納品用】JAN14SS076【スライド】糖尿病患者 指導用ス

「介護事業所職員に対する講習会」
②糖尿病
(一社)島根県薬剤師会
目次
1. 糖尿病とはどんな病気?
2. 合併症について
3. 早期治療の必要性について
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)について
5. 注意事項(低血糖)
6. Q&A
1. 糖尿病とはどんな病気?
糖尿病とは
 糖尿病は高い血糖値が続く病気です
糖尿病とは、食物から得たブドウ糖が、体内で有効に利用されずに血液の
中に多くとどまって、血液中のブドウ糖(血糖)の量が過剰になってしまう病
気のことです。この状態を高血糖といい、主にインスリン作用不足などによっ
て起こります。
健常人の血管
毛細血管
糖
インスリン
糖尿病患者の血管
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 9, 17-19.
1. 糖尿病とはどんな病気?
食事とインスリンの働き(健康な人)
インスリンの動き
①食物から栄養素を摂取します
栄養素の流れ
炭水化物、脂肪、たん白質など
インスリン
グリコーゲン
筋肉
③インスリンが分泌されます
食事により血糖値が高くなると、
すい臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは、血液によって
全身に運ばれます。
胃
膵臓
②食後は血糖値が高くなります
ごはんやパン等の炭水化物は
消化され、そのほとんどがブドウ糖
となり、小腸から吸収され、
血液の中に入ります。
↓
そのため、血液中のブドウ糖の量
(血糖値)が高くなります。
脂肪
糖
アミノ酸
インスリンの働きにより、
ブドウ糖は、筋肉に取り込
まれてエネルギーとして使
われます。
⑤余ったブドウ糖は
たくわえられます
肝臓
グリコーゲン
④ブドウ糖が筋肉に
取り込まれます
脂肪細胞
脂肪酸
グリセロール
糖
エネルギーとして使われ
なかったブドウ糖は、
筋肉や肝臓、脂肪細胞に
グリコーゲンや脂肪として
たくわえられます。
↓
空腹時には、たくわえられ
たものが分解されて、
エネルギー源として
利用されます。
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 2, 4.
1. 糖尿病とはどんな病気?
糖尿病の種類
 糖尿病は4種類に分類されます(日本糖尿病学会による糖尿病の分類に基づく)
わが国の糖尿病患者の95%以上は2型糖尿病です。
 1型糖尿病
すい臓の細胞が破壊されて、インスリンを分泌すること
ができなくなり発症します。
幼少期~10代で発症することが多く、病態が進行する
とインスリンを毎日注射しなければなりません。
 2型糖尿病
すい臓から十分な量のインスリンを分泌することができなくなっ
たり、体内でのインスリンの働きが悪くなって発症します。
成人してから発症することが多く、わが国の糖尿病患者の95%
以上は2型糖尿病です。
 その他の特定の機序、
疾患によるもの
遺伝子異常や、すい臓・肝臓などの病気や、
感染症などが原因で発症します。
 妊娠糖尿病
妊娠中にはじめて見つかるまたは発症した糖尿病にいたっ
ていない糖代謝異常を、妊娠糖尿病といいます。
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 16-22.
1. 糖尿病とはどんな病気?
日本人と2型糖尿病
 日本人は痩せていても2型糖尿病になりやすい
日本人(アジア人)のすい臓は、長年の食文化の違いや遺伝的な違いなど
により、欧米人に比べてインスリンを分泌させる働きが弱いことが明らかとな
っています。
清野 裕. 糖尿病 2001; 44(10): 785-789.
1. 糖尿病とはどんな病気?
糖尿病のリスク
 糖尿病はだれでもかかる可能性がある病気です
あなたは、糖尿病の危険因子にいくつ当てはまりますか?
 家族に糖尿病患者がいる
 肥満
 運動不足
 ストレス
 高脂肪食
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 19.
1. 糖尿病とはどんな病気?
