講演題目 回転超流動3Heの基礎研究 ~バルク及び平行平板間制限空間中の3He~ 36114 片岡 祐己 久保田 研究室 渦間に斥力が働き、これとマグナス力との競合で渦は格子を組む. 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 1/13 超流動3He 液体3Heの相図(T< 3 mK) 帯磁率 χ χN B A N 1 主な実験の舞台 1 33 MPa(ξ0 圧力 =10nm) T 温度02 mK (T/Tc TAB =TC0.8) 超流動3He-A χ A χN 超流動3He-A 超流動3He-B 常流動3He (高温高圧側) (低温側) TF ~ 1 K スピン3重項 (S 1) 超流動A相 超流動B相 1 2 S 1 L 1(p) ,3(f), p波 (L 1) 超流動3Heのクーパー対 Δ2 0 Δ Δ const. フェルミ球 2 2 B Δ ΔA sin θ 等方的 異方的 2 2 2 p波スピン3重項 (L S 1) 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 2/13 超流動3He-Aの特徴 p波スピン三重項クーパー対 LS 1 Lz 1,0,1 Sz 1,0,1 内部自由度 秩序変数の空間変化 33 9 内部自由度のある異方的超流動体 内部自由度が顕著になる条件 境界 磁場 回転 異方的 秩序変数は 軌道とスピンの異方軸を表わす 二つの単位ベクトル である 境界+磁場 → 織目構造 織目構造+回転 → 多彩な量子渦 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 3/13 超流動3He-Aの秩序変数 9成分複素秩序変数 ˆ inˆ )j ( e i φ ) Aij dˆ i (m ˆ nˆ lˆ m 秩序変数(3×3行列)の空間変化は ベクトル場 ˆl と dˆ の局所的配向で 記述可能 lˆ 波数空間 ˆ n ˆ m 実空間 lˆ ˆl (軌道状態) ξ0 10 85nm クーパー対の軌道角運動量の方向の単位ベクトル dˆ(スピン状態) dˆ クーパー対のスピンに垂直な方向の単位ベクトル (スピン波の進行方向の単位ベクトル) と が縮退 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 4/13 超流動3He-Aの秩序変数の配向 基底状態の配向 双極子双極子相互作用(バルク) dˆ ˆl 実験空間による配向 壁との境界条件 自由空間中(バルク) ˆl dˆ ˆl dˆ 壁の近傍 ˆl ˆl wall ˆl 磁場による配向 磁化の異方性 ˆ dˆ H ξ0 磁場中 ˆ H dˆ dˆ その他 ˆl の剛性 ˆl uniform 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 5/13 超流動3He-Aの秩序変数の空間変化 秩序変数の配向 dˆ ˆl ˆl wall ˆ ˆl uniform dˆ H 壁の近傍 H Hd ˆl ˆ d ξd 秩序変数の空間変化の 特徴的な物理量 特徴的な長さ ξd 0.01 mm 特徴的な磁場の大きさ H d 2 mT ˆ H ˆ H d ˆ になる 一様にdˆ H H exp ( 25 mT ) H d Lexp ξ D 自由空間(バルク) rexp ( 1.5 mm ) ξd Lexp ~ ξ D 制限空間 hexp ( 0.012 mm ) ~ ξd 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 6/13 超流動3He-Aの核磁気共鳴 核磁気共鳴はスピン状態 dˆ を検出 自由空間中 θ 0 0 実際の実験空間 共鳴周波数のずれ ˆl ˆ d 2 ΔA (T) Δf cos2θ fL f L exp 700 - 900 kHz f L γH ˆl H Hd 半径1.56 mm>>ξD(= 0.01 mm) 期待される核磁気共鳴吸収信号 dˆ 核磁気共鳴吸収 θ 90 0 薄い平板空間中 θ 90 0 実際の実験空間 ˆl ˆ H H d d ξd fL 間隔 0.012 mm ~ ξD(= 0.01 mm) θ 00 ΔA (T) ( 1) fL 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 Δf 0 7/13 ΔA (T) ( 1) fL 核磁気共鳴周波数のずれから見た超流動3Heの相変化 