ごん狐」の最終場面 - 国立大学法人 大阪

「ごん狐」の最終場面
「ごん狐」(「赤い鳥」版)新美南吉(+鈴木三重
吉)の最終場面は次のように書かれています。
六
そのあくる日もごんは、栗をもつて、兵十の
家へ出かけました。兵十は物置で縄をなつて
ゐました。それでごんは家の裏口から、こつ
そり中へはいりました。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐
が家の中へはいつたではありませんか。こな
ひだうなぎをぬすみやがつたあのごん狐めが、
またいたづらをしに来たな。
「ようし。」
兵十は、立ちあがつて、納屋にかけてある火
縄銃をとつて、火薬をつめました。
そして足音をしのばせてちかよつて、今戸口
を出ようとするごんを、ドンと、うちました。
ごんは、ばたりとたほれました。兵十はかけよ
つて来ました。家の中を見ると土間に栗が、
かためておいてあるのが目につきました。
「おや。」と兵十は、びつくりしてごんに目を落し
ました。
「ごん、お前だつたのか。いつも栗をくれたの
は。」
ごんは、ぐつたりと目をつぶつたまゝ、うなづき
ました。
兵十は、火縄銃をばたりと、とり落しました。
青い煙が、まだ筒口から細く出てゐました。
この部分には、ごん狐の視点、兵十の視点
が入り交じっているようです。
ごん狐の視点だけで書かれているように書き
直すとしたら、どうなるでしょう。
兵十の視点だけで書かれているように書き直
すとしたら、どうなるでしょう。
書き換えるときの注意事項
冒頭の語り手視点による記述は、書き換えな
い。
ごん/兵十の視点からの描写が始まったら、
語り手視点には戻らない。
助詞の「は」「が」
移動動詞「いく」「くる」など
視点人物の五感でとらえたものだけ書く
などに気をつけて書き換えましょう。
そのあくる日もごんは、栗をもつて、
兵十の家へ出かけました。
↓
語り手視点の冒頭の記述だから
書き換えない
兵十は物置で縄をなつてゐました。
↓
ごんが兵十の家に出かけて、そこで発見した
もの
そのまま書き換えない
兵十が物置で縄をなつてゐました。
どちらがいいか?
それでごんは家の裏口から、こつそり
中へはいりました。
↓
「それで」は語り手からの事情説明
これをごんの心理描写に書き換える
「
」と思って、
ごんは家の裏口から、こつそり中へはいりまし
た。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。
↓
ごんから兵十の姿は見えないので、
この描写は語り手の視点によるもの。
削除する。
と狐が家の中へはいつたではありま
せんか。
↓
顔を上げた兵十の目に入った「狐」
「はいつたではありませんか。」は兵十の心理
そのものではなく、読者に向けて発せられた
語り手の注意喚起の叙述。
兵十の視点と語り手の視点が重なっている叙
述。もちろん、ごん視点ではないから、削除。
こなひだうなぎをぬすみやがつた
あのごん狐めが、またいたづらを
しに来たな。
↓
兵十の心理描写。
ごん視点ではないから、削除。
「ようし。」
兵十の心理描写ならば、ごん視点からは描け
ない。
こなひだうなぎをぬすみやがつたあのごん狐
めが、またいたづらをしに来たな。
「ようし。」
と括弧のあるなしを心理と「独り言」のかき分け
だと考えることができる。独り言がごんに聞こ
えるように書き換えられる。
兵十は、立ちあがつて、納屋に
かけてある火縄銃をとつて、火薬
をつめました。
ごんから兵十の姿は見えないので、削除する。
そして足音をしのばせてちかよつ
て、今戸口を出ようとするごんを、
ドンと、うちました。
そして足音をしのばせてちかよつて、
は削除。
今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うちました。
をごんの視点で描写する。
ごんは、ばたりとたほれました。
ごんの視点で描写する。
兵十はかけよつて来ました。
兵十がかけよつて来ました。
とどちらがいいか?
家の中を見ると土間に栗が、かため
ておいてあるのが目につきました。
これは兵十の視点からの描写。
そういう兵十をごんの視点から描写する。
「おや。」と兵十は、びつくりしてごんに
目を落しました。
これは兵十の視点からの描写。
そういう兵十をごんの視点から描写する。
「ごん、お前だつたのか。いつも栗をく
れたのは。」
という声をごんが聞いたということで、ごんの視
点からの描写になりうる。
ごんは、ぐつたりと目をつぶつたまゝ、
うなづきました。
ごんの行動描写
語り手or兵十の視点のようでもあるが、しかた
がない。このまま。
兵十は、火縄銃をばたりと、とり落しま
した。
兵十が、火縄銃をばたりと、とり落しました。
とどちらがいいか?
青い煙が、まだ筒口から細く出てゐま
した。
ごんの視点からは描けない。
語り手or兵十の視点からの描写だけれど、最
終場面の最終の描写ということから、このま
ま残す。