PowerPoint プレゼンテーション

生活困窮者の自立を支える地域社会づくりのために(案)
ー 社会福祉法人を核とした多様な主体が果たす役割と「大阪方式」の構築 ー
平成26年9月
大阪府地域福祉推進審議会 地域福祉支援計画推進分科会
社会福祉法人の「さらなる地域貢献」とこれからの生活困窮者自立支援の
あり方検討部会
目 次
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
Ⅰ 社会福祉法人を取り巻く状況
1.社会福祉基礎構造改革後の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2.社会福祉法人の使命・役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
1.生活困窮者自立支援法の施行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
2.モデル事業の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
Ⅲ 大阪府域におけるこれまでの取組み
1.これまでの取組みに係る効果検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
1.生活困窮者自立に向けた「取組みの方向性」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
2.生活困窮者自立支援に係る各主体の参画・協力内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
1.「大阪方式」の提案にあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
2.大阪方式を提案する視点(福祉協働に向けた「一気通貫支援システム」の構築) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
3.今後の具体的な取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
4.留意すべき点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
5.今後の工程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
参考
1.国の動き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
2.大阪府地域福祉推進審議会委員名簿 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
3.社会福祉法人の「さらなる地域貢献」とこれからの生活困窮者自立支援のあり方検討部会委員名簿・・・・・・・・・・・・ 31
4.「社会福祉法人の『さらなる地域貢献』とこれからの生活困窮者自立支援のあり方検討部会」開催経過・・・・・・・・・・ 32
はじめに ~大阪発!生活困窮者自立支援システムに向けて~
《生活困窮者自立支援法の成立》
生活困窮者自立支援法(以下「新法」という。)が、平成25年12月6日、国会において可決・成立した。生活保護に至る
前の自立支援策の強化を図るとともに、生活保護から脱却した人が再び生活保護に頼ることのないよう、あらゆる取組みで支援
する。いわゆる“制度の狭間”をなくす、新たな地域福祉政策の体系構築をめざす法律であるが、一方、現場での施策化や運用
を誤れば、政策と制度への信頼を大きく揺るがすことになる。新法の理念を、地域福祉の現場に形作る先導的な作業と実践が、
私たちに求められている。
《大阪の地域福祉のルーツを今に》
聖徳太子の時代、大阪・四天王寺に施薬院、悲田院等の四箇院が建立された。慈善・慈恵の精神に立ち、飢饉や天災、疾
病等の犠牲者の供養とともに、病人や子どもをはじめ困難を抱える人々の救済事業が行われた。このように、大阪においては、古
くから労働者・庶民の生活課題等に対する社会事業の実践が試みられ、この実践の歴史は、民間社会事業家を中心とした社
会福祉法人の多様な活動として今日に受け継がれている。貧困者の実態調査や個別救護を実施する先駆的制度である方面
委員制度が地域福祉のルーツと言われる由縁は、脈々とした福祉の源流をもつ、ここ大阪で創設されたからである。
《大阪発!生活困窮者自立支援システムの提案》
こうした大阪の地域福祉の実績は、今に受け継がれ、「これからの地域福祉のあり方とその推進方策について」(H14.9大阪
府社会福祉審議会答申)の策定等を契機に、行政はもとより社会福祉法人など多様な主体がネットワークを組み、要援護者
に対する総合的な支援体制づくりなど、他自治体のモデルとなる施策の実現に成果をあげてきた。
今、大阪を取り巻く状況は、生活保護率の高さや、全国平均を上回る高校中退率やニート、非正規労働者数など、生活困
窮に陥るおそれのある、複合的なファクターが重なり合う。本報告書では、大阪に内在するこれら社会環境の変化を踏まえ、
新法成立を機に求められる地域福祉とは何かを改めて見通し、社会福祉法人をはじめ、地域福祉の多様な主体が有す
る人材や施設機能、ノウハウ等の社会資源を、要援護者のニーズに沿い一気通貫で活用していく「大阪発の生活困窮者
自立支援システム」の構築に向けて提案を行うこととする。
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Ⅰ 社会福祉法人を取り巻く状況
1.社会福祉基礎構造改革後の現状
(①社会福祉基礎構造改革とは)
❏ 超高齢社会という経験のない未来を目前に控え、社会福祉の共通基盤を構築するため、平成12年、介護保険法の成立を契機とする
社会福祉基礎構造改革を実施した。
❏ 関係法令の改正により、社会福祉サービスの利用制度が、行政主導の「措置制度」から利用者がサービス提供事業者との「契約制度」へ
転換された。そして、社会福祉事業の種類の充実が図られ、株式会社をはじめ、多様な主体の参入が促進された。
また、地域福祉の推進、社会福祉協議会や民生委員等の活性化も図られた。こうした取組みにより、サービスの多様化や経営主体の多元
化が進み、今や、社会福祉法人以外の経営主体の経営数が大幅に増加し、全体に占める社会福祉法人の割合は微減している。
(②経済情勢の悪化と制度の狭間の問題の顕在化)
❏ 平成20年代に入り、社会情勢や地域社会に大きな変化が見られるようになった。リーマン・ショックによる経済情勢の悪化が影響し、失
業者や非正規労働者、就職困難者が増加した。さらに、団塊世代の高齢化、地域のつながりの希薄化や制度の狭間の課題等が顕著
になりつつある状況等、各種要因がそれぞれ交錯し、新たな生活課題、生活困窮者問題がクローズアップされてきた。
(③生活困窮者自立支援法の制定に向けて)
❏ こうした現状を改善するため、国では、「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」を設置。委員メンバーには都道府県代表
として、大阪府知事も参画し、生活困窮者が抱える様々な課題や、生活困窮者対策に関する具体的な制度設計について議論を重ね、
平成25年1月に報告書をとりまとめた。その内容を踏まえた法律が、生活保護法の一部改正と生活困窮者自立支援法である。
そして、いよいよ、来年4月、生活困窮者の自立を支える新法が施行される。
(④社会福祉法人を取り巻く環境)
❏ このように制度の狭間の課題が顕在化する中、社会福祉法人は、いわゆる内部留保やガバナンスのあり方など、制度の意義・役割を問い
直す厳しい指摘を受けている。『社会福祉法人の在り方等に関する検討会(厚生労働省)』では、全ての社会福祉法人に対して公益的
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活動の実施を義務づける方向で検討を進める旨、提示。一方、課税議論も俄かに浮上している。『税制調査会(内閣府)』では、社会福祉法
人が実施する介護事業等、民間と競合している非課税事業について見直し必要との見解を示す。今、社会福祉法人を取り巻く環境は極めて厳しい。
Ⅰ 社会福祉法人を取り巻く状況
2.社会福祉法人の使命・役割
(①社会福祉事業のあり方)
❏ 社会福祉法第24条に規定されているように、社会福祉法人は、公益性の高い社会福祉事業の主たる担い手として、既に実施している
社会福祉事業を確実、効果的かつ適正に取組みを進めることは、当然の責務である。
❏ 一方、昨今の国の動きや社会経済情勢により、生活困窮者や生活課題を抱える人等に対し、社会福祉法人、社会福祉施設が、それ
ぞれの施設種別の特性や強みを活かし、より積極的な支援活動を行い、地域のセーフティネットの核となる事業に取り組むことが求められる。
(②内部留保のあり方と有効活用)
❏ 昨今、いわゆる内部留保について、メディアを賑わせている。今年6月、規制改革実施計画では、「内部留保の位置付けを明確化し、
福祉サービスへの再投資や社会貢献での活用を促す」と明記している。また、前述の社会福祉法人の在り方等に関する検討会の報告書
(H26.7 厚生労働省)では、「社会福祉法人が自らの経営努力や様々な優遇措置によって得た原資をもとに社会福祉事業を充実した
り、社会又は地域に福祉サービスとして還元しないのであれば、その存在意義が問われる」という厳しい記述もあり、内部留保のあり方と有
