情報生産

○金融商品取引法(投資サービス法)
• 06年6月7日成立、07年夏までに施行
• 証券取引法の名称を改め、リスクのある金融商品
に関して、バラバラだった法体系を一本にまとめた
もの
• 罰則強化
– 有価証券報告書虚偽記載、偽計取引、風説の流布:
• 罰金500万円以下→1000万円以下、懲役5年以下→10年以下
– インサイダー取引:
• 罰金300万円以下→500万円以下、懲役3年以下→5年以下
• 投資事業組合
– 私募なら登記・届出不要→登録・届出義務付け(所在地・
代表者)、証券取引等監視委員会による立入検査権限
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・不公正取引防止のための東証による売買審査
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• TOB
– 買付期間:20~60日
→ 20 ~60営業日以上、会社側がTOBに反対の場合30
営業日までの延長を請求できる
– 取引所有価証券市場内での買付け:TOBの規制対象外
→ 取引所有価証券市場内外の取引を組み合わせて、
一定期間内に買付後の株券保有割合が3分の1を超える
場合、TOB義務付け
– 企業経営陣にTOBへの賛否の意見表明を義務付け、買
収者に対象企業からの質問への回答を義務付け
– TOB後の保有割合が3分の2を超える場合、買収者に対
し、TOB応募株全ての買取りを義務付ける
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• 公開買付けが利用されるケース
– 企業グループの再編
• フジテレビによるニッポン放送に対するTOB,05年1
~3月
– 経営統合、資本提携
– MBO(Management Buy Out)
• MBOによる 「すかいらーく」の株式非公開化
– 敵対的買収
– 自己株式取得、等
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第2章.情報生産
3.格付会社の情報生産
• 格付けrating:
– 発行される債券のデフォルト・リスクを専門的立場から評価
し、リスクの程度に応じて債券をいくつかのランクに区分け
し、投資家に情報として提供すること。
– デフォルト(or信用)リスク
• 貸出相手の経営悪化により貸出金の元利が回収できなくなるリスク
– BBB(Baa)以上:投資適格、 BB(Ba)以下:投機的
– 代表的格付会社:S&P(スタンダード・プアーズ)、ムー
ディーズ、R&I (格付投資情報センター)
– 銀行の情報生産:生産された情報は自らの貸出業務・銀行
業務の中で活用
– 格付会社の情報生産:生産された情報は投資家に提供さ
れ、投資家が投資の際に活用
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格付投資情報センター『格付けQ&A』日本経済新聞社 2001
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「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整備」
『日本銀行調査月報』2001年10月号
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• 格付けが高い(低い)
⇒
⇒
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・格付けと債券発行金利
日本証券経済研究所『現代日本の証券市場:2006年版』p.95
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– 社債発行スプレッド=社債発行金利-国債金利
– ここでの国債金利とは、国債流通利回りのこと
– 流通利回り:投資家がある時点で(流通)市場で
債券を購入し、償還まで保有した場合の利回り
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○株式と債券(負債性商品)の違い
• 企業への事業資金の提供者:
– 株主と債権者(債券保有者、銀行)
• 株主と債権者との間での企業収入の分配ルール
– 企業の収入が負債の元利返済額に足りなければ、企業
は債務不履行(デフォルト)となる。
• 債権者は企業の収入の全てを受け取り(全ての企業資産の処分
換金額を含め)、株主は当初の出資金を失うだけで、新たに損失
を分担する必要はない(株主の有限責任制)。
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• 株式の価値評価と債券の評価
• ケース①:
– ある企業が1年間だけ事業を展開し、1年後に企業を清算
する。事業資金は100億円必要
– 1年後の収入(経費支払い後)予想
• 90%の確率で事業が成功し、収入は150億円
• 10%の確率で事業が失敗し、収入は30億円
– 50億円を株式発行で、50億円を社債発行(金利20%)で
賄う
– 1年後の収入の分配
• 事業成功のケース(確率90%):社債投資家60億、株主90億
• 事業失敗のケース(確率10% ):社債投資家30億、株主 0
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• ケース②
– ケース①と他の条件は同じで、事業の成功確率だけが異
なる。
• 95%の確率で事業が成功、 5%の確率で事業が失敗
• 事業リスクが低下
– 1年後の収入の分配
• 事業成功のケース(確率95%):社債投資家60億、株主90億
• 事業失敗のケース(確率5% ):社債投資家30億、株主 0
• ケース②と①との比較
– 社債の信用度(格付け):②が①より高い
– 株式の価値評価: ②が①より高い
– 社債の評価と株式の評価が同じ方向に動く
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• ケース③
– ケース①と他の条件は同じで、資金調達方法だけが異な
る。
• 75億円を株式発行で、 25億円を社債発行で賄う
– 1年後の収入の分配
• 事業成功のケース(確率90%):社債投資家30億、株主120億
• 事業失敗のケース(確率10% ):社債投資家30億、株主 0
• 財務リスクが低下:いずれのケースでも社債はデフォルトしない
• ケース③と①との比較
– 社債の信用度(格付け):③が①より高い
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• ケース④
– ケース①と他の条件は同じで、成功確率、成功時の収入
が異なる。
• 80%の確率で事業が成功し、収入は200億円
• 20%の確率で事業が失敗し、収入は30億円
– 1年後の収入の分配
• 事業成功のケース(確率80%):社債投資家60億、株主140億
• 事業失敗のケース(確率20% ):社債投資家30億、株主 0
• ケース④と①との比較
– 社債の信用度(格付け):④が①より低い
– 株式の価値評価: ④が①より高い
• ④:確率80%で140億円、①:確率90%で90億円
– 社債の評価と株式の評価が反対方向に動く
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○補足:債券の利回り計算
• 利回り
– 投資家側から見た金利
• 利回りの計算方法:単利と複利
– 単利:利子が利子を生むこと(孫利子)を計算に
入れない
– 複利:利子が再投資され、利子を生むとして計算
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• 例: 残存期間5年、クーポンC=4円(債券発行時
に約束されている毎年の支払い利子)、満期時
に額面100円償還、債券の現在時点での市場価
格P=96円
• 投資家がこの債券に新規に投資した場合の利回
りは?
• 単利の(最終)利回りrs
• =1年当りの受取収入/投資金額
• =(利子+年当り償還差益) /投資金額
• ={4+(100-96)/5}/96=0.052(5.2%)
• 一般式rs= {C+(100-P)/5}/P
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・ 複利の利回りrc
96=4/(1+rc)+ 4/(1+rc)2 + 4/(1+rc)3
+ 4/(1+rc)4+104/(1+rc)5 : ①式
から求められる rc が複利利回り。
rc ≒0.05 、5%
・複利利回り:
満期までに債券から生じるすべてのキャッシュ・フ
ローの現在価値(①式の右辺)が、その債券の市
場価格P(①式の左辺)と等しくなる割引率rcのこと
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• 第2章参考文献
• 「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整
備」『日本銀行調査月報』2001年10月号
• 格付投資情報センター『格付けQ&A』日経新聞
社.第2章 2001年
• 黒沢義孝『格付けの経済学』PHP新書 1999年
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