スライド 1

脱・イメージ先行主義
放射線と健康被害を落ち着いて学ぶ
2011.08.28 13:00~
@オイスター&ワインバー・ランス
白石和正
今、皆さんは何を知りたがっているか?





放射能は大丈夫なの?
何がどうだったら安全(危険)なの?
この状態はいつまで続くの?
原発を動かし続けて大丈夫なの?
牛、ホウレンソウ、水道水…
原発事故で生じた放射性物質のことで頭が一杯
更に、無味無臭で目に見えないものへの
「お化け的恐怖心」に誰もが怯える…
1
「お化け退治」するには我々に何が必要?



イメージで判断しない
放射線の存在とメカニズムを正しく知る
「自分で考える」癖つける
2
本講演会の主旨




放射線の健康被害の仕組みを学ぶ
「放射線=お化け」なイメージを払拭する
現代科学でわかっている部分・いない部分がそれ
ぞれ存在することを認識する
情報は鵜呑みにするのではなく、根拠を考え自分で
判断することの大切さを確認
「安全だから大丈夫」「危険だからパニック」といっ
た、日本の現状へ評価を下すことは講演主旨では
ありません
3
本日のお品書き
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
福島で何が起こった?
現代科学でわかっていること・いないこと
基礎知識の学習
放射線の知識① 科学でわかっている部分
放射線の知識② 科学でわかっていない部分
放射線の知識③ 事実として存在するデータ
高線量被曝と低線量被曝は分けて考える
ICRP(国際放射線防護委員会)の方針
日本の現状
情報を鵜呑みにしない
まとめ
来場者の皆さんへ抜き打ちテスト
質疑応答
4
福島で何が起こった?







2011.03.11 地震発生
地震による津波で福島第一原子力発電所が浸水
原子炉冷却系が停止→炉心溶融
建屋内に充満した水素に引火→水素爆発発生
ヨウ素131・セシウム137を主とした放射性物質が大
気中に拡散
福島県を中心に東日本広域に放射性物質が飛来
土壌汚染、海洋汚染が発生…
5
福島第一原子力発電所の航空写真(事故前)
事故前写真:SankeiBizより引用
6
福島第一原子力発電所の航空写真(事故後)
4号機
水素爆発
3号機
水素爆発
2号機
格納容器破損
1号機
水素爆発
事故後写真:asahi.comより引用
ヨウ素131・セシウム137を中心と
した放射性物質が大量放出
7
被曝の危険性 ~専門家の主張は真っ二つ~
~巷に広がる、専門家たちの意見割れ現象例~



『放射能はとにかく危険』
原発反対派の学者陣
自然エネルギー推進派
朝日新聞、テレビ朝日



『大騒ぎするほどではない』
原発推進派の学者陣
政府見解
産経新聞
なぜ、意見割れなんてことが起こるのか??
8
(分析事例はあくまで講師の私見です)
現代科学で断定できる部分・できない部分
科学は万能ではない
わかること・わからないことがそれぞれ存在
科学で断定できる部分・できない部分を
整理し、知識を得ることが重要
放射線と健康被害はその境界線上!
9
放射線の健康被害を考える上で必要な基礎知識







物質の根源
放射能・放射線・放射性物質とは
放射性物質と半減期
放射線の健康被害の仕組み
内部被曝と外部被曝
放射線に関する単位とその意味
被曝量の計算方法
お酒も料理も人も絶品…ランスへようこそ
10
物質の根源

全ての物・生き物の根源は「原子」

原子はめっちゃ小さい(1個の直径が1nm=10億分の1メートル未満)

物や生き物は莫大な数の原子で構成されている

体重60kgの人間を構成する全原子個数 →だいたい1028個

1012で1兆 →1028 =「1万×1兆×1兆」個
にゃー
拡大すると…
さらにめっちゃ拡大すると…
山も、空気も、苺も、水も、にゃんこも、人間の体も…
全ては何らかの原子が無数に組み合わさってできている
11
放射能・放射線・放射性物質とは





