メタボリックシンドロームと 検査値の関連

厚生労働科学研究「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】及び健康づくりのための身体活動基準2013
に基づく保健事業の研修手法と評価に関する研究」津下班
実践者育成
研修プログラム
技術編
1)メタボリックシンドロームの概念
2)行動変容に関する理論
3)生活習慣改善につなげるためのアセスメント・行動計画アウトソーシングの進め方
4)「情報提供」、「動機づけ支援」、「積極的支援」の内容
あいち健康の森健康科学総合センター 津下一代/村本あき子
メタボリックシンドロームと検査値
アセスメントからの目標設定
• 内臓脂肪蓄積と検査値異常の関連
(身体状況のアセスメント)
• 生活習慣のアセスメント
• 目標設定の実際
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
健診検査項目の判定値
保健指導対象者の選定と階層化
■ステップ1
データ基準
保健指導 受診勧奨
判定値
判定値
項目
収縮期血圧
(mmHg)
130
140
拡張期血圧
(mmHg)
85
90
中性脂肪
(mg/dL)
150
300
HDL-C
(mg/dL)
39
34
LDL-C
(mg/dL)
120
140
空腹時血糖
(mg/dL)
100
126
(%)
5.6
6.5
AST
(U/L)
31
51
ALT
(U/L)
31
51
γGTP
(U/L)
51
101
HbA1c(NGSP)
・腹囲 M≧85cm、F≧90cm
・腹囲 M<85cm、F<90cm かつ BMI≧25
→(1)
→(2)
■ステップ2
◎ 検査結果、質問票より追加リスクをカウントする。
◎ ①~③はメタボリックシンドロームの判定項目、
④はその他の関連リスクとし、④喫煙歴については
①から③のリスクが1つ以上の場合にのみカウントする。
①空腹時血糖≧100mg/dL or HbA1c(NGSP)≧ 5.6%
or 薬剤治療を受けている場合
②中性脂肪≧150mg/dL or HDL-C <40mg/dL
or 薬剤治療を受けている場合
③収縮期血圧≧ 130mmHg or 拡張期血圧≧ 85mmHg
or 薬剤治療を受けている場合
④質問票 喫煙歴あり
■ステップ3 ◎ステップ1、2から保健指導対象者をグループ分け
(1)の場合
①~④のリスクのうち追加リスクが 2以上の対象者は積極的支援レベル
1の対象者は動機づけ支援レベル
0の対象者は情報提供レベル
(2)の場合
①~④のリスクのうち追加リスクが 3以上の対象者は積極的支援レベル
1又は2の対象者は動機づけ支援レベル
0の対象者は情報提供レベル
(出典:厚生労働省 標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
内臓脂肪型肥満に着目した生活習慣病予防の
ための健診・保健指導の基本的な考え方
(出典:標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
なぜ内臓脂肪型肥満に着目したのか?
• わかりやすい
• 生活のなかで、対策を考える
• 目標設定が具体的である
• セルフモニタリング(チェック可能)
• ポジティブな解釈
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
内臓脂肪とメタボとの関連は?
