電波の基礎と伝搬 森 川 博 之 東京大学新領域創成科学研究科基盤情報学専攻 [email protected] 2002.4.19 1 速度,波長,周波数 光速: 3 x 108 m/s = 300,000 km/s 光速 = 波長 x 周波数 AC current: 60 Hz = 5,000 km FM radio: 100 MHz = 3 m Cellular: 800 MHz = 37.5 cm Ka band satellite: 20 GHz = 15 mm Ultraviolet light: 1015 Hz = 3x10-7 m Tip: …MHz x …m = 300 2 Decibel (dB) A ratio is expressed in Decibels (dB) by computing Ratio(dB) = 10log10(Ratio) ex. 0.5 = -3 dB 0.00000000000000000001 = -200dB If a signal is amplified 100-fold, the gain equals 20dB 0 dBW = 1 Watt -3 dBW = 0.5 Watt -10 dBW = 0.1 Watt P2 dB 10 log10 P1 3 周波数帯 周波数 波長 名称 用途 3kHz~30kHz 100km~10km 超長波(VLF) 30kHz~300kHz 10km~1km 長波(LF) デッカ,船舶・航空機用ビーコン 300kHz~3MHz 1km~100m 中波(MF) 船舶通信,AM,ロラン,海上保安 3MHz~30MHz 100m~10m 短波(HF) 短波放送,国際放送,航空移動無線 30MHz~300MHz 10m~1m 超短波(VHF) 300MHz~3GHz 1m~10cm 極超短波(UHF) 携帯電話,PHS,タクシー無線,コードレス電話TV,航 空用レーダ,航空方位情報 3GHz~30GHz 10cm~1cm マイクロ波(SHF) 固定無線,各種レーダ,衛星通信・放送 30GHz~300GHz 1cm~1mm ミリ波(EHF) 300GHz~3THz 1mm~0.1mm サブミリ波 3THz~ 0.1mm~ 光波 オメガ TV, FM, 警察無線,消防無線,無線呼出,航空管制 通信,コミュニティ放送 各種レーダ,電波天文,衛星通信 レーザ通信,リモートセンシング 光空間通信システム 4 電波伝搬の基礎 反射 (reflection) 波長よりも大きい物体に電 波が衝突 Ex. 地球表面,ビル,壁等 回折 (diffracton) 送信者と受信者の間に鋭い エッジが存在する場合,障 害物の影にまわって伝わる (見通しでなくてもOK) 散乱 (scattering) 波長よりも小さい物体 Ex. 森林,道路ポスト等 5 電波の伝わり方 6 移動の影響 位置と時間によってチャネル状態変動 (-30dB) 電波伝搬は非常に複雑 距離減衰、シャドウイング、距離減衰 受信電力の高速変動 速度が遅いと変動は少ない 7 陸上移動伝搬モデル 距離変動 基地局と移動局間の距離の変動に伴う変動(減 衰) 中央値変動(シャドウイング) 数10m程度の区間にわたる緩慢な変動(障害物) 瞬時値変動(マルチパス) 数10m程度の区間での急激な変動(多重波伝搬) 8 陸上移動伝搬モデル 9 距離変動モデル 受信電力(dB) 自由空間 開放地 市街地 郊外 Pr = k d-n n=2 自由空間 n=2.7~3.5 郊外 N=1.6~1.8 屋内 LOS N=4-6 屋内 no LOS * LOS: Light of Sight BER=f (受信電力) ≒f (SNR) ∴ SNR↑⇒ BER↓ 距離 d Log-distance path loss model d PL(dB) PL(d 0 ) 10n log d0 10 シャドウイングとマルチパス tx antenna rx antenna multipath reflections shadow rx antenna 11 シャドウイング 送信器と受信器の間の LOS がブロックされたときに生じる 対数正規分布(Log-Normal) (x x m )2 1 p (x ) exp 2 2 2 x: 短区間中央値レベル(dB) σ:標準偏差 xm:長区間平均値 距離変動にガウスランダム変数を付加したもの PL(d)[dB] = PL(d0) +10nlog(d/d0)+ x, where x is a zero-mean Gaussian RV (dB) 12 マルチパス マルチパス伝搬によって受信端末ではさまざまなパ スの電波を異なる時間で受信 符号間干渉 ⇒ 最大シンボルレートの規定 0.2μs(郊外)~5μs(都市部) 13 遅延スプレッド RMS Delay spread () Power(dB) Mean excess delay Typical values for : Indoor: 10-100 ns Outdoor: 0.1-10 s Noise threshold Delay 14 マルチパス干渉 Signals arrive out-of-phase Destructive interference 160° phase differential + = 15 Received Power フェージング Flat Fade Deep Fades Distance 16 マルチパスの影響 