第6章 ネットワーク技術 6.1 ネットワーク技術の基礎 6.2 LAN 6.3 電気通信網 6.4 アクセスネットワーク技術 6.5 インターネット技術 6.6 バックボーンネットワーク技術 6.5 インターネット技術 6.5.1 6.5.2 6.5.3 6.5.4 インターネットとは TCP/IP系の通信プロトコル ルーチング/スイッチング技術 アプリケーション 6.5.1 インターネットとは (1)背景 TCP/IPベースのLANを接続し,全世界規模まで拡大したネットワーク ① インターネットの原点は,米国空軍の防空システムSAGE(Semi Automatic Ground Environment)である。核攻撃等で一部が破壊されても機能が失わ れない分散型システムとして構成するために,1969年,米国防省の国防高 等研究計画局DARPAが開設したARPANETである。 ② 1979年,ノースカロライナ州の2大学で,ARPANETと同一方式で接続する ネットワークを構築 。 1986年には,全米科学財団が研究目的のネットワー クとしてNSFNETを構築した。 ③ 日本でも,1984年,大学教官やソフトウェア企業の技術者たちが中心にな り,UUCPベースで相互接続するJUNETを運用開始 。 1988年には,大学を 中心として専用線・IP接続による実験ネットワークWIDEプロジェクトが発足 している。電子メールとネットニュースが中心であった。 (2)インターネットの階層 [4層で構成] ① インターネットにおけるデータリンク層,物理層のデータ転送は, イーサネット,トークンリング,FDDIやフレームリレー等で行われ, 物理層,データリンク層の独自のプロトコルを持たない。 ② IP(Internet Protocol)はネットワーク層, TCP(Transmission Control Protocol)はトランスポート層に属す。 両者をあわせてTCP/IPと呼ぶ。 プロトコル構成 [プロトコルを構成するソフトウェア] TCP-IPという名称は,これらのソフトウェアの集合体を指す場合と, TCP プロトコルと IP プロトコルだけを指す場合がある. OSI参照モデル インターネットのプロトコル構成 アプリケーション層 プレゼンテーション層 TELNET FTP SMTP セッション層 トランスポート層 TCP UDP ネットワーク層 IP イーサネット X.25 データリンク層 物 理 層 物 理 層 PPP ・・・・・ (3)IPアドレス IPプロトコルで識別される各ノードを示すアドレス。 これまでの IP version 4 では,4×8 ビット=32 ビットで表現されていたが, インターネット普及のためアドレスが不足しつつあるので, IP version 6 では,128 ビットに拡張している。 ただし,現行の version 4 でインターネットに接続されている コンピュータや通信機器が相当数あるので, version 6バージョン6に移行するにはかなりの時間を要する。 そこで, version 4 と version 6 が混在していても 構わないよう配慮されている. IPアドレス表現(version 4) version 4 のIPアドレス表現は, 8ビット毎にドット(.)で区切られた4個の整数。 整数は,10 進表記される。 1つのネットワーク内で 224 個まで識別可能である. [例] 131.212.123.156 IPアドレス表現(version 6) version 6 のIPアドレスは,16ビット毎にコロン(:)で区切られ, 16進表記される。 (version 4 ではドット(.)で区切り,10進数表記であることに注意) [例] 28A3:A7B5:2D32:E2CD:36B2:88C2:3D33:67EB なお,IPアドレス中に 0 があれば,省略表現される. 128 ビット(16 ビット× 8 )であることが分かっているので, 連続した 0 として解釈できる場合は,2 個のコロンだけで表現できる. 28A3:A7B5:2D32:0:0:0:3D33:67EB → 28A3:A7B5:2D32::3D33:67EB 0:0:0:0:0:0:3D33:67EB → ::3D33:67EB 0:0:0:0:0:0:0:0 → :: IPバージョン4のIPアドレスは,先頭6×16ビット分を0にして表現する. 0:0:0:0:0:0:131.212.123.156 (省略表現では,::131.212.123.156) IPアドレス関係のプロトコル IP : Internet Protocol。 