効活用を喫緊の課題として検討していく必要がある。
❏ 一方、社会福祉法人は、地域福祉・地域介護を持続的に担うために必要な一定の財政基盤を確保するため、事業運営上、内部留
保はなくてはならない。社会福祉法人は、他法人に比べ、借入金の負担が少なく自己資本比率の高い財政状態を前提として法人認可が
なされた経緯もあり、施設維持・整備のための費用等、将来の資金需要への備えとして、内部留保を確保せざるを得ない、法人ならではの
特殊事情がある点も留意する必要がある。
(③財務状況の透明性の確保)
❏ 財務状況の情報開示については、自主的公表は4割程度(H25.7末時点)にとどまっている状況を踏まえ、前述の規制改革実施計
画において、各法人が原則としてホームページ上で開示を行うように指導する旨、明記している(H26.4措置済み)。これは、社会
福祉法人については、幅広く国民一般に説明責任を果たしてこなかったことが影響しているものと考えられるが、社会福祉法人が税制
優遇措置を受ける公益法人である点を踏まえると、公表により、法人運営や財務状況を地域住民に知ってもらうことが重要である。
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Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
1.生活困窮者自立支援法の施行
(①新法制定に至る背景と大阪の現状)
❏ 平成20年のリーマン・ショック以降、世界経済の落ち込みから、国内消費は急激に冷え込み、企業倒産や失業率の上昇、非正規労働
者の増加等が顕著にみられるようになり、人々の収入は不安定な状態が続いた。また、生活保護世帯数も年々増加し、生活保護受給者
数は、平成23年度2,067千人と過去最高を更新した。特筆すべきは、被保護世帯のうち、いわゆる稼働年齢層と考えられる「その他の世
帯」の割合が10年間で3倍以上、増加しており、地域社会とのつながりが途切れることのないよう、要援護者をサポートしていく必要がある。
❏ この状況を受け、生活保護制度の見直しと生活困窮者対策を総合的に取り組むことで、あと少しで生活保護に陥ってしまう可能性のあ
る人々を支える自立支援制度として、昨年12月、新法制定に至り、来年4月1日、施行される予定である。
❏ 大阪の状況をみると、全国より突出して高い生活保護受給率から勘案すると、将来、生活保護に陥る可能性のある人は、相当数に上る
ものと考えられる。大阪府では、「大阪の成長戦略(H22.12策定、現在改訂作業中)」においても、この状況を踏まえて、就労可能な人
達の労働意欲を高める取組みの必要性を指摘しており、新法施行を目前に控え、本格的な人口減少社会を迎える中で持続可能な成長を
図るためにも、行政としてさらなる取組みを期待するところである。
【図表①:生活保護制度の見直しと新たな生活困窮者対策の全体像】
第1のネット
第2のネット
●「社会保障制度改革推進法(H24)」附則第2条にお
いて、生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに総
社会保険制度・労働保険制度
合的に取り組むこと、就労が困難でない者に関し、就労が
困難な者とは別途の支援策の構築等について明記
求職者支援制度
(H23.10~)
●総合的に取り組むことで、要援護者の自立支援が進むと
生活困窮者対策
(H27.4~)
第3のネット
生活保護
(生活保護基準及び 生活保護制度の見直し)
ともに、公的制度に係る歳出削減する効果も期待
生活保護制度の見直し
及び生活困窮者対策に
総合的に取り組む
[資料出所]生活困窮者自立促進支援モデル事業等連絡会議資料を加工(厚生労働省 H26.4.24・25)
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Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
(②新法の概要)
❏ 新法は、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、住居確保給
付金の支給その他の支援を行うため、7つの事業を規定している。なお、新法に規定する支援のみならず、多様な主体が独自で、または相
互連携を図り、積極的に要援護者支援に取り組むことを妨げるものではない。
法定事業
概要
①自立相談支援事業
●就労その他の自立に関する相談事業、事業利用のためのプラン作成等(必須)
②住居確保給付金
●離職により住宅を失った生活困窮者等に対し家賃相当を支給(必須)
③就労準備支援事業
●就労に必要な訓練を日常生活自立・社会生活自立段階から有期で実施(任意)
④一時生活支援事業
●住居のない生活困窮者に対して一定期間宿泊場所や衣食の提供等を実施(任意)
⑤家計相談支援事業
●家計に関する相談、家計管理に関する指導、貸付のあっせん等を実施(任意)
⑥学習支援事業その他事業
●生活困窮家庭での養育相談や学び直しの機会提供等を実施(任意)
⑦就労訓練事業の認定
(いわゆる「中間的就労」)
●就労機会の提供を行うとともに、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓
練等を行う事業を実施する場合、その申請に基づき、事業認定を実施(都道府県等)
国庫負担等
▸国庫負担3/4
▸国庫補助2/3
▸国庫補助1/2
―
(③新法の特長・ポイント)
❏ 従来法では決して支援対象とならなかった網の目からこぼれ落ち、“制度の狭間”にいる要援護者にスポットを当てた点が、新法の最大の
ポイントであるが、これだけではない、新法には大きく3つの特長がある。ひとつめは、要援護者の状況に応じた支援メニューを提示する自立
相談支援機能の設置である。生活困窮者の自立に向けた第一歩は、適切な初期対応にあると考える。
❏ 次に、生活困窮者を発見する機能の強化である。今回、国は、関係機関等との連携のもと、潜在する生活困窮者を発見し、アウトリー
チ(訪問支援)する手法を推進している。声なき貧困(サイレント・プア)に気づき、自立に向けた支援につなげていくことは大きな
ポイントとなる。
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❏ 3点目が、多様な就労支援メニューの充実である。要援護者は、各人の状況に応じた就労支援にチャレンジし、自活していく力を養うこと
で、職業的自立に向けた取組みを進めていくことが可能となる。
Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
2.モデル事業の実施
● 国では、来年4月、新法の本格施行に向けて、各自治体において円滑な事業遂行ができるよう、昨年度よりモデル事業を推進している。
● 昨年度は、全国68自治体が実施し、自立相談支援事業をはじめとした法定事業に取り組んでいるが、事業を進めていく中で、支援方
法の標準化や社会資源の不足による就労現場の確保等が困難である等、様々な課題に直面している。一方、府内市町村の実施状況
をみると、大阪市、豊中市をはじめ、5自治体がモデル事業に取り組み、来年度施行に備え、自治体の実態に即した支援体制を模索して
いるところである。
(①H25年度の大阪府における取組み)
❏ 大阪府では、新法がめざす出口戦略である就労へ結びつけるため、就労可能な要援護者に対し、生活困窮状態からの脱却を図る就労
訓練事業(いわゆる中間的就労)の場を確保するモデル事業を実施した。事業内容は、大きく分けて、就労訓練事業の認知度及び参
画可能性を確認する意向調査、認知度向上のための説明会、そして、参画意向を示す事業所と要援護者のマッチングへの挑戦である。
❏ 府内に立地する社会福祉法人をはじめ、民間事業所等、計1,500事業所を任意抽出して調査を行ったところ、まず、「中間的就労の
認知度」については、「言葉くらいは知っている」が4割程度であり、「全く知らない」が5割弱であった。また、「中間的就労の参画可能性」につ
いては、「実施意向あり、検討可能」が3割強(34.6%)あったものの、「今後も実施困難」が6割弱(57.5%)に上った。
❏ 中間的就労の課題については、受入に前向きな事業所からは、「受入形態、作業内容、就労担当者の配置等が困難」「事業所や法人
内部での意見調整が困難」という回答が多かった。加えて、受入が困難であるという事業所からも「就労担当者の受入体制、作業内容が困
難」という声に加え、「財源の捻出が困難」という資金面の課題を挙げる事業所も多くみられた。このように、資金、経営、そして働く職員等の
認識等、中間的就労を取り巻く課題は各方面に山積していることが浮き彫りになった。
❏ 次に、認知度向上のための説明会(研修)を4回実施した。既に中間的就労に取り組む事業所のプレゼン等を通して、中間的就労に
対する理解を深めてきた。
❏ そして、参画意向を示す50事業所と要援護者のマッチングに取り組んだ。個別に事業所を訪問し、疑問や課題等について相談
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対応を行いながら、マッチングを行ってきたところであるが、双方にミスマッチが生じることが多く、就労に至る結果を出すことができなかった。今後、