「不安定な原子」が世の中には存在する(人間にもよく居る…)
自然の摂理で安定な原子に戻ろうとする
戻るときに出す、めっちゃ小さい粒・光を『放射線』という
放射性物質とは放射線を出す物質のことであり、つまり不安定な原子で構
成された物質である
放射性物質はただの物なので「感染」しない → 増殖しない、洗えば落ちる
名称
意味
具体例
放射線
不安定状態の原子が安定状態に戻る際に
出す、めっちゃ小さい粒子(a)や光(b)
a)アルファ線、ベータ線、中性子線
b)ガンマ線、エックス線
放射能
放射線を出す能力のこと
「セシウム133には放射能が無い」
放射線を出す(放射能を持つ)物質のこと
ヨウ素131、セシウム137など
放射性物質
『放射線』と『放射性物質』の関係

線香花火をイメージしてみる

飛び散る花火が放射線

花火の中心の「球」が放射性物質
『放射線』と、放射線を出す『放射性物質』を区別する!
12
放射性物質と半減期




原子は、放射線(粒タイプ)を出すと別の原子に変化する
この変化を崩壊(壊変)と呼ぶ → 図a
放射性物質を構成する原子は、その全てが一斉に放射線を出すのでは
なく、一定期間に一部の原子だけが放射線を出す(小出しにしてゆく)
全原子のうち、崩壊して元の量が半分になる平均時間を「半減期」という
→ 図b
半減期(半分になる時間)
図a 崩壊のイメージ(例:ラジウム226→ラドン222)
図b 半減期のイメージ(16個→8個→4個→…)
13
宇宙誕生以来この世のあらゆる物質は、この崩壊を繰り返しています
永遠不変なものは存在しない…物理の世界で「諸行無常」は証明されてます
放射線の健康被害の仕組み
γ
β
①放射線が体内に侵入
→細胞と「ぶつかる」
②活性酸素・電離作用
→細胞・DNAが直接損傷
③細胞死・突然変異
→白血球減少、ガン化など
の障害が発生
14
「小さすぎるもの」が直接細胞・DNAを攻撃する!
外部被曝と内部被曝




被曝とは、放射線を浴びること
被曝には、外部被曝と内部被曝がある
外部被曝とは「体の外のどこかにある放射性物質」から発
した放射線を浴びること
内部被曝とは「体内にある放射性物質」から発した放射線
を浴びること
内部被曝!
外部被曝!
外部被曝!
内部被曝!
15
放射性物質(発生源)が体の外・中のどちらにあるかの違い
放射線に関する単位とその意味
単位名
ベクレル
(Bq)
グレイ
(Gy)
定義
意味
1秒間当たりに崩壊する原子の個数
(放射能の強さ)
放射線を出す能力を表す。
人体への影響とは直接関係は無い
放射線照射で1kg当たりに与える熱量
(放射線の強さ) 『吸収線量』
放射線そのものの強さを表す。人体へ
の影響はこれだけでは特定できない
放射線の人体への影響を表す指標
シーベルト
(人体への影響の強さ)
(Sv)
『実効線量』 または単に 『線量』
放射線の種類と強さを基に、人体への
影響度合いを数値化したもの。被害の
有無はこれで判断する
表a 放射線の単位
表b 補助単位例
補助単位名
意味
適用例
ナノ(n)
10億分の1
半導体、the bar nano
マイクロ(μ)
100万分の1
電子レンジ、サランラップ
ミリ(m)
1000分の1
寸法、タバコ、被曝量…
センチ(c)
100分の1
人間の身長、幅跳び
キロ(k)
1000倍
体重、距離、電力
メガ(M)
100万倍
インターネット、マクドナルド
ギガ(G)
10億倍
コンピュータ、しょこたん
テラ(T)
1兆倍
ハードディスク、放射能量
単位=(補助単位+)意味単位
補助単位は、規模の程度を表す
例)
◆ml(ミリリットル)
=(1000分の1の)体積を表すリットル
◆kg(キログラム)
16
=(1000倍の)重さを表すグラム
※「●●率」とは「時間当たり」の意味(例「線量率」mSv/h)
被曝量の計算方法