位相の相殺による信号強度の大幅な変動 レイリーフェージング:同相・逆相の波が合成さ れることによる受信強度の大幅な減衰 対策:アンテナダイバーシチ マルチパス伝搬遅延に起因する「エコー」の発生 前のビット/シンボルが次のシンボルと干渉する 対策:レートを遅くする,等化器(equalizer)の導 入 等化:チャネル状態を推定して遅延波を除去 17 レイリーフェージング 仮定:基地局から単一周波数 fc の電波を送信 到来する素波の数 N:非常に多い ⇒ Rayleigh Fading (Rayleigh 分布に従う) 理論: N N e (t ) e n (t ) Re z n (t ) exp j (2 f c t ) n 1 n 1 e(t): 受信波,zn(t): 複素包絡線 ここで,受信波の同相成分 x(t) と直交成分 y(t) を用い, N z (t ) z n (t ) x n (t ) j y n (t ) x (t ) j y (t ) n 1 とすると次式を得る. e (t ) x (t ) cos( 2f c t ) y (t ) sin(2 f c t ) (*) 18 レイリーフェージング (*)において N が十分大きく各素波の強さがすべて同程度であ るとすれば,中央極限定理により,x(t), y(t) は平均値が 0 で等 しい分散をもつ互いに独立な定常ガウス過程となる.したがっ て,x=x(t), y=y(t) の結合確率密度関数 p(x,y) は次式で与えら れる. x2 y2 1 , p (x , y ) exp b0 : 平均受信電力 2 b0 2b0 cf. シミュレータ x (t ) X cos( 2 f c t ) 2 Σ e (t ) x (t ) cos( 2 f c t ) y (t ) sin(2 f c t ) X y (t ) 19 レイリーフェージング また,(*)の受信波は,包絡線 R(t)と位相Θ(t)を用いて e (t ) R (t ) cos 2 f c t (t ) と表される.ここで, x (t ) R (t ) cos (t ) y (t ) R (t ) sin (t ) であるから,確率密度変換により,R=R(t), Θ=Θ(t)の結合確率 密度関数 p(R,Θ) は次式で与えられる. R2 R , p (R , ) exp 2 b0 2b0 0 R, 20 レイリーフェージング すなわち,RとΘは互いに独立なランダム確率変数であり,それ ぞれの確率密度関数は次式のようになる. R2 R p (R ) exp b0 2b0 1 2 Rayleigh Distribution: 2つのガウス変数の2乗の和のルート p ( ) 21 「マルチパスチャネル」 G(f) 送信波 マルチパス環境を「チャネル」として捉えることができる h(t, ) がチャネルモデル 周波数応答と等化器 H(f,t) チャネル (インパルス応答) h(t,) G・H(f) H-1(f,t) G(f) 受信波 理想等化器 22 種々の伝搬 屋外,屋内,屋外-室内,すべて伝搬の仕方が異な る すべてに適用される完璧なモデルなし 膨大な実験,実験,実験,,,が必要 マイクロセル(Manhattan model) 受信電力(dB) LOS: n=2, Ricean 遅延スプレッド小 NLOS: n=4, Rayleigh 遅延スプレッド大 距離 23 ドップラー効果 receding object perceives lower frequency approaching object perceives higher frequency 24 エラーメカニズム バーストエラー フェージングではSNRが低くなりエラー生じる 移動によるドップラーシフト(周波数、位相)に よっても同期はずれが生じる ビット長が遅延スプレッド程度まで短くなるとエ ラーも増大 簡単なモデル 連続するエラーの後に連続するエラーなしの状態 が続くモデル:2状態マルコフ過程 許容範囲 音声: BER 10-3 データ: BER 10-6 25 エラー対策 アンテナダイバーシチ(+10dB) λ/2 間隔離して接地した2つのアンテナ FEC (Forward Error Correction) 符号化利得によるフェージングの影響低減 cf. 符号化利得:符号化を行ったときと行わな いときで、所定のエラー率を実現するために必 要なSNRの比 ゆっくりと変動するフェージングに対してはあま り有効ではない ブロック符号、畳込み、インタリーブ ARQ (Automatic Repeat Request) 再送プロトコル Stop and Wait, Go Back N, Selective Repeat 26 Stop-and-Wait ARQ sender receiver time out frame lost retransmit time out ACK lost retransmit & duplicate discard 27 Go-back-N ARQ 6, 7 and 8 retransmitted sender receiver error 7 and 8 will be discarded 28 Selective-repeat ARQ Only 6 is retransmitted sender receiver error 29
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