2型糖尿病の進行
 2型糖尿病は、診断される前からすでに進行しています
糖尿病と診断された時には、すでに耐糖能異常や空腹時血糖異常を発症し
ています。
糖尿病と診断
(%)
100
す
い
臓
の
機
能
糖 尿病 と 診断 さ れた 時 に は 、
インスリンを分泌するすい臓の
働きがすでに健常人の半分に
なっているといわれています
75
50
25
0
耐糖能
異常
食後
高血糖
2型
糖尿病
第1相
2型
糖尿病
第2相
2型
糖尿病
第3相
糖尿病の罹病期間
診断を受けたら直ちに治療に取り組みましょう!
Lebovitz. H. E. Joslin’s Diabetes Mellitus. 14th ed. Lippincott Williams & Wilkins, 2004. 687-710.より改変
1. 糖尿病とはどんな病気?
2型糖尿病の自覚症状
 初めは、ほとんど自覚症状はありません
高血糖が続くと、はじめて特徴的な症状がみられることがあります。
(早期では症状がないままゆっくりと進行することもあり、経過は患者さんによって異なります。)
 いつもより喉が渇く。
 疲れやすい。
 おしっこの回数が多くなる。
 目がかすむ。
 手や足の感覚が鈍い。
症状に気づいた時は、すでに合併症が起きている可能性があります!
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 16, 21.
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 2-3.
2. 糖尿病の合併症について
細小血管障害と大血管障害
 糖尿病が進行すると合併症が発症します
糖尿病合併症は、日常生活の質(QOL)をしだいに悪くし、命にもかかわる
ことがあります。
網膜症
細
小
血
管
障
害
脳梗塞
歯周病
(感染症)
虚血性心疾患
腎症
大
血
管
障
害
閉塞性動脈硬化症
神経障害
足病変
荻原 俊男 監修. 高血圧・糖尿病 -生活習慣病-. メディカルレビュー社, 2009.
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 73-86.
2. 糖尿病の合併症について
糖尿病神経障害
 神経障害は、もっとも早く、もっとも多くの患者さんに発症します
1型糖尿病で約2割、2型糖尿病で約3割の患者さんに糖尿病神経障害が
発症します。
無自覚性低血糖
顔面神経麻痺
(食べものが口から
こぼれやすくなる)
外眼筋麻痺
(物が二重に見える)
発汗異常
立ちくらみ
無痛性心筋梗塞
食欲不振
便通異常(便秘・下痢)
手足のしびれ、
痛み、知覚低下
*外眼筋麻痺、顔面神経麻痺は
罹病期間や血糖コントロールと
関係なく発症します。
しかし、ほとんどが
3ヵ月以内に自然と治ります。
膀胱障害
(尿意を感じない、出が悪い)
勃起障害
こむらがえり
関節の変形
足の潰瘍、壊疽(えそ)
荻原 俊男 監修. 高血圧・糖尿病-生活習慣病-. メディカルレビュー社, 2009.
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 82-83.
2. 糖尿病の合併症について
動脈硬化性疾患
 心血管疾患や脳血管障害の発症頻度も高まります
糖尿病予備群も含め、糖尿病は動脈硬化を促進し、健康な人と比べると、
心筋梗塞は3倍、脳梗塞は2~4倍の発症率になります。
喫煙
糖尿病
高血糖
耐糖能
異常
+
高血圧
リスク増加
・心筋梗塞
・脳梗塞
脂質代謝
異常
喫煙、高血圧、脂質代謝異常などの危険因子が重なると、発症率はさらに高まります!
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 83-84.
2. 糖尿病の合併症について
糖尿病腎症
 人工透析が必要になる原因の第1位は、糖尿病腎症です
糖尿病腎症とは、腎臓の機能が低下して、血液の中に老廃物がたまったり
、栄養分(タンパク質)が尿にもれだす病気です。
進行すると腎不全となり、透析が必要になることもあります。
腎症患者の腎臓
タンパク質などの体に
とって必要なもの
健康な人の腎臓
不要な老廃物
腎症は、自覚症状がなかなかありません。
定期的に尿検査をしましょう!
体内に必要なものも尿と
して排出されていきます
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 26-27.
荻原 俊男 監修. 高血圧・糖尿病-生活習慣病-. メディカルレビュー社, 2009.
一般社団法人日本臨床内科医会 編. 糖尿病の合併症. 2010.