ICMP : Internet Control Message Protocol。 ゲートウェイ(ルータ)あるいはホストから他のホストなどにおける IPの状態調査用である。 エラー通知を行う際にも使う. ARP : Address Resolution Protocol。 IPアドレスからMACアドレスを求める。 RARP : Reverse-ARP。 ARPとは逆に,MACアドレスからIPアドレスを求める。 (4)バーチャルネットワーク IPネットワークは,接続されている物理的なネットワークが 何であるのかを隠す。 ① エンドユーザは相手がEthernetに接続されているのか, ト ークンリング に接続されているのかわからない 。 この意味で,IPはエンドユーザから サブネットを隠しており,特定の物理ネットワークに依存しない仮想的 なネットワークを提供している。 ② IPは,複数のネットワークを透過的に相互接続した全体を 1つの仮想的なバーチャルネットワークとして取り扱う。 ③ IPは,ゲートウェイ(ルータ)に実装され,ホスト間のサブネット中継を 行う。この中継をIPゲートウェイと呼ぶ。ただし,ユーザはサブネット やサブネットのタイプを知らなくてもよい。 6.5.2 TCP/IP系の通信プロトコル (1)コネクション指向とコネクションレス ネットワーク層のプロトコルは,大きく2種類に分けることができる。 ① コネクション指向型 呼要求(call request)を宛先に送信。 宛先で接続が受け入れられると,設定された経路で通信を行い, 経路を通過する両方向パケットは,着側で順序が逆になることはない。 通信中,接続関係は固定され,そのリソースは確保される。 ② コネクションレス型(データグラム方式ともいわれる) 経路を設定しないで,パケットを送信する方法。 各パケットは,互いに独立して宛先へ送られる。 送信すべきパケットが到着するたびに,宛先アドレスを付けたパケットを 近隣の適切なノードに送信する。 パケットごとにルーチングが行われるので,目的の端末に到着したとき,パ ケットの順序逆転や欠落が起こることがある。 UDP(User Datagram Protocol) TCPとUDP トランスポート層プロトコルは,TCPとUDPの2種類 ① TCP(コネクション指向VC方式) データが確実に,順序正しく転送されたかを確認する保証つき(guarantee reliable delivery)伝送である。 ② UDP(コネクションレス方式) UDPでは,順序制御,パケット紛失等の検査を行わない。 データ転送の確実性よりも,高速性を重視する映像,音声の伝送等に 使用される。 IPでは,エンドシステム間でデータグラム(datagram)と呼ばれるパケットを 送受し,IPレベルのデータグラムは,目的のホストに確実に届くことを保証しない。 データの順序の入れ替えや喪失に対する保証は 上位層のTCPに任せられている。 TCPの通信 TCP(Transmission Control Protocol) ① TCPはゲートウェイ(ルータ)の機能に含まれない。 ② 信頼性,フロー制御,シーケンス番号管理, コネクション開設・解放のサービスは, TCPレベルで実現される. 上 位 層 TCPコネクション (エンドツーエンド通信) TCP 上 位 層 ゲートウェイB IP TCP IP ゲートウェイA IP データリンク データリンク データリンク データリンク 物理 物理 物理 物理 サブネット1 サブネット2 IP サブネット3 (2)アプリケーション間データ転送 ホストAのアプリケーション ホストBのアプリケーション ホストAのアプリケーション ① 転送データの受渡し ホストBのアプリケーション (パケット) TCPまたはUDP ② TCP/UDP 用制御データ付加 TCPまたはUDP (セグメント) IP ③ 宛先BのIPアドレス,その他の データグラム配送用制御データ 付加 ネットワークインターフェース ④ 物理媒体用制御データ ⑦ TCP/UDP 用制御データ除去 ⑥ IP用制御データ除去 IP (データグラ ム) Ethernetでは (フレーム) 物 理 媒 体 ⑤ 物理媒体用制御データ除去 ネットワークインターフェース ⑤ 物理媒体からのデータ受取 (3)IP経路選択とアドレス IPゲートウェイは,ルーチングテーブルに基づいて経路選択を行う。 ① 宛先ホストが他のネットワーク上にあるとき, IPゲートウェイは,そのネットワークへのルートを選択する。 ② データグラムがサブネットを通過するとき, それぞれのゲートウェイは,そのつどルートを選択する。 ③ 各ゲートウェイはルーチングテーブルを保持し, ルーチングテーブルには,隣接するゲートウェイの情報が 含まれている。ルーチングテーブルには, 固定式と動的変更方式がある。 IPデータグラムのフォーマット( version 4 ) ① ヘッダ部 ② データ部 0 4 (データグラムのあて先などの制御情報からなる) (上部プロトコルから渡されたデータ) 8 16 19 24 31 バージョン ヘッダ長 サービスの種別 パケット長 フラグメント識別子 フラグ フラグメントオフセット 寿 命 プロトコル ヘッダチェックサム 始点アドレス 終点アドレス オプション パディング データ部 ヘッダ部 IPデータグラムのフォーマット( version 6 ) ① ヘッダ部 ② データ部 0 (データグラムのあて先などの制御情報からなる) (上部プロトコルから渡されたデータ) 4 8 バージョン 優先度 ペイロード長 16 フローラベル 次ヘッド 発信元 IP アドレス(128 ビット) 受信元IPアドレス(128 ビット) データ部 24 31 ホップ制限 ヘッダ部 (4)ドメイン名とリゾルバ (a)ドメイン名 インターネットで相手を呼び出すときのコード,すなわちドメイン名 (Domain Name)は,番号ではなく,ASCIIコードの文字列を使う。 [例] asa@ippc.co.jp ARPANETの時代,コードと2進法の対応はファイルで集中的に 管理できたが,名前が増え,国際的に接続されるようになって, 名前を集中的に管理できなくなり, 常時,衝突が発生するようになった. これを解決するために DNS (Domain Name System) が開発され, このサーバをDNSサーバと呼ぶ. Whois データベース 名前とIPアドレスの参照ファイル格納した分散データベース ① 世界中に分散し,階層化した分散データベース ② 世界的にはNICが,日本では,JPNICが維持している. (b)トップレベルのドメイン名 ① カウントリーズ(Countries) ② ジェネリック(generic) int com edu sun yale eng cs ai gov mil org eng acm :トップレベルが国別コード :トップレベルが米国の組織種類 net ieee jack jill linda robot ② ジェネリック(generic) jp ac co tokyo eng p01 uk nl oce vu souzou cs1 … cs fft ara ① カウントリーズ(Countries) (c)リゾルバ 名前をマッピングして,IPアドレスを得るには, アプリケーションは,リゾルバ(resolver)と呼ばれるライブラリを 呼び出し,名前をパラメータとして渡す。 ① リゾルバは,UDPの手順で,近くのローカルなDNSサーバに送る。 ② ローカルなDNSサーバは,名前とIPアドレスの参照ファイルを参照 して,IPアドレスを返却する。 ■ ARP(Address Resolution Protocol) IPアドレスは,ネットワークを構成している物理的接続から 独立して付与可能である 。 そこで,IPアドレスを物理的なアドレス ,すなわちMACアドレスに変換する必要がある。 このためのプロトコルがARPである。 ■ RARP(Reverse ARP) 逆にMACアドレスをIPアドレスに変換するプロトコル。 (d)ストリーム型とセグメント TCPは,上位層プロトコルから,データをストリーム型で受け取る 。 ① ストリーム型のプロトコルでは,個々の文字列を送り, ブロックやフレーム等の形式を使用しない。 上位層からのデータは,バイトストリームの形で, バイト単位で送られる。 ② バイトストリームのデータは, TCP層でTCPセグメントの形式にまとめられる。 TCPでは,可変長のセグメントを扱うことができ, セグメント長は,TCPによって異なる. 始点ポート(source port)番号 終点ポート(destination port)番号 (e)ポート番号 アプリケーションを識別するための2バイトの番号 TCP,UDP両者共に,ポート番号でアプリケーションを識別する。 ① 通信を行う2つのホスト上の2つのアプリケーションは, それぞれのホスト上でTCP(UDP)ポート番号が割り当てられる。 ② 送信TCPメッセージのヘッダ情報の 始点ポート番号には,送信側アプリケーションのポート番号, 終点ポート番号には,受信側アプリケーションのポート番号が, 付加される. このポート番号で,それぞれのホストのTCPは, 受け取ったメッセージを受け渡すアプリケーションを決定する. ③ UDPでも同様である。 (5)ウィンドウ制御 HDLCと同様のウィンドウ制御を行う。 (スライディングウィンドウ方式と呼ぶ) あらかじめ送信できるパケット数(ウィンドウ数)を決め, ACKメッセージを待たないでウィンドウサイズ分のパケットを最初送信する。 送信側 受信側 パケット1送信(シーケンス番号0001) パケット2送信(シーケンス番号1001) パケット3送信(シーケンス番号2001) パケット4送信(シーケンス番号3001) パケット5送信(シーケンス番号4001) Ack メッセージ返信(受信確認番号1001) パケット6送信(シーケンス番号5001) Ack メッセージ返信(受信確認番号2001) パケット7送信(シーケンス番号6001) 再送制御 受信側では受け取りたいパケットを要求し続ける 送信側 受信側 パケット1送信(シーケンス番号0001) パケット2送信(シーケンス番号1001) パケット3送信(シーケンス番号2001) パケット4送信(シーケンス番号3001) パケット5送信(シーケンス番号4001) Ackメッセージ返信(受信確認番号1001) パケット6送信(シーケンス番号5001) Ackメッセージ返信(受信確認番号1001) Ackメッセージ返信(受信確認番号1001) パケット2送信(シーケンス番号1001) Ackメッセージ返信(受信確認番号1001) Ackメッセージ返信(受信確認番号1001) Ackメッセージ返信(受信確認番号6001) パケット7送信(シーケンス番号6001) Ackメッセージ返信(受信確認番号7001) ×紛失 ACKを紛失しても問題は起きない 送信側 ACKの紛失 受信側 パケット1送信(シーケンス番号0001) パケット2送信(シーケンス番号1001) パケット3送信(シーケンス番号2001) パケット4送信(シーケンス番号3001) パケット5送信(シーケンス番号4001) Ackメッセージ返信(受信確認番号1001) パケット6送信(シーケンス番号5001) 紛失× Ackメッセージ返信(受信確認番号2001) Ackメッセージ返信(受信確認番号3001) パケット7送信(シーケンス番号6001) (6)フロー制御 送信されるパケットの量に比べ,受信側における受信パケット処理が 間に合わないと,受信バッファがオーバフローする。 ① これを避けるため,受信側はAckメッセージのヘッダ内に 受信可能データサイズをセットし送信側に通知する。 ② 送信側では,受信可能データサイズ0のAckメッセージを受け取ると, 一旦パケット送信を停止し,一定時間待つ。 ③ 受信側で処理が進み,受信バッファに空きが生じたら ウィンドウ通知メッセージを送信する。 ④ ウィンドウ通知メッセージが送信側に到着すると, 送信側はパケット送信を再開する。 ウインドウ通知メッセージを紛失した場合 送信側にはウィンドウ通知メッセージが届かない。 ① 送信側は,一定時間待ってもウィンドウ通知メッセ-ジが届かなければ, ウィンドウ確認メッセージを送信する。 ② 受信側では,ウインドウ確認メッセージを受け取るとウィンドウ通知メッ セージを再送する。 フロー制御の状態遷移 送受信の状態遷移 送信側 受信側 受信可能サイズ分 のパケット送信 受信可能サイズ>0 ウィンドウ確認 メッセージ受信 受信待ち パケット 受信 バッファ 空きあり 受信可能サイズ>0 ACKメッセージ 送付 受信可能サイズ=0 一定時間後 パケット 送信停止 ウィンドウ 通知待ち タイム アウト ウィンドウ確認 メッセージ送付 受信可能 サイズ 受信可能サイズ=0 受信バッ ファ空き 待ち バッファ 空きなし ウィンドウ確認 メッセージ受信 ウィンドウ通知 メッセージ送付 第6章 ネットワーク技術 6.5 インターネット技術 6.5.1 6.5.2 6.5.3 6.5.4 インターネットとは TCP/IP系の通信プロトコル ルーチング/スイッチング技術 アプリケーション 6.5.3 ルーチング/スイッチング技術 (1)ルーチング手法の種類 ① スタティックルーチング ネットワーク管理者が手作業でテーブルを設定する。 ② ダイナミックルーチング 変化するネットワークトポロジーの状態を監視し, 動的かつ自動的に最適なルーチングを行う。 大規模なネットワークでは 主としてダイナミックルーチングが適用される。 (2)ルーチングのためのプロトコル ① IGP(Internal Gateway Protocol):同一ドメイン内対象 [例] ・RIP (Routing Information Protocol) ・OSPF (Open Shortest Path First) RIPでは,ルーチング用情報の増大化による帯域圧迫の問題等があ る の で , コアノード(後述)では,一般的にはOSPFが採用されることが多い。 ② EGP(External Gateway Protocol):ドメイン間を対象 [例] ・EGP (Exterior Gateway Protocol) ・BGP (Border Gateway Protocol) なお,同じEGPという略語でフルスペルが異なることに注意されたい。 高速ルーチングプロトコル さらに高速化を目指して,以下のようなプロトコルも実用化されている。 ① MPLS(Multi Protocol Label Switching) IPアドレスではなくラベル情報を付加して転送することで, パケット転送を高速化。 ② GMPLS(Generalized Multi Protocol Label Switching) MPLSを光ネットワーク用として拡張。 6.5.4 アプリケーション ① DNS ② SNMP ③ BootP ④ TFTP ⑤ FTP ⑥ Telnet ⑦ Rlogin ⑧ SMTP ⑨ HTTP ⑩ IP-VPN ⑪ VoIP (Domain Name System) (Simple Network Management Protocol) (Bootstrap Protocol) (Trivial File Transfer Protocol) (File Transfer Protocol) (Remote Login) (Simple Mail Transfer Protocol) (Hypertext Transfer Protocol) (IP-Virtual Private Network) (Voice over IP) (1)DNS(Domain Name System) Host-2 が www.achira-b.com にアクセスしたい場合 ② dococa-b は名前解決が できないので ルートサーバに問合せ ③ ルートサーバが dococa-b に IP アドレスを教える ① host-2 は,自分が 接続されている dococa-b に問合せ acサーバ dococa-aサーバ host-1 coサーバ dococa-bサーバ host-2 orサーバ dococa-cサーバ host-3 jpサーバ goサーバ ルートサーバ eduサーバ achira-aサーバ comサーバ achira-bサーバ govサーバ achira-cZサーバ ④ dococa-b が host1に教える www サーバ (2)SNMP(Simple Network Management Protocol) ネットワーク状況を監視するためのプロトコル。5つの「管理タスク」から構成される。 ① 障害管理タスク 障害検出用のタスク。障害が検出されると障害発生をユーザに通知。 ② アカウント管理タスク ネットワーク使用状況の監視するタスク。ネットワークへのアクセス方法, 使用頻度,アクセス量等の統計情報をユーザに通知。 ③ 通信機器管理タスク 通信機器が正常動作しているかどうかを監視・制御するためのタスク。 ④ パフォーマンス管理タスク ネットワーク負荷状況の監視タスク。負荷に関する統計情報をユーザに通知。 ⑤ セキュリティ管理タスク コンピュータやルータなどへの不正な侵入者の検出。検出するとユーザに通知。 (3) BootP (Bootstrap Protocol) 通信機器の初期起動のためのプロトコル。RARPと類似の役割を持つ。 UDPのフォーマットに従ったパケットでメッセージを交換する。 ① 通常のルータなど通信機器はハードディスクを持っていないので, 自分自身のIPアドレスをはじめとして,通信環境の設定値を保存しておくことが できない。MACアドレスは,ROMに焼き付けられているので,知ることができる。 ② 別のコンピュータ(BootPサーバと呼ぶ)に自分自身のIPアドレスと MACアドレスの対応関係を設定しておき,IPアドレスを問い合わせる。 ③ 通信環境の設定値を保存しておくファイル(注)の名称を問い合わせる。 なお,同ファイルは,通常,BootPサーバとは別のコンピュータに保管される。 (注)通信環境の設定値を保存しておくファイルをイメージファイルと呼ぶが, 画像ファイルという意味のイメージファイルと混同しないこと。 (4) TFTP(Trivial File Transfer Protocol) FTP(後述)と同様ファイル転送を行うプロトコルであるが, FTPがTCPを利用した複雑なプロトコルであるのに対して, UDPを利用した簡素なプロトコルである。 ① TFTPは,通信機器など,容量の小さな機器におけるイメージファイルを ダウンロードする際に使われる。従って,BootPとセットで利用される。 ② イメージファイル名をBootPで取得した通信機器は, 読込み要求パケットをブロードキャスト。 読込み要求パケットを受け取ったTFTPサーバは, イメージファイルのデータを分割して,データメッセージとして送信する。 ③ 1つのデータメッセージを受け取ったTFTPクライアントは, 応答確認メッセージをTFTPサーバに返信。 応答確認メッセージが届くと,TFTPサーバは, 次のデータをデータメッセージとして送信する。 (5) FTP(File Transfer Protocol) コンピュータ間でファイルを転送するための最も一般的なTCPプロトコル。 FTPでは,接続を要求する側をFTPクライアント,接続される側をFTPサーバと呼ぶ。 ① FTPサーバは,ユーザからのコマンドを制御するコマンド制御部と, 実際にファイル送受信を行うデータ転送部に分かれる。 ② コマンド制御部では,FTPクライアントの要求に対して, まずFTPサーバに登録されているユーザIDとパスワードで認証を行い, ログオンして接続許可を行う。 接続許可されると,ユーザから指定されたコマンドを受け付ける。 ③ ファイル転送を行うコマンドを受け付けると,実行権をデータ転送部に渡す。 データ転送が終わるとコマンド制御部に戻る。 ユーザからFTPセッション閉鎖が指定されると,セッションを閉じる処理を行う。 (6) Telnet 2台のコンピュータを接続して,通信を行うための最低限の機能を備えたプロトコル。 クライアントからサーバに接続すると,ターミナルウィンドウが表示される。 このターミナルからコマンドを入力すると, サーバ側で同コマンドに対する処理が行われ,結果をクライアントに通知する。 従って,ネットワーク仮想端末(NVT:Network Virtual Terminal)と呼ばれる。 ① Telnetは,コマンドや結果をクライアントとサーバの間で仲介するだけであるため, サーバ側OSによって使えるコマンドが異なる。 ② クライアント側が,単なる端末ではなくパソコンの場合, パソコンの機能を十分活かすために,様々なオプションが追加されている。 (7) Rlogin(Remote Login) 機能はTelnetと類似しているが, Rloginは,UNIXに依存したプロトコルである。 ただし,Telnetにおけるオプションコマンドに相当するコマンドはない。 替わりに,ウィンドウ制御や制御文字の取扱いに関する制御コマンドが 用意されている。なお,以下のコードは16進数である。 ・ 02 : サーバからクライアントに送信したデータのうち, ウィンドウに表示されずにバッファに残っているデータを破棄するよう クライアントに要求。 ・ 10 : サーバからクライアントに送信するフロー制御文字(00~FF)を データとして扱うよう要求。 ・ 20 : サーバからクライアントに送信するフロー制御文字(00~FF)を 制御文字として扱うよう要求(コード10の逆)。 ・ 80 : クライアントの現在のウィンドウサイズをサーバに通知するよう要求。 (8) SMTP(Simple Mail Transfer Protocol) 電子メールを集配信するための郵便局の役割を果たすプロトコル。 これに対して,自宅の郵便受けの役割を果たすプロトコルを POP(Post Office Protocol)と呼ぶ。 ① インターネットに接続されたSMTPが動作するコンピュータを バケツリレーのように受け渡していき, 最終的に相手先コンピュータ上のメールボックスまで運ぶ。 ② 相手は,POPの手続きで自分宛てのメールを見る。 ③ 複数人に同じ電子メールを送る場合, メッセージは1つで,宛先だけを複数にして送ることができる。 この種のメールを同報メールと呼ぶ。同報メールの場合, 途中の中継コンピュータがメッセージをコピーしながら配送する。 SMTPのメール受け渡しのイメージ 電子メールを集配信するための郵便局の役割を果たすプロトコル。 送信元 コンピュータ メール ソフト メール A宛 B宛 C宛 送信 SMTP 宛先 コンピュータM 中継 コンピュータY 中継 コンピュータX 配信 SMTP 配信 Aの メール ボックス メール A宛 B宛 メール A宛 B宛 C宛 SMTP Bの メール ボックス 配信 宛先 コンピュータL 中継 コンピュータZ SMTP メール C宛 配信 SMTP Cの メール ボックス (8) HTTP(Hyper Transfer Protocol) インターネットで,WWWサーバとWWWクライアントの間で, HTMLテキストを送受信するためのプロトコル。 