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ボストン日本人研究者交流集会(第9回)
タフツ大学医学部
粂
和彦
K. Kume, 2001
最初に宣伝から・・・
医療改善ネットワーク(MIーnet)
日本の医療をよくすることを目的とする市民グループ
www.mi-net.org
医療従事者の良心的行動を支援する会
医療過誤、ミスなどの情報公開促進を目的とする会
www12.u-page.so-net.ne.jp/ta2/kkume/some-ca/
睡眠障害相談室
私の運営する睡眠障害に関するサイト
homepage2.nifty.com/sleep/
K. Kume, 2001
生物時計とは
さまざまな形の生物時計
1.発生を刻む時計
=>プログラム
2.代謝活動を刻む時計=>タイマー
3.共時性を測る時計 =>スイッチ
4.自律して時を刻む時計=>クロック
概日周期、月、季節、年、時間、秒・・・
K. Kume, 2001
概日周期(サーカディアンリズム)とは
マウス(夜行性)の運動リズム
1. 約24時間周期の時計
サーカ = 約
ディアン = 1日=24時間
LD
2. 外部から調節可能
光などにより、進み遅れを
修正することができる。
3. 自律して動く
外部の環境が一定でも、
時を刻み続けることができる。
DD
4. 温度(体温)変化に抵抗性
体温が変わっても同じ周期を
保ち続ける
FRP = 23.8 h
FRP = 22.5 h
K. Kume, 2001
生物時計(24時間時計)の必要性
1.時刻を知る:今、やるべきことは・・・
2.季節を知る:この季節にやるべきことは・・・
(日照時間を測ることによる)
3.方角を知る:渡り鳥の「羅針盤」
K. Kume, 2001
生物時計(概日周期)の乱れによる病気
•
•
•
•
時差ぼけ
睡眠相後退症候群(=>不登校)
交替勤務症候群
非24時間睡眠覚醒症候群
K. Kume, 2001
生物時計の一般的構成
光
環境因子
入力系
(リセット)
出力系
発振器
(時計本体)
K. Kume, 2001
哺乳類の概日周期制御機構
1. 概日周期中枢:視床下部視交差上核
Lesioning of SCN =supra chiasmatic
nucleus results in compete abrogation of
the circadian rhythm in a whole body.
2. 時計本体:ここの神経細胞
Approx. 10,000 neurons has their own
rhythm, manifested by cyclic change in
their electrical activities, and
synchronized by cell-cell interaction,
probably using GABA.
3. 発振機構:
ネガティブフィードバック転写制御
Oscillation of certain proteins by the
transcriptional regulation level is required
to maintain the cycling of electrical
activity.
K. Kume, 2001
生物時計の時計の針
• 時計の針はピリオド蛋白の量!?
ピリオド蛋白量
朝
昼
夕
夜
朝
K. Kume, 2001
ネガティブフィードバックによる発振機構
K. Kume, 2001
概日周期発振機構の詳細
光
CRY
TIM
TIM
PER
+
TIM
PER
TIM
CLK
CYC
E-box
PER
ショウジョウバエ
+
mPER
PER
E-box
mCRY
mCRY
mPER
E-box
mCRY
CLOCK
mPER
BMAL
E-box
mCRY
mPER
哺乳類
K. Kume, 2001
人間の概日周期は25時間か?
• 最新の研究では、「外的な刺激のない条件下」では、
ほぼ24時間。
• これは、老化によっても変化しない。
• 個人差は30分程度。しかし、この30分が、実は非常
に大きな意味を持ち、さまざまな状況で2-3時間近い
差にも増幅されうるため、朝型・夜型を決めている
可能性がある。
K. Kume, 2001
時計の針を合わせるのは?
• もっとも強く影響を与えるのは、光。
• 光によりリセットは、その強さに応じて変わるので、
強い光の方が、作用が強い。
例:晴れた日の屋外 10,000 lux 以上
明るい部屋でも、 1, 000 lux 程度
• その他:運動、食事、睡眠?