2. 糖尿病の合併症について
糖尿病網膜症
 成人で失明する原因の第2位は、糖尿病網膜症です(第1位は緑内障)
糖尿病網膜症とは、網膜の毛細血管が障害され、視力低下や失明にいたる
病気です。
増殖膜
出血・白斑
(網膜内病変)
網膜剥離
進行すると
新生血管
自覚症状なし
硝子体出血
自覚症状: ①視力の極端な低下
②黒いものがちらつく
③物がぶれて見える
早期発見と早期治療が重要です。定期的に眼底検査を行いましょう!
岩本 安彦 総監修. 専門医が治す!糖尿病. 高橋書店, 2007.
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 24-26.
2. 糖尿病の合併症について
糖尿病足病変
 糖尿病足病変は治りにくく、足の切断にいたることもあります
糖尿病足病変とは、糖尿病による神経障害や血流障害が原因で、
足に発症する病気の総称です。重症化すると足を切断しなければなりません。
神経障害
知覚低下
足の変形
皮膚の乾燥・亀裂
血流障害
外的要因
靴ずれ、外傷
やけどなど
感染・潰瘍
壊疽(えそ)
切断
靴ずれ、切り傷、感染症などを
放置していると壊疽(えそ)がは
じまります
日頃から足をよく観察し、フットケアを行うことが大切です!
荻原 俊男 監修. 高血圧・糖尿病-生活習慣病-. メディカルレビュー社, 2009.
3. 糖尿病の早期治療の必要性について
糖尿病治療の目的
 糖尿病治療の目的は、日常生活の質(QOL)を維持することです
糖尿病合併症を予防するために、血糖コントロールを継続しましょう!
糖尿病治療の目標
健康な人と変わらない
日常生活の質(QOL)の維持、
健康な人と変わらない寿命の確保
糖尿病細小血管合併症
(網膜症、腎症、神経障害)および
動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管障害、
末梢動脈疾患)の発症、進展の阻止
血糖、体重、血圧、血清脂質の
良好なコントロール状態の維持
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 24.
3. 糖尿病の早期治療の必要性について
血糖コントロールの目標
 血糖コントロールの改善を目指しましょう
血糖コントロール目標
コントロール目標値
注1)
注4)
注2)
目 標
血糖正常化を
目指す際の目標
合併症予防
のための目標
HbA1c(%)
6.0未満
7.0未満
注3)
治療強化が
困難な際の目標
8.0未満
治療目標は年齢,罹病期間,臓器障害,低血糖の危険性,サポート体制などを考慮して個別に設定する.
注1) 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合,または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能
な場合の目標とする.
注2) 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする.対応する血糖値としては,空腹時血糖値130mg/dL未
満,食後2時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安とする.
注3) 低血糖などの副作用,その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする.
注4) いずれも成人に対しての目標値であり,また妊娠例は除くものとする.
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 25.
3. 糖尿病の早期治療の必要性について
血糖コントロールの指標
 質の高い血糖コントロールを目指しましょう
食後高血糖をきちんと下げることが、質の高い血糖コントロールにつながり
ます。1日の中で常に変化している血糖値を正確に知ることで、より適正な治
療や血糖コントロールを実施することができます。
1日の血糖値の変動
(mg/dL)
300
重い糖尿病の人
軽い糖尿病の人
血
糖
値
200
140
100
70
健康な人
0
朝食
昼食
夕食
(時間)
おやつ
持続血糖モニター(CGM:Continuous Glucose Monitoring)機器を使用すると、血糖値の変動を連続的に測定・記
録することができます。
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 10.
