乳幼児の心の世界 第3回 子どもの発達(2): 愛着関係の発達 授業資料について 以下のURLに過去の授業資料をアップロードし ます – http://www006.upp.so-net.ne.jp/ito_h/EP/ やむをえず欠席した場合には,授業資料の末尾 にあるミニレポートのテーマを見て,後日,ミニレ ポートを提出してください ミニレポートの解説 1. 発達の成熟優位説、学習優位説、相互作用説 について、それぞれ根拠となる例を挙げながら 説明せよ – 発達の成熟優位説は、生物学的要因による成熟が 環境要因による学習よりも重要であるとする立場で あり、歩行能力や言語能力の発達において、一定の 段階まで成熟が進みレディネスが形成されなければ、 どれだけ経験を積んでも学習が成り立たないことを 根拠としている ミニレポートの解説 – – 学習優位説は、学習が成熟よりも重要であるとする 立場であり、社会的環境から隔絶されて育った野生 児において、社会生活に必要な能力の発達が著しく 遅れていることなどを根拠としている 相互作用説は、成熟と学習の相互作用によって発達 が成立するという立場であり、身長・発語などはより 成熟の影響が大きく、絶対音感・外国語音韻などは より学習の影響が大きいことなどから、特性によって 成熟と学習の影響の比率が異なるが、いずれの特 性もある程度の成熟と学習を必要とすると論じてい る ミニレポートの解説 2. エリクソンの心理社会的発達理論における乳 児期から老年期までの発達課題について説明 せよ – – 乳児期は、基本的信頼感が発達課題となり、養育者 との相互作用の中で他者に対する信頼感を形成して いくが、養育者の応答性が低かったり、行動の一貫 性が低いと、信頼感を形成できず、後の対人関係も 不信に満ちたものになる 幼児期前期は、自律性が発達課題となり、トイレット トレーニングや衣服の着脱などのしつけを通して、自 律性の感覚を身につけていく ミニレポートの解説 – – – 幼児期後期は自発性が発達課題となり、主に遊びの 文脈において、自発的に自分の行動の計画を立て たり目標を設け、それを達成しようと努力する 児童期は勤勉性が発達課題となり、学校生活を通し て、知的能力や社会的ルールを習得していくが、一 方で友人との比較により劣等感を感じる 青年期はアイデンティティの確立が発達課題となり、 自分の能力や適性を理解した上で、社会の中で自分 がどのような役割を果たして生きていくのかを深く考 え、アイデンティティを確立していく 今日の流れ 愛着関係の始まり 愛着関係の発達 愛着と対人関係 愛着関係の始まり 愛着とは ボウルビィ(1969)によって提唱された概念 恐怖や不安、恐れなど、個体がネガティブな心 的状況におかれた際に、他の個体に接近・接触 するなどして心的安定を回復しようとする行動制 御システム – 例:知らない人が訪問すると、母親にしがみつく 生理的早産と愛着 生理的早産のため、人間の乳児は他者の援助 がなければ生きていくことができない – – そのため、他者とのコミュニケーションに必要となる 様々な能力を生得的に備えている そうした能力を利用してコミュニケーションを行うこと で、他者との愛着関係を築いていく 大人を引きつける乳児 泣き – – – – – 暑さ、空腹、痛みなど、さまざまな不快を泣きで表現 泣きによって母親を引きつけ、不快を解消してもらう 生存可能性を高めるための重要な機能 乳児の不快の源を探し出す母親の努力とその成功 によって、母親は有能感を、乳児は信頼感を得る 時として、虐待の原因にもなる 大人を引きつける乳児 微笑 – – – 生後間もなく出現する微笑は顔面の引きつりによる 生理的微笑であり、社会的な意味合いはない 生後3ヶ月ごろになると、周囲の働きかけに応じて社 会的微笑が生じるようになる 微笑によって母親は有能感を得ることができる 大人を引きつける乳児 社会的注視 – – – 生まれて間もない頃から人間の顔を注視する 