Hallucinogens and Psychotomimetics group21 小笠原 彩 篠原 宏成 羽尾 清貴 涌井 祐太 Case history R.W. 19歳男性 主訴:抑うつ状態(腕に引っかき傷・膿瘍) 11歳 アルコールをはじめた。 慢性薬物使用者 13歳 カンナビス(インド大麻)を使い始めた(アルコールと一緒に) 15歳 退学。友人からコカインをすすめられ、常用 コカインと一緒にアルコール、ベンゾジアゼピン、マリファナ を鎮静のために使っていた LSD、メスカリン、アンフェタミンも数回使用していた 18歳 人格障害悪化。コカイン乱用エスカレート 3週間前 コカイン使用量増加(一日1~2g) 症状 やせている 栄養不良 落ち着きがない 呼吸が荒い 軽い頻脈 発汗 注意力散漫 治療 デシプラミン処方 薬物依存者更正施設に委託 大麻 大麻 cannabis クワ科インドアサ(cannabis sativa)の 花頭部を乾燥させたもので、主成分は 1-Δ-thetrahydrocannabinol(THC)で ある。THCはマリファナに1~3%含ま れている。 葉を乾燥 marijuana bhang ganja 樹脂 hashish kif 大麻の精神的影響 ●初期症状 いつもより感覚が鋭くなったような錯覚 独特の心地よさとリラックス感 ●慢性症状 無動機症候群 (amotivational symdrome) abstruct thinking loss of drive (無気力、疲労感) emotional flatness (薬物中止により改善するが、元の水準までには戻らない 知的障害 =カンナビス痴呆) 幻覚、妄想、うつ 大麻の身体的影響 ●副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎、肺気腫 ●肺癌 (発癌物質を含む) ●生殖機能障害 男性 テストステロン産性低下 女性 生殖細胞に異常 胎児への影響 ●心拍数の上昇と末梢血のうっ血 ●Tリンパ減少による免疫能低下 大麻の作用機序1 THCのレセプター CB1 CB2 ●CB1 大脳皮質、海馬、 線条(尾条核、被殻)に存在 視床下部、扁桃、脊髄灰白質 に微量に存在 ●CB2 末梢部(脾マクロファージ、免 疫細胞)に存在 大麻の作用機序2 CB1,CB2ともにGタンパク共役型 レセプターに刺激 ↓ アデニル酸シクラーゼ不活性化 N型Caチャネル閉口 Kチャネル開口 大麻の作用機序3 CB1レセプターの活性 ↓ DAの放出 ●中隔側坐核(尾状核と被殻の融合部)に おける DA reuptake の阻害 ●DA放出抑制ニューロンの抑制 大麻の特性 ●LSDやアンフェタミンのような薬物との交 差耐性がない ●特異的な刺激がない ●THCは高脂溶性のため肺胞壁、血管壁 を超え、すぐに吸収される 大麻と他の薬物との併用 ●アルコールは相加的効果 ●アンフェタミン、バルビツール酸は相乗的 効果 → Cannabisiolが肝臓での酵素によ る薬物代謝を阻害するため コカインcocaine ●古くから南米アンデス地方では、興奮性嗜好品とし て、コカの葉がかまれていた。 ● 1860年に分離 ●中枢神経刺激作用をもち、精神依存が非常に強い ●かつては、局所麻酔薬として使われた コカインの投与方法 ○free baseの形〔crack〕 →燃やして吸煙する ○塩酸塩、硫酸塩 →経鼻的〔鼻粘膜から〕 経口 経静脈 コカインの薬理作用 ●ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニンの神 経終末における再取り込みを阻害 ●中枢神経系、末梢神経系におけるカテコール アミンの作用を増強 ●脳内報酬系【腹側被蓋野から側坐核に至る ドー パミン神経系】を活性化 →薬物の強化効果がおこり、精神依存の基盤に。 コカインの中枢神経系に対する作用 ☆主に大脳皮質と脳幹に対する興奮作用 ●覚醒時間の延長 ●作業遂行能力の向上 ●精神状態の昂揚 ●自信と安心感 ●多幸感【比較的高用量】 →しかし、その後はドーパミンの枯渇が起こり、抑うつ状 態などになり、依存になる。 コカインの中枢神経系に対する作用 【その2】 ※高用量の反復投与を繰り返すと ●不随意運動 ●常同的行動 ●幻覚 ●妄想【被害的なものが多い】 ●焦燥感が強くなり暴力的になる【重症の連用者】 コカインの交感神経系に対する作用 ☆交感神経に対しても刺激的に作用 ●心拍数増加 ●血圧上昇 ●散瞳 ●末梢血管収縮 ●呼吸数の増加 (呼吸中枢を興奮させる作用機序も考えられる) コカインの副作用 ●痙攣 ●呼吸不全 ●不整脈 ●心筋梗塞 ●脳血管収縮 ●流産、早期胎盤剥離(妊娠中) ●奇形や精神的発育障害(妊娠中) (注射の回し射ちによるHBV、HCV、HIV感染 細菌感染による真菌炎、クラップなどによる鼻粘膜の障害) コカインの退薬症状 乱用中止後24~28時間は、crashと呼ばれる不快な症状 (虚脱感、抑うつ症状) が続く ↓ その後、数日間は外見上の正常状態が続く ↓ その後、不機嫌、無反応、抑うつ、無快感、精神衰弱が続く (2~10週間の断薬後に改善する) ●本人にはとても辛く感じられ、コカインをまた使用する →乱用サイクルができる ※断薬後も間欠的なコカイン渇望がしばしば生じる コカイン依存の治療(その1) A 薬物治療 ●幻覚、妄想に対しては 抗精神病薬(haloperidol,chiorpromazine)を使用 ●退薬症状、コカイン渇望を和らげるには desipramine,imipramineなどの三環系抗うつ薬 amantadine,bromocriptineなどのドーパミン作用薬 コカイン依存の治療(その2) B 精神治療 ●薬物依存について説明し、やめることの必要性を 説き、やめるための方法論を説明し、行動を促す。 ☆集団精神治療も有効である メスカリン ●サボテンに含まれているアルカロイド ●アメリカのインディアンが祭礼のとき陶酔 の目的で用いられている LSD様症状を呈する薬物 ・LSD ・プシロシビン ・メスカリン メスカリンの構造 メスカリンはアドレナリン・エフェドリン・アンフェタミン に似た構造をしている (メスカリンは交感神経刺激作用を持つ) メスカリンの作用 5mg/kg体重を皮下注射する ↓ 幻覚を中心とする知覚異常(10~20分経過) ↓ 極期(3~4時間経過) ↓ 消退(12~24時間経過) →身体的には交感神経刺激症状があらわれる メスカリン依存は極めて少ない アンフェタミン ●間接型交感神経刺激薬 ●カテコールアミンのシナプス小胞からの放 出を増加させる ●カテコールアミンの再取り込みを阻害する →カテコールアミンの作用増強 ベンゾジアゼピン ●抗不安薬として用いられる →分裂病の幻覚・妄想や、うつ病の抑うつには 直接には作用しないが、神経症その他に伴う不 安・緊張を解除する作用が強い ベンゾジアゼピンの作用機序 BDZ系の薬物は主として辺縁系に作用する →GABAの作用を増強する BDZ受容体タンパクはGABA受容体タンパクとchloride channelタンパクの複合体と二量体を作っている ↓そのため BDZが受容体に結合するとGABAとchlorideが それぞれの受容体との親和性を増す ↓ Chloride channelがさらに開いてClイオンが細胞内に流入 ↓ 細胞膜の過分極が大きくなり、神経伝達が抑制される LSD 麦角の成分リゼルグ酸から半合成的に 作られたもの。もっとも強い幻覚剤のひ とつ (DA類似構造をもつ) LSDの吸収、分布、生体内変化 (1) •ヒトには2μg/kgで非常に効果がある 内服後30~60分、筋注後15~20分 静注後数分で効果があらわれる。 •血漿中では主にタンパク質と結合して いるが、結合は弱く、組織にすぐに取 り込まれる •半減期は3時間 LSDの吸収、分布、生体内変化 (2) LSDは他のhallicinogensと異なり、脳に すばやく吸収される(おそらく能動輸送) 脳中では下垂体、松果体、視床下部、 辺縁系、視覚・聴覚野にに高濃度で見 られる (幻覚作用に関与している) LSDの吸収、分布、生体内変化 (3) 肝臓での代謝 •LSDのうちの90%はグルクロナイドに 変化し、そのほとんどが胆汁中に、少量 が尿中に排泄される。10%は酸化され て2-oxy-LSD等に変化する。 LSDの身体症状 浮動性めまい、虚弱、震顫、悪心、感覚異常、 覚醒、落ち着きがない、etc 筋肉の収縮と過弛緩による協調運動不能 交感神経過剰活動 子宮の直接刺激による収縮 (LSDは麦角アルカロイドであり、そのα受容体刺激作用による) LSDの知覚症状 吸収してから1時間くらいで起こり始 める。 視覚症状 聴覚症状 その他 LSDの精神症状 服用2時間後くらいのピーク時には ・考えを示すことが非常に困難 ・夢を見ているような気分 ・心身分離症状 等の症状が見られる LSDの毒性 LSDは安全の幅が広く、LSDの直接の 毒性による死亡例は報告されていない LSDを使用している女性は自然中絶が 非使用女性に比べて多く、子供の染色 体異常や奇形が多いことが報告されて いる LSDの薬理学的機序(1) 少量のLSDは ・脳波の頻度と非同期性を増加させる ・中脳網様体の閾値を下げる ↓ 過覚醒状態 大量のLSDは、脳波は高振幅徐波の間期的発 火を示す。この脳波が見られる時期は幻覚を見 る時期と一致する。 LSDの薬理学的機序(2) 網膜の自発的電気活動が増え、興奮閾 値が下がる。しかし、外側膝状体でのシ ナプス伝達は弱められ、視覚刺激後の大 脳誘発電位は著しく変わる。 ↓ これらの発見は、LSDの幻覚作用が網膜 からの過剰入力と、視覚野・連合野への 不完全な入力が伴うことによることを示唆 している。 LSDの分子機序 LSDはいくつかの5-HT receptor subtypeに作用 すると考えられている。5-HT2 receptorのアンタゴ ニストとして、また、5-HT1Aと5-HT1Cのアゴニスト として働く。5-HT2に働くものには幻覚作用の無 いものもあるため、こちらの作用がLSDの幻覚作 用に関与していると考えられている。 繰り返し使用により耐性が生じやすくなる。 この耐性は5-HT2のdown regulationによる。 他の薬剤との交叉耐性がない。 家族歴 父親:慢性アルコール中毒 母親:健全(たぶん) 兄:人格障害(薬物不使用) 家族背景 ○アルコール・薬物依存症の家族 研究が注目されている ↓ クラック(コカイン)乱用者の51%に 親世代のアルコール依存症が見ら れる(Wallaceによる)
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