被曝量計算には、外部被曝量計算と内部被曝量計算がある
外部被曝計算は「放射線荷重係数(表a)」、内部被曝計算は「実効線
量係数(表b)」をそれぞれ元となるデータ(グレイまたはベクレル)に
掛け算することで求められる
要するに「シーベルト(Sv)」を求めることが目的!
外部被曝量は計算された結果(Sv)が直接示されることが多いので、
内部被曝の計算方法だけ覚えておけばOK
放射線種類
アルファ線
値
20
物質名
値[μSv/Bq]
ストロンチウム90
(食物として摂取) 0.028
ベータ線
1
ヨウ素131
(食物として摂取) 0.022
ガンマ線
1
セシウム137
(食物として摂取) 0.013
2.5~21
ラジウム226
(呼吸として吸引)
中性子
表a 各放射線の放射線荷重係数
(ICRP Publ.103)
9.5
表b 各放射性物質の実効線量係
数
(ICRP Publ.72)
17
外部被曝量[Sv] = 放射線荷重係数 × 吸収線量[Gy]
内部被曝量[Sv] = 実効線量係数[Sv/Bq] × 放射能量[Bq]
抜き打ちテストの時間だよ
次のケースにおける内部被曝量を計算せよ。但し、被曝量の単位を
「mSv」として解答しなさい


問 1.「ラジウム226が充満しているラジウム温泉に入った(入浴で10ベ
クレル分吸い込んだ)」
問 2.「1kg当たり1000ベクレルのセシウム137が検出された牛肉を200g
食べた」
ヒント
物質名
値[μSv/Bq]
セシウム137
(食物として摂取) 0.013
ラジウム226
(呼吸として吸引)
1m(ミリ)
= 1000μ(マイクロ)
9.5
内部被曝量[Sv] = 実効線量係数[Sv/Bq] × 放射能量[Bq]
18
抜き打ちテストの時間だよ(解答編)
次のケースにおける内部被曝量を計算せよ。但し、被曝量の単位を
「mSv」として解答しなさい

問 1.「ラジウム226が充満しているラジウム温泉に入った(入浴で10ベ
クレル分吸い込んだ)」
◆解答◆
9.5μSv/Bq × 10Bq = 95μSv = 0.095mSv
(単純な掛け算で計算できる!)

問 2.「1kg当たり1000ベクレルのセシウム137が検出された牛肉を200g
食べた」
◆解答◆
1kgで1000ベクレル→200gでは0.2×1000=200べクレルとなる。
0.013μSv/Bq × 200Bq = 2.6μSv = 0.0026mSv
(単純な掛け算で計算できる!)
19
我々の日常生活と放射線①(自然放射線)
原子力・エネルギー図面集 2011 『人間が年間に受ける自然放射線量(世界平均値)』より引用
自然環境には放射線が
無数に飛び交っている
放射線の発生源


年間被曝量
[mSv]
タイプ
宇宙から飛来
0.39
外部被曝
大地
0.48
外部被曝
食物
0.29
内部被曝
吸入(主にラドン)
1.26
内部被曝
合計
2.40
ー
自然放射線により我々は年間およそ2.4mSvの被曝
を受ける
被曝は、自然放射線で誰もが毎日味わっている
20
我々の日常生活と放射線②(人の体内)
あなたの体内からも1秒間で6000発以上の放射線が放出されています!
皆さんは飲食物摂取で、
平常時でも年間0.4mSv
程度を体内で被曝して
います。
「カリウム40」半減期:1.28億年
カリウムのうち0.01%はこのカリウム
40が占める(天然に存在)