事業所ニーズをしっかりと把握しつつ、要援護者の支援メニューを検討していくことが重要であることが明らかになったところである。
Ⅱ 今、求められる生活困窮者の自立支援策
【図表②:中間的就労推進(生活困窮者自立促進支援モデル事業)に係る意向調査(概要)】 [資料出所]中間的就労推進に係る意向調査報告書(大阪府 H26.3)
●実施期間:H25.11.19~H25.12.13
●対象事業所:大阪府内(政令市・中核市除く)1,500事業所(社会福祉法人800件、営利法人337件、NPO50件、消費生活協同組合13件
●回収率:61.5%(923事業所)
[①中間的就労の認知度]
全く知らない
47.1%
(431)
よく知っている
9.5%(87)
[②就労実績・今後の意向]
◇「今後実施したい」と回答した事業所が考える課題
①受入形態が決まっていない(59.1%)
②就労支援担当者が決まっていない(50.0%)
③事業所内部での意見調整等(45.5%)
④作業内容が決まっていない(40.9%)
※「今後実施の検討はできる」と回答した事業所も
似た傾向にある
言葉ぐらいは知っている
43.4%(397)
[④課題(実施困難な事業所)]
◇「今後も困難」と回答した事業所が考える課題
①就労支援担当者の配置等受入体制がとれない
(59.6%)
②適した作業がない(55.1%)
③実施するための財源捻出が困難(34.4%)
④もう少し状況を見てから検討したい(22.5%)
[③課題(前向き事業所)]
[⑤中間的就労を広げていくために必要な支援]
[▼中間的就労とは]
◇中間的就労は、直ちに一般就労を目指すことが困
難な方に対して行う、支援付きの就労等のこと。
◇社会福祉法人、NPO法人、営利法人等の自主
事業として実施される。
◇受入形態として、非雇用型(雇用契約を締結せ
ず、訓練として就労を体験)と支援付雇用型
(雇用契約を締結する支援付きの就労)がある。
(②H26年度の大阪府における取組み)
❏ 今年度、府内の市町村では、昨年度より9自治体増え、14自治体がモデル事業を実施する予定である。また、府では、今年度も昨
年度に引き続き、就労訓練事業(いわゆる中間的就労)に取り組み、参画事業所の促進と課題等を整理し、来年度の本格実施に向け
て実績を蓄積していく。加えて、福祉事務所の設置のない郡部のうち一部の町村(豊能町、能勢町、太子町、河南町、千早赤
阪村、岬町)を対象に、自立相談支援、就労準備支援、家計相談支援に係るモデル事業を実施する。
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❏ 本格施行まで半年余りであるが、府においては、他府県の事例等をはじめ、情報収集を行いつつ、大阪の実情を加味した効果的・効率
的な制度構築に努めることが求められる。
Ⅲ 大阪府域におけるこれまでの取組み
1.これまでの取組みに係る効果検証
● 大阪府社会福祉審議会答申(H14.9)や同審議会意見具申(H15.9)等を踏まえ、大阪府では、全国初の取組みや大阪の実態
に沿った様々な福祉課題を抱える要援護者に対する各種取組みを推進してきた。これから、生活困窮者自立支援のあり方を検討していく
うえで、これまで、府域において各主体が取り組んできた特色ある施策の効果検証を実施する。また、府域におけるそれぞれの取組みを通じ
て蓄積された、そのノウハウ等を、本報告書で提案する「大阪方式」へ盛り込んでいく。
(①CSW(コミュニティソーシャルワーカー)配置と援護を要する人への支援)
❏ 誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことのできる地域社会づくりが重要である。そこで、援護を要する人を、地域ぐるみで多様な主体
により早期に発見し、「声かけ・見守り」「相談」「つなぎ」等、様々な支援を行う重層的なセーフティネットを構築する仕組みとして、大阪府が
前面に立ち、全国に先鞭をつけた取組みとして、府内市町村へのCSWの配置促進や地域住民の協力による支え合い活動を支援する小
地域ネットワーク活動推進等を展開してきた。
❏ CSWの配置促進については、地域福祉セーフティネットを効果的に機能させるため、中核的な役割を担う者として府内市町村、中学校
区に1名をめざし、配置を進めており、現在154名(H25年度末現在)のCSWが活発な活動を行っている。こうした取組みを進める中で、
ごみ屋敷プロジェクトや徘徊SOSメール等の開発など、新たな支援スキームを生み出し、“制度の狭間”にいる人々を支援している。
❏ また、小地域ネットワーク活動推進については、小学校区を支援対象ととらえ、地域住民による声がけ・見守り活動に取り組んできた。地
域住民誰もが集うことのできるサロン等の居場所をつくることで、孤立させない、みんなで支えるまちづくりに努めてきた。なお、これら2事業につ
いては、府が市町村へ交付する交付金によって支えられており、広域自治体と基礎自治体の役割分担が効果的に作用している好事例であ
ると考える。なお、援護を要する人への支援策については、単独で行うのではなく、相互に連携を図りながら課題解決に取り組むことが重要で
ある。
❏ 今後、今まで以上に複雑、かつ多様化する福祉課題を抱える制度の狭間にいる要援護者をサポートしていくため、各市町村で
実施している好事例を共有し、地域で課題を解決する力(=地域力)の向上を図っていくことが期待される。
また、府においては、これら市町村同士のつなぎやコーディネートを行うことで、府域全体の地域力の底上げを図ることが求められる。
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Ⅲ 大阪府域におけるこれまでの取組み
(②生活困窮者への総合生活相談事業、その他地域貢献に向けた取組み)
❏ 府域の社会福祉法人は、これまで蓄積してきた経験とノウハウを活かし、地域福祉活動の担い手として、平成16年度から生活困窮者に
対する「総合生活相談機能」の拠点機能とあわせ、経済的援助支援に取り組む「生活困窮者レスキュー事業」を実施している。
❏ この事業は、全国初の取組みとして、大阪府社会福祉協議会の社会貢献支援員20名が、府内全域の各老人福祉施設に常駐する
CSW700名とともに、アウトリーチによる要援護者に寄り添った総合生活相談活動を実施している。そのうち、緊迫・急迫した困窮状況
にある場合、現物給付などの経済的援助を実施し、要援護者の自立に向けてサポートを行っている。なお、この取組みには、大阪府社会福
祉協議会、老人施設部会の会員施設が特別会費として資金拠出し、社会貢献基金を組成し、社会貢献支援員や経済的援助に係る
一切の費用を賄っているところである。
❏ 昨年度の実績をみると、経済的援助を行った件数は503件、およそ3,000万円の現物給付を行っており、既存制度では対応できない制
度の狭間にいる生活困窮者支援のあり方に一石を投じ、社会福祉法人が自ら、法人の使命に則り、取り組んできたものである。
❏ また、大阪府社会福祉協議会保育部会の取組みとして、府内保育所に「スマイルサポーター」を配置し、地域の子育て家庭への相談活
動に力を注いでいる。身近に相談相手や援助者がいないことによる負担感やストレス増大を解消するサポート機能を担い、保育分野の垣根
を越え、高齢者や障がい者等に関する相談へ広げ、子育て支援の充実や地域の関係機関との連携強化を図っている。
❏ 引き続き、社会福祉法人独自の取組みとして、関係機関が連携を図りつつ、要援護者の生活問題等の解決や自立支援に努めること
で、地域のセーフティネット構築の核として、さらなる飛躍が期待される。
【図表③:社会貢献事業(生活困窮者レスキュー事業)の全体像】
[資料出所]「社会福祉法人による生活困窮者への総合生活相談事業(生活困窮者レスキュー事業)
(大阪府社会福祉協議会 老人施設部会作成)」より引用
大阪府社会福祉協議会
老人施設
拠出
生活困窮家庭
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相談支援
社会貢献基金
現物給付
コミュニティソーシャルワーカー700人
社会貢献支援員20人
経済的援助:10万円まで
Ⅲ 大阪府域におけるこれまでの取組み
(③行政の福祉化)
❏ 府では、府政のあらゆる分野において福祉の視点から総点検し、施策の創意工夫や改善を通じて「障がい者」や「⺟子家庭の⺟」、「高齢
者」などの雇用・就労機会を創出し自立を支援する独自の取組みを平成11年度から全庁で進めている。
❏ 官公需発注を通じた障がい者・就職困難者の雇用創出のひとつとして、まず、府有施設の清掃業務を知的障がい者等の就労訓練場所
として提供する取組みを行っている。平成11年度にはじまり、発注施設は、85施設、訓練生は108名にのぼる(ともにH24年度)。
❏ また、平成15年度から、全国初の取組みとして総合評価一般競争入札制度を導入した。本制度は、府本庁舎等の清掃業務発注の際
に、知的障がい者等の清掃現場での就労や就職困難者等の雇用等の提案を評価基準に盛り込んだものであり、本庁舎等の大規模施設
において実施したところである。さらに、知的障がい者や精神障がい者を対象に府の職場実習への受入や非常勤職員としてのチャレンジ雇用
等も行うなど、大阪方式で障がい者雇用や就職困難者の雇用拡大・推進を図っている。今後とも、これまで蓄積してきたノウハウ等を庁外へ
広く普及するとともに、生活困窮者支援等へ活用されることが望まれる。
(④おおさかパーソナル・サポートプロジェクト)