メタボリックシンドロームにおける各種病態の発症機序
栄養過多(過食、運動不足)
内臓脂肪蓄積
門脈血FFA↑
リポタンパク質合成の増加
TNFα
インスリン抵抗性
Adipocytokines↑
高インスリン血症
脂質異常症
喫煙
耐糖能異常
心血管イベント
高血圧
PAI - 1
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
佐賀大学医学部病因病態科学講座 杉原 甫 教授より
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
リポプロテインリパーゼ
コレステロール
輸送タンパク
免疫系の活性化因子
adipsin
(factorD)
C3
PAI-1
B
(血栓形成)
アディポネクチン
PAGF
レプチン
(前駆脂肪細胞増殖因子)
中性脂肪
(飽食シグナル)
TNFα
レチノイド結合タンパク
(インスリン抵抗性)
アンドロゲン
アンジオテンシノーゲン
エストロゲン
モノブチリン
副腎皮質ホルモン前駆体
アンジオテンシンⅢ
(血圧上昇)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
内臓脂肪面積とリスクファクター数の関係
(出典:Kruskal-Wallis t検定 日本内科学会雑誌第94卷 第4号 2005)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
内臓脂肪面積と腹囲の関係
内
臓
脂
肪
面
積
(cm2)
(出典:Circ J 2002; 66:987-992 New Criteria for obesity Disease in Japan)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
ウエスト周囲長(臍レベル)カテゴリー別の平均リスクファクター数
■リスクファクター
(1)血圧高値:血圧≧130/85mmHgもしくは薬物療法中
(2)中性脂肪高値:中性脂肪値≧150mg/dLもしくはHDL-C値<40mg/dL
(3)高血糖:空腹時血糖値≧110mg/dLもしくは随時血糖値≧140mg/dLもしくはHbA1c(NGSP)≧6.0%もしくは薬物療法中
2.5
男性(18,689人)
2.5
2.0
2.0
1.5
1.5
1.0
1.0
0.5
0.5
0.0
0.0
ウエスト周囲長 (cm)
女性(15,713人)
ウエスト周囲長 (cm)
平均リスクファクター数が1を超えるウエスト周囲長(臍レベル)は男性では80-85cmから、
女性では90cmからであり,内臓脂肪面積100cm2に対応するウエスト周囲長として
算出された現行の基準値と合致した
平成24年度 厚生労働省科学研究費補助金
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 門脇班資料
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
リスク因子複数保持者を検出する
腹囲と他の身体計測指標の検出力の比較
腹囲
腹囲
男性 330人
女性 514人
腹囲と他の計測指標(体脂肪率、腹囲/身長比等)の検出力にほとんど差はない。
Environ Health Prev Med. 2011; 16:52-60
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
メタボリックシンドロームの診断基準(2005)
内臓脂肪(腹腔内脂肪)蓄積
ウエスト周囲長
(内臓脂肪面積≧100cm2に相当)
男性≧85cm
女性≧90cm
上記に加え以下のうちの2項目以上
高トリグリセライド血症
低HDLコレステロール血症
≧150mg/dL
<40mg/dL
収縮期血圧
拡張期血圧
≧130mmHg
≧85mmHg
空腹時血糖
≧110mg/dL
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
血圧高値に関するフィードバック文例集
対応
肥満者の場合
健診判定
異常
収縮期血圧≧160mmHg
又は 拡張期血圧≧100mmHg
受診勧奨
判定値を
超えるレベル
保健指導判定
値を超える
レベル
正常
基準範囲内
140mmHg≦収縮期血圧<160mmHg
又は90mmHg≦拡張期血圧<100mmHg
130mmHg≦収縮期血圧<140mmHg
又は 85mmHg≦拡張期血圧<90mmHg
収縮期血圧<130mmHg
かつ 拡張期血圧<85mmHg
非肥満者の
場合
①すぐに医療機関の受診を
②生活習慣を改善する努力をした上で、
数値が改善しないなら医療機関の受診を
③特定保健指導の
積極的な活用と
生活習慣の改善を
④生活習慣の
改善を
⑤今後も継続して健診受診を
※ 白衣性高血圧、仮面高血圧に注意。家庭血圧等他の機会での血圧測定が望ましい。
※ 肥満者の場合、肥満の軽症高血圧では他のリスクを勘案し、特定保健指導の活用も。
