平成18年7月1日 第3回埼玉県医師会内科医会 埼玉県内科専門医会 合同カンファレンス 侵襲性アスペルギルス症 埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 山口 敏行 わが国の病理剖検例における内臓真菌症の発生頻度 (%) 5 真菌症総数 カンジダ症 アスペルギルス症 クリプトコックス症 ムーコル症 4 頻 3 度 2 1 0 1960 1970 1980 1990 2000 年 次 (日本病理剖検輯報) 肺アスペルギルス症の病態 アスペルギルス胞子の吸入 気道における アスペルギルスの定着 健常者 クリアランス 肺の空洞性病変 アスペルギローマ 慢性肺疾患 軽度の免疫不全 慢性壊死性 肺アスペルギルス症 高度の免疫不全 侵襲性 肺アスペルギルス症 気道過敏性 ABPA アスペルギルス症の生存率(AMPH-B治療群) 1.0 0.9 0.8 副鼻腔(n=17) 0.7 0.6 生 存 率 他の病巣 (n=11) 0.5 アスペルギローマ (n=10) 0.4 0.3 侵襲性肺アスペル ギルス症 (n=83) 0.2 0.1 中枢性や播種性 (n=35) 0.0 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 日 Lin SJ et al, Clin Infect Dis 2001;32:358-66 侵襲性アスペルギルス症 抗体産生が十分認められない場合が多いため、 抗原検出が有力な診断マーカーとなる 血中ガラクトマンナン (=アスペルギルス細胞壁の主要構成成分) パストレックス®アスペルギルス(ラテックス凝集反応) プラテリア®アスペルギルス(ELISA) 免疫学的防御機構 アスペルギルス症に対する免疫応答は 食細胞の貪食・殺菌作用(非特異的免疫) 好中球減少症とステロイド薬 侵襲性肺アスペルギルス症595例の基礎疾患 固形癌 HIV 他の免疫不全疾患 肺アスペルギルス症 その他 なし AutoBMT 血液悪性腫瘍 AlloBMT Patterson TF et al,Medicine2000;79:250-60 血液疾患患者における 侵襲性肺アスペルギルス症の各種検査の発現時期 胸部CT 胸部レントゲン (1,3)-β-D-グルカン PCR 1 ガラクトマンナン抗原 2 3 4 5 6 培養、病理 7 8 9 10 11 12 13 14 15 Kami M et al, Clin Infect Dis 2001;33:1504-12 侵襲性肺アスペルギルス症の胸部CT写真の変化 consolidation Day 0 Halo sign Day 3 Air crescent sign Day 10 Caillot D et al, J Clin Oncol 2001;19:253-9 侵襲性アスペルギルス症のガイドライン 抗アスペルギルス薬 クラス 一般名 商品名(剤型) ポリエン系 アムホテリシンB ファンギゾン(静注) リポソームアムホテリシンB アンビゾーム(静注) アゾール系 キャンディン系 イトラコナゾール イトリゾール(カプセル) ボリコナゾール ブイフェンド(静注・錠) ミカファンギン ファンガード(静注) AmBisome® Phospholipid bilayer Amphotericin B molecules AmBisome® vs AMPH-B:静注時の副反応 初日(前処置なし) 70 AmBisome 3 mg/kg/day 60 54 AMPH-B 0.6 mg/kg/day 症例数(%) 50 44 40 30 20 17 18 10 0 発熱* 悪寒/戦慄 *発熱は1℃以上の体温の上昇 Walsh TJ, et al. N Engl J Med. 1999;340:764-771. AmBisome® vs AMPH-B: 腎毒性 血清クレアチニン値が2倍以上となった症例数 50 40 AmBisome 3 mg/kg/day AMPH-B 0.6 mg/kg/day 41 症例数 % 34 30 22 20 19 15 10 6 0 全症例 腎毒性の薬剤(1剤) 腎毒性の薬剤(2剤以上) Walsh TJ, et al. N Engl J Med. 1999;340:764-771. アスペルギルス症における抗真菌薬併用の臨床効果 組み合わせ 臨床効果 文献 ITCZ+FLCZ 有効 Mattiuzzi GN, 2003 ITCZ+L-AMPH 有効 Mattiuzzi GN, 2003 ITCZ+AMPH 有効率 82% PoppAI, 1999 CAS+AMPH 有効率 60-75% Aliff TB, 2002 CAS+L-AMPH 有効 Elipoulos GM, 1991 VRCZ+CAS 有効 Gentina T, 2002 CAS+L-AMPH 有効 Gentina T, 2002 VRCZ+AMPH 有効率 37% Thiebaut D, 2002 CAS (MCFG)+AMPH 有効 Ratanatharathorn V, 2002 MCFG+AMPH 有効 Ullman AJ, 2003 MCFG+azole 有効 Ullman AJ, 2003 本症例は・・・ 本当に、免疫能が正常なヒトに生じた 侵襲性アスペルギルス症か? 入院時は、健常人における発熱と全身倦怠感、 および低酸素血症 レジオネラ症 レジオネラは土壌細菌であり人工水系中のアメーバの中で増殖するので, 新興温泉,給湯水,水道水,循環式浴槽,クーリングタワーなどから発生する エアロゾルあるいは土埃を気道へ吸引することで発症する 菌型はL. pneumophilaが60-70%を占める 園芸用腐葉土の中では,L.longbeachaeやL.bozemaniiが多い L.pneumophilaのなかでは, クーリングタワーからの分離菌は70%以上が血清型1だが, 循環式浴槽では血清型3,5,6が全体の80%以上を占める Binax社のNow Legionella(尿中抗原検査) L. pneumophila血清型1の診断率は95%以上の感度 これ以外の血清型では約80%, L.pneumophila以外の菌種ではわずか13.6% 本症例の経過(私見) レジオネラ症(血清型1以外) 急性間質性肺炎(Acute Interstitial Pneumonia:AIP) びまん性肺胞傷害(Diffuse alveolar damage:DAD) ステロイド治療 侵襲性アスペルギルス症
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