000 円/kg-酵
素タンパク質
酵素使用量
1 mg
/g-生成糖
酵素コスト
4円
/L-EtOH
10 円
/L-EtOH
6
95
(つづき)
〜 2008
(日本)
2011. 12
現状
耐酸性・耐熱
耐酸性関連遺伝子
発酵基盤研究
耐熱性・耐酸性に関 性に関与する
数種の候補を取得
数種の遺伝子 耐熱性関連遺伝子
わる遺伝子情報
の情報
進行中
2013. 3
(達成見込み)
20152020
各数個以上の遺伝子
情報を取得
(実用酵母で確認)
キシロース代謝向上
遺伝子情報
代謝マップ上
キシロース代
謝に関わる遺
伝子の関与に
ついての情報
キシロース代謝が向
上した自然突然変異
株の比較ゲノム進行
中
キシロース代謝3遺
伝子の発現比率技術
強弱2種類の
発現比率のみ
による代謝効
率の情報
3遺伝子の発現比率
を多段階に変化させ、
最適発現比率の達成
代謝効率を向上。実
(実用酵母で確認)
用酵母でキシロース
代謝向上菌株取得
「バイオ燃料
技術革新計
画」の発酵の
ベンチマーク
達成
数個の遺伝子情報を
取得
(実用酵母で確認)
C6/C5
同時発酵
高温耐性
発酵収率
95%以上
7
糖化
「糖化システムの解明による高効率糖化の実現」
A バイオマスのミクロ構造および
酵素との相互作用の解析
酵素量低減
高効率糖化
①バイオマスのミクロ構造と糖化の関係
②糖化率頭打ち現象の打破
前処理バイオマス
糖
糖化
発酵
エタノール
併行複発酵
C 高濃度糖化
④高濃度糖化の実施
B 酵素回収法の開発
③吸着挙動解析と
酵素回収方法の開発
再利用
酵素量低減
酵素から見た実用化との
ギャップや問題点解消
8
96
糖化
「糖化システムの解明による高効率糖化の実現」
(JBA つくば研、京大、信州大、
森林総研、東大、日揮、長岡技大)
成果の主なトピックス
◎バイオマスのハイスループットな分析・評価法の確立(ケモメトリクス)
◎標準前処理法の確立
(NaOH、希硫酸、水熱、(爆砕);稲わら、エリアンサス、ユーカリ、(スギ))
◎低酵素量使用時の糖化率頭打ち現象の緩和と打破
糖化反応の網羅的解析
各種の解析から
「セルラーゼのセルロースへの
非生産的結合により起こる」
と結論
糖化率(%)
酵素量 大
通常の酵素反応
0
酵素量 小
酵素使用量低減と酵素回収・再利用
とに密接に関連
反応時間(h)
基質側(セルロースやリグニン)と
酵素側(成分酵素)から頭打ち現象
の打破を検討
◎前処理法・バイオマス種に応じた糖化酵素が必要
糖化
低酵素量使用時の頭打ち現象の解析、緩和と打破
・セルロースの物性を変化させる
ことで頭打ち現象は緩和されるが
解消しない
5% NaOH 前処理ユーカリ
酵素:Accellerase 1500
100
・ろ紙の糖化時に
震盪すると頭打ち現象あり、
静置ではかなり回復
・セロビオハイドロラーゼ (CBH II)
が振盪により析出
20 mg/g-biomass
80
糖化率 (%)
9
60
5 mg/gbiomass
40
・成分酵素や分子種によって
残渣への吸着性が異なる
2 mg/g-biomass
20
β-グルコシダーゼ(BGL)は
リグニンに吸着
0
0
20
40
60
反応時間 (h)
80
100
・グルコースによる糖化反応阻害は
確実に起るが、頭打ち現象の
原因ではない
10
97
糖化
糖化時の CBH I と CBH II の挙動の解析
(日揮)
これまでの解析で、「振盪により CBH II が析出」を発見
10 %ろ紙の糖化、静置法、酵素量 約 10 mg/g-ろ紙
上清中の CBH I 濃度[-]
1.2
原液セルラーゼ
1
CBH1主体
0.8
CBH II 有り
0.6
0.4
0.2
CBH II 無し
0
0
20
40
反応時間 [Day]
回収・再利用にも重要
CBH I の解離を CBH II が促進
糖化
11
成分酵素(CBH II)の糖化残渣への吸着と消失
(JBA つくば研)
pH
pH3
分子量
バイオマス
NaOH 前処理稲わら
酵素
5 mg/g-バイオマス
糖化時間
72 hr
Accellerase 1500
の二次元電気泳動図
大
糖化条件
pH10
小
上清