(出典:標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
血圧が高くても、すぐに症状は出ないことが多いが、
脳梗塞が増える
血圧レベル別にみた脳梗塞発症率
(久山町研究)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
生活習慣を改善することにより
期待される血圧降下の程度
(出典:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2009)
減塩*1
(平均食塩摂取減少量=4.6g/日)
DASH食*2
減量*1
(平均体重減少量=5.1Kg)
運動*1
(30-60分間の有酸素運動)
収縮期血圧
節酒*1
拡張期血圧
(平均飲酒減少量=76%)
0
2
4
6
血圧減少度(mmHg)
8
*1 メタ解析
*2 無作為化試験
推奨される生活習慣修正項目
減塩 6g/日、野菜・果物の積極的摂取、節酒(エタノール男性20~30ml/日、女性10~20ml/日以下)
減量(BMI25未満)、有酸素運動を中心に毎日30分以上、禁煙
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
血糖高値に関するフィードバック文例集
重症化防止のために治療の有無にも着目して作成
健診判定
空腹時
血糖
異常
受診勧奨
判定値を
超えるレ
ベル
保健指導
判定値を
超える
レベル
正常
基準
範囲内
対応
HbA1c
(NGSP)
126mg/dL
6.5%~
~
肥満者の場合
糖尿病
治療中
非肥満者の場合
糖尿病治療
なし
糖尿病
治療なし
①肥満の改善
と、血糖コント
ロールの改善
が必要*
②すぐに医療
機関受診を
③血糖コント
ロールの改
善が必要
②すぐに医療
機関受診を
④血糖コント
⑤特定保健指
導の積極的な
活用と
生活習慣の改
善を
⑥血糖コン
トロールは
良好、
現在のコント
ロール継続
⑦運動/食生
活等の改善を、
精密検査を
110mg/dL
6.0 % ~ ロールは良好
だが、肥満を
~
6.4%
改善する必要
125mg/dL
あり*
⑧生活習慣の
改善を、リスク
の重複等あれ
ば精密検査を
100mg/dL
5.6 % ~
~
5.9%
109mg/dL
~
99mg/dL
糖尿病
治療中
~5.5%
⑨肥満改善と
健診継続を
⑩今後も継続
して健診受診
を
*治療中でも肥満が是正されていない場合等、保健指導の併用が考慮される。
(出典:標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
脂質異常に関するフィードバック文例集
対応
健診判定
異常
LDL≧180mg/dL
受診勧奨 又はTG≧1,000mg/dL
判定値を
超える
140mg/dL≦LDL<180mg/dL
又は300mg/dL≦TG<
レベル
1,000mg/dL
保健指導
判定値を
超える
レベル
正常
120mg/dL≦LDL<140mg/dL
又は 150mg/dL≦TG<
300mg/dL
又は HDL<40mg/dL
肥満者の場合
非肥満者の場合
①すぐに医療機関の受診を
②生活習慣を改善する努力をした上で、
数値が改善しないなら医療機関の受診を
③特定保健指導の
積極的な活用と
生活習慣の改善を
④生活習慣の
改善を
LDL<120mg/dL
基準範囲
かつTG<150mg/dL
内
かつHDL≧40 mg/dL
⑤今後も継続して健診受診を
(出典:標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
検査値の変化 と 生活習慣
検査値の変化
考えられる生活習慣の例
BMI、腹囲 ↑
過食(食事>運動)
血圧 ↑
塩分過多、喫煙、過量飲酒、運動不足
中性脂肪 ↑
過食(食事>運動) 、糖分過多、過量飲酒、高脂肪食
中性脂肪+γGTP ↑ 過量飲酒
HDL-C ↓
喫煙、運動不足(高中性脂肪)
ALT ↑
過食(食事>運動)、過量飲酒
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
生活習慣病のイメージ
レベル 1
●不適切な食生活
(エネルギー・食塩・脂肪の過
剰等)
●身体活動・運動不足
●喫煙
●過度の飲酒
●過度のストレス
レベル 3
●肥満症 (特に内臓脂肪型肥満)
●糖尿病
●高血圧症
●脂質異常症
レベル 2
●肥 満
● 高血圧
● 高血糖
● 脂質異常
レベル 4
●虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症等)
●脳卒中(脳出血・脳梗塞等)
●糖尿病の合併症(失明・人工透析等)
レベル 5
●半身の麻痺
●日常生活における支障
●認知症
(厚生労働省資料)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
生活習慣改善は万能薬!