3. 糖尿病の早期治療の必要性について
早期治療の重要性
 早期発見、早期治療で合併症を予防しましょう
早期から薬物療法に取り組んだ患者さんは、取り組まなかった患者さんに
比べて糖尿病合併症による死亡リスクが低下することが明らかになってい
ます(イギリスの研究より)。
20年後の死亡率(糖尿病合併症)の差
(%)
10
リ
ス
ク
低
下
率
(
%
)
全死亡
心筋梗塞
脳卒中
細小血管合併症の進展
-13
-15
-15
-9
-24
-24
0
-10
p=0.39
p=0.007
p=0.01
-20
-30
Log-rank検定
p=0.001
Holman RR et al. N Engl J Med 2008; 359(15): 1577-1589. より作図
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
治療薬の種類
 患者さんに応じた薬が選ばれます
治療薬には経口薬(飲み薬)と注射薬があります。患者さんそれぞれの血糖
コントロールの状態に応じて治療薬が決められます。
食事療法・運動療法にしっかり取り組み、さらに毎日きちんと薬を服用するこ
とが大切です。
スルホニル尿素薬(SU)薬
ビグアナイド薬
DPP-4阻害薬
チアゾリジン薬
肝臓
筋肉
など
速効型インスリン
分泌促進薬:グリニド薬
すい臓
腎臓
SGLT2阻害薬
GLP-1受容体作動薬(注射)
消化管
インスリン製剤(注射)
α-グルコシダーゼ阻害薬
(α-GI)
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 29.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 スルホニル尿素(SU)薬
項 目
インスリンの分泌をふやす薬
 薬の働き
すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促進させる
 特性
服用後短時間で効果があらわれる
 効果の持続
6~24時間(製剤によって異なる)
 薬の飲み方
1日1回朝、1日2回 朝夕
食前または食後
 注意すること
体重増加、低血糖
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 46-47.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 ビグアナイド系薬
項 目
インスリンの働きを強める薬
 薬の働き
肝臓から血液中に糖が出ていくのを抑えたり、消化管の糖の吸収を
抑えたり、細胞が糖を取り込むのを助ける
 特性
体重増加を起こしにくい
単独では低血糖の危険性は低い
 効果の持続
6~14時間(製剤によって異なる)
 薬の飲み方
1日2~3回
食直前または食後
 注意すること
強い倦怠感、意識障害、吐き気、下痢、筋肉痛など
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 49-50.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 α-グルコシダーゼ阻害薬
項 目
糖の吸収を遅らせる薬
 薬の働き
腸内で炭水化物がブドウ糖へ分解されにくくし、さらに糖の吸収を遅
らせる
 特性
単独では低血糖の危険性は低い
 効果の持続
1~3時間(製剤によって異なる)
 薬の飲み方
1日3回 朝昼夕
食直前
 注意すること
腹部膨満感、おならの増加、下痢など
低血糖を発症した時は必ずブドウ糖を摂る
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 48-49.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 チアゾリジン薬
項 目
インスリンの働きを強める薬
 薬の働き
筋肉などでのブドウ糖の利用を高め、肝臓から血液中に糖が出てい
くのを抑える
 特性
単独では低血糖の危険性は低い
 効果の持続
20時間
 薬の飲み方
1日1回 朝
食前または食後
 注意すること
体重増加、むくみやすい(浮腫)
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 50.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
項 目
インスリンの分泌をふやす薬
 薬の働き
すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促進させる
 特性
服用後短時間で効果があらわれる
 効果の持続
3時間
 薬の飲み方
1日3回 朝昼夕
食直前
 注意すること
低血糖
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 47-48.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)阻害薬
項 目
インクレチンの分解を抑える薬
 薬の働き
インクレチンの分解を抑え、活性化させることで、
インスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制する
 特性
体重増加を起こしにくい
単独では低血糖の危険性は低い
 効果の持続
12~24時間(製剤によって異なる)
 薬の飲み方
1日1~2回
 注意すること
SU薬と併用する時の低血糖
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 51-52.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
経口薬
 SGLT2阻害薬
項 目
尿糖の排泄をうながす薬
 薬の働き
腎臓(近位尿細管)でのブドウ糖の再吸収をおさえることで、
尿糖の排泄を促進する
 特性
体重低下が期待される
単独では低血糖の危険性は低い
 効果の持続
24時間
 薬の飲み方
1日1回
 注意すること
SU薬と併用する時の低血糖
尿路感染症
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 52-53.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
注射薬
 GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬
項 目
 薬の働き
すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促進させる
 特性
体重増加を起こしにくい
単独では低血糖の危険性は低い
 効果の持続
12~24時間(製剤によって異なる)、又は徐放製剤
 薬の使い方
1日1回 朝または夕、1日2回 朝夕食前、又は週に1回
皮下注射
 注意すること
下痢、便秘、嘔気などの胃腸症状が起こりやすい
SU薬と併用する時の低血糖
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 65-66.