資料提供:北海道大学大学院工学研究科 金子純一准教授
放射性物質は体内に常駐し常時被曝している
「放射線を浴びない人間」は存在しない
21
放射線の利用例
(JAEA 2007年度 放射線利用の経済規模に関する調査報告書より引用)
原子力エネルギー
(原子力発電)
放射線利用
41,117
46%
エネルギー利用
47,410
54%
放射線利用とエネルギー利用の比較
原子力エネルギー利用(電力需要端+機器輸出)と
放射線利用(工業+農業+医学医療)
工業、農業、医学・医療分野
での放射線利用経済規模
◆農業利用例◆
◆工業利用例◆
◆医系利用例◆

半導体製造・加工

食品照射(馬鈴薯)

レントゲン・CT

非破壊測定

害虫駆除

放射線治療

滅菌 などなど…

滅菌
放射線は社会で広く利用されている重要なツール
22
放射線の知識① 科学で分かっている部分
高線量被曝(数時間以内に数百mSv以上)による健康被害

確定的影響(急性障害)→a図

確率的影響(晩発障害)→b図
北(
資
海料
道提
大供
学)
大
学
院
工
学
研
究
科
金
子
純
一
准
教
授
図a 被曝量と放射線障害の関係(急性障害)
一度に100(~250)mSv以上
の被曝では何らかの障害が発生
・ガン
・白血病
・白内障
の発生率
が上昇…
図b 被曝量と放射線障害の関係(晩発障害)
高線量被曝での健康被害は科学的に判明(従来説明されている被害)
23
放射線の知識② 科学で分かっていない部分
低線量被曝の健康被害(浴びたトータルが少量=数十mSv以下)
低線量率被曝の健康被害(長時間で少しずつ浴びる)





LNTモデル(直線仮説) →直線
(低線量でも有害)
ホルミシスモデル →破線B
(低線量は体に良い)
数種類のモデルが存在
いずれも「仮説」であり、
「真実」と断定できない!
の
発
生
率
被曝量と晩発障害発生率の関係
放射線防護の観点から、何らかの
モデルを採用し、それを基準として
ルール作りをする必要がある
早大理工学術院シンポジウム
「東電福島事故とその教訓」資料より引用
国際基準は「直線仮説」
低線量(率)被曝による健康被害の実例は無いが、科学的根拠は不明
24
放射線の知識③ 事実として得られているデータ
◆高線量被曝 → 被害例あり 表a 広島・長崎の原爆による被曝線
量
爆心からの距離 線量(広島) 線量(長崎)
 原爆(広島・長崎)
[m]
[mSv]
[mSv]
500
68,100
97,350
 チェルノブイリ
1000
5,520
9,245
 東海村JCO臨界事故
1500
594
1,008
2000
83
139
 医療(病巣を攻撃)
※「HICARE」のWebサイト(D02評価)を基に作成(中性子の荷重係数を5として概
算)
◆低線量被曝 → 被害例なし
 イラン
ケース
 ブラジル
イランの地表
(ラムサール)
 CA
ブラジルの地表(ガラパリ)
 温泉
国際線のCA
温泉(ラドン、ラジウム)
表b 低線量被曝の例
年間線量
[mSv]
主な
放射線源
10.2
ラドン
(温泉堆積物)
5.5
モナザイト鉱物
8.0
宇宙から飛来
するガンマ線
0.1~5.5
※毎日60分入浴を仮定
ラドン
ラジウム
25
「被曝」で我々が実際に意識すべきこと




被曝には高線量被曝と低線量被曝があること
今回の福島原発事故では、事故現場を除き全て
「低線量被曝」であること
これら2種類は人体への影響が異なり、低線量被
曝のメカニズムは現代科学でもまだ不明であること
高線量被曝と低線量被曝は分けて考える
26
放射線防護の国際専門機関「ICRP」