❏ パーソナル・サポートの前身は、平成21年10月、貧困・困窮者対策を実施した国の緊急雇用対策である。一定の成果はあったものの、生
活上のリスクが複雑に絡んでいる生活困難者を支援するためには、既存の支援体制では問題全体を受け止めきれないと考えられ、当事者の
抱える問題の全体を構造的に把握した上で、支援策を当事者の支援ニーズに合わせてオーダーメイドで調整、調達、開拓する継続的なコー
ディネイトが必要であるという認識のもと、パーソナル・サポートプロジェクトが始まった。
❏ 府域では、平成23年度より2年間、府をはじめ、府内市町村が、このプロジェクトに参加した。大阪の特長は、各自治体が単独で支援施
策を講じるのではなく、広域自治体である府と基礎自治体である各市が適切な役割分担と連携により、就労・生活自立に課題のある人たち
に伴走型支援を実施したことにある。平成23年度は、第2次モデル・プロジェクトとして、府をはじめ、豊中市、吹田市、箕面市が参画。府が
総合調整や広域的・専門的課題への対応を行い、実施市の活動等をバックアップしてきた。さらに、平成24年度は、新たに八尾市、
柏原市が同じ福祉圏域を有する広域連携共同事業体として加わり、社会資源の共同利用等により効果的な事業展開を図ってきた。
❏ 府においては、教育・福祉・就労等、タテ割り型行政を打破し、ヨコの連携を図ることで、就職困難者就労支援モジュールを構築し、
今後、新法施行後においても、本事業の知見やノウハウを活かしつつ、効果的な生活困窮者支援に取り組むことが期待される。
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Ⅲ 大阪府域におけるこれまでの取組み
(⑤地域就労支援事業)
❏ 大阪府では、今日に至るまで地域の雇用情勢に沿った就労支援を講じてきた。地域就労支援事業はその取組みのひとつである。平成12
年、職業安定行政の国への一元化と同時に、「雇用対策法」の改正により、地方公共団体に当該地域の実情に応じた雇用施策に対する
努力義務が課せられたことにより、府では、平成14年、早速、市町村向けの補助制度を独自に設け、就職困難者を就労に結びつける地域
就労支援センターの設置を推進してきた。さらに、センターに配置されたコーディネーターの養成研修を実施し、あらゆる課題に対応できるよう、
スキルアップを図っている。センターでは、就職困難者一人ひとりの状況に応じてきめ細かな就労に至る支援を展開しており、カウンセリングや職
業適性診断、サポートプランの策定、就職情報の提供から無料職業紹介や職場体験のあっせん等を行っている。
❏ 現在、本事業の財源については、府から交付金として府内全ての43市町村へ交付しており、市町村のニーズに合った取組みを進めている。
また、相談者数、相談件数、就労者数の実績は、年々、増加傾向にあり、地域主体の雇用施策として、就職困難者の雇用拡大に大きく
貢献しているところである。
❏ 今後、府においては、新法施行に向けて、複雑化、かつ多様化する就労課題に直面するコーディネーターの質の向上を図るため、研修等の
取組みを強化するなど、広域自治体として、市町村の事業展開への支援が求められる。一方、基礎自治体である市町村では、地域の関係
機関等をフルに活用し、必要に応じて円滑につなぐことができるよう、相談体制の充実、連携を図ることが期待される。
【図表④:大阪府域におけるこれまでの取組み(実績)】
大阪の独自施策
[資料出所]第3回検討部会配布資料より加工(大阪府 H26.7.30)
主な実績
①CSW配置等[H16~]
●CSW配置数:154名 ●交付額:約4.9億円(以上、H25年度) ●相談件数:約8.8万件
(H24年度)
②生活困窮者への総合生活相談事業等
[H16~]
●施設に常駐するCSW:約700名 ●社会貢献支援員:20名
●経済的援助:29,479千円、503件
●スマイルサポーター数(累計):約1,400名(以上、H25年度)
③行政の福祉化[H11~]
●総合評価一般競争入札制度:対象施設数93箇所、雇用状況421名(以上、H24年度末)
④おおさかパーソナル・サポートプロジェクト
[H23~H24]
●パーソナル・サポーター46名 ●新規相談件数2,434件、就労体験者4,616人日
●協力事業所数56拠点
⑤地域就労支援事業[H14~]
●相談者数6,451名 ●就労者数1,912名 ●相談件数22,451件(以上、H25年度)
11
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
1.生活困窮者自立に向けた「取組みの方向性」
● 新法の施行を目前に控え、生活困窮者の自立支援の担い手は誰なのか。本報告書では、公益性の高い社会福祉法人をはじめ、地
域福祉を支える多様な主体から、7つの主体に着目し、それらに求められる役割や取組みについて整理する。
● まず、この「取組みの方向性」を再確認する。ひとつは、社会福祉法人をはじめ、福祉サービス供給主体が、これまでの取組み実績・成
果を活かし、『さらなる地域貢献』として地域の福祉需要に対応していくことであり、二つ目は、大阪府が全体コーディネートを行い、サービス
供給主体の相互連携や官民協働の支援体制づくりを後押しし、地域社会を重層的に支えるセーフティネットを推進する一気通貫の支援
体制、いわゆる『大阪方式』を構築することである。この2つの方向性に沿い、生活困窮者自立支援法における各種事業をはじめ、各主体
がそれぞれ独自で実施するとともに、相互連携を図りながら取り組むなど、多様な担い手と手法によって要援護者の自立をサポートする。
【図表⑤:「大阪方式」のセーフティネット(イメージ図)】
[資料出所]第3回検討部会配布資料より抜粋(大阪府 H26.7.30)
生活困窮者自立支援法における各種事業
自立相談支援
一時生活支援
住宅確保支援
家計相談支援
学習支援
就労準備支援
(基礎能力形成)
就労訓練
(中間的就労)
職業的自立
福祉サービス供給主体の「さらなる地域貢献」への取組み
大阪方式(一気通貫の支援体制):府がコーディネート
2.生活困窮者自立支援に係る各主体の参画・協力内容
● 「さらなる地域貢献」と「大阪方式(一気通貫支援)」の2点を生活困窮者自立支援を推進する方向性ととらえ、各主体の参画・
協力内容を次頁のとおり、表にまとめた。
● なお、ここでは、①から⑦の各主体において、新法に基づく法定事業への積極的な参画を前提に、それにとどまることなく、新法
の趣旨・目的に沿った独自事業の実施状況、又は新たな独自事業の実施可能性等を、できる限り幅広くとらえて整理している。
12
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
【図表⑥:各主体による取組み状況】
①社会福祉法人
◎新規 ○拡充 △継続 ◆その他
②市町村
(※1)
③市町村社協
△各種相談
[資料出所]第3回検討部会配布資料より抜粋(大阪府 H26.7.30)
④府社協
⑦大阪府
(※2)
◆支援プラン
作成等
◎自立相談
事業[H27.4]
自立相談
支援関連
○総合相談窓
口等[H27.4]
◎自立相談
支援
[H27.4]
2
住居確保
支援関連
○住宅確保支
援[H27.4]
◎住居確保
給付金
[H27.4]
3
就労準備
支援関連
○就職活動支
援[H27.4]
◎就労準備
支援
[H27.4]
◎就労自立支援
[H27.4]
◎就労準備支
援[H27.4]
△自立生活
支援等
◆就労準備
支援
◎就労準備
支援[H27.4]
4
一時生活
支援関連
○経済的援助
[H27.4]
△一時生活
支援
[H27.4]
△各種貸付制度
受付窓口(一時
生活支援関連)
△生活福祉資
金貸付制度
(一時生活支
援関連)
[S30~]
△各種シェル
ターの設置
◆空き部屋
等を開放
(一時宿泊、
シェルター)
△一時生活
支援
5
家計相談
支援関連
○家計相談支
援[H27.4]
◎家計相談
支援
[H27.4]
△各種貸付制度
受付窓口(4以外)
◎家計指導相談
[H27.4]
△生活福祉資
金貸付制度(4
以外) [S30~]
◎家計相談支
援[H27.4]
△生活再生
貸付事業
◆金融教育
等
○家計相談
支援[H27.4]
6
学習支援
関連
○就学・学習支
援[H27.4]
◎学習支援
[H27.4]
△無料学習の支
援
◎学習支援
[H27.4]
△学習支援
(家庭教師
派遣等)
◆学習支援
(自社教材
の活用等)
○学習支援
[H27.4]
7
就労訓練
関連
○就労訓練
[H27.4]
◎就労訓練
[H27.4]
△地域就労
支援C等
◎就労訓練
[H27.4]
◎就労訓練
[H27.4]
△就労訓練
◆就労訓練
(コミュニティ
カフェ等)
◎中間的就
労認定等
[H27.4]
8
職業的自
立
○直接雇用等
[H27.4]
△地域就労
支援C等
◎直接雇用等
[H27.4]
◎直接雇用等
[H27.4]
△各種講座
等実施等
◆各種講座
実施、直接
雇用等
○要支援者と
企業マッチング
等[H27.4]
-
△各種相談
⑥民間企業
1
-
△地域福祉コー
ディネーター研修
[H16~]
⑤非営利法
人
-
-
◎住居確保
給付金
[H27.4]
※1:生活困窮者自立支援法に基づく実施主体は、福祉事務所設置自治体。 府域の福祉事務所設置自治体は43市町村のうち、34市町及び大阪府。
※2:府は福祉事務所未設置自治体における事業実施主体としての役割をはじめ、各主体の取組み等のサポート役を担う
