「すざく」による低質量X線連星XB1323-619の観測 広津敏尚、堂谷忠靖、尾崎正伸、村上弘志、馬場彩、穴田貴康(JAXA)、Mike Church、Monika Church(バーミンガム大学) 6.解析結果3:energy spectrum 1.Introduction XB1323-619は、磁場の弱い中性子星と晩期型星からなる近接連星系である。 XMM-Newtonをはじめとする過去の観測から以下のことが分かっている。 1:連星周期2.93hで、それに同期したdipがある。 2:過去約20年に渡り、X線光度が0.9E36erg/s(1-10keV、10kpc)から 5.5E36erg/sへと徐々に増加している。 3:規則的にX線burstを起こし、その頻度はX線光度と正の相関を示している。 4:エネルギースペクトル中に、He-like Fe(EW=22eV)及び H-like Fe(EW=27eV)による吸収線が、XMM-Newtonにより観測されている。 Persistent(dip、burst以外)のenergy spectrumを図7に示す。Model :wabs*pcfabs*(comptt+diskbb)でうまく再現できた。 wabs:Inter/circum-steller matterによる吸収 pcfabs:降着円盤外縁によると考えられる部分吸収 comptt:中性子星表面からの黒体放射が逆コンプトン散乱を受けた放射 diskbb:降着円盤からの多温度黒体放射 Best fit parameter 2.観測 value wabs nH (2.8+/-0.3)E22 pcfabs nH (3.2+/-1.3)E22 CvrFract 0.6+/-0.1 T0 (1.2+/-0.2)keV kT 100keV(fixed) taup 0.1+/-0.07 approx 0.500 norm (1.1+/-0.57)E-04 Tin (0.7+/-0.1)keV norm 16+/-1.5 0.80 (dof=361) diskbb red-2 図7:persistent emissionの energy spectrumとbest-fit model 1:rev1.2のdataを使用。SCIに対応していないので、CTI=0として、CTI補正を しなおした。XIS1は、この方法では適切に補正出来ないので、XIS0、3のみ を使用した。 2:HXD PINは、W01が400Vになっているので、W23のみを使用した。 parameter comptt 我々は、X線天文衛星「SUZAKU」を用いて、2007年1月9日11:30から1 月10日22:00にかけて、56ksに渡り、XB1323-619を観測した。 1:XISのmodeは、1/4window option 2:時間分解能は2s 3:Spaced-raw Charge Injection を使用 3.解析方法 成分 7.解析結果4:吸収線 Energy spectrum中に、He/H-like Feによる吸収線が見られる。Dipに伴う 吸収線の変化を調べるため、dataをXISのcount rateに従って以下のように分類する。 データの分類 4.解析結果1:light curve 1:平均count rateは~2counts/sで、1.0E36ergs/s(10kpc)に相当。 He-like Fe 2:5つのburstを確認(図1)。Burstの平均間隔は約190min 3:連星周期に同期したdipの存在を確認(図2)。 H-like Fe 名称 Counts/s 色 persistent 2.00-2.45 黒 dip1 1.55-2.00 赤 dip2 1.10-1.55 緑 dip3 0.00-1.10 青 図8:Fe吸収線周辺のspectrum 5 6 7 8 9 10 Energy(keV) Dipに伴い、吸収線の中心energy及び等価幅がどのように変化するのかを 図9-12に示す。 図1:XIS0の、16s binのlight curve (0.70-10.0keV) 図2:XIS0の、256s binのlight curve (0.70-10.0keV) Energy (keV) Energy (keV) Persistent dip1 dip2 dip3 5.解析結果2:burst X線光度とburstの平均間隔頻度の関係を過去の観測とあわせて図3、4に示す。 図9:He-like Feによる吸収線の 中心エネルギー Energy (keV) Persistent dip1 dip2 dip3 図11:He-like Feによる 吸収線の等価幅 SUZAKU 図3:Upper panelは、burstの平均間隔 の長期変化を、lower panelは、X線光 度(1-10keV,10kpc)の長期変化を示す。 SUZAKU 図4:Luminosityとburst rateの相関図。 X線burst中に吸収線が存在するかを調べるべく、burstを、最初の20sと 次の20sに分け、各々、energy spectrumを調べた。しかし、図5-6に示 すように、有意な吸収線は検出されなかった。 図5:burstの最初の20sの energy spectrumの例 図6:burstの次の20sの energy spectrumの例 Persistent dip1 dip2 dip3 図10:H-like Feによる吸収線の 中心エネルギー Energy (keV) Persistent dip1 dip2 dip3 図12:H-like Feによる 吸収線の等価幅 8.まとめと考察 1:過去20年程、徐々に増加していた光度が減少に転じ、EXOSAT、 ASCAの観測時期と同程度の1.0E36ergs/sになっていた。 2:それに対応して、burstの時間間隔は190minに増加していた。 3:burst中に有意な吸収線は発見できなかった。 4:中性子星を含むpersistent emissionは低質量X線連星で広く使われている 多温度黒体放射(降着円盤からの放射)とコンプトン散乱を受けた黒体放射(中性子 星表面からの放射)の和で再現できた。ただし、部分吸収が必要で、これは、X線 放射領域が幾何学的に広がって見えることを意味する。 5:XMM-Newtonによる観測時と比べて、光度が1/5に下がっているのに対し、吸収 線のparameterに大きな違いがなかった。一般に光度の変化はξparameterの変 化をもたらすので、吸収線の形成場所が変わっている可能性が考えられる。 6:dip中、Nhは1桁程増加しているのに、吸収線の等価幅に大きな変化はない。吸 収線は降着円盤外縁ではなく、もっと内側で形成されている可能性がある。
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