国際放射線防護委員会(International Commission
on Radiological Protection: ICRP)
専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う
民間の国際学術組織(イギリスのNPO )
事務局所在地はカナダの首都オタワ
ここでの勧告を基に、各国政府が独自にルール決
めを行っている
27
放射線被曝におけるICRPの方針




直線仮説(低線量でも有害)を採用している
直線仮説に基づき、全てのルール・制限値を作って
いる
日本政府もこの仮説を採用し、各基準値を決定
(ICRPを採用根拠としている)
つまり…「科学でわかっていない部分」を根拠とした
基準値を我々は示され、従っている
28
放射線被曝 現在の国際的コンセンサス


科学的に説明できないことが多く、よくわからない。
よくわからないから「なるべく浴びないようにしてお
きましょう」
つまり…科学的根拠を与えられないということ専門
家の各主張に対し、聞く側は「自分はどう考えるか」
という自問自答の姿勢が必要となってくる
29
日本の現状① 福島で放出された主な放射性物質
◆ヨウ素131◆(事故直後に大量放出)

半減期 8日

放射線種類:ベータ線、ガンマ線(いずれも主に0.6MeV)

甲状腺に集まるため、局所的に大きな内部被曝となる

ヨウ素剤は「先回り戦法」で、甲状腺を非放射性ヨウ素で埋める

【補足】ヨウ素自体は人体に不可欠な物質(非放射性)

原発事故から 5カ月以上が経過 →もう崩壊しきって存在しない
◆セシウム137◆

半減期30年、生物学的半減期110日(代謝で体外に排泄される)

放射線種類:ベータ線(主に0.5MeV)、ガンマ線(主に0.7MeV)

カリウムと似た挙動→筋肉に広く拡散

現在、空間で観測される放射線のほぼ全てはこいつが出している
◆ストロンチウム90◆(今回の事故ではごく微量の検出)

半減期29年、一度体内に取り込むとなかなか出てこない

放射線種類:ベータ線(0.5MeV、崩壊後の娘核種が2.3MeV)

カルシウムと似た挙動→骨に蓄積(内部被曝が危険な物質)
30
日本の現状② - 1 地域の汚染(福島)
2011.08.05での福島第一
原発西ゲートの空間線量率
奥村曉 氏のサイト「宇宙線実験の覚え書き」より引用(文科省公開データを可視化)



現在大気中への放射性物質漏れは無し(一定の線量率で推移)
現在海洋中への放射性物質漏れも無い模様
31
文科省HPにて測定結果が公表されています
日本の現状② - 2 地域の汚染(全国)
北海道(札幌)
東京都(新宿)
静岡県(静岡)
青赤縦
破実軸
線線が
はが空
平測間
常定線
時値量
の。率
空 、
間 横
線 軸
量 が
率 測
の 定
上 日
( 付
下 。
)
限
。
左図:2011.08.19の国内空間線量率分布、 右図:2011年5~8月の空間線量率の推移。 数値単位は共に[μSv/h]
http://atmc.jp/より引用(文科省公開値をGoogleが可視化)


福島以外の空間線量率は概ね平時に戻った
高数値の正体は水素爆発で飛散した際地面に堆積したセシウム
32
日本の現状② - 3 地域の汚染(地面)




セシウムは化合物の形(固体)で存在するため、地面に堆積
する(花粉や黄砂と同じ感覚です)
風雨で移動し、一箇所に濃く溜まる場所が出てくる(ホットス
ポット)
一般に雨水が集まるような場所にできやすい
東京管内でも確認されている
※平常時の空間線量率は0.05μSv/hくらい
スポット例① 『3.64μSv/h』
2011.06.14 東京都江東区
有明コロシアム周辺の地表面
スポット例② 『1.33μSv/h』
2011.06.14 東京都葛飾区
立石の地表面
東京都内のホットスポット例(資料提供:フリーライター・藤倉善郎氏)
33
日常生活を普通に送ればよい(手洗い、入浴などの生活習慣で十分回避できる)
日本の現状③ 食物の汚染