低HDL-コレステロール
耐糖能異常
上半身肥満
高血圧
薬物投与のみ
増大
高中性脂肪血症
悪い生活習慣
生活習慣改善
縮小
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
標準的な質問票①
質問項目
1-3 現在、aからcの薬の使用の有無
1 a. 血圧を下げる薬
2 b. インスリン注射又は血糖を下げる薬
3 c. コレステロールを下げる薬
回答
①はい ②いいえ
①はい ②いいえ
①はい ②いいえ
4
医師から、脳卒中(脳出血、脳梗塞等)にかかっているといわれたり、
治療を受けたことがありますか。
5
医師から、心臓病(狭心症、心筋梗塞等)にかかっているといわれたり、 ①はい ②いいえ
治療を受けたことがありますか。
6
医師から、慢性の腎不全にかかっているといわれたり、治療(人工透
析)を受けたことがありますか。
①はい ②いいえ
7
医師から、貧血といわれたことがある。
①はい ②いいえ
8
現在、たばこを習慣的に吸っている。
(※「現在、習慣的に喫煙している者」とは、「合計100本以上、又は6ヶ
月以上吸っている者」であり、最近1ヶ月間も吸っている者)
①はい ②いいえ
たばこ
9
10
11
12
20歳の時の体重から10kg以上増加している。
1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施
日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施
ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速い。
①はい
①はい
①はい
①はい
体重変化
①はい ②いいえ
②いいえ
②いいえ
②いいえ
②いいえ
治療状況
既往歴
身体活動
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
標準的な質問票②
(前ページ続き)
13
この1年間で体重の増減が±3㎏以上あった。
14
人と比較して食べる速度が速い。
15
16
就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上
ある。
夕食後に間食(3食以外の夜食)をとることが週に3
回以上ある。
17
朝食を抜くことが週に3回以上ある。
18
お酒(清酒、焼酎、ビール、洋酒など)を飲む頻度
19
飲酒日の1日当たりの飲酒量
②1~2合未満
清酒1合(180ml)の目安:ビール中瓶1本(約500ml)、 ①1合未満
③2~3合未満
焼酎35度(80ml)、ウイスキーダブル一杯(60ml)、ワ ④3合以上
イン2杯(240ml)
20
睡眠で休養が十分とれている。
21
22
①はい ②いいえ
①速い
②ふつう
③遅い
①はい ②いいえ
①はい ②いいえ
①はい ②いいえ
①毎日 ②時々③ほとんど飲まない
(飲めない)
①はい ②いいえ
①改善するつもりはない
②改善するつもりである
(概ね6か月以内)
運動や食生活等の生活習慣を改善してみようと思い ③近いうちに(概ね1か月以内)改善
するつもりであり、少しずつ始めている
ますか。
④既に改善に取り組んでいる
(6か月未満)
⑤既に改善に取り組んでいる
(6か月以上)
生活習慣の改善について保健指導を受ける機会が
あれば、利用しますか。
体重変化
食事
飲酒
睡眠
改善
意欲
①はい ②いいえ
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
動機付け支援 と 積極的支援
初回支援
特
定
健
診
・
生
活
習
慣
ア
セ
ス
メ
ン
ト
・
個
々
の
課
題
抽
出
・
結
果
説
明
行
動
目
標
設
定
6か月後
積極的支援
面談、通信による3ヶ月以上の継続的支援
セルフモニタリング
動機付け支援
身
体
状
況
・
生
活
習
慣
の
確
認
セルフモニタリング
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
「情報提供」とは?
