教育学入門Ⅱ Part I-3 成長しないヒロインの「創造力」 伊藤 崇 北海道大学大学院教育学研究院 アイデンティティの変化が学習である 海女クラブの 構造 ベテラン 学習結果と 連動した 役割の構造 新人 アイデンティティの変化が学習である 正統的周辺参加 Legitimate Peripheral Participation; LPP 実践のコミュニティにおいて,新人が経験を積 みながら古参者になる過程(Lave & Wenger, 1991)。 新人ははじめ,責任の小さい周辺的な仕事を になう。同時に,古参者の仕事を観察しながら 実践について深く知るようになる。 正統的周辺参加論とは ベテラン ウニを採る 学習結果と 連動した 役割の構造 潮の流れる海に潜る 1分以上潜っていられる 新人 正統的周辺参加論とは 非参加の参加 ウニを採る × 潮の流れる海に潜る × 1分以上潜っていられる ベテラン 学習結果と 連動した 役割の構造 新人 労働者の能力開発の担い手は誰か? (%) 100 Off-JTまたは計画的OJTを実施 80 60 Off-JTを実施 40 計画的OJTを実施 20 1986 87 88 89 80 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04(年度) 職業訓練実施率の推移(内閣府,2007) 正統的周辺参加論の関係論的補正 「新人」を関係論的に見ると →人は複数の実践のコミュニティに 同時に所属している 「ベテラン」を関係論的に見ると →人をベテランにする社会的条件を, 人は社会的実践を通して作っている あるときは新人,あるときは経験者 経験者 経験者かつ新人=多重成員性 複数の実践のコミュニティに「同時に」所属することによって 形成されるアイデンティティ(Wenger, 1998) あるときは新人,あるときは経験者 海女 潜水士 アイドル アキは,中途半端(=アマチュア)のまま 実践コミュニティにおけるプロ=あこがれの対象 正統的周辺参加論の関係論的補正 「新人」を関係論的に見ると →人は複数の実践のコミュニティに 同時に所属している 「ベテラン」を関係論的に見ると →人をベテランにする社会的条件を, 人は社会的実践を通して作っている あるときはベテラン,あるときは凡人 実践に対する 疑い あるときはベテラン,あるときは凡人 新人とベテランの区別は, コミュニティの実践との関係で決まる →ベテランはいつどこでもベテラン なのではない 新人?経験者? ベテラン?凡人? あるときはベテラン,あるときは凡人 北三陸とは 文脈横断 異なる状況や集合体間をまたぐ過程全般のこと(香川,2011) アマちゃんの重要な役割とは? 正統的な周辺参加者がもつ役割とは コミュニティ同士の結節点となる →相互交流の促進/阻止 あるコミュニティの知識や技術を 他方に持ち込む →実践コミュニティの発展/破壊 あるときはベテラン,あるときは凡人 芸能界とは ブローカリング 北三陸とは ブローカー ブローカリング 複数の活動の間を横断し,一方の知識や技術を 他方に持ち込むこと(Wenger,1998) ブローカリングを行う者を「ブローカー」と呼ぶ 「成長しないヒロイン」とは? 個人は変化しないが,周囲の 環境との関係が変わる コミュニティの間を移動することで コミュニティ自体やその実践を変える これが,プロではないアマちゃん (=アマチュア)の果たす役割である サードプレイスへの越境 学ぶこと 自体が楽しい 働く意味を もう一度 見出したい 会社以外の場所で 自分のスキルを 活用したい 職場の 常識を破りたい 情報収集や 能力開発 会社以外に人脈を 作りたい 現状の不安を 解消したい 起業の準備を したい 中原淳 (2010). 職場学習論:仕事の学びを科学する 東京大学出版会 サードプレイスへの越境 越境 サードプレイス 越境 都市生活者の「居場所」の うち,「家」(ファースト プレイス)と「職場」 (セカンドプレイス)の 中間にある第三の場所。 中原淳 (2010). 職場学習論:仕事の学びを科学する 東京大学出版会 サードプレイスへの越境 社外勉強会Bは,企業会計など同じ専門領域や テーマに関心のある人々が,業務以外の時間に 集まり,その分野やテーマに関する最新の知識を 学んだり,情報を交換しあったりしている。 入会・退会は自由で,メンバーは勉強会以外にも 懇親会を開き,仕事の悩みを相談しあったり, 新しいアイディアを語り合ったりすることもある。 荒木淳子. (2007). 企業で働く個人の 「キャリアの確立」 を促す学習環境に関する研究: 実践共同体への参加に着目して. 日本教育工学会論文誌, 31(1), 15-27. サードプレイスへの越境 仕事に対する態度の確立 社会的役割の獲得感 専門領域の自覚 今後の仕事に対する 意欲と展望 自身の職務内容に対する 深い振り返り サードプレイスに形成された 実践のコミュニティへの参加 荒木淳子. (2007). 企業で働く個人の 「キャリアの確立」 を促す学習環境に関する研究: 実践共同体への参加に着目して. 日本教育工学会論文誌, 31(1), 15-27.
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