2015年春学期 「経営学入門」 第9回 CCCの経営 樋口徹 1 Tポイントカード加入者数の推移 2 CRM(Customer Relationship Management) • 情報システムを利用して企業が顧客と長期的な関係を築く手 法(画一的な顧客管理から個々の顧客管理へ) • 顧客データベース(個々の顧客の属性と購買履歴)を元に、顧 客の利便性と満足度を高め、個々の顧客生涯価値(単純に言 うと売上)を最大にする。 会 員 番 号 購 買 ・ 利 用 (個人情報) (店舗やサイト) デ ー タ 蓄 積 デ ー タ 分 析 個 別 の 販 促 ( デ ー タ ベ ー ス ) 3 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社グループ CCCグループ CCC TSUTAYA(FC事業) TSUTAYA.COM (ネット事業) Tポイント・ジャパン (Tポイントカード事業) 2011年10月にネット・エンタテインメント事業について100%子会社の株式 会社TSUTAYA.comに別会社化 2012年10月にTポイントプログラム運営事業を展開する新会社として株式 会社Tポイント・ジャパンを設立 4 Tポイントの事例 TSUTAYAでDVDをレンタルすると、ファミリーマートなどの割引 クーポンをもらうことがある。Tポイントカード会員がレジでの支 払いの際に、データベースからその会員が利用する可能性はあ るが、あまり利用していない 提携先 を紹介するのが目的。 ※TポイントカードはTSUTAYAのレンタル会員証が始まりで、 T ポイントカードの提携先でTポイントの獲得と利用ができる (TはTSUTAYAでなく、 Top を意味する)。 ※現在、 TポイントカードはCCC(カルチュア・コンビニエンス・ク ラブ株式会社)が運営している。CCCの主要事業 はアライア ンス・コンサルティング事業(Tポイントサービス等)、 TSUTAYAフランチャイズ・直営事業、商品・エンタテインメント 事業(インターネットサービス等)、新規事業(リコメンドサー ビス等の展開)である。 5 Tポイントカード事業の展開 (2010年7月時点で3556万人が所有) 2003年にTSUTAYA会員向けTポイントサービス開始 (会員の 囲い込み と実質的な割引) ↓ ↓ 2005年からTSUTAYA以外の提携(アライアンス)先でも利用開始 (参加企業は、ファミリーマート、牛角、エネオス等70社超) ↓ ↓ 会員データベース活用(参加企業間の 相互送客 ;従来の得 意客以外を取り込む) TSUTAYA会員の Tポイントカード 提携による発展 Tポイントカード グループを形成 ※提携企業・会員数や情報量が 増え、新たなビジネス創出へ 6 増田宗昭の年表 1951年 大阪生まれ 交通事故(半身不随状態)⇒レスリング部で鍛える(夢は叶う) 1969年 同志社大学経済学部入学(バンド活動⇒メンバー1人引き抜き⇒ギター を捨て、ファッションへ⇒洋裁学校にダブルスクール) ※モノ作りの時代からファッションの時代が来ると確信 1973年 洋服屋の鈴屋入社(軽井沢ベルコモンズ担当に) 1975年 軽井沢ベルコモンズ(長屋タイプのショッピングモール)オープン;店舗 開発や経営計画担当:開店準備から原価管理まで一から学ぶ) ※「と にかくやってみる」が人を育てるコツだと認識(しない理由は不要) 1982年 姉とLOFT(喫茶店兼レンタルレコード屋)を開業し、大成功。 ※「ライバルが出現する前に次を抑えておかなければならない。」 1983年 鳶屋書店(本、ビデオ、レコード屋)を創業 ※成熟した社会が求めているのはものでなく、ライフスタイル ※売れたらどうするかでなく、全然売れなかったらどうするか(リスク) 1985年 「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」設立(TSUTAYAのFC展開) 1995年 ディレク・ティービー・ジャパン設立(衛星デジタル放送)⇒失敗し、1999 年に同社の社長解任 ※コンテンツをデジタル化して、ネットで課金の時代が日本にも来る 7 CCCがCDや書籍販売でFC方式を導入した理由 • 2号店を開業した時に、商売のノウハウへの質問殺到。 • しかし、直営店だけで大規模展開する資本力が不足していた(リス クが大きすぎるので、躊躇)。 • そこで、「 企画 」を売ること(フランチャイズ)によって、展開。 • 小規模の出資者が多数参加することによって、仕入れや宣伝など で規模の経済を享受できるようになる。 • 企画力があれば加盟店は脱退しない(増やすことより、減らさない ようにする)。 • 数が多くなると各加盟店のサービスの質を維持することが大変に なるし、現場で起こっている危機的状況への対処が遅れる(ゲオの 進出への対応が鈍く、まとまりがなかった)。 ※フランチャイズの意味 1. プロスポーツチームの本拠地。また、そこで試合する興行権を持っていること。 2. (チェーン店などに)一手販売権を与えること。