各相の核磁気共鳴周波数のずれ Δf 0 超流動A相 Δf ΔT cos2θ Frequency Shifts (kHz) 自由空間中 5 4 3 2 1 0 0.65 5 4 3 2 1 0 0.65 B 0.70 A 0.75 B 0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 N 1.00 1.05 Δf 0 超流動B相 薄い平板空間中 冷却過程 Frequency Shifts (kHz) 常流動(N)相 0 -1 -2 -3 -4 -5 0.65 B 0.70 A 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 冷却過程 N 1.00 1.05 0 -1 -2 -3 -4 3-5 結論 A N 2つの異なる一様な織目構造を実現 B A N →最も顕著に異方的超流動 He-Aの内部自由度が顔を出した例 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05 Reduced Tempareture T/TC 自由空間中の織目構造 加熱過程 Reduced Tempareture T/TC 加熱過程 薄い平板空間中の織目構造 θ 90 0 θ 00 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 8/13 回転超流動3He-A 自由空間中の回転超流動3He-A ~高速回転下(3rad/s<Ω<6.28rad/s)の渦~ 今まではΩ<3rad/sまでしか研究されていない 制限空間中(薄い平板空間中)の回転超流動3He-A ~循環の量子数が1/2の渦~ 循環 κ vs ds κ0 n 量子渦 n 1,2, 1 n 2 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 9/13 回転超流動3He-Aの核磁気共鳴 回転容器の中 ˆ H ˆ Ω ˆ H d ˆl dˆ 核磁気共鳴から得られる情報 核磁気共鳴 Ω0 信号の位置→渦の構造 信号の強度→渦の数 κ ξD θ 0o ˆl dˆ ˆl dˆ ˆ ˆ ,Ω 半径ξ Dの外側 ˆl dˆ H ˆ ???? ˆ ,Ω 半径ξ Dの内側 dˆ H 0 渦の信号 渦以外の信号 Δf 渦の構造の理論的予測の一例 CUV R. Blaauwgeers et al.; Nature 404 473 (2000) continuous dipole unlocked vortex ˆ ( H )Ω ˆ H d 渦の詳細な構造 核磁気共鳴のみではわからない. 理論計算との対応が必要. 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 10/13 自由空間中の回転超流動3He-A① 超流動A相における加速・減速過程 測定条件 Ω 測定解析結果 0.5 2π 0 0.8 IV / ITOT 0.4 Τ ΤC 1 NMR absorption (arb.units.) 解析方法 0.3 0.2 0.1 0.0 0.1 rad/s 6.28 rad/s 0.0 0.5 1.0 Frequency shift (kHz) 1.5 ITOT IV 2 0 1 2 3 4 5 Rotation velocity (rad/s) 6 結論 同じ回転速度では加速過程より 減速過程の方が渦の数が多い 渦の生成臨界回転速度が存在? 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 11/13 自由空間中の回転超流動3He-A② 常流動相から超流動A相に相転移した時の履歴の違いが効くか? 測定条件 測定解析結果 Ω ΩTC 6.28rad/s 0.5 6.28 0 0.8 1 Τ ΤC Ω 6.28 0 ΩTC 0rad/s 0.8 1 Τ ΤC IV / ITOT 0.4 0.3 0.2 実線 0.11438Ω2/3 破線 0.07417Ω 0.1 0.0 0 1 2 3 4 5 Rotation velocity (rad/s) 結論 超流動転移時の履歴(回転速度)の違いで渦が異なると期待される 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 12/13 6 まとめ 静止下の結果 自由空間中と制限空間中(薄い平板空間中)で 異なる一様な織目構造を実現 →内部自由度のある異方的超流動体 回転による自由空間中(バルク)の渦状態の結果 渦の生成消滅にヒステリシス 渦の生成臨界回転速度が存在? 