K. Kume, 2001
生物時計の光によるリセット
時計が進む
朝
昼
夕
夜
朝
時計が遅れる
K. Kume, 2001
生物時計の進み方は一定ではない
8時間
6時間
4時間
6時間
生物時計
25
15 21
7
朝
物理時計 7
7
昼
13
夕
夜
朝
25
19
7
K. Kume, 2001
概日周期により制御されているもの
• 眠気=>睡眠
• 体温
• 種々のホルモン
コルチコステロイド、メラトニン
K. Kume, 2001
睡眠について
• 睡眠の定義=脳波で定義=>哺乳類と鳥類にしか、
厳密な意味での睡眠はない。
• 約90分の睡眠周期を一晩、数回繰り返す。
• 睡眠のライフサイクル
乳児は約3分の2を眠って過ごす。
睡眠パターンは生涯を通じて変化
=>もっとも最初の老化現象!60代以上では、
第3段階以上の深睡眠は、ほとんどなくなる。
K. Kume, 2001
睡眠の必要性
• 完全な断眠は、致死的
• レム睡眠、ノンレム睡眠、それぞれの完全な除去は、
致死的らしい。
• ただし、非常に短時間(週に1時間など)の睡眠で
問題がなかったという超短眠者の記録もある。
• 必要・充分な睡眠時間は、個人差が大きく、また同
じ人でも環境・状況に応じて、大きく変化する。
• なぜ、断眠が致死的になるのか、睡眠の持つ意味は
何かについては、まだ答えは無い。
K. Kume, 2001
レム睡眠とノンレム睡眠
• ノンレム睡眠:脳が眠っている睡眠。体の力は完全
には抜けていない。最も浅い第1段階の睡眠から、
深い第4段階までに分類される。
• レム睡眠:脳波は起きている時に近いくらい活発に
変化しているが、体の筋肉の力は、ほとんどぐった
り抜けている。目の筋肉はこの抑制を受けないので、
活発に動いている(目をきょろきょろさせている)。
この睡眠の時、多くの夢を見ている。
K. Kume, 2001
レム睡眠の不思議
• 人間ではレム睡眠は必ずノンレム睡眠の後に見られ
る。(例外:ナルコレプシー)
• 脳波は、覚醒時と同じようなパターンをしめし、夢
を頻繁に見ている。
• 目の筋肉と呼吸を司る筋肉以外は、完全に弛緩する。
• この弛緩する仕組みに異常が起きると、レム睡眠時
に起きだして「無意識のまま」さまざまな行動を行
う。回りの人を殴ったり、外出して家の外をさま
よったり、窓から転落することなどもある。レム睡
眠行動異常と呼ばれる。(子供によくある夢遊病=
睡眠時遊行症は、ノンレム睡眠時に起きるもので、
これとは異なる)
K. Kume, 2001
睡眠物質
• 現在までに、少なくとも30種類以上の睡眠物質が
見つかっている。
• 多くは炎症・感染に関連する物質で、病気の時に眠
くなる現象に関与する。
例:プロスタグランジン、インターロイキン、
ムラミルペプチド、など。
• 真の睡眠物質と考えられるものは、まだ未同定。
K. Kume, 2001
ナルコレプシー
•
•
•
•
•
日中に過度の眠気をきたす代表的疾患
日本人には比較的多い(1万人に1人)
発症は高校生から20代、30代に多い
家族歴は、まれ。
日中の脱力発作、睡眠発作、レム睡眠異常
• 最近、オレキシン(ハイポクレチン)というペプチ
ド性ホルモンの異常によることが、わかった。
K. Kume, 2001
睡眠(夢)の意義
• 最新のMITのグループの研究によると、ネズミは、
起きている時に学習したことを、眠っている間に思
い出し(多分、夢として)、記憶に定着させている
らしい・・・
• これは、迷路で学習させた後のレム睡眠中に学習中
と非常に似た脳波が観察されることから推測された。
• また学習した後(2ー6時間後)に、レム睡眠を抑
制したり、断眠させると、学習したことをちゃんと
記憶できず、学習効率が下がる。
=>睡眠は記憶・学習に必要(らしい)
K. Kume, 2001
ネズミの学習と夢の中での復習?
ZZ Z...
レム睡眠時の回想
(夢による再学習?)
迷路での学習時
ストレスなど
レム睡眠の阻害
記憶(学習)成立
???
記憶・学習障害
K. Kume, 2001
睡眠のホメオスターシス
• 睡眠の量は、眠気によって調節されている。
• 眠気を決めるのは、
1.それまでの覚醒時間の長さ(累積した睡眠不足
の分を含む)
2.生物時計の示す時間
3.その他の内的・外的要因(食事、興味など)
K. Kume, 2001
Two Process Model
断眠からの眠気(S)
awake
sleep
awake
sleep
実際の眠気
生物時計からの
覚醒信号(C)
K. Kume, 2001
徹夜明けにすっきりするのは・・・
断眠からの眠気
実際の眠気
残存睡眠不足
生物時計からの
覚醒信号
awake
awake
awake
sleep
K. Kume, 2001
意識は睡眠をコントロールする
血液中のコルチゾール濃度
8時に起床しろと
指示された群
6時に起床しろと
指示された群
6:00
8:00
眠っている間にも起きるための準備を、体は始めている!
K. Kume, 2001
今後の研究課題
• 真の睡眠物質は何か?
• 概日周期と睡眠をつなぐ物質は何か?
• 睡眠の意義は何か?
• 睡眠を減らすことはどこまで可能か?
K. Kume, 2001