基準値とは、内部被曝による健康被害を起こさないための、
放射性物質の体内許容目安量のこと
日本政府はICRP勧告を根拠として、飲食物に「暫定基準
値」を設定した
現在までに基準値超えの野菜、牛乳、水、牛、米、魚が確
認された(出荷制限は概ね解除)
暫定基準値の例
物質名
放射性
ヨウ素
放射性
セシウム
暫定基準値[Bq/kg]
飲料水、牛乳・乳製品※
野菜類(根菜、芋類を除く)、魚介類
300
2,000
飲料水、牛乳・乳製品
200
野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他
500
※ 100 Bq/kgを超えるものは乳児用調製粉乳、
及び直接飲用に供する乳に使用しないよう指導することとなっていま
す
北(
資
海料
道提
大供
学)
大
学
院
工
学
研
究
科
金
子
純
一
准
教
授
34
日本の現状④ 放射線関連の発信情報の量と質





メディア、ネットで発信者乱立
専門家は自分の立場からの主張に終始
芸能人はお祭り騒ぎ
要するに大混乱
流言庇護など粗悪な情報も多数出回った
なぜこんなことに…??
政府・メディア・専門家の大多数が「科学でわかっているこ
と・いないこと」を整理せず、主張と事実を混同し、全ての
情報が真であるとして垂れ流し続けた
35
我々が情報と対峙する時には…





情報を鵜呑みにしない!
イメージに頼らない!
情報の根拠を調べる or 考える
1つの情報を複数の発信元で見比べる
自分の考えにどういう根拠があるか、自問する
36
放射線はお化けじゃない





放射線は我々にとって、極めて身近な存在
知ることで、恐怖心は消えてゆく
風評被害や差別意識は全て、「知らないこと」に起
因する
「思考停止・答えを貰う」姿勢こそ、パニックを引き起
こす土壌となる
常に脳みそを動かし続ける癖が大事!
子供が尋ねる素朴な「どうして?」に
ちゃんと答えてあげられていますか?
37
まとめ






「放射線は得体の知れないもの」ではなく、我々の日常生活
に極めて身近な存在である
放射線が人体にダメージを与える仕組みは「めっちゃ小さい
粒や光が直接、細胞・DNAを傷付ける」というもの
被曝は「受け方」と「受ける量」でそれぞれ分けられ(内部被
曝・外部被曝、高線量被曝・低線量被曝)、 人体への影響
が各々異なる
低線量被曝の影響は科学的によくわかっていない
「よくわからないから被曝はなるべく低減せよ」が
国際的な合意内容
今後は我々自身が情報を吟味して、判断する必要あり
思考停止・答えだけを貰う姿勢はパニックのもと
38
続・抜き打ちテストの時間だよ

問 1「放射線の健康被害で、科学ではまだよくわかっていない分野があ
る。どんな部分がよくわかっていない?」

問 2「放射線を浴びて健康被害を生じるのはなぜか? 『小さい』『細胞・
DNA』の言葉を用いて説明せよ」

問 3「放射性物質はインフルエンザのように、人に伝染するか?」

問 4「放射線照射して出荷したジャガイモは有毒? 放射性物質を含ん
でいるホウレンソウとは、何がどのように違うのか?」
39
続・抜き打ちテストの時間だよ(解答編)

問 1「放射線の健康被害で、科学ではまだよくわかっていない分野があ
る。どんな部分がよくわかっていない?」
◆解答例◆「低線量被曝による健康被害は幾つもの仮説があり、
科学的にはまだどれが正しいか断定されていない」

問 2「放射線を浴びて健康被害を生じるのはなぜか? 『小さい』『細胞・
DNA』の言葉を用いて説明せよ」
◆解答例◆ 「放射線はあまりにも小さいので皮膚を透過し、
直接人体の細胞・DNAを傷つけてしまうため」