超流動転移時の履歴(回転速度)によって, 生成される渦が異なると期待される →Ω=6.28rad/sという新奇な回転速度がもたらした 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 13/13 自由空間中の回転超流動3He③ 回転方向の違いによる差 測定解析結果 測定条件 0.5 Ω ΩMAX IV / ITOT 0.4 1 0 0.8 1 0.3 0.2 加速過程 0.1 Τ ΤC 0.0 -1 0 1 2 3 4 5 Rotation velocity (rad/s) 6 0.5 ○:Ω>0 +:Ω<0 結論 回転方向による差は見られず IV / ITOT 0.4 0.3 0.2 減速過程 0.1 0.0 0 1 2 3 4 5 Rotation velocity (rad/s) 2004.07.物質系輪講ⅠB@物質系講義室 6 1/12 3He原子と電子 3He原子 統計性 フェルミ粒子 電荷 0(中性) 質量 5e-27 kg フェルミ温度 1K 粒子間相互作用 長距離ファンデルワールス引力 +短距離ハードコア斥力 電子 統計性 フェルミ粒子 電荷 1.6e-19 C 質量 9.1e-31 kg フェルミ温度 10 4 - 10 5 K 粒子間相互作用 長距離クーロン斥力 2004.07.物質系輪講ⅠB@物質系講義室 1/12 超流動3Heと金属超伝導 超流動3He 金属超伝導 クーパー対 クーパー対 P波スピン3重項 S波スピン1重項 コヒーレンス長 •コヒーレンス長 ~ 103 nm 10 - 85 nm 対形成の起源 •対形成の起源 パラマグノン? フォノン 超流動転移温度 ~ 10 -3 K 重い電子系の超伝導 例 PsOs4Sb12 •超伝導転移温度 ~K 2004.07.物質系輪講ⅠB@物質系講義室 1/12 自由空間中の回転超流動3He③ 回転下で常流動相から超流動A相に相転移した後 の温度変化 測定解析結果 0.60 測定条件 0.55 0 0.8 1 Τ ΤC 2 1 Rt =dfsate./dfmain Ω ΩMAX 0.50 0.45 0.40 0.35 0.30 0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 Reduced Tempareture T/Tc ○ 冷却過程 * 加熱過程 2004.07.物質系輪講ⅠB@物質系講義室 1/12 1.00 実験 実験空間 核断熱消磁回転冷凍機 配置 断熱消磁 Pt 帯磁率温度計 銅の核スピン温度 58 n K S 薄い平板空間 B 9T 自由空間 3He融解圧温度計 熱浴(銅) 薄い平板空間 T 自由空間 回転 銅 間隔 0.01 m(~ξD)で シートを積み重ねた 円柱形 直径 3(>>ξD) mm 高さ 6 mm Ω MAX 2π rad/s 2004.07.物質系輪講ⅠB@物質系講義室 1/12 超流動3He-Aの秩序変数とその配向 9成分複素秩序変数 Aij ˆ inˆ )j ( e i φ ) Aij Δ dˆ i (m ˆ nˆ lˆ m ΔT 0 1mK 秩序変数の配向 壁との境界条件 ˆl wall 3 f h fd f g )を最小化 秩序変数 Aは ˆl と dˆ と φ に依存 F d r ( ˆl(軌道状態) 双極子双極子相互作用 クーパー対の軌道角運動量の 方向の単位ベクトル dˆ(スピン状態) スピン波の進行方向の単位ベクトル φ(位相) ˆl のまわりの m ˆ とn ˆ の回転 1 λd (dˆ ˆl )2 2 磁化異方性 fd fh dˆ H 1 λh (dˆ H) 2 2 ˆl の剛性 f g f g ( , ˆl ) dˆ // ˆl ˆl uniform 2004.07.21物質系輪講ⅠB@物質系大講義室 1/12 回転超流動3He-Aの量子渦 既知なる渦( Ω 3rad/s ) CUV VS SV LV1,LV2,LV3 超流動3He 多成分秩序変数 超流動4He,従来の超伝導体 単一秩序変数 未知なる条件 高速回転( Ω 3rad/s ) 制限空間 (厚み 10μm の薄い平板空間) 絶対零度近傍( T 0 K ) 超流動転移点近傍 ( ΔTT 10 6 ~ 10 11 K ) C 強磁場 2004.07.21 物質系輪講ⅠB @物質系大講義室 1/12 理論的な渦相図
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