■対象:健康な人も含めすべての人に対して、健診後におこなう。
■方法:全員に画一的な情報を提供するのではなく、健診結果や問診から
対象者個人の生活習慣の見直しや改善に必要な情報を提供すると
よい。
■例:
☑ 健診の結果をわかりやすくグラフ化。
☑ 現在の生活習慣→将来疾病を引き起こす可能性。
健康的な生活習慣へのご褒美。
☑ 食事バランスガイドや運動指針など、積極的に健康づくりに取り組むこと
ができるような具体的な方法の紹介。
☑ 地域・職域で参加可能な健康づくりサークル、施設紹介など、
身近な情報を盛り込む、など。
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
情報提供(例)
動脈硬化の危険度を示す図
リスクの重なり度
をチェエック
リスク数
35.8倍
発
症
の
危
険
度
5.1倍
5.8倍
1.0倍
0個
1個
2個
3~4個
危険因子の数
検査データの推移
健診・検査のコメント
※自動出力
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
動機付け支援とは?
■対象:メタボリックシンドローム予備群など
■目的:健診結果から自らの生活習慣を振り返り、生活習慣改善の必要性を
理解し、行動目標を立てることができる
■内容:
☑ 内臓脂肪増加と健康状態との関係について理解を深める。
☑ 体重が増加してきた背景(生活習慣)を考える。
☑ 食事・運動などの面で、すぐに実行できる行動目標を立てる。
☑ 「あなたは何からはじめますか?」と問いかけ、行動目標の優先順位をつけ
ていく。実行計画を立てる(次年度健診まで)
■形態:1人20分以上の個別支援、または1グループ80分以上のグループ支援
■評価:6ヵ月後:電話ないし、e-mailで身体状況・生活習慣の確認
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
積極的支援とは?
■対象:主にメタボリックシンドロームと判定された人。
■目的:初回面接で立てた行動目標の達成を支援し、
新たな習慣獲得をめざす。内臓脂肪減量のための行
動目標をどのように実現し、継続するのか、対象者の
生活や支援法について具体的に検討する。
例:3か月~6か月の一定期間、個別面接・グループ
ワーク・実技・実習・IT活用などの支援方法を組み合
わせる。
対象者の利便性を考慮し、継続的に参加しやすい
方法を工夫する。
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
積極的支援における支援形態のポイント数
支援形態
基本的な
ポイント数
最低限の
介入量
上限
120P
個別支援A
5分
20P
10分
個別支援B
5分
10P
5分
グループ支援
10分
10P
40分
120P
5分
15P
5分
60P
5分
10P
5分
20P
●e-mail、FAX、手紙等により、初回面接支援の際に作成し
た行動計画の施状況について記載したものの提出を
受け、それらの記載に基づいた支援
1
往復
40P
1往復
e-mail B
1
往復
5P
1往復
20P
電話A
●e-mail、FAX、手紙等により、初回面接支援の際に作成し
た行動計画の実施状況について記載したものの提出
を受け、それらの記載に基づいた支援
電話B
●行動計画の実施状況の確認と励ましや出来ていることに
は賞賛をする支援
e-mail A
●行動計画の実施状況の確認と励ましや賞賛をする支援
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
積極的支援の概要
特定保健指導における積極的支援では、対象者自らが生活習
慣を振り返り、行動目標を設定し、目標に向けた行動に取り組
むことができるように、特定保健指導の実施者は次の支援を行
うこととされている。
☑ 初回に面接による支援を行うとともに、以後3ヶ月以上の継続的な
支援を行う。
☑ 3ヶ月以上の継続的な支援については、支援A(積極的関与)及び
支援B(励まし)によるポイント制とし、支援Aのみで180ポイント以上、
もしくは支援A(最低160ポイント以上)と支援Bの合計で180ポイント
以上の支援を行うことを最低条件とする。
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
積極的支援例
(面接・電話・e-mail を組み合わせたパターン例)

1ヶ月後
電
話
A
5
分
20
分
中電
間話
評 A
価
20
分
B
1
往
復
5P
B
1
往
復
支援A:計画の進捗状況の評価など
支援B:励ましや賞賛など
60P
支援A
160P
個
別
支
援
A
6
ヶ
月
後
の
評
価
10
分
次
年
度
健
診
結
果
で
の
評
価
)
)
10P
6ヶ月後
(
電
話
B
3ヶ月後
e-mail
20 又 80
分は分
の の
個 グ
別 ル
支 ー
援 プ
支
援
2ヶ月後
(
2週間後
e-mail
初回面接
60P
+
5P
支援B
20P
40P
=
合計
180P
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
「支援」において求められる、心のうごき、気づき
健診結果の理解=自分の体の中で起こっている変化を理解
あっ!そうか!(納得)
やらないとまずいな!(危機感)
心のうごき・気づき
☑
☑
☑
☑
食生活
運動・身体活動
改善のノウハウ
社会資源の情報
何からはじめますか?