問 3「放射性物質はインフルエンザのように、人に伝染するか?」
◆解答◆ 伝染しない。花粉や黄砂と同じ「ただの物(粒)」である。

問 4「放射線照射して出荷したジャガイモは有毒? 放射性物質を含ん
でいるホウレンソウとは、何がどのように違うのか?」
◆解答◆ 放射線を「浴びただけ」なのか「中にある放射性物質から
放射線を出している」のかが違う。よってジャガイモは完全無害。
対象物に「放射性物質が含まれるか」だけを考えればよい。
40
おしまい


ご清聴、ありがとうございます
質疑応答をたっぷり
41
これ以降は質問応答用スライド
予備資料① - 1 放射線の種類(概要)
福島原発事故では、この2種類が対象
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資料提供:北海道大学大学院工学研究科 金子純一准教授
予備資料① - 2 放射線の種類(説明)
タイプ/
正体
名称
空気中の飛距離/
遮蔽方法
特徴
透過力極小、内部被
曝に注意、工業利用
アルファ線
電気を帯びた粒/
ヘリウム原子核
数cm/紙1枚、皮膚表面で
も止まる
ベータ線
(電子線)
電気を帯びた粒/
電子そのもの
数m/数mm厚のアルミ板、 透過力小、農業や
1cm程度のアクリル板、
TVブラウン管で利用
ガンマ線
光/
短波長の電磁波
めっちゃ飛ぶ/数10cm厚
の鉛板
透過力最大、人体に
はあまりエネルギー
を落とさない
エックス線
同上
同上
同上
中性子線
電気を帯びない粒/
中性子
めっちゃ飛ぶ/ホウ素等の
中性子吸収剤で吸着させる
透過力大、遮蔽が難
しく人体へのダメージ
も大きい
荷電粒子線
(重粒子線)
電気を帯びた粒/
様々な原子核
原子による
透過力極小
高エネルギー
放射線治療等で利用


福島関連は全てベータ線・ガンマ線による被曝
外部被曝はほぼガンマ線によるもの
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予備資料② 放射性物質と非放射性物質



放射線を出す能力が有る → 放射性
〃
無い → 非放射性
化学的性質は「基本的に」ほぼ同じ
「放射性」の有無によらず、化学的性質は物質名でほぼ
決まる!(同位体の特徴)
よって、体内に取り込まれた際の物質の挙動も放射性・
非放射性物質では同じと考えてよい。
放射性物質の体内での振る舞いを知りたければ、
その物質名の体内における挙動を調べればよい。
例)「セシウム137を摂取しちゃった…」
→物質『セシウム』の体内挙動を調べる
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予備資料③ 放射線検出器の種類と測定法
測定誤差評価の正確な理解が必要(機器ごとの正しい測り方、機器そのもの
の性能による誤差、バックグラウンド値補正、エネルギー校正、データの統計
処理)

食品は(半導体タイプを除いて)暫定基準値レベルを遥かに超えていないと
測れない!!

専門知識がなければ測定値の正しい評価は難しい
(どうしても測るなら…)

検出器の正しい取り扱い方法を調べる(装置全体をラップで包むなど)

数分待って、数値の揺れがおさまった時点でそれを測定値とする

同じ地点で最低10回測定し、その平均値をその地点での測定値とする

「1回だけ、一瞬だけ」の測定はナンセンス!

検出器種類
実用例
測定対象
特徴
ガス封入電離型
GM計数管(ガイガー
ミュラーカウンター)
アルファ線
ベータ線
(ガンマ線)
ガンマ線感度が低い、
特定物の過度汚染
チェック向き
シンチレーション型
NaI(Tl)、CsI(Tl)
色々ある
空間線量測定に適する
主にガンマ線
放射性物質の特定可能、
食品汚染分析にも利用
される、超高価
半導体型
ゲルマニウム半導体
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