13
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
(①社会福祉法人)
❏ 社会福祉法人は、社会福祉法第22条の規定により、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人として、従前より、生活困窮
者に対する総合生活相談や経済的援助(生活困窮者レスキュー事業)や地域貢献支援員(スマイルサポーター)の配置など、要援護
者支援に取り組んできた。
❏ そして今、国の動きや社会情勢により、生活困窮者や様々な生活課題を抱える人などに対し、社会福祉法人が、それぞれの施設種別の
特性や強みを活かし、連携・協働して、より積極的な支援活動を行い、地域のセーフティネットの核となる事業に取り組むことが求められている。
❏ 新法の施行を目前に控え、その趣旨に鑑み、これまで培ってきたノウハウ等を活かし、法定事業への参画はもちろん、オール大阪の社会
福祉法人による独自の事業展開をはじめ、民間企業等、多様な主体とのネットワークの構築が期待されているところである。
❏ こうした動きを踏まえ、大阪府社会福祉協議会老人施設部会では、今年5月、会員の社会福祉法人に対し、生活困窮者支援の取
組み状況や法定事業(特に中間的就労)への参画意向等に係るアンケート調査を実施した。まず、法律内容についての認知状況をみ
ると、「少し知っている」法人を含めて、「知っている」法人が約7割弱(68%)である一方、あまり知らない法人も約3割(28%)近くに
上っている。また、社会福祉法人の使命として、「生活困窮者の自立支援、中間的就労へ法人全体で取り組んでいく」という法人もみられ
た。このように、社会福祉法人が原点に立ち返り、前向きな検討、積極的参画が求められるところである。
【図表⑦:「生活困窮者自立支援法」に関するアンケート調査概要(大阪府社会福祉協議会老人施設部会実施)】
●実施対象:大阪府社会福祉協議会老人施設部会会員 ●実施期間:H26.5.26~H26.6.18 ●アンケート回収率:33.92%(送付数451、回答数153)
[法律内容の認知】
全く知らない
無回答4%
(6)
2%(3)
知っている
あまり知らない
26%(39)
27%(41)
[「中間的就労」の認知]
無回答
全く知らない
6%(9)
あまり知らない
[「中間的就労を実施したいと思うか]
無回答
3%(5)
知っている
思わない
22%(35)
2%(3)
27%(40)
あまり思わな
9%
思う
(13)
21%
(33)
い
26%
少し知っている
少し知っている
41%(64)
41%(64)
(39)
どちらかと言え
ば思う
42%
(65)
14
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
(②市町村)
❏ 府内市町村では、地域の福祉課題を各種機関等へつなぐコミュニティソーシャルワーカーの配置や各種福祉サービスの提供、相談窓口
の設置・対応等を通じて、地域住民の安全・安心をサポートしている。特に就労支援では、地域就労支援センターを設置し、相談事業を
はじめ、無料職業紹介やセミナー等、地域密着型の取組みを展開している。さらに、より効果的な就労支援を講じるため、その成否のカギを
握っているのは、市町村の雇用担当と福祉担当セクションの連携と情報量等によるものと考えている。
❏ また、新法に係る法定事業の実施主体(福祉事務所設置自治体)として、地域の実情に応じた支援メニュー等を充実させ、多様な主
体・社会資源との連携を図ることが求められているところである。一方、要援護者の発見や関係機関等へのつなぎ等の手法、財源確保等
の課題をはじめ、自治体の取組み状況に温度差が生じることも懸念される。市町村は、生活困窮者支援の最前線である。このことを肝に
銘じ、要援護者の自立を第一に、創意工夫や多様な主体との連携などを図りながら、円滑な事業運営ができるよう、期待される。
(③市町村社会福祉協議会)
❏ 地域福祉の現場を支え、要援護者にとって一番身近な市町村社会福祉協議会では、市町村と密な連携を図り、地域の特性を踏まえ
創意工夫を凝らした独自の事業に取り組んでいる。
❏ 今後、新法施行に伴い、生活困窮者の発見に係るアウトリーチや関係機関等へのつなぎ等、要援護者の状況に応じた自主的な取組
みも含めて、市町村をはじめ、地域を構成する多様な主体や社会資源と、今まで以上に連携強化を図りながら、地域社会の核として、さら
には、先導役として積極的な参画が求められている。
(④大阪府社会福祉協議会)
❏ 府や市町村社会福祉協議会等と協調・連携を図りながら、府全域に配置されているコミュニティソーシャルワーカーをはじめとした各種コー
ディネーター養成研修等の実施や権利擁護の窓口等、府域全体を網羅する、幅広い要援護者支援に取り組んでいる。
❏ 今後、これまで取り組んできたノウハウ・実績等を活かしつつ、今まで以上に複雑な福祉課題に対応できる福祉人材の養成強化や
府域の社会福祉法人が取り組む要援護者支援等、各種施策のサポート機能としての役割が期待されている。特に、今後、ますます
15
需要が高まると予想される生活困窮者自立支援を担う人材については、その確保はもちろん、質の向上が必須である。そのため、高い地
域解決力を備えた、新たな福祉課題に対応できるカリキュラム開発等が求められている。
Ⅳ 社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割
(⑤非営利法人)
❏ 多様な福祉課題等の解決・就労支援等に取り組む非営利法人が府域に多数存在している。既に、府事業の委託先として、ニート等、
若者の就職支援等に積極的に取り組んでおり、府の施策推進への寄与度も高い。
❏ 昨年度、府が実施した生活困窮者自立支援モデル事業をみると、非営利法人における中間的就労への関心は高く、就労等の受入先と
して参画・協力が見込まれ、要援護者の自立をバックアップする強力な支援主体と考えられる。
❏ 今後、生活困窮者自立支援における各種事業を展開していく中で、地域に密着した社会貢献活動を進める非営利法人の協力は不可
欠であり、多様な主体との連携や各種機能への参画が期待されている。特に、中間的就労をはじめ就労支援については、既に取り組んでい
る非営利法人も多く、そのノウハウ等を活かし、各主体の先導役としての役割も求められている。
(⑥民間企業)
❏ 社会貢献事業(CSR)の一環として、障がい者等の就職困難者に対する職場体験や実習等の就労支援に取り組む事例も増えつつ
ある。民間企業は、生活困窮者に対する就労支援についても、こうした企業CSRの一環として実施されている取組み、さらには雇用の受入
れ主体としての役割が期待されている。特に、今、人材不足の状況が深刻さを増す中、人材確保の観点からも積極的な取組みが求められる。
❏ 特に、職業的自立を支える中間的就労や雇用の受入れ先としての役割が求められており、行政をはじめ、多様な主体との連携は必須
である。一方、新法の認知度をみると、公益性の高い社会福祉法人等に比べ、民間企業の認知度は低い状況にある。この状態を改善す
るため、民間企業の人事担当者等への研修等を通じて、生活困窮者に対する理解を深める必要がある。
(⑦大阪府)
❏ 府では、前述でも検証したとおり、地域課題を抱える要援護者を支援する施策を展開してきた。今後、我が国を取り巻く福祉課題は、
目まぐるしく動く社会構造の変化により、複雑かつ多様化する傾向にある。そのため、広域自治体である府が果たす役割は、ますます大きく
なる一方であり、生活困窮者支援においても、郡部(福祉事務所未設置自治体)については、府が法定事業を実施する必要が
ある。さらに、府域共通の課題把握はもちろん、市町村や福祉サービス供給主体が抱える個別課題等の情報収集に努めつつ、
16
大阪の実情を踏まえた、多様な主体のネットワークによる大阪方式(一気通貫支援)の構築が求められる。また、大阪方式を構築するう
えで、これら主体をつなぐトータルコーディネート機能としての役割が必要であると考える。
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
1.「大阪方式」の提案にあたって
● まず、「大阪方式」という用語について、要援護者による相談やアウトリーチによる対象者の把握をはじめ、生活支援、学習支援、就労
訓練、そして職業的自立に至る、切れ目ないシームレスな生活困窮者自立支援に係る「一気通貫システム」と定義したい。
● 次に、提案にあたり、大阪方式における「生活困窮者」の定義及び「さらなる地域貢献」の考え方について、検証する。
(①生活困窮者とは)
❏ 新法では、第2条第1項において、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう」と規定し
ている。一方、生活保護受給者については、生活保護法の規定に基づく各種支援措置の対象である。このように、新法と生活保護法では
対象者を棲み分けしているところであるが、本報告書における一気通貫システムの検討では、大阪の実態に沿った独自の概念を定めること
で、対象を幅広にとらえ、「生活困窮者」の自立支援に取り組んでいくこととする。
❏ 大阪の実情をデータでみると、全国で最も高い生活保護率はもとより、全国平均より群を抜いて多い高校中退者やニート、非正規労働
者数など、生活困窮者を生み出す要因が山積しており、生活困窮者と生活保護受給者の垣根を越えた総合的支援が必要であると考える。