行動目標設定
Positive feedback
行動変容
できた!(自信・達成感)
体調がいいな!(感覚)
実行支援
評価・励まし
習慣形成
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
行動変容を促すために・・・
危機感
行動のきっかけ
応援
デメリット
困難さ
痛み、不安
メリット
有益性
行動変容
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
<事 例:45歳男性>
【特定健診結果】
身長
体重
BMI
腹囲
血圧
空腹時血糖
HbA1c(NGSP)
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
AST
ALT
γ-GT
166.0
76.2
27.7
89.6
135/74
88
5.6
39
110
165
17
16
50
cm
kg
kg/m²
cm
mmHg
mg/dL
%
mg/dL
mg/dL
mg/dL
U/L
U/L
U/L
【標準的な質問票結果】
服薬:なし
既往歴:なし
喫煙習慣: 10~20本/日
飲酒習慣:時々(2~3合)
体重変化:20歳から10㎏以上増加、最近1年間で3㎏以上増加
運動習慣:なし
食習慣:食べる速度が速い
生活習慣改善意欲:「改善するつもりはない」
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
「対象者を理解するシート」
大切にしていること
健康観
健康エピソード
身近な人の病気
仕事
家庭
地域
趣味・仲間
食生活
運動
喫煙
その他
生活
背景
生活
習慣
身体
状況
(出典:津下 一代著; 初回面接~心を動かす言葉とその伝え方~)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
「対象者を理解するシート」の活用
生活
背景
生活
習慣
身体
状況
大切にしていること
健康観
健康エピソード
身近な人の病気
仕事
家庭
地域
趣味・仲間
食生活
運動
喫煙
その他
事務職
飲酒(時々2~3合)
早食い
運動習慣なし
無関心期
無関心期
10本~20本
・20歳から10㎏以上
体重増加
・1年間で3㎏以上
増加
BMI
27.7kg/m2
腹囲 89.6㎝
γ-GTP
50 IU/l
中性脂肪
165mg/dl
HDL-C
39mg/dl
HbA1c(NGSP)
5.6%
36
血圧
135/74mmHg
津下 一代著; 初回面接~心を動かす言葉とその伝え方~
行動変容ステージモデルとは?
適切な行動が
6ヶ月以上継続
適切な行動をはじめる
(6ヶ月以内)
本人なりの行動変化
維持期
必要を感じている
・病識なし
・行動変化を考えない
実行期
(行動期)
準備期
関心期
(熟考期)
無関心期
(前熟考期)
○行動の継続支援
○モニタリングとサポート
○自立に向けた計画作り
○行動目標・計画の設定支援
○行動変容の評価
○セルフモニタリング
○セルフケア
○状況の変化など逸脱
○要因への対応
○結果の評価
○行動変容による利益や
価値を明確にしていく
○気づきを促す
○関心がない理由・ 抵抗する要因を整理する
(出典 :津下 一代著 相手の心に届く保健指導のコツ)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
無関心期の対象者への保健指導
☑
☑
☑
☑
☑
検査結果で身体に負担がかかっていることを知らせる。
検査結果の推移で身体の中の変化を実感してもらう。
家族の病歴を聞く。
忙しい生活の中でも実現可能な提案をする。
別の健康法に関心がある場合、相手を肯定した上で、
本人がそれを客観的に評価できるように促す。
☑ 病歴などを聞きつつ相手の気持ちを解きほぐす。
☑ 何かがきっかけになって行動変容への意欲が向上することがある。
健康行動をとりやすい環境づくり、きめ細かな健診結果の通知も重要。
検査結果の推移をグラフ化すること
で、悪化しつつある項目や改善しつつ
ある項目に注意が向く。
(出典:標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)/津下 一代著 相手の心に届く保健指導のコツ)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
正常値範囲内での変化にも着目し、同性・同年齢平均と比較する
特定健診データから見た性・年齢別平均値(肥満度・血圧)
[kg/m2]
収縮期血圧
[mmHg]
BMI
26
140
135
25
131
130
24
24.0
24.0
23.9
23.8
23.6
23.4