また、その権利。 (最初のフランチャイズ展開はケンタッキーフライドチキン) 8 ゲオとのレンタルDVD「100円戦争」からの脱却 ゲオが全国一律で旧作を安価で貸し出すキャンペーンを実施し た。(ゲオの店舗数は2001年3月で285店であったが、翌年には 416店に) ↓ ↓ 地域で競争状況が異なるので、TSUTAYAは一律の対応策を採ら なかった。 ↓ ↓ ゲオが売上高でTSUTAYAを2009年9月に逆転した。 ↓ ↓ TSUTAYAも旧作100円/週を開始した( 消耗戦 の始まり)。 ↓ ↓ 一層の値下げ??? 9 TSUTAYAの消耗戦への対応策 • TSUTAYAが「 発掘良品 」を面白くなかったら返金という条件 で300~400円/週で貸し出しを開始した(差別化: 新作 依存 型の収益構造からの脱却)。 • データベース(貸出データや店長へのアンケートなど)を活用し、 過去に作品化された4万タイトルの映画の中から良品を探しだし、 定価 で貸し出す。 • 他者が扱っていない良品を発掘することや認知度が低かった良 品の 回転率 を向上させることにも成功した。 ⇒値下げ競争に対して、良品の提供(値上げ)という形で対抗。 10 CCCの組織改革 • 3000人の会社を 10 人の組織のように動かせる会社を目指 した。 • 効率的に顧客満足を高めるために、従来の支社・部・課などは 廃止・統合して「ビジネスユニット」に改編し、各ビジネスユニッ ト(現場のリーダー)に 権限移譲 した。 • それによって、店舗のレイアウトを変更するには本部への報告 などで1ヶ月は必要であったものが、即座にできるようになった。 (「カルチュア・コンビニエンス・クラブ組織壊し第2の創業」『日経 ビジネス』09年5月4日号)。 11 CCCの目標とミッション 目標:「CCCを世界一の 企画 会社に」 ※生活に革命を起こすプラットホーム(自分らしさ)を提供 ミッション(行動規範):「 私 をおもしろくする会社」 ※私とはCCCの企画人財 ドメイン:「生活事業提案」 事業本部体制 エンタテインメント事業本部(ツタヤ中心) DBマーケティング事業本部(Tポイント) Tメディア事業本部 (ネット活用サービス) 連結売上高:1750億円(2013年3月期) 12 CCC事業の沿革 1982年 増田宗昭が、大阪府枚方市に喫茶店兼貸レコード店 「LOFT」を開店 1983年 大阪府枚方市にTSUTAYA 1号店「蔦屋書店 枚方駅前店」 開店(蔦屋重三郎という浮世絵の 版元 で、写楽や歌麿 を送り出した人の名前から命名。) 1985年 カルチュア・コンビニエンス・クラブ設立(TSUTAYAのFC展開) 1993年 CD販売事業のFC展開 1994年 書籍販売事業(TSUTAYA BOOK NETWORK)のFC開始 1999年 ツタヤオンライン㈱設立 2003年 アライアンス先とTポイントに関する業務提携を締結 2006年 CCCからフランチャイズ事業部門を株式会社TSUTAYAに分 割し、TカードをTSUTAYA以外でも発行開始 2007年 Tカードが2000万人を突破(2月)(20代の40%利用)ファミ リーマートでもTカードの発行、Tポイント付与・還元開始 13 CCCの事業ドメイン(イメージ) 「自分らしさ」=「My Style」を持った人へ、 常に新しいライフスタイルの提案 ENTERTANMENT インフラ NEW BUSINESS インフラ CCC MARKETING インフラ HUMAN& MOTIVATION インフラ ※CCCのインフラを生かすことが できる企画人財の育成 14 増田宗昭の偉業 • 「TSUTAYA」(「映画、音楽、本を、一つのお店で買える、借りられる」 という生活を提案 ⇒「映画館での鑑賞から自宅(ビデオやDVD)での鑑賞」 ⇒日本の音楽市場(CDやダウンロード)は金額ベースでアメリカ と2強(2010年) ※一位はアメリカで43億ポンド、日本は35億ポンド(2010年) • 「Tポイント」の展開 ⇒顧客囲い込み ⇒相互送客・連携(連合形成) ⇒ビッグデータ(マーケティング) 15 CCCの行動規範 顧客を一番知っている人間になる。 顧客の言うことを聞くな、顧客のためになることをなせ。 顧客に「ありがとう」と言われる仕事をする。 自分の志で人生をつくり、世界一流になれる仕事の領域を持つ。 約束は誇りにかけても守る。やり切る。できない約束は悪をつくる。 その場で決断する。問題をのばすことが問題になる。 現場・現物・現実の情報を組み合わせる。 会社にいるな。世の中にいろ。 8.好感度人間たれ。好かれなければ情報は集まらない。 9.企画、企画、企画。勇気、勇気、勇気。 失敗を恐れない。その先に成長がある。 10.出を制して、入るを図る。 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 以上を、今日、行動せよ。 2003年10月28日 16
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