CBH II のスポット
残渣
振盪
静置
消失は CBH II の分子種で異なる
12
98
糖化
前処理法およびバイオマス種に応じた糖化酵素が必要
(JBA つくば研、
長岡技科大)
主要成分酵素 CBH I、CBH II、EG I の差異
硫酸前処理稲わら
100
水熱処理ユーカリ
ΔEG I
80
80
糖化率(%)
糖化率(%)
ΔCBH II
ΔCBH I
60
40
ΔEG I
ΔCBH II
60
40
ΔCBH I
20
Δ:それぞれの成分酵素だけが
欠失している糖化酵素
20
WT
100
WT
0
0
0
20
40
時間
60
0
80
20
40
時間
60
同様に、各種の前処理バイオマスを糖化し、成分酵素の重要性を検討
80
13
糖化 前処理バイオマスの糖化に対する T. reesei 成分酵素の役割
(JBA つくば研)
CBH I
CBH II
EG I
NaOH 前処理稲わら
◎
△
△
希硫酸前処理稲わら
◎
○
×
水熱前処理稲わら
◎
○
△
NaOH 前処理エリアンサス
◎
△
△
NaOH 前処理ユーカリ
◎
○
○
希硫酸前処理ユーカリ
◎
○
○
水熱前処理ユーカリ
◎
○
△
爆砕前処理スギ
◎
○
×
コンバージミル前処理スギ
◎
△
○
セルロース [SIGMA]、[ADVANTEC]
◎
◎
×
リン酸膨潤セルロース
(×)
(×)
(×)
NaOH 処理セルロース [SIGMA]
◎
◎
△
前処理バイオマス
前処理バイオマスの糖化における寄与度:<大> ◎・○・△・× <小>
前処理法およびバイオマス種に応じて、主要な成分酵素の比率を変化させる必要有り14
99
酵素
「革新的糖化酵素の創成」
Trichoderma reesei の成分酵素は最高で
はない!広範囲に優れた成分酵素を探索する
D 最適な成分酵素の探索・評価・改良
<既存生物の成分酵素>
<新規微生物の成分酵素>
糸状菌(Trichoderma)
麹菌(Aspergillus)
⑤ 探索・改良
担子菌(Irpex)
放線菌
昆虫(ゴキブリ、シロアリ)
メタゲノム
メタトランスクリプトーム
微生物ライブラリー
データベース(CAZY)
⑥ 遺伝子の異種宿主発現
バイオマス種と
前処理法で異なる
(S. pombe、A. oryzae、枯草菌 等)
E 成分酵素の最適比率の決定
⑦ 統一的な性能評価と絞り込み
⑧ 成分酵素の最適比率の決定
F 酵素生産菌株の造成と生産研究
遺伝子組換え技術による改良と大量生産技術
⑨ 高機能糖化酵素生産菌株の造成
⑩ 糖化酵素生産研究
酵素
15
「革新的糖化酵素の創成」
成果の主なトピックス
(JBA つくば研、産総研、製品評価技術基盤機構、食総研、
生物資源研、花王、日揮、Meiji Seika ファルマ、
長岡技科大、大阪府大、信州大)
◎分析法の標準化
タンパク質定量、酵素活性測定、バイオマス組成分析、市販酵素の機能評価
◎広範囲な糖化酵素(成分酵素)の探索と統一評価
(メタゲノム、日本独自の微生物資源、既知セルラーゼ生産菌などから)
CBH、β-グルコシダーゼ(BGL)、ヘミセルラーゼ等の探索
多数のメンバーから提供された成分酵素の統一的評価
◎成分酵素の最適比率の決定
BGL の最適比率
GHF10 キシラナーゼ(T. reesei XYN III)の最適化
◎高機能糖化酵素の構築
セロビアーゼ活性の高い BGL(A. aculeatus BGL1)の選定
セルラーゼ高生産菌 T. reesei への A. aculeatus BGL1 の導入
導入法の検討により3種の高機能糖化酵素を構築
JN13 は欧米の最新型市販酵素を完全に凌駕するオールラウンドな糖化酵素
80 %糖化に必要な
酵素使用量 (mg/g-生成糖)
親株の酵素
JN13
最強市販酵素
34
3.9
5.6
100
16
酵素
最適な成分酵素の探索・評価
メタゲノム由来β-グルコシダーゼの取得と評価
添加効果有り
(4)
難培養性微生物
>99%
添加効果試験
(10)
環境中の微生物
遺伝子クローニング
(20)
・メタゲノム由来 1400 の BGL 取得
・30以上の Glc 耐性 BGL 獲得
・4 種類の BGL に糖化時の添加効果を確認