23
22
22.1
21.9
21.6
22.6
22.4
22.3
23.4
22.8
120
110
123
128
126
123
119
115
112
男性
女性
105
女性
100
20
40~44
歳
45~49
歳
50~54
歳
55~59
歳
60~64
歳
65~69
歳
40~44
歳
70~74
歳
[cm]
45~49
歳
50~54
歳
[mmHg]
腹囲
90
88
86
84
82
80
78
76
74
72
70
121
115
男性
21
126
125
133
132
132
130
55~59
歳
60~64
歳
65~69
歳
70~74
歳
拡張期血圧
90
85
84.0
76.5
84.7
77.5
84.9
78.8
85.0
80.1
84.8
80.9
84.4
81.9
84.7
83.0
80
75
男性
女性
70
79
80
69
80
78
76
71
81
73
74
75
77
75
75
男性
65
女性
60
40~44
歳
45~49
歳
50~54
歳
55~59
歳
60~64
歳
65~69
歳
70~74
歳
40~44
歳
45~49
歳
50~54
歳
(特定健診NDB 平成22年度 全国、性・年齢区分別平均値より)
55~59
歳
60~64
歳
65~69
歳
70~74
歳
2013年度 津下班 コアスライド
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
正常値範囲内での変化にも着目し、同性・同年齢平均と比較する
特定健診データから見た性・年齢別平均値(糖・脂質代謝)
[mg/dl]
[mg/dl]
空腹時血糖
110
105
105
95
90
106
102
100
104
103
96
91
150
95
93
96
97
96
139
75
101
133
107
127
123
112
110
男性
女性
82
50
40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
[mg/dl]
[mg/dl]
HDL
80
LDL
160
75
150
70
71
72
70
68
65
60
55
144
92
70
80
144
110
90
男性
女性
85
70
137
130
99
89
中性脂肪
170
57
58
58
58
58
140
66
64
58
57
130
120
110
125
126
117
128
125
133
133
124
123
130
120
男性
100
45
女性
90
男性
80
女性
40~44
歳
45~49
歳
50~54
歳
55~59
歳
60~64
歳
65~69
歳
70~74
歳
117
109
50
40
126
40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74
歳
歳
歳
歳
歳
歳
歳
(特定健診NDB 平成22年度 全国、性・年齢区分別平均値より) 2013年度 津下班 コアスライド
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
支援開始時の生活習慣改善意欲ステージは
1年後の体重減少と関連なし
積極的支援開始時の生活習慣改善意欲ステージ別に
1年後の体重減少率、4%減量達成率を比較(n=948)
体重減少率(%)
3.4
3.5
3.0
2.6
3.2
2.6
2.6
2.5
4%減量達成率(%)
50.0
41.0
40.0
2.0
30.0
1.5
20.0
1.0
28.1
35.6
34.3
実行期
維持期
30.1
10.0
0.5
0.0
0.0
無関心期
関心期
(n= 84
196
準備期
345
実行期
73
維持期
無関心期
関心期
250)
(n= 84
196
準備期
345
73
250)
2009年度 津下班 (生活習慣病予防による医療費適正化効果に関する研究)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
実際にどうやって目標を考えるのか
目標設定:「1ヶ月で1kg減量」
「体脂肪1kgには、約7000kcalの貯蓄あり」
「1ヶ月で7000kcal 収支を減らす」
「1日で230kcal(7000÷30=233.33・・・) 収支をマイナスに」
出
入
(摂取)
(消費)
入
(摂取)
出
(消費)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
摂取エネルギーを減らす(例)
飲み物からとる糖分の目安
ノ
ン
カ
ロ
リ
ー
のどが渇いた
ら、砂糖をゴク
ゴク飲んでる?
