多国籍企業論:April. 20, 2013 多国籍企業の新たな特質と競争優位 多国籍企業の持続的競争優位 ー P&G社とJ&J社の事例からー 1 基本コンセプト 21世紀 知識資本主義時代(Knowledge Economy) における多国籍企業と国際(グローバル)競争優位 (一部の国、企業、組織が情報・知識を独占できない時代) 競争環境:「加速化」「可変化」「広域化」 新たなコンセプトに基づく経営戦略と 競争優位性構築の必要性 2 (1) 技術開発力・研究開発能力の強化 と 研究開発能力のグローバルな分散化 科学技術知識生産能力のグローバルな分散化 • グローバルに競争優位性を持つ製品を開発す るためには、国際的に分散化した頭脳(人材) をグローバルに活用することが不可避になって きた時代 3 (2) 人材活用のグローバル化 (メタナショナル化) • 本社の従業員だけが頑張っても、 グローバルな規模で競争優位を 構築できない時代 4 Number of National Origins of Authors with more than 1 Paper in a Year 1970 1980 1990 Number of Nationalities of Authors 85 109 Source: Made from INSPEC Search 122 2000 2010 135 176 5 ケース : P&G 設立: 1837年 本社:米国オハイオ州シンシナティ 2011年度 売上高: $826億ドル (約6兆6千億円) 営業利益: $ 158億ドル 売上高営業利益率: 19.2% 研究開発費: $2,226 mill(2008年) 世界の80カ国に事業拠点 従業員数:138,000名 ブランド数:300強 グローバル・ブランド(年10億ドル以上) : 24 6 Three billion times a day, P&G brands touch the lives of people around the world. 主要製品ブランド 衣料用洗剤 柔軟剤入り洗濯用洗剤 防臭柔軟剤 台所用洗剤 食器洗い乾燥機用洗剤 エアケア 洗濯用液体洗剤 ヘアケア製品 アリエール ボールド レノア ジョイ ハイウォッシュジョイ ファブリーズ ボーナス パンテーン ・h&s(エイチ アンド エス) ヴィダルサスーン ・ハーバルエッセンス ウエラ 乳幼児用紙おむつ・ 生理用品 : パンパース ・ ウィスパー 化粧品 SK-II ・マックス ファクター ・イリューム7 P&G社の地域別売上高(2011年) 8 花王社の地域別売り上げ(2011年) 売上高:1兆2千億円, 営業利益:1千億円:売上高営業利益率:8.8% 9 ケース: P&Gの戦略転換 1990年代末から、R&D効率の伸び悩み、新製品成功率も35%前後の低水準 P&Gの株価も118ドルから52ドルに低下。 時価総額は半分以下に現象 2000年、A.ラフリーがCEOに指名される。 イノベーションの半分を外部調達 (Out-sourcing)せよ! 10 • P&G社内の研究者・補佐員合計7500名 • これらの研究者と同等の能力を有する研究者 は全世界で、1名につき200名存在する • 全世界では、同等レベルの研究者は 合計150万人(200名*7500名) • 全世界の有能な研究者と研究開発成果と Connect & Develop せよ? Connect & Develop 戦略 HBR, Aug.2006 11 花王とP&Gの論文著者内訳(2005-2006年:米国発行論文):(単位 %) P&G 花王 90 (79.5) 80 70 60 58.3 53.2 50 (38.5) 40 2.8 文 同 共 究 研 共 (国 際 共 同 との 業 ・企 大 学 論 文 論 論 同 同 共 との 等 学 大 ) 文 文 論 文 業 企 内 業 企 間 共 共 同 同 論 論 文 * 文 )論 人 (個 ) 0 0 独 (8.3) との 7.3 5.6 10 14.7 11.9 外 12.8 (社 30 20 単 (36.1) 33.3 12 花王社の米国特許発明者国籍:2005年米国特許(単位:件数) Number of Nationalities of Inventors : 4 DEU 4 (3) JPN 82 (1) USA 0 (2) ESP 1 注:丸の中の数値は単独発明。また、傍線脇の数値、例えばDEUとJPN(日本)との直線脇の(3)は、 ドイツ国籍の発明者と日本国籍の発明者による同社名義の共同発明米国特許件数が3件であった ことを意味する。 