グルコース耐性
(31)
・既存のものと比べてユニークな BGL
・糸状菌由来とは全く異なる性質
・「メジャーなセルラーゼ生産菌」の研究では
獲得することは出来なかった BGL
メタゲノム由来β−グルコシダーゼ
(1400)
BGL 探索
進化分子工学的改変へ
酵素
(産総研)
17
広範囲な微生物資源からの成分酵素の探索
(製品評価技術基盤機構)
微生物資源
微生物スクリーニング
・セルラーゼスクリーニング
・ヘミセルラーゼスクリーニング
・NBRC株
・過去の所内分離株
・生態学や分類研究者からの提供株
・国内外での新規分離株
活性株
新規遺伝子資源の選抜
酵素系評価による選定
(補完成分中心)
主要成分酵素(CBH I 等)の選抜
・成分酵素の精製
・統一的評価
・分類に基づく俯瞰図
・活性株類縁
・遺伝子情報の有無
・分類の新規性
・分離源や生態学的興味
・1D Secretome
LC-MS による成分酵素同定
cDNAプール/ゲノム配列決定
・2D Secretome
遺伝子取得
LC-MS
定量 PCR
サブトラクション解析
(JBAつくば研)
異種発現(JBA つくば研等)、 T. reesei への組み込み評価(長岡技科大)
101
18
酵素
統一的な評価
◯ 成分酵素
187 種
CBH(大部分は CBH I)
EG
(多数のメンバーからの提供
JBA つくば研での評価)
T. reesei CBH I と同等以上
76 種
5種
28
T. reesei EG I と同等 1 種
比活性の高いEG 1 種
BGL
24
XYN
14
他のへミセルラーゼ
アクセサリー酵素等
26
19
A. aculeatus BGL1
A. aculeatus BGL1 以上の比活性
1種
Glc 耐性(活性化されるものを含む) 5 種
GHF 10 キシラナーゼの重要性
耐熱性キシラナーゼ 1 種
評価の高いものは T. reesei への組み込み
今後は CBH II やヘミセルラーゼ・補助タンパク質中心に探索
酵素
19
高機能 T. reesei セルラーゼの構築と評価
(長岡技科大、大阪府大
JBA つくば研)
◎ T. reesei の優秀さと弱点
セルラーゼ高生産性
タンパク質生産能力が高く、そのほとんどはセルラーゼとヘミセルラーゼ
セルロース系バイオマス分解に必要なすべての成分酵素・タンパク質を作る
糖化に必須のβ-グルコシダーゼ(BGL)活性が弱い
◎ BGL の必要量および高性能のBGL
・糖化には T. reesei の BGL
活性の 10 倍以上必要
T. reesei および A. aculeatus の
β-グルコシダーゼ(BGL)の基質特異性
比活性(U/mg)
250
200
・T. reesei には 10 種の BGL
しかし、セロビアーゼ活性の
高い BGL なし
A. aculeatus
BGL1
探索結果から
150
T. reesei BGL I
100
50
0
Cellobiose
pNPG
Cellobiose
pNPG
102
・A. aculeatus BGL1の
T. reesei への組み込み
20
酵素
高機能糖化酵素 JN シリーズの酵素活性
(JBA つくば研、長岡技科大)
酵素活性
比活性(U/mg-protein)
WT
JN11
JN12
JN13
JN13H
市販
酵素X
Cellic
CTec2
FPU
1.1
1.9
1.9
1.9
1.6
1.0
1.5
CMCase
35
53
57
52
48
45
66
Cellobiase
0.12
7.8
40
12
7.1
3.2
40
Xylanase
88
67
50
67
170
110
210
β-Xylosidase
0.59
0.54
0.69
0.45
1.7
4.8
0.25
Mannanase
1.2
2.0
2.0
2.3
1.9
0.62
2.8
Mannosidase
-
-
-
-
-
-
0.038
α-Arabinofuranosidase
0.12
0.089
0.067
0.074
0.22
4.6
0.049
酵素
-:not detected
JN13H : キシランを添加培養した JN13 の酵素