カ
ロ
リ
ー
オ
フ
※清涼飲料水のエネルギー量を砂糖のエネルギー量に置き換えて表示
注)「カロリーオフ」でも、100mlあたり20kcal以下のエネルギー量があります。
「ノンカロリー」でも、100mlあたり5kcal未満のエネルギー量があります。
参考)厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知:
栄養表示基準等の取扱いについて,平成17年7月1日食安新発第0701002号改定
(参考)生活習慣病予防のための食べ方ナビゲーション たべナビ君 吉池信男、玉川ゆかり、中神聡子共著(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
消費エネルギーを増やす(例)
(出典:健康づくりのための運動指針2006)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
何らかの生活習慣が改善した人は減量に成功している
(%)
p<0.001
p<0.001
50.0
(n=4,126)
39.9
40.0
50.0
38.6
40.0
25.4
30.0
26.9
30.0
20.0
20.0
10.0
10.0
0.0
(n=1,867)
0.0
運動改善あり
改善なし
身体活動改善あり
標準問診10:1回30分以上の運動、週2回1年以上
標準問診11:歩行又は同等の身体活動1日1時間以上
p<0.001
p=0.002
(n=2,924)
50.0
27.0
30.0
(n=547)
50.0
40.0
34.4
40.0
改善なし
38.5
30.0
20.0
20.0
10.0
10.0
20.9
0.0
0.0
歩行速度改善あり
食速度改善あり
改善なし
標準問診14:人と比較して食べる速度が速い
標準問診12:同性、同年代と比較して歩く速度が速い
50.0
40.0
30.0
p=0.003
(n=1,236)
21.0
20.0
10.0
10.0
0.0
0.0
改善なし
標準問診17:朝食を抜くことが週3回以上ある
χ2検定
31.0
30.0
20.0
朝食改善あり
p=0.017
50.0
40.0
29.9
改善なし
飲酒頻度改善あり
(n=2,516)
25.7
改善なし
標準問診18:お酒を飲む頻度
厚生労働科学研究:津下班 平成24年度報告書より 生活習慣病予防活動・疾病管理による健康指標に及ぼす効果と医療費適正化効果に関する研究
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
行動目標設定のポイント
1. 健康状態の改善につながる目標であること
2.具体的であること (頻度、持続時間などを数値化)
3.できたか、できなかったか明確に評価できること
4. 2-3個の目標に絞る
5. 7-8割 達成できそうな内容
6.セルフモニタリングに関する目標を入れること
(体重測定、歩数記録など)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
セルフモニタリングの効果
変化を視覚化する
生活習慣と身体変化の関連を
実感できる
生活習慣改善の動機づけになる
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
2回目以降の対象者への支援
(確認ポイント)
☑ 前年度の目標や達成状況
1回目の支援で本人がどんな知識を得たのか、
どのような目標を立てたかを対象者と共に確認。
☑ 前年度からの検査データの変化
☑ 前年度の保健指導終了後からの取組み状況
☑ 2回続けての保健指導利用に対する期待や不安
(出典:標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編
まとめ
☑ 問診結果、検査値を組み合わせて評価し、
生活習慣と検査結果の関連を理解する。
☑ メタボの概念を活用することによって
「生活習慣 → 内臓脂肪蓄積 → 検査値異常 → 疾患発症」
の流れが明確になり、
対象者の生活習慣改善の動機づけになる。
☑ 対象者の状態(年齢、性格、家庭環境、職場環境、
行動変容の準備状態、健康に対する価値観等)
にあった行動目標設定を支援する。
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編