13 出所:米国特許データベース[USPATFUL]検索により作成 P&Gの米国取得特許(2005年)の発明者国籍 発明者国籍数 : 14 FRA 0 (2) (3) BEL 10 (1) (9) (1) CAN 0 (2) (1) GBR 14 (16) JPN 11 MEX 0 USA 183 (7) (1) (1) (1) (1) CHE 1 (7) (1) (8) (4) IND 0 (9) (3) CHN 1 RUS 0 (3) (9) (3) (2) (1) DEU 7 (2) VNZ 0 (4) ITA 15 (1) 14 2011年度末のコンビニ大手4社国内店舗数:48,000店舗 → 2012年度 約50,000店舗 2011年度の大手4社の海外店舗数:44,600店舗 → 2012年度 54,000-59,000店舗 日経新聞;2012年5月2日付け グローバリゼーションと競争優位性 2 多国籍企業の国際的競争優位性(国際競争力) の 源泉? • 本社国籍の従業員だけが、また特定の民族だけが いくら頑張っても生き残れない時代 (2) グローバリゼーションによる競争環境の国際化 • グローバルな人的資源の活用システム = 多様な国籍・文化を背景とする従業員の 「多文化マネジメント・システム」の構築 16 J&J社の概要 • ジョンソン・エンド・ジョンソン(創業1886年)は、世界57カ国に約 250のグループ企業を有し、総従業員数118,000名の陣容を誇 る「世界最大のトータルヘルスケアカンパニー」。 • 消費者向け製品、医家向け製品である医療機器・診断薬、医薬 品の分野で数万アイテムに上る製品を、世界中の顧客に提供。 • 年間の総売上高は2008年度で約637億ドル(約6兆3000億円)、 1932年以来76期連続で増収、25期増益記録を更新中であり、 創立以来の平均成長率は11%。2011年度(売上:650億ドル、 営業利益138億ドル)売上高営業利益率:21.4% 研究開発費:75億ドル(対売上高比率:11.5%) • ワールドワイドでの事業分野別の売上構成(2008年度) 消費者向け製品25%・医療機器・診断薬36%・医薬品39%。 売上の約45%が米国、海外55%(ヨーロッパ:25%、アジア太平 洋地域:17%、その他地域14%) 17 J&Jのグローバル競争優位の源泉 • J&Jの企業理念 「Our Credo(我が信条)」 J&J社で働く世界中の全社員の一致した 経営理念および行動指針 36の言語でHP上に記載 競争環境がダイナミックに変化する時代 ほど変わらぬ理念が活きてくる 18 1935年に「企業としての信条」という タイトルでJ&J社の経営哲学として公表 第一番目:消費者(顧客) 二番目:社員 三番目:地域社会 最後の四番目:株主 19 • 1943年: 企業の果たすべき4つの責任を明記した 「Our Credo(我が信条)」が公表 全社員が共有する 恒久的な価値判断の基準 事業活動におけるトップ・マネジャーの 重要な意思決定の基本指針 20 第二の責任:社員に対する責任 • 社員一人一人は個人として尊重され、 その尊厳と価値が認められなければならない。 • 社員は安心して仕事に従事できなければならない。 • 待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、 整理整頓され、かつ安全でなければならない。 • 社員が家族に対する責任を十分果たすことができるよう、 配慮しなければならない。 • 社員の提案、苦情が自由にできる環境でなければならない。 • 能力ある人々には、雇用、 能力開発および昇進の機会が 平等に与えられなければならない。 • 我々は有能な管理者を任命しなければならない。そして、その行 21 動は公正、かつ道義にかなったものでなければならない。 Fortune Most Admired Companies 2012 1 Apple 2 Google 3 Amazon.com 4 Coca-Cola 5 IBM 6 FedEx 7 Berkshire Hathaway 8 Starbucks 9 Procter & Gamble 10 Southwest Airlines 11 McDonald's 12 Johnson & Johnson 13 Walt Disney 14 BMW 15 General Electric 参考文献 • 「企業は多文化マネジメントを学べ」 『エコノミスト』 2008年年9月9日号, 50-54. • 「ジョンソン & ジョンソン」 『経営戦略と競争優位性』 (林・関・坂本編著、 税務経理協会、第3章), 2006年, 57-74. • 「多国籍企業と知識創造論の系譜と展望」 「戦略的知識創造の国際的メカニズムとダイナミッ ク・ケイパビリティ」『多国籍企業とグローバルビ ジネス』 第4章・第6章、税務経理協会、2012年 23 人材の活用がグローバルな規模で 成されてきた場合、多様な国籍・文化 を背景とする従業員の人たちに対する 「多文化マネジメント」において もっとも重要な点はなにか? 24
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