NaOH 前処理エリアンサスの糖化
21
(JBA つくば研)
酵素使用量と糖化率(5 %前処理バイオマス使用)
100
CTec2
JN13H
糖化率(Glc + Xyl)(%)
80
JN11
酵素X
60
40
20
0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
酵素量(mg/g-バイオマス)
22
103
酵素
糖化率80%(Glc + Xyl)に必要な酵素量
(JBA つくば研)
バイオマス
(前処理法)
WT
JN11
JN12
JN13
JN13H
稲わら
(NaOH)
29
7.4
7.8
4.6
3.8
エリアンサス
(NaOH)
22
3.7
3.5
2.8
2.5
ユーカリ
(水熱)
35
4.2
4.8
4.3
4.6
酵素 X
Cellic
CTec2
10
11
5.7
14
3.6
5.6
JN13H : キシラン添加培養
3.9 mg/g-生成糖(80 %糖化率 x 80 %含有率)
34 mg/g-生成糖
使用量 約1/9 に低減
5.6 mg/g-生成糖
欧米の市販酵素を完全に凌駕
A. aculeatus BGL1:高機能および T. reesei での高発現
T. reesei 親株(WT)の優秀さ
JN13 をベースに第2段階以降の高機能糖化酵素の造成を進行中
発酵
23
「高効率C6・C5発酵に資する遺伝子情報の獲得」
次世代シーケンサーによる
高速ゲノム解析
比較ゲノム解析による
有用変異遺伝子の解析
変異株のDNA
実用酵母変異株の取得
変異遺伝子特定
実用酵母での変異遺伝子の検証
(耐酸・耐熱性遺伝子)
(キシロース代謝向上遺伝子)
プロモーター開発
多重発現技術
プロモーターの選定と
発現技術の提供
耐酸性・耐熱性・キシロース代謝向上遺伝子情報
キシロース代謝向上のための発現制御技術
104
24
発酵
エタノール実用酵母からの耐酸性遺伝子情報の取得
(熊本大、産総研)
実用酵母
SOLiD3解析
酸性条件で
連続培養・馴化
四胞子解析 耐酸性変異株
ハプロイド
ドラフトゲノムを参照して
変異遺伝子候補の絞り込み
ドラフトゲノム解析
NAM34-4C(実用酵母基準株)
pH 3.0 での培養条件で、より生育させる
遺伝子を数個発見!
候補遺伝子の挿入
菌体量
遺伝子導入酵母
耐酸性の変化の検証
発現ベクター
時間
比較ゲノムが複雑過ぎる
発酵
遺伝子発現用
実験室酵母
単純化(NAM34-4Cを親株に)
25
実用酵母基準株 NAM34-4C の突然変異株
(熊本大、崇城大)
◎ 耐酸・耐熱性変異株 ー 準備完了、現在変異進行中
◎ キシロース代謝向上株の取得
キシロース高濃度培地での生育速度(2段階)の向上株
エタノール発酵も早い
SCB26
SCB27
YPXU 培地
50 g/L xylose
次世代シーケンサーによる比較ゲノム実施中
キシロース代謝向上遺伝子情報獲得へ 26
105
発酵
キシロース代謝酵素の発現制御による発酵能力の改善
(産総研)
DPP 株(実用酵母の親株 IR-2 に XR, XDH, XK 遺伝子のみ導入、
3遺伝子の発現比率が現時点で最適な株)
Glucose, Xylose, Xylitol, Ethanol (g/L)
YPDX 培地(4.5% Glc + 4.5% Xyl)
○従来株より
・キシロースの
早い代謝
・エタノールの
早い蓄積
EtOH
Xylose
Xylitol
Incubation time (h)
○さらなる加速に向
けた発現制御技術
の改良を進める
従来株:
Matsushika et al.
Biores. Technol. (2009)
100: 2392–2398 より
27
今後の課題
(糖化)実用的な高濃度糖化での酵素使用量低減(頭打ち打破、再利用)
(酵素)JN13 をベースに更なる高機能化酵素の構築
酵素使用量をいかに 1 mg/g-生成糖に近づけるか
(酵素)糖化酵素の大量生産技術の確立
安価な酵素生産の実現(酵素コストのベンチマーク 4 円/L)
(発酵)キシロース代謝向上遺伝子情報を中心に、
耐酸・耐熱遺伝子情報やキシロース代謝遺伝子の発現制御技術
の獲得
28
106