中野 瑞彦 「事業再生と中小企業金融の課題

中野報告
「事業再生と中小企業金融の課題」
へのコメント
証券経済学会秋季大会(第62回)
桃山学院大学
2004年11月27日
松山大学 掛下達郎
評 価
極めて妥当な結論
・金融面から時間をかけた取組み必要
・量的緩和政策で高収益率の中小企業
向け債権を金融機関が放出する必要なし
・市場型間接金融も私募債ないしシンジ
ケート・ローンの延長線上にすぎない
理論的または実証的研究?
中小企業債権の証券化問題
貸し渋り対策としての売掛債権の証券
化などに代表される市場型間接金融
市場型間接金融も私募債ないしシンジ
ケート・ローンの延長線上にすぎない
市場型間接金融の趣旨
「リスクを社会全体で薄く広く負担する」
大企業や中堅企業は市場型間接金融
を利用できるが中小企業は?
リスク負担:誰がどのように
中小・零細企業は民間金融市場から締
め出されるか,中小・零細企業のリスク
が全て自治体にシワ寄せされる
cf. アメリカの場合は連邦政府が負担
金融機関はリスクに見合うリターン要求
公的部門がどこまでリスク負担を分担し
うるか ⇔ どの公的部門:国 or 地方
全国的な制度or 補助金?
アメリカの事例を基にした仮説①
SBA(中小企業庁)の保証ローンでは,
一般に保証部分が証券化される。
⇔ 未保証部分は証券化されにくい。
中小企業貸付の信用情報をオリジネー
ターである銀行は知っているが,ローン
(証券化されたものも含む)の買い手は
知ることができない。
日本の現実①
「証券化の手数料を考えると,自前融資
の方が貸出金利も高めにできて収益に
つながる」(地銀幹部)
大阪府の無担保融資制度(11月~)
「中小企業向けの貸出債権を束ねて管
理し,焦げ付きの一部を府が保証する
仕組み」
「だが,景気回復につれ,有力な地銀は
自らの融資拡大を優先する戦略に」
『日経新聞 』2004年10月2日 ,2ページ。
アメリカの事例を基にした仮説②
証券化のためにプールされた中小企業
貸付の満期は,5~12年が典型的であ
り,その返済は月々の割賦返済が一般
的である。
⇔ 月々の完全割賦返済方式でないと
証券化されにくい。
つまり,返済ストリームが固定されない
と,貸付をパッケージするのが難しい 。
日本の現実②
2004年 群馬県住宅供給公社が公営住
宅と起業者育成支援施設の入ったビル
造成を計画、桐生市が買い取る方式で、
35年割賦返済で総額8億2千万円。
1994年 スルガ銀行は中小商工業者に
夏季特別融資を開始。信用保証協会扱
い、返済は原則として割賦返済。
1992年 藤沢市は市内中小企業救済措
置として運転・設備資金を融資 、5年以
内に元金割賦返済 (『朝日新聞』聞蔵)
アメリカの事例を基にした仮説③
RTC(整理信託公社)の発行したパス・
スルー証券では,ノン・リコース(償還請
求権なし)形式が一般的
ノン・リコースとはいっても担保価値ま
でリコースでき,たとえば30%の劣後債
と15%の準備金というかたちで合計45%
のリコースをあたえている。これを,元本
と利子全体までリコースされないという
意味で,ノン・リコースと呼んでいる。
日本の現実③
ノン・リコース・ローン は「金融機関に
とってリスクが高い貸し出しになるから、
金利は日本で一般的な融資よりも2倍ほ
ど高い水準」『日経ビジネス 』2002年7月
22日号 ,29ページ。
たとえば,森ビルの六本木ヒルズの建
設資金2700億円のうち1700億円が高金
利のノン・リコース・ローン。『日経ビジネ
ス 』2003年4月28日号 ,39ページ。