高輝度放電ランプ用管球材料の 熱処理および点灯による構造変化 分子科学講座 田中宏志 シリカガラス ほぼ100% SiO₂からなる非晶質材料 特性 ・光をよく通す (真空紫外~近赤外) ・耐久性に優れている ・紫外線 ・熱 ・薬品 シリカガラスの種類 ・溶融石英ガラス 製法 ・電気溶融法 ・プラズマ溶融法 ・酸水素火炎溶融法 ・金属不純物の有無 ・OH基の有無 ・光学的均質性 ・合成シリカガラス 製法 ・直接法 ・スート法 ・プラズマ法 ・ゾル-ゲル法 用途により使い分け OH基と仮想温度 ・OH基 ・Si-OH基の形でシリカガラス中に存在 ・熱処理などによりOH基が増減する。 ・仮想温度,TF ・仮想温度とはガラスの構造が凍結したと考えられる温度 ・長時間高温で加熱後、急冷したガラスを測定することにより, 構造の仮想温度依存性を求められる ← 本研究では,代用特性(赤外吸収ピーク位置)から測定 HID (高輝度放電)ランプ High Intensity Discharge Lamp 特徴 ・ランプ1灯あたりの光束が大きい ・電球やハロゲン電球に比べ発光効率に優れる 用途 プロジェクター リソグラフィー 自動車 ランプ管球 f27 mm f34 mm Measured Area Hydrogen-Oxygen Flame f80 mm Measured Area f90 mm ショートアーク水銀ランプ(リソグラフィー用) 研究の背景 HIDランプの使用が増加 管球使用にともなう構造変化の知見がない 熱処理に伴うデータをとる 測定方法 サンプル ・厚さ約0.5mm ・幅1.5mm~3.6mm 測定器 ・日本分光製FT/IR-600Plus フーリエ変換赤外分光光度計 +IRT-30型赤外顕微鏡 アパーチャー30μm□ 測定項目 ・OH濃度 ・仮想温度 測定機器の写真 OH濃度の測定方法 OH ppm 1 A 1000 t cm t : サンプルの厚み A : ピーク位置高さ A 0.5 0.4 Absorbance ・OH濃度の計算 ES 0.3 0.2 0.1 0 3400 3500 3600 3700 Wavenumver (cm-1) 3800 3400~3800cm-1付近の赤外吸収スペクトル 仮想温度の測定方法 ・仮想温度の計算 43809.21cm K ν 2228.64cm Tf 1 T f :仮想温度 ν:ピーク位置の波数 1 Absorbance 0.25 ES 0.24 0.23 2220 2240 2260 2280 Wavenumver (cm-1) 2300 2220~2300cm-1付近の赤外吸収スペクトル 参考文献 A. Agarwal, K. M. Davis, and M. Tomozawa, J. Non-Cryst. Solids, 185, 191 (1985) 実験の種類 1. HIDランプ用管球の熱処理 2. HIDランプの点灯による 構造変化 3. HIDランプに封入したシリカ ガラスの構造変化 1. HIDランプ用管球の熱処理 ・熱処理条件 サンプル A B C D E F G 熱処理条件 未処理 900℃,5h 1050℃,5h 1050℃,10h 1150℃,5h 1200℃,10h 合成,未処理 1.OH濃度の測定結果 (単位:ppm) 位置 ㎛ A B 処理温度(℃) 未処理 900 処理時間(h) 5 C D E F G 1050 1050 1150 1200 合成, 10 5 10 未処理 5 15 25 760 980 176 248 592 412 578 no 203 253 192 261 1187 887 45 740 nd nd nd nd nd 327 100 nd nd:測定限界以下 nd no:測定なし 1.仮想温度の測定結果 2000 A G (合成未処理) Fictive Temperature (K) 1800 G 1600 B C D 