4. 薬物療法(経口薬と注射薬)
注射薬
 インスリン製剤
項 目
 薬の働き
インスリンをからだの外から補充する
 特性
効果があらわれる時間と持続する時間によって5つのタイプの
製剤がある(超速効型、速効型、中間型、混合型、持効型)
 効果の持続
3~24時間(製剤によって異なる)
 薬の使い方
製剤によって回数は異なる、皮下注射
 注意すること
低血糖
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 54-64.
5. 注意事項(低血糖)
低血糖とは
 糖尿病の治療では低血糖*を発症することがあります
低血糖とは、血糖値が正常より下がり過ぎた状態をいいます。血糖値の低
さに応じてさまざまな症状が起こります。
*少なくとも血糖値が70mg/dL以
下
低血糖の症状
軽い
重い
頭痛
動悸
眠気
悪心
 交感神経症状
・空腹感
・不安感など
集中力低下
めまい
 中枢神経症状
・疲労感
・抑うつ
意識もうろう
昏睡
けいれん
 大脳機能低下
・一過性片麻痺
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 94-95.
5. 注意事項(低血糖)
低血糖の原因
 空腹時には低血糖に気をつけましょう
低血糖は空腹時に非常に起こりやすくなります。その他、薬の種類・量の
飲み間違えや、強く長い運動をした時などに起こりやすくなるので、気をつ
けましょう。
強く長い運動
不規則な食事
入浴
飲酒
薬の誤飲
体調不良(下痢など)
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 69.
5. 注意事項(低血糖)
低血糖の対処法
 低血糖が起こったらすぐに糖分※をとってください
低血糖の症状があらわれたら、軽症であっても絶対に我慢せず、すぐに糖
分を補ってください。
※α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している時は、必ずブドウ糖をとってください。
症状が改善しない場合は、速やかに
かかりつけ医を受診しましょう!
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 70.
Q&A目次
Q:親が糖尿病であれば子供に遺伝しますか?
Q:糖尿病は、必ず尿に糖が出るのですか?
Q:糖尿病と診断されたら献血はできないのですか?
Q:治療はいつまで続くのですか?(薬はいつまで飲み続けなくてはならない
のですか?)
Q:今は経口薬で治療していても、将来はインスリン製剤の注射が必要にな
るのですか?そして、もしインスリン製剤が必要になった場合は、一生イン
スリン製剤を打ち続けなくてはならないのですか?
Q:薬を飲み忘れた時/注射をし忘れた時はどうすればよいですか?
Q:お酒は飲んでもよいのですか?
Q:おやつ(甘いもの)は食べてはいけないのですか?
Q:糖尿病になると、してはいけないスポーツはありますか?
Q:高齢の場合、特に気をつけることはありますか?
Q:親が糖尿病であれば子供に遺伝しますか?
A
2型糖尿病になりやすい体質(=遺伝因子)は親から
子供へと受け継がれるので、親や祖父母など家族に
糖尿病患者さんがいる人は、いない人に比べると
糖尿病になる確率は高くなります。
しかし、2型糖尿病は遺伝因子に環境因子(生活習慣)
と加齢などが加わって発症するため、親が糖尿病なら
子供も必ず糖尿病になるというわけではありません。
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 19.
Q:糖尿病は、必ず尿に糖が出るのですか?
A
血糖値が一定以上(170mg/dL程度)を超えると、尿検
査で糖の値が出てきますが、尿検査でも糖の値が出
ない糖尿病患者さんもいるため、「必ず尿に糖が出る
のが糖尿病」というのは間違いです。
なお、血糖値が正常でも尿に糖が出てきてしまう
人がいます。これは腎性糖尿といい、糖尿病では
ありません。
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 8.
Q:糖尿病と診断されたら献血はできないのですか?