【図表⑧:大阪の実情(データ)】
要因
大阪/全国
高校中退率
(%)
[H24]
2.1/1.6
[資料出所]第3回検討部会配布資料より抜粋(大阪府 H26.7.30)
ニート(千
人)
[H24]
43/617
引きこもり(千
人)
[H22推計]
50/700
非正規労働者(千
人)
[H24]
1,476/20,427
生活福祉資金
(件)
[H24]
4,041/28,504
生活保護率(%)
[H26.4]
3.4/1.7
❏ こうした現状を踏まえ、大阪府における「生活困窮者」を次のとおり、①から③のいずれかに該当する場合であると定義することとする。大
阪府をはじめとした多様な主体においては、要援護者へのきめ細かな対応に取り組むべきである。
①
現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある人(=生活困窮者自立支援法第2条第1項)
②
経済的な問題をはじめ、社会的孤立や家族の問題など複合的な問題を抱えており、これまでの対象者や分野ごとの仕組みだけでは
対応が困難な状況にある人
③
生活困窮状態に陥るおそれのある人、又は、陥っている人
(高校中退者、ニート、引きこもり、非正規労働者、生活福祉資金利用者、ホームレス、生活保護受給者等)
17
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
(②地域貢献から、さらなる地域貢献=「福祉協働(ソーシャル・パートナーシップ・プログラム)」へ)
❏ 要援護者に狭間をつくらない新たな地域福祉の取組みは、社会福祉法人をはじめ地域における多様な主体が、これまで以上に重層的
なネットワークを組むことで、“地域福祉を支え合う、自助、共助、公助の協働関係づくり”をめざすことに他ならない。これまでの地域貢献か
ら一歩進んだ、地域の共生と協働にもとづく「さらなる地域貢献」へ。本報告書では、これを「福祉協働(ソーシャル・パートナーシップ・プログ
ラム)」と呼び、これら福祉協働を担う各主体の自主性の尊重と信頼醸成を図りながら、「大阪方式」の施策提案を行いたい。
2.大阪方式を提案する視点(福祉協働に向けた「一気通貫支援システム」の構築)
● 大阪における生活困窮者の自立支援について、これまで各主体が、それぞれの専門性を活かして取り組んできたところであるが、各主体
の相互連携による施策推進面で課題を残す。そこで、新法施行を契機に、これまで蓄積されたノウハウ等を踏まえ、大阪の実情に沿った
「福祉協働(=さらなる地域貢献)」を進めるため、社会福祉法人を核としたオール大阪体制による「大阪方式(一気通貫支援システ
ム)」を提案する。
● 大阪方式の提案にあたっては、下表(提案の視点)に記載のとおり「点(支援機関単体)」から「線(ネットワーク化)」、「面(トー
タル支援)」へ、実施主体と施策の拡がりをイメージし、福祉協働に向けた一気通貫支援のシステム構築をめざす。
提案の視点
具体的内容
【1】「福祉協働」の核としての社会福祉法人の役割と支援事業
の強化 《点を「つよくする」》
▸社会福祉法人が、地域福祉の実践において、“蓄積した成果“、”ノウハウや
強み”を活かし、福祉協働の核となる事業(相談から就労支援まで)を展開
【2】社会福祉法人と多様な主体(民間企業、公益法人等)
とのネットワーク構築 《点から線へ「つなぐ」》
▸社会福祉法人が備える高い公益性と、民間企業や公益法人等が有する
専門性等を組み合わせ、福祉協働をネットワーク展開
【3】ネットワークを活かし、福祉協働を、「トータルパッケージ(一
気通貫支援システム)」で提供 《線を面へ「ひろげる」》
▸法定事業に含まれない(枠外にある)施策ニーズをも把握し、要援護
者にとって狭間や切れ目をつくらない、一気通貫の支援施策の仕組みを検討
18
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
3.今後の具体的な取組み
● 前述の「大阪方式」を提案する視点に基づき、社会福祉法人をはじめ、多様な主体における、これまでの取組みの成果として蓄積された
“ノウハウや強み”を活かし、以下のとおり、地域のセーフティネットの核となる生活困窮者自立支援策を検討、展開していく必要がある。
● この取組み提案を実践していく過程において、適宜、実情に応じ、柔軟な検討を進め、「大阪方式」の一気通貫システムを構築されたい。
【1】 「福祉協働」の核としての社会福祉法人の役割と支援事業の強化
《点を「つよくする」》
(①法定事業への参画)
❏ 新法では、自立相談事業から就労訓練にいたる7事業を規定。府内34市町の福祉事務所設置自治体(島本町を除く9町村について
は府が実施)が、法定事業の実施主体として、国庫補助等を活用しながら、直営又は委託方式で行うこととされている。
❏ なお、社会福祉法人においては、その専門性や経験を活かして、法定事業の受託者として積極的に参画することが期待されている。
(②社会福祉法人独自の取組みの実施)
❏ これまで、社会福祉法人同士が連携を重ね、福祉課題を解決する地域密着型の施策を実践してきた。前述の大阪府社会福祉協議
会・老人施設部会が取り組んできた生活困窮者レスキュー事業については、この制度の全国普及をめざし、各都府県へ精力的に働きか
け、府域を越えた要援護者支援に取り組んでいる。加えて、居場所づくりや学習支援、就労訓練、直接雇用の受入れ等、生活困窮者の
サポートに尽力してきた。そんな中、このたびの新法施行を機に、社会福祉法人は、福祉協働への積極的参画が期待されており、地域の
実情に応じた独自の生活困窮者自立支援施策の実施検討が求められている。
❏ 具体的には、生活困窮者レスキュー事業やスマイルサポーター事業等、既存の枠組みを活用し、参画施設を増やすなど、さらなる活性
化が期待される。
❏ また、社会福祉法人が物品購入等を行う手法として、就労訓練(いわゆる中間的就労)に取り組んでいる事業者を優先的に評
価し、発注する取組みも福祉協働のひとつであると考える。この社会福祉法人の取組みが、事業者の要援護者支援を後押しし、
福祉協働のシナジー効果を生み出す。なお、小規模法人では、法人同士の連携により、共同発注する等の工夫も必要である。
19
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
【2】 社会福祉法人と多様な主体(民間企業、公益法人等)とのネットワーク構築 《点から線へ「つなぐ」》
(③多様な主体との連携)
❏ 生活困窮者自立支援では、入口(相談)から出口(職業的自立)までの一気通貫の支援メニューを備えることが必要である。現在、
相談業務等の生活支援については、社会福祉法人が核となり福祉的サポートを展開している。一方、就労支援については、一部の社会福
祉法人で取り組んでいるが、人的・財政面を含めてその受け皿機能には限りがあり、これまでの社会福祉法人による先行施策を、民間企業
をはじめ多様な主体の取組みにつなげ、拡げていくことが課題である。そのため、特に、就労支援については、社会福祉法人は、民間企業を
はじめ多様な主体と連携しつつ、得意分野へノウハウを結集し、福祉協働に取り組むことが期待されているところである。
☑ 「地域就労支援センター」との連携
❏ 地域情勢に応じた就労支援を展開する、府内全市町村に設置されている地域就労支援センターとの連携も重要である。同センターでは、相
談業務をはじめ、無料職業紹介やセミナー等、就職困難者と地域に根ざした民間企業等とのマッチング等に取り組み、就職に結びつくなど、成
果を上げている。こうした支援機能と社会福祉法人の要援護者支援を組み合わせることで、職業的自立の施策強化を図ることが可能になる。
☑ 「若者サポートステーション」との連携
❏ さらに、若者やニートの就労支援に取り組む「若者サポートステーション」等との連携・活用も視野に入れたい。これは、働くことに悩みを抱え
る15歳から39歳の若者に対し、専門相談や就労体験等を行う国事業である。府域には、9か所整備されており、平成18年度から実施し
てきた豊富な実績とノウハウを有している。社会福祉法人等においては、就労支援に取り組む中で、地域のサポートステーションと定期的な
情報交換の場を設置し、若者やニートの就労支援の強化を図ることが可能になる。
☑ 「民間企業等」との新しい連携
❏ 生活困窮者自立支援システムを構築するには、福祉の垣根を越えた就労支援への本格的な参画が必須となる。そのため、社会福祉法
人は、民間企業をはじめ、多様な主体と新しいネットワークをつくり、要援護者を職業的自立へつなげていく仕組み整備が期待されている。
❏ これまで、生活困窮者を、直接、企業へ結びつける機能は存在しなかったため、要援護者の職業的自立が進まないことも多かった。
そこで、職業的自立を支える新たな就労支援パートナーシップ(コンソーシアム)を早急に構築することが求められる。
20
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
❏ 例えば、生活困窮者に対する就労支援の充実に向けて、社会福祉法人(大阪府社会福祉協議会等)が、民間企業、そして民間企
業を束ねる連合体等とともに新しいパートナーシップを組み、“就労に係る相談~就労体験~職業的自立”へつなぐ、要援護者のキャリアを
育成する取組みについて、実現可能性も含めて検討を進めることを提案したい。
