Social Impact シミュレーションの タネと仕掛け 高木英至(埼玉大学 教養学部) Social Impact シミュレーションの結果は設定によって変わる。 少数派が残るのは特定の距離の効果を指定したときだけ 少数派が初期状態より増えることもある シミュレーションモデルの一般的難点 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 1 Social Impact シミュレーション Latane の理論、Nowak ら 単純、しかし結果は重要、有名 状況設定 2値的な態度セル(エージェント)からなる平面空間 セル間の相互的影響(セルの移動はない) 主な結果 同じ態度を持つエージェントのクラスタが生じる(棲み分け)。 初期多数派はより多数に、初期少数派はより少数になる。 (空間が torus でなければ)少数派は端に位置しやすい。 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 2 印象:不可解な挙動 しばしば生じること 1つの態度が全体を制圧 少数派のサイズが初期と比べて大きくなる 「友軍」が来ると少数派クラスタが消滅する 体系的に挙動を調べる必要 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 3 2つのモデル Faction-size model 影響力=1人当たりの強さ×人数 べき乗法則( i = sN t、 t < 1) i=N01/2・Σ(si/di2)/N0 i=N01/2・Σ(Si/din)/N0 影響力=Σ各エージェントの強さ (1) i = [Σ(si/di2)2]1/2 (2) (1’) i = Σ(Si/dim) (2’) n:距離係数 距離係数が大きいと、遠くのセル からの影響はより低下する。 m:距離係数 1 0.8 効果 Accumulative-influence model n n n n n 0.6 0.4 0.2 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 距離 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 4 = = = = = 0 1 2 3 4 ポイント1:均衡時の少数派サイズ 2x2x2x4 でのシミュレー ション モデル:Faction/Accumulative 空間:端あり/torus 態度更新:同時/ランダム 初期少数派比率:10-40% Nowakら(1994) の手順に準拠 少数派残存可能性は Accumulative Faction Equal 100 80 最終比率 60 40 20 Faction >Accumulative Faction model では少数派が 初期より多くなる。(初期比率 10, 0 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 初期比率 20% のとき) 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 5 Faction-size model の問題点 少数派の影響が大きく評価さ れるようにできている。 i=N01/2・Σ(Si/din)/N0 i = Σ(si/di2)/N01/2 Latane ら(1994) でも少数派 は増大する。 Nowak ら(1990)ではなぜ、常 に少数派は初期より最終で小 さくなったか? (1’) (1’’) 仲間が少ないほど分母が小さ く、従って i は大きくなる。 奇妙な盛り返し現象 特殊な距離の定義 計算の範囲の限定 少数派の影響を小さく評価 1 0.8 効果 多数派 n=0 n=1 n=2 n=3 n=4 Nowak et al. 0.6 0.4 0.2 少数派 0 0 1 2 3 4 図2:少数派の盛り返し (Faction モデル、少数派の初 期比率=10%) 20000/10/01 5 6 7 8 9 10 距離 <SIS のタネと仕掛け> 6 ポイント2:距離係数の効果 要因:距離係数0~4 設定 ランダム更新、torus、初期少数派比率 30,40%、 距離係数 Faction-size 0 少数派全滅 1 少数派全滅 2 ○ 3 少数派が初期より増大 4 少数派が初期より増大 20000/10/01 距離係数小=大域的な影響 → 1つの態度が全体を支配する。 Faction モデルでの距離係数2、 Accumulative モデルでの4は、 Latane らの結果が出やすい値で ある。 Accumulative 少数派全滅 少数派全滅 少数派全滅 少数派ほぼ全滅 ○ <SIS のタネと仕掛け> 7 2つのモデルの比較 Fraction-size model 少数派にも強いクラスタ 化作用が働く。 態度集団のサイズが均等に なりやすい。 少数派サイズ増大の可能性。 クラスタの集合傾向(クラスタ 数が少なくサイズが大きい。) クラスタ化作用強し。少数派も 多数派を多く改宗させる。 盛り返し現象 20000/10/01 Accumulativeinfluence model 少数派にはクラスタ化の 作用が少ない。 態度集団の差が拡大。 少数派サイズは減少。 少数派は多数の孤立したクラ スタに分散。 少数派は単に抜け落ちる。多 数派から少数派への改宗は 少ない。 少数派は単調に減少して均衡 する。 <SIS のタネと仕掛け> 8 考察:何が言いたいか? Social Impact モデルの長所 単純なモデル 重要でもっともな結果 問題点 結果はモデル設定に依存 少数派クラスタの残存:距離による影響の出方による 少数派のサイズ減少:モデルに依存 「一般的に証明しない」シミュレーションモデルの難点 Faction-size model をどう考えるか? 1つのモデル、という見方 理屈が一貫しない。 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 9 良いところもある シミュレーションモデルの柔軟性、発展性 例示:N値態度のシミュレーション 少数派は他の勢力の合間で生き残りやすい。 少数派同士は接近する。 20000/10/01 <SIS のタネと仕掛け> 10
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