A 糖尿病と診断され治療を受けていても献血できます。
ただし、以下の条件に当てはまる場合に限ります。
①糖尿病治療薬を服用(もしくは注射)していない。
②糖尿病合併症を発症していない。
③その他の特定の病気(心臓病、悪性腫瘍、血液疾患
、 けいれん性疾患、ぜんそく、脳卒中など)を発症して
いない。
大阪府赤十字血液センターウェブサイト:http://wanonaka.jp/faq
Q:治療はいつまで続くのですか?
(薬はいつまで飲み続けなくてはならないのですか?)
A 糖尿病は、「病気そのものが完治する」という病気では
ありません。食事療法・運動療法、さらには薬物療法に
よって血糖値をコントロールしながら一生つきあっていく
病気です。
なお、治療によって血糖コントロールが改善すれば、薬
物療法を終了することもありますが、食事療法・運動療
法の継続は必須です。
血糖値が改善し良い状態が続いていても、自己判断で
通院をやめないでください。
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
Q:今は経口薬で治療していても、将来はインスリン製剤の注射が必要
になるのですか?そして、もしインスリン製剤が必要になった場合は
、一生インスリン製剤を打ち続けなくてはならないのですか?
A
血糖値が目標とするレベルまで下がらない時は、
インスリン製剤による治療(インスリン療法)が必要に
なることがあります。
しかし、2型糖尿病の患者さんは、インスリン療法によ
ってすい臓の働きが回復してきたら、インスリン療法を
終了することがあります。ただし、インスリン療法を終
了しても、食事療法と運動療法、薬物療法は継続しな
ければなりません。
日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド 2014-2015. 文光堂. 2014: 54.
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 54.
Q:薬を飲み忘れた時/注射をし忘れた時はどうすれば
よいですか?
A 薬の種類によって対処方法が異なるので、必ずかかり
つけ医または看護師、薬剤師に確認しておきましょう。
低血糖を発症するおそれがあるため、2回分をまとめて
飲むことや、注射することは絶対にしないでください。
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 80.
Q:お酒は飲んでもよいのですか?
A
禁酒を心がけましょう。
飲酒によって、低血糖を発症する危険性が非常に高ま
ります。アルコール摂取は適量(1日25g程度まで)にと
どめましょう。
目安:
・ビール
缶ビール1本
・ワイン
・日本酒
0.8合
・焼酎
・ウイスキー (ダブル)
グラス1杯
グラス3杯
0.4~0.6合
ただし、肝疾患や合併症を発症している患者さんは禁
酒してください。
お酒を飲みたい方は、かかりつけ医と相談しましょう!
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 132-133.
Q:おやつ(甘いもの)は食べてはいけないのですか?
A
基本的に「食べてはいけない食べ物」はありません。
したがって、「おやつ(甘いもの)を食べてはいけない」
ということはありません。
大切なことは、食事療法に取り組み、指示されたエネ
ルギー摂取量を守ることです。
ただし、食べるタイミング(時間)も重要なので、おやつ
を食べたい、間食をしたい方は、かかりつけ医や栄養
士に相談しましょう!
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 69-72.
Q:糖尿病になると、してはいけないスポーツはありますか?
A
基本的に「してはいけないスポーツ」はありません。
ただし、低血糖を発症する危険性があるため、
血糖コントロールを良好に保つことが求められます。
また、糖尿病合併症やその他の病気を併発している
患者さんは、禁止あるいは制限が必要です。
取り組みたいスポーツがある方は、事前に必ずかか
りつけ医に相談しましょう。
監修:田中 逸. 聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 72-76.
Q:高齢の場合、特に気をつけることはありますか?
A 高齢の糖尿病患者さんでは次のようなことに注意しましょう。
– 薬の飲み忘れや、飲み間違いを起こしやすい
→服薬量、回数、時間に注意しましょう
– 低血糖・高血糖になっても自覚症状があらわれにくいため、
重篤になりやすい
→体調の変化に注意しましょう
– 低血糖で倒れてしまった時などに骨折しやすい
→筋力トレーニングで足腰を鍛えましょう
– 食欲が低下していて栄養が不足しやすい
→バランスの良い食事をとりましょう
日本糖尿病学会 編. 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき 血糖コントロール目標改訂版. 南江堂. 2013: 120-123.