母親の養育の動機づけを高める 1歳頃には、意図的に母親の顔を見つめるようになり、 特に曖昧な状況下で頻繁に生じる(社会的参照) 例:見慣れないおもちゃに遭遇したとき 愛着関係の発達 愛着の個人差 ストレンジ・シチュエーション法 愛着の個人差 4つの愛着タイプ – Aタイプ(回避型) – 母親との分離場面で後追いや泣きなどの混乱はほとんど見 られない 再開場面でも、養育者に対して積極的に接近したり接触を 求めることはない 母親を安全基地として利用する様子が見られない Bタイプ(安定型) 分離場面で後追いや多少の泣きなどの混乱を示す 再開場面では母親に接近・接触し、容易に心的安定を回復 することができる 愛着の個人差 – Cタイプ(アンビバレント型) – 分離場面で非常に強い泣きなどの混乱を示す 再開場面では母親に積極的に身体接触を求めるが、その 一方で母親を叩いたり怒りを示すなどの行動が見られる Dタイプ(無秩序型) 再開場面で親を受け入れると同時にこわばったり、顔をそむ けながら親に接近したりなど、親への接近と回避が混在し、 無秩序で奇妙な行動を示す 親の養育行動と愛着 Aタイプの子どもの親 – – Bタイプの子どもの親 – – – 拒否的 応答性が低い 応答性が高い ポジティブな情動表出が多い 一貫性が高い Cタイプの子どもの親 – – 過干渉 一貫性が低い 養育行動の概念的構造 尺度 APQa) 関与 肯定的養育 見守り PBIb) PSc) 配慮 PBeId) 支持・関与 a) 肯定的 心理的統制 自由の促進 自律の否定 非一貫性 体罰 メタ分析 Kawabata et al. 緩さ 過剰反応 Alabama Parenting Questionnaire. Inventory. b) 敵対・威圧 非関与 否定的・厳しい 本研究 関与 肯定的応答性 見守り 意思の尊重 過干渉 非一貫性 厳しいしつけ 肯定的養育 否定的養育 PBI: Parental Bonding Instrument. c) Parenting Scale. d) Parent Behavior 養育行動と子どもの問題行動 SDQ PNPS 向社会的 行動 肯定的養育 関与・見守り 肯定的応答性 意思の尊重 否定的養育 過干渉 非一貫性 厳しいしつけ .376 .327 .339 .208 -.142 -.086 -.112 -.134 a) 内在化 問題 -.043 -.043 -.008 -.050 .297 .244 .234 .242 a) この係数以外は全て0.1%水準で有意。 外在化 問題 -.224 -.214 -.186 -.111 .382 .195 .269 .402 愛着と対人関係 内的ワーキングモデル 親との相互作用を通して形成された愛着は、 徐々に般化され、他者一般や自己に関する心的 表象(内的ワーキングモデル)を形成する – – 「他者は信頼できる存在か」 「自分は他者から愛されるに値する存在か」 他者に対する知覚や自分の行動のプランニング に利用される 内的ワーキングモデル 生後6ヶ月~5歳頃の親の養育行動が特に大き く影響し、子どもが成長するにしたがって、その 可塑性が減少していく 友人関係や恋愛関係、さらには自分が親になっ たときの子どもとの関係性など、生涯にわたる 対人関係に利用される 友人関係との関連 Aタイプの子どもの内的ワーキングモデル – Bタイプの子どもの内的ワーキングモデル – 親以外の他者からも自分は拒否される 他者は応答的であり、自分は他者からの応答を受け るに値する存在である Cタイプの子どもの内的ワーキングモデル – 他者の行動は予測不能であり、いつ拒絶されてしまう かわからない ミニレポート ミニレポート 1. 2. 子どもの愛着タイプは親のどのような養育行動 と関連しているか 愛着タイプと後の対人関係のあり方の関連に ついて説明せよ
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