1/34 ベータ崩壊における 時間反転対称性の検証 織田勧 東京大学CNS 浜垣研D2 2006年12月1日(金) 若手コロキウム 2/34 ベータ崩壊における時間反転対称 性の検証の何が面白いのか 標準模型を超える事象を見つける。 宇宙の物質・反物質の非対称性の起源を理解 する。 – サハロフの3条件 CP対称性の破れ(T対称性の破れ) バリオン数の破れ 熱力学的な非平衡過程が必要。 実は卒業研究でやろうとして、足元にも及ばず 跳ね返されました。 – なかなか大変です。 アンドレイ・サハロフ 3/34 1.導入 ベータ崩壊とは Lorentz不変性のみ要求した最も一般的なハミルトニアン 時間反転対称性とは 物理量の変換性 ハミルトニアンが変換に対して不変なら ベータ崩壊で電子とニュートリノの運動量とスピンと、原子核のス ピンを測る場合 β崩壊におけるP対称性の破れ, 係数A CP対称性の破れ K中間子 CP対称性の破れ B中間子 sin(2f1) T対称性の破れ K中間子 いろいろなβ崩壊をたくさん測った結果 逆に言えば未知の物理の探索に使える 4/34 ベータ崩壊とは 崩壊 ( Z , A) ( Z 1, A) e e 崩壊 ( Z , A) ( Z 1, A) e e 軌道電子捕獲( Z , A) e ( Z 1, A) ve 弱い相互作用だけなら 日本語版Wikipediaより 5/34 Lorentz不変性のみ要求した 最も一般的なハミルトニアン Scalar Vector Tensor Axial vector Pseudo scalar J.D.Jackson et al., PR106(1957)106. 6/34 時間反転対称性とは C : 荷電共役変換 粒子→反粒子 P : 空間反転 r→-r T : 時間反転 t→-t CPT定理 – Any Lorentz invariant local quantum field theory with a Hermitian Hamiltonian must have CPT symmetry. 粒子と反粒子の質量は等しい。 粒子と反粒子の電荷は符号は反対で大きさは等しい。 粒子と反粒子の寿命は等しい。 – CP対称性が破れたら、T対称性も破れる。 7/34 物理量の変換性 P変換 T変換 座標x 運動量p 角運動量L(=px) L・p p・q L・(Jxp) L・(pxq) 8/34 ハミルトニアンが変換に対して 不変なら 空間反転に対して不変なら – Ci’=0 荷電共役変換に対して不変なら – Ci=実数、Ci’=虚数 時間反転に対して不変なら – Ci, Ci’=実数 9/34 ベータ崩壊で電子とニュートリノの運動量と スピンと、原子核のスピンを測る場合 J.D.Jackson et al., NP4(1957)206. 10/34 β崩壊における P対称性の破れ, 係数A 呉健雄 T.D.Lee and C.N.Yang, PR104(1956)254. C.S.Wu et al., PR105(1957)1413. (GT) 60Co(5+)60Ni(4+) g(E2) 60Ni(2+) g(E2) 60Ni(0+) β:0度と180度 磁場の向きを変えた γ:0度と90度 11/34 CP対称性の破れ K中間子 KL J.H.Christenson et al, PRL13(1964)138. KSとKLはK0(ds-bar)とK0bar(d-bars)の混合状態でCP の固有値が+と-。 KL(CP=-1)pp(CP=+1) 12/34 CP対称性の破れ B中間子 sin(2f1) Belle KEK PRL 87 (2001) 091802 BaBar SLAC PRL 86 (2001) 2515 13/34 T対称性の破れ K中間子 CPLEAR, PLB444(1998)43. K 0 K 0と K 0 K 0とで移り変わる速さが違う。 PDG, JPG33(2006)1 14/34 いろいろなβ崩壊をたくさん測っ た結果 V-A型 β崩壊(uクォークとdクォークの系)においてT対 称性(CP対称性)の破れは非常に小さい。 15/34 逆に言えば未知の物理の探索 に使える KVI Trimp Theory group master’s thesis Marc van Veenhuizen emiT collaboration, PRC62(2000)055501. Final State Interaction due to weak magnetism 16/34 2. いままでの実験 係数D –n – 19Ne 係数R – 8Li 17/34 係数Dを測る 始状態の核が偏極していること 終状態の核の反跳を測れること – ニュートリノの代わり 18/34 実験例1 中性子陽子・電子・反 電子ニュートリノ(半減期614秒) emiT @NIST Center for Neutron Research – http://ewiserver.npl.washington.edu/emit – PRC62(2000)055501 – 20MW重水炉 京大研究用原子炉5MW – データ収集時間~2400時間 – 40K 19/34 実験例1 中性子(つづき) 電子:プラスチックシンチレーター 陽子:PINダイオード 20/34 実験例1 中性子(つづき) Dn=[-0.6 +/- 1.2(stat) +/- 0.5(syst)]x10-3 世界平均 – Dn=[-5.5 +/- 9.5]x10-4 – Phase of gA/gV=180.073 +/- 0.12 (deg) ILL Grenoble, PLB581(2004)49. – – – – Dn=[-2.8 +/- 6.4(stat) +/- 3.0(syst)]x10-4 50日間 58MW重水炉 25K 21/34 実験例2 19Ne19F+e++e (半減期=17.3秒) F.P.Calaprice et al., Princeton Univeristy PRL52(1984)337 19F(p,n)19Ne, SF6ガス Stern-Gerlach磁石で偏極させる。 – 磁場勾配 Frank. P. Calaprice 130時間 22/34 実験例2 19Ne(つづき) 検出器 生成装置 23/34 実験例2 19Ne(つづき) D=(4 +/- 8)x10-4 以前の結果と合わせると – D=(1 +/- 6)x10-4 n pe e 19 Ne19 Fe e K 0 p m m K p 0 m m ne e Current Limits (x10-3) ILL ‘04 0 .3 0 .7 J n pe p p 0.1 0.6 J Ne p e p F Princeton ‘84 BNL ‘80 1.7 5.6 pm pp m 3.3 3.7 pm pp m 110 100 J p e p n KEK ‘02 FNAL ‘88 24/34 係数Rを測る 始状態の核が偏極していること 電子のスピンを測る – Mott散乱 25/34 実験例3 8Li(半減期838ms) R.Huber et al., PRL90(2003)202301. PSI, polarized deuteron beam(0.9mA, 10MeV) 5mm diameter 99.9% 7Li rod 7 Li(d , p) 8 Li 8 Li8 Be e- e 26/34 実験例3 8Li(つづき) Pb analyzer foil 27/34 実験例3 8Li(つづき) CT CT ' R Im CA 1 3 R=(0.9 +/- 2.2)x10-3 RFSI=0.7x10-3 with 10% accuracy Q=+/-2/3e, spin-0(scalar) leptoquark – mLQ>560GeV/c2 28/34 Leptoquark search at ZEUSHERA (e+p sqrt(s)~300GeV) Phys.Rev. D68 (2003) 052004. D0, CDF, Tevatron, FNAL 低エネルギーの実験の方がより良い下限を与えている。 29/34 わたしの卒研(京都大学2002 年度) F.P.Calapriceたちと同じように19Neで係数Dを測定したいと思いまし た。 19Neの生成、偏極、測定 ごついガス循環装置を作るわけには行かないので、テフロン粉末 (CF2)を標的に使いました。 タンデム加速器の12MeVの陽子ビームを使い(p,n)反応で19Neを 作りました。 – 100nA, 12MeVで毎秒約108個の19Neが生成される。 粉末中から19Neはガスとして出て来ました。 出て来た19Neを借物の5mm四方の口の開いた永久磁石でできた 四重極磁石で偏極させる予定でした。 – |dB/dx|=150T/m 容器を液体窒素温度に冷やして、速度を遅くして、偏極度を上げる 予定でした。 http://www-nh.scphys.kyoto-u.ac.jp/~hal/bird/p3_2002/happyoukai.html n 30/34 31/34 19Neが良いのは スピンが1/2で0でない F(フッ素Z=9, A=19)は同位体がない Fに10MeVの陽子ビームを照射した時に生成さ れるバックグラウンドとなるのは 15O(19F(p,n+a)15O)だけ 標的となる物質が存在する, SF6, CF2 Zが小さい 気体 こういう性質の原子核はなかなかない(はず) 32/34 3. これからの実験 KVI – TRImP • KVI goes for • 21Na (3/2+3/2+ ; t1/2=22.5 s) • 20Na(2+ 2+ + a/g ; t1/2 =0.5 s) ( Rate of in-trap decays 105/s) (1/2+1/2+ ; t1/2=17.3 s) 23Mg (3/2+3/2+ ; t =11.3 s) 1/2 19Ne http://webdoc.kvi.nl/public/pub_doc/ Penning trap RIKEN – 立教・理研・東工大 Barkley 液体窒素・supersonic gas jet http://weak0.physics.berkeley.edu/weakint/research/ne on/index.html laser cooling and atom trapping などなど – ベータ崩壊するRIを作るのは簡単だけど偏極させる のは大変ですよね。 33/34 http://www.ne.rikkyo.ac.jp/~jiro/presen/ne-collo-03-pre.ppt http://triac.kek.jp/events/2ndSSRI/pdf/S3-4murata.pdf http://www.rikkyo.ac.jp/~jiro/subfiles/files/RIBF2006.pdf 34/34 4. まとめ ベータ崩壊における時間反転対称性の 検証は未知の物理への窓と言える。 多くの巧妙な実験が行なわれてきた。 今後の進展にはRIを偏極させる技術の ブレークスルーが必要だろう。 補足スライド EDM(電気双極子モーメント) Laser optical pumping PRC52(1995)R464 – 36K J=2, EC ガス標的と偏極ビームは? 偏極陽子ビーム CF4ガス標的 偏極移行 弱い磁場 Depolarization CF4 + Time projection chamber とか 参考文献一覧 http://www.cns.s.utokyo.ac.jp/~oda/P3/article.html nucl-ex/0605029 2002年度P3卒論 – http://www-nh.scphys.kyotou.ac.jp/~hal/bird/p3_2002/2002P3b.pdf – http://www-nh.scphys.kyotou.ac.jp/~hal/bird/p3_2002/
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