❏ 施策展開にあたっては、要援護者の履歴や相談等を記載した就労支援カルテを作成。多様な主体が情報共有し、各主体が有する政策
資源(専門人材、財源、ノウハウ等)を投入する等の工夫が必要となる。
❏ 特に、これまで、就労訓練(いわゆる中間的就労)等に取り組んできた社会福祉法人においては、蓄積された支援ノウハウを活かし、支
援員等(施設に常駐するCSW等)の派遣や訓練給付(非雇用型)・保険料等の費用助成など、人的・財政面から、就労支援に取り
組む民間企業等を積極的にサポートすることが求められている。財源については、現在、要援護者の緊急的経済援助を中心に活用してい
る社会貢献基金の使途に就労支援も加えるなど、創意工夫を重ね、福祉協働を推進することを期待する。
❏ このスキームが実現すれば、社会福祉法人(大阪府社会福祉協議会)と民間企業等との新しい関係構築に立った、画期的な「大阪
方式の一気通貫システム」として、職業的自立へつなげていくことが可能になると考えられる。なお、この取組みを市町村単位に応用し、前述
の地域就労支援センター、市町村社会福祉協議会、そして地域密着型企業等が就労支援パートナシップを組み、職業的自立へつなげる
仕組みづくりが有効であると考える。この場合、市町村の役割が極めて重要となる。
❏ また、現在、社会福祉法人が行う入札は、一般競争入札が基本とされているが、応札事業者における生活困窮者の就労支援について
の取組みを評価する「総合評価入札」の導入を提案したい。これにより、事業者における要援護者支援を後押しし、福祉協働のシナジー効
果を生み出すことが可能となる。
❏ さらに、生活困窮者支援を行う具体的な手法として、民間企業をはじめ、生活困窮者支援に協力的な主体が集まり、事業協同組合等
を設立し、参画法人が仕事の切り出しを行い、生活困窮者の就労訓練等に活用する仕組みも有効である。今後、このような形態が、非営
利性の高い、新しい「社会福祉法人」として認められる等のインセンティブがあれば、より一層、普及する可能性もある。
☑学校法人等との連携
❏ 貧困の連鎖を断ち切り、子どもたちが将来にわたって職業的に自立して生活できるよう、大学等の学校法人等と連携し、学生ボラン
ティアの派遣契約などを締結し、要援護者の子どもたちの学力向上をサポートすることも、大変重要であると考える。
21
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
【3】 ネットワークを活かし、福祉協働を「トータルパッケージ(一気通貫支援システム)」で提供
《線を面へ「ひろげる」》
❏ 前述の【1】【2】のとおり、全国初の取り組みとして、福祉協働(ソーシャル・パートナーシップ・プログラム)を先導的に進めるため、府には、
その“トータルコーディネート役”としての機能が求められる。多様な主体間の連携を「つなぎ」「ひろげる」ことで、施策の体系化が図れ、オール
大阪体制の新たな生活困窮者自立支援の「トータルパッケージ(一気通貫システム)」を構築できる。
❏ また、府の様々な福祉施策に生活困窮者支援の視点を加え、行政として独自の取組みを検討していくことも必要。例えば、前頁において
提案している総合評価入札制度について、現在、府は、障がい者雇用の促進など、行政の福祉化の観点を評価基準として盛り込んでい
る。これを参考に、生活困窮者の雇用促進の観点を評価基準に加えるなど、大阪独自の施策として検討されることを期待する。生活困窮
者自立支援(就労訓練、雇用等)に取り組む企業等へのインセンティブの付与とともに、こうした施策が他の自治体へ拡がる中で、相乗的
な支援効果、まさに福祉協働の効果が発現するものと考える。
【図表⑨:府域における生活困窮者自立支援制度の将来像(イメージ)】
多
様
な
主
体
[資料出所]第3回検討部会配布資料より加工(大阪府 H26.7.30)
社会福祉法人
民間企業
経済団体
NPO
病院
支援
支援
生活困窮者
学校
民生委員
寺社
CSW
社会福祉協議会
大阪府
連携
府内市町村
22
■法定事業:郡部対象に、全事業実施
■独自事業:オール大阪体制の支援を検討
(=一気通貫の支援体制を構築)
■法定事業:必須事業を実施。
■任意事業:市町村の判断による
(=地域実情に沿った取組み&府取組みを併
用した支援展開)
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
【図表⑩:今後の具体的な取組み内容(=大阪方式、一気通貫システムの構築)】
[資料出所]第3回検討部会配布資料より加工(大阪府 H26.7.30)
[▸:新規 ○:拡充]
自立相談支
援
点を
「つよくする」
法定事業
点から線へ
「つなぐ」
社会福祉
法人独自の
取組み
就労準備
支援
一時生活
支援
家計相談
支援
学習支援
就労訓練
職業的自立
▸社会福祉法人は、単独又はJV方式において法定事業を受託し、生活困窮者の自立支援に参画し、
職業的自立へつなぐ
○総合相談
窓口
○就職活動
支援
○経済的
援助
○家計相談
支援
○就学・学
習支援
○就労訓練(中間
的就労)の受入
○直接雇用の受
入
○生活困窮者レスキュー事業の拡大(施設数、資金拠出額 等) ○スマイルサポーター事業の拡大(施設数 等)
▸中間的就労等事業者への発注
(共同含む)
多様な主体
との連携
▸地域就労支援センターとの連携
○CSW等
との連携
○居場
所づくり
の設置
▸大学
(学生ボ
ランティア)
との連携
▸若者サポートステーションとの連携
▸民間企業等との連携(支援法人、コンソーシアム等)
▸総合評価入札制度の導入
線を面へ
「ひろげる」
トータルパッ
ケージ機能
▸社会福祉法人をはじめ、多様な主体間の連携(上段参照)を「つなぎ」「ひろげる」ことで、オール大阪
体制の新たな生活困窮者自立支援の「トータルパッケージ(一気通貫システム)」を構築する
23
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
4.留意すべき点
● 今後、前述の具体的な取組み内容について、社会福祉法人をはじめ、多様な主体においては、次の点に留意しながら、その実現に向
けて取り組むことを期待する。
(①「福祉協働」への参画意義)
❏ 社会福祉法人は、社会福祉法の規定に基づき、社会福祉の推進に寄与することを目的として設立される法人である。このため、多くの法
人が、それぞれの専門性を活かし、いわゆる社会福祉事業だけではなく、公益事業等、幅広く地域支援活動に取り組んできた。一方で、永
続的、安定的に社会福祉事業を行う必要があることから、様々な税制上の優遇措置を享受している。また、社会福祉法人は、利益配当も
許されておらず、法人外への資金拠出も認められていない。
❏ すなわち、社会福祉法人は、税制上の優遇措置を受けているから社会福祉事業や地域支援活動を行うのではなく、本来的に、これら事
業を行う法人として、税制上の優遇措置を受けているという制度の趣旨を踏まえる必要がある。
❏ また、他の経営主体との公平性(イコールフッティング)についても規制改革会議などで議論されたところであるが、社会福祉法人は、株
式会社等の他の経営主体と異なる役割を果たす使命を踏まえ、地域ニーズへの対応にしっかり取り組んでいく必要がある。今後、社会福祉
法人においては、この参画意義を踏まえ、地域福祉の中枢として、セーフティネット構築に取り組まれたい。
(②国の動き(法人外への資金拠出のあり方、法人税課税議論 等)
❏ 社会福祉法人が福祉協働に取り組むためには、今まで認められていなかった法人の内部留保等の資金を外部拠出できる仕組みの整備
が不可欠である。この点については、厚生労働省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会(H26.7)」において公益的活動の義務
化や資金使途の弾力化について検討すべき等、一定の方向性が示されたところであるが、引き続き、制度や運用の見直しが行われるよう、
社会福祉法人においては、府とともに、機会あるごとに、国へ働きかけられたい。また、社会福祉法人を指導・監査する立場にある府では、自
治体の裁量の範囲内で柔軟な対応を行うことが望まれる。制度や運用によって、社会福祉法人による福祉協働の取組みが阻害される
ことは決してあってはならない。さらには、社会福祉法人における「総合評価入札」の導入では、府のノウハウを提供するなど、積極的
なサポートが期待される。
24
❏ なお、社会福祉法人への課税議論(H26.6税制調査会(内閣府))については、社会福祉法人の経営のあり方と福祉協働のあり
方の兼ね合いの観点から、引き続き、注視していく必要がある。
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
(③福祉協働に参画する主体へのインセンティブの付与)
❏ 社会福祉法人の中には、中心的業務である施設運営に注力し、それ以外の取組みに対し積極的ではない社会福祉法人も存在する。
❏ そこで、社会福祉法人が福祉協働に積極的に取り組んでいる場合、府のホームページ等により、広く公表したり、福祉協働を証するプレー
トの付与や顕彰制度を設けるなど、行政主導でインセンティブの付与を検討すべきである。これにより、社会福祉法人の取組みを広くPRする
ことで、地域社会と、よりよい関係が構築され、誰もが住みよい地域づくりへ寄与するものと考える。