リクエストとレスポンスからなる単純なプロトコルである。 HTTP(Hyper Transfer Protocol)と HTTPS(Hyper Transfer Protocol Security)がある。 (a) HTML(Hypertext Markup Language) 電子的な文書交換を行うためSGMLを簡略化した文書記述言語。 HTMLでは,タグ(<と>で挟まれた予約語)を使い, SGMLを簡略化して記述を容易にしている。 HTMLの仕様は,WWWコンソーシアムと呼ばれる標準化団体が作成している。 従って,HTMLで記述されたページは,WWWサーバ内のテキストとして 使われるのでWebページとも呼ばれる。 HTMLの他, ① ② ③ ④ モバイルインターネット用のHDML(Handheld Device Markup Language) WML(Wireless Markup Language) MML(Mobile Markup Language) CHTML(Compact HTML) もHTMLの仲間である。 (b) XML(Extensive Markup Language) XMLは,HTMLで失われたSGMLの拡張性を補強し, 電子商取引等でも利用できるようにしたもの。 ユーザ独自のタグを使って,データの属性情報や論理構造を独自に定義できる。 ① データ構造を定義する記述方法をXMLスキーマと呼び, 要素と属性の概念により,プログラミング言語でのデータ型等を指定できる。 ② XML文書を格納するためのデータベースをXMLデータベースと呼ぶ。 リレーショナルデータベースに比べ高速であり, かつプログラミング言語からアクセスしやすい。 ③ XML文書の構文を解釈して閲覧するためのソフトをXMLブラウザと呼ぶが, このブラウザの機能を,従来のHTML用ブラウザの機能として 取り込んでいるブラウザもある。 ④ XMLでは複数のXML文書の混在を許しており, これを表現するための概念を「XML名前空間」と呼ぶ。 (c) WWW(Word Wide Web) HTTPまたはHTTPSプロトコルで動作し, Webページを格納するサーバをWWWサーバ, Webページを閲覧する側のコンピュータをWWWクライアントと呼ぶ。 ① WWWサーバへのアクセスでは,アクセス方法と接続先を指定する。 ② アクセス方法の指定をURL(Uniform Resource Locator)と呼び, プロトコルの名前(HTTPまたはHTTPS)で指定する。 ③ 接続先は,WWWサーバのドメイン名, コンピュータ内のディレクトリ名とファイル名で指定する。 ディレクトリ名とファイル名を省略すると, WWWサーバのトップページを指定することになる。 (d) HTTPとHTTPSの動作 ① WWWサーバへのアクセスでは,WWWクライアントから WWWブラウザと呼ばれるソフトを起動し, WWWサーバのHTTPデーモンと呼ばれるソフトに接続する。 ② WWWブラウザで,URLと接続先を指定すると, HTTPデーモンの論理的会話セッションHTTPセッションが開始される。 ③ HTTPセッションが開始されると, WWWサーバのWebページがダウンロードされ, WWWブラウザで閲覧できるようになる。 ④ HTTPとSSL(Secure Sockets Layer)の暗号化を組み合わせたプロトコルを, HTTPSまたはHTTP over SSLと呼ぶ。 (9) VoIP(Voice over IP) 既存電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network) IPネットワーク上で音声通話を行うための技術 ① VoIPで実現された電話機能は,IP電話と呼ばれる。 ② IP電話には,パソコン等に音声通話用のソフトウェアを実装することで 音声電話を実現するソフトフォンと,電話自体にIP接続機能を持たせた ハードフォンがある。 ③ VoIPを実現するには,1通話あたり約12 kbps の帯域を必要とする。 ④ 機能的には,音声情報のIPパケット化,音声符号化, メディアゲートウェイを介した既存電話網との接続等が必要である。 6.5 インターネット技術 完
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