超弦理論で時空の謎をさぐる シンポジウム「大規模計算が切り拓く基礎科学の将来」 平成21年 2月23日 (月)、 つくば国際会議場 西村 淳 (KEK、総研大) 時空の謎 一般相対性理論 (Einstein 1915) 重力は時空の曲がり方で表される。 ものが動けば、時空の曲がり方も変わる。 何もない真空中でも、曲がり方は波として伝播。(重力波) 重い星がつぶれてブラックホールができることもある。 宇宙は実は膨張している。(ビッグバン宇宙論) 時空そのものが力学の対象 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 2 ところが一般相対性理論は古典力学! 古典力学 量子力学 決定論的 確率論的 初期条件を与えれたとき、その後行われる測定の結果に対して 予言が可能 確率的にしか予言できない 巨視的なスケールでの近似理論 微視的なスケールでの正しい理論 一般相対性理論も、プランク長( のスケールでは、実は正しくない! )くらい ? 古典的時空は近似的概念にすぎない 2009年2月23日 つくば国際会議場 プランクスケール の理論 「時空」の概念に対する大きな変革が必要? 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 3 そんな細かい事( ) 気にする必要があるのだろうか? 10-36m 10-28m プ ラ ン ク 長 さ 10-20m 10-12m 原 子 核 10-4m 1m 104m 原 子 地 球 の 大 き さ 1012m 太 陽 系 1020m 銀 河 系 1028m 宇 宙 の 見 え て い る 範 囲 コライダー実験のフロンティア 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 4 素粒子理論の成功と課題 細かく見ることで、物質の構造、多様性が理解されてきた。 標準模型が持つ複雑な構造の理解 重力(時空)の量子論的記述 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) プランクスケール の理論が必要 5 素粒子理論が示唆する 「プランクスケールの理論」に対するヒント 細かいスケールを見るには、 高いエネルギーが必要。 c.f.) 2008年9月稼動のLHC→ 相互作用の強さ 強 点粒子による記述では破綻 力の統一を示唆 弱 電 重 2009年2月23日 つくば国際会議場 エネルギー 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 6 超弦理論 電 光子 弱 強 重 グルオン グラビトン 弦の振動の仕方で様々な粒子を表す 力の統一 点粒子ではなく、広がりを持った弦 量子重力理論の困難を克服 重力も含めて、力を統一的に記述 プランクスケールの理論の最有力候補 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 7 ブラックホールは、超弦理論の試金石 ホーキング輻射(1974年) 何もない真空中でも・・・ ? ? 対生成 対消滅 温度を持った‘物体’に見える 「ブラックホール熱力学」 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 8 超弦理論はブラックホール内部を解明できるか ブラックホール中心 : 時空の曲率が発散! 一般相対性理論が破綻 曲率半径がプランク長 程度になると 量子効果が無視できなくなる ブラックホール熱力学の微視的起源の解明 重力の量子効果を正しく記述できる理論が必要 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 9 超弦理論を使って、ブラックホールの内部 のシミュレーションに成功 Anagnostopoulos-花田-西村-竹内 (’07)花田-百武-西村-竹内(’08) この弦のゆらぎを 量子統計力学的に 計算。 ホーキングの理論 超弦理論によるブラックホール熱力学の微視的理解 重力(時空)の量子論としての正しさ、有用性を強く示唆 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 10 ↑毎日(08.1.20) そのほか日経、朝日、読売、産経、 日刊工業、茨城、CERN Courierなどに掲載 計算に用いたKEKのスパコン(Hitachi SR11000)→ 超弦理論の数値的研究の大きな成果 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 11 では超弦理論は実証されたのか? 最大の謎は時空の次元 超弦の相互作用が弱い状況で自然に見える 時空の次元は (9+1)次元 何故我々の時空が (3+1)次元 になっているのかが、 自然に説明できていない。 超弦理論のダイナミクスの結果として導けるはず 超弦理論が現実世界を記述しているかどうかの試金石 c.f.) 量子色力学による「クォーク閉じ込め」の理解 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 12 超弦理論から4次元時空は出るのか? 超弦の相互作用が強い状況での計算に 耐えうる定式化が必要 c.f.) 量子色力学における「格子ゲージ理論」 行列模型 Banks-Fischler-Shenker-Susskind (’96) 石橋-川合-北澤-土屋 (’96) 行列模型のダイナミクスを解く 4D 10D 2009年2月23日 つくば国際会議場 もともと弦の伝播しうる10Dの世界に 我々の4Dの世界が現れるか? 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 13 時空の広がり方を見る物理量 時空の情報を含む10個の 「慣性モーメントテンソル」 行列 10×10 実対称行列の固有値 SO(10)対称性の自発的破れ を見るオーダーパラメタ の極限で SO(10)→SO(4) というようなことが、起こるか? 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 14 時空がつぶれるメカニズム に対する結果 有限 N 効果 位相の効果 Ambjorn-AnagnostopoulosBietenholz-堀田-西村 (’00) つぶれた時空 西村-Vernizzi (’00) 位相がそろっている為、寄与が強めあう 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 15 位相の効果をどう調べるか? factorization method の分布 Anagnostopoulos-西村 (’02) に着目 位相 を と の効果を無視したときの分布 に拘束し、位相 を無視したシミュレーション を個別に計算 を大きくしたときの漸近的振る舞いを求める を直接計算する方法に対する大きなメリット 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 16 まとめと展望 時空の量子ダイナミクス 21世紀の基礎科学における最大の課題の一つ 宇宙の加速膨張(ダークエネルギー)、宇宙創成の謎 素粒子の標準模型の持つ謎 (LHC実験からも手がかり) 超弦理論によるブラックホール内部の解明 ブラックホール熱力学(ホーキングの理論)の微視的起源 量子力学黎明期における水素原子の研究と類似 ブラックホールが持つ量子論的性質のさらなる理解 行列模型による時空次元の謎の解明 近似計算(ガウス展開法)、トイモデルなどの結果は有望 行列を大きくするときの漸近的振る舞いが重要 スパコンによる大規模計算 2009年2月23日 つくば国際会議場 超弦理論で時空の謎をさぐる 西村 淳 (KEK) 17
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