❏ また、小規模の法人については、人的、財政的な理由から、単体での福祉協働への参画が困難な場合もあると思われる。対応策として、
複数法人での取組みも期待されるところであり、行政は、インセンティブを付与する際には、これら法人に対し、一定の配慮が求められる。
❏ 併せて、現段階では、民間企業にとって、障がい者雇用のような法的拘束力を持たない生活困窮者支援への参画が難しい現状を踏ま
え、生活困窮者支援へ振り向けるインセンティブについても検討されたい。
(④トータルコーディネートとしての行政の役割)
❏ これまで具体的な取組み内容を提案してきたところであるが、総合調整を行う行政の役割が期待されている。福祉事務所設置自治体で
ある市町や府では、福祉分野に限らず、庁内連携による多種多様なネットワークを活用し、あらゆる社会資源の活用や関係機関等へのつ
なぎ等を通じて、福祉協働に取り組む社会福祉法人をはじめ、多様な主体の取組みを下支えすることが求められる。
❏ また、法定事業では、府は広域自治体として、自立相談支援などの必須事業の充実と就労準備支援など任意事業への参画意義・重
要性について、市町村へ働きかけるとともに、市町村ごとに取組み内容に差が生じることのないよう、トータルコーディネートに尽力されたい。
(⑤要援護者の状況に応じた支援)
❏ 前述の多様な主体との連携における具体的取組み内容では、職業的自立に重きを置いて提案しているところであるが、生活困窮者の自
立支援では、要援護者の置かれている生活や身体状況等に応じた支援を行うことが重要である。
❏ そのため、全ての生活困窮者を就労支援へつなげることを、最終ゴールに設定するべきではなく、新法の趣旨に沿って「相談から
職業的自立」までつなげる大阪方式の一気通貫のスキームを整備する、あらゆるステージに対応できる切れ目をつくらないシステムを
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構築することが、トータルコーディネートとしての行政に期待されている使命である。また、大阪府をはじめ、国、市町村においては、福祉の垣
根を越え、商工労働セクション等、各部局と連携を図りながら、要援護者支援に努めるべきである。
Ⅴ 「大阪方式」の生活困窮者自立支援システムの提案
5.今後の工程
● 本報告書での記述については、直ちに取り組めるもの、関係機関等の調整が必要なもの、財源措置が伴うものなど、取組み内容の種
別により、実施時期等も異なることから、今後の工程を整理する。
(①法定事業への参画)
❏ まず、法定事業への参画については、社会福祉法人においてこれまでのノウハウ等を発揮できる施策分野であり、各市町村の委託先公募
状況等に応じて、積極的な参画を期待したい。
(②社会福祉法人独自の取組み)
❏ 既に、実施している法人においては継続的な取組みを進めるとともに、新法の趣旨を加味した、施策拡充や新たな取組み(マンパワー等)
についても速やかに検討されたい。なお、法人の施設種別や規模等を勘案し、中核事業である施設業務に支障が出ない範囲で取り組まれたい。
(③多様な主体による取組み)
❏ 地域就労支援センター等との連携や総合評価入札制度の取組みなど、現行制度の枠組みを活用するものについては、その実績を活か
し、生活困窮者の自立支援の視点を加えた施策展開を図るため、検討を進めることが期待される。
❏ 一方、「民間企業」との新しい連携では、福祉協働への取組み経験やノウハウが少ない民間企業等との理解と参加が必要なため、多くの
時間と労力を要するものと想定される。特に、社会福祉法人と民間企業等との連携による就労支援パートナーシップ(コンソーシアム)構
築では、参画団体の調整や、その具体的な制度設計を行う必要がある。府は、連携を「つなぎ」「ひろげる」ための、コーディネート役として積
極的に取り組むことが必要である。まずは、前述の市町村単位での取組みに着手するなど、創意工夫を凝らして取り組んでもらいたい。
(④5年後、10年後の大阪の姿)
❏ 我々がめざすべき姿は、「真に必要な人に、必要なとき、必要なサービスが行き届く地域社会づくり」である。そのためには、本報告書
で提案した支援の取組みが、一人でも多くの要援護者の生きがいと暮らしを支える価値ある施策として、福祉現場で実践されるよう、
26
福祉協働に取り組む多様な主体が知恵を絞り、実践に向けて着実に取り組んでほしい。5年後、10年後の将来、この大阪方式が全国モデ
ルとして拡がり、我が国の生活困窮者の自立を支えるスタンダードな取組みとして普及することになれば幸いである。
参考1:国の動き[規制改革会議(抄)(社会福祉法人制度関係)]
27
[資料出所]第1回社会保障審議会福祉部会資料より抜粋
(H26.8.27厚生労働省)
参考1:国の動き[「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」報告書のポイント]
28
[資料出所]第1回社会保障審議会福祉部会資料より抜粋
(H26.8.27厚生労働省)
参考1:国の動き[法人税の改革について(抄)]
29
[資料出所]第1回社会保障審議会福祉部会資料より抜粋
(H26.8.27厚生労働省)
参考2:大阪府地域福祉推進審議会委員 名簿
明石 隆行
石原 欽子
○岩間 伸之
大谷 悟
大舩 一美
岡田 忠克
小田 克彦
木田 正裕
黒田 研二 小尾 隆一
柴原 浩嗣
白澤 政和
杉村 和子
高岡 國士
田垣 正晋
田中 千余子
谷口 富士夫
中北 清
西田 孝司
農野 寛治
比嘉 邦子
藤井 博志 藤森 次勝
◎牧里 毎治
牧野 康幸
水谷 綾
森垣 学
吉田 初恵
□菊池 繁信 □関川 芳孝
□西座 新二
種智院大学人文学部 社会福祉学科長
大阪府民生委員児童委員協議会連合会 会長
大阪市立大学大学院生活科学研究科 教授 大阪体育大学健康福祉学部 教授 社会福祉法人産経新聞厚生文化事業団 専務理事
関西大学人間健康学部 教授 大阪府市町村社会福祉協議会連合会 幹事
大阪府町村長会(豊能町生活福祉部長)
関西大学人間健康学部 教授 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 理事・事務局長
一般財団法人大阪府人権協会 業務執行理事兼事務局長
桜美林大学大学院老年学研究科 教授 公益社団法人大阪社会福祉士会 元会長
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会 社会福祉施設経営者部会長
大阪府立大学人間社会学部 准教授 大阪府介護者(家族)の会連絡会 元会長
大阪府市長会(四條畷市健康福祉部長)
特定非営利活動法人ふくてっく 理事
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会老人施設部会 副部会長
大阪大谷大学人間社会学部 教授 弁護士
神戸学院大学総合リハビリテーション学部 教授 一般社団法人大阪府医師会 理事
関西学院大学人間福祉学部 教授 公認会計士
社会福祉法人大阪ボランティア協会 事務局長
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会 事務局長
関西福祉科学大学社会福祉学部社会福祉学科 教授
社会福祉法人吹田みどり福祉会 理事長 大阪府立大学人間社会学部 教授
社会福祉法人来友会 理事長 ◎は会長、○は会長職務代理者、□は専門委員
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参考3:社会福祉法人の「さらなる地域貢献」とこれからの生活困窮者自立支
援のあり方検討部会委員 名簿
○明石 隆行
種智院大学人文学部 社会福祉学科長
□菊池 繁信
社会福祉法人 吹田みどり福祉会 理事長
□関川 芳孝
大阪府立大学人間社会学部 教授
□西座 新二
社会福祉法人 来友会 理事長
森垣 学
社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会 事務局長
○:部会長、□:専門委員
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参考4:「社会福祉法人の『さらなる地域貢献』とこれからの生活困窮者自立支援のあり
方検討部会」開催経過
開催日(平成26年)
回数
議事内容等
第1回
◇社会福祉法人をとりまく状況
(厚生労働省大臣官房 審議官 古都賢一氏)
◇社会福祉法人による生活困窮者への総合生活支援
(社会福祉法人八尾隣保館 理事長 荒井惠一氏)
◇生活困窮者自立支援モデル事業の実施経過報告
6月17日
第2回
◇CSWの役割・これまでの活動と生活困窮者支援
(社会福祉法人豊中市社会福祉協議会
事務局次長 勝部麗子氏)
◇エル・チャレンジの取組みとこれからの社会的企業型事業協同組合モデルの
検討
(大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合
理事兼事務局長 丸尾亮好氏
政策研究室
田岡秀朋氏)
◇報告書のとりまとめに向けて
▸大阪府域におけるこれまでの取組みに係る効果検証
▸社会福祉法人の「さらなる地域貢献」と各主体の役割 など
7月30日
第3回
◇報告書のとりまとめに向けて
▸大阪方式の生活困窮者自立支援システムの構築 など
9月 3日
第4回
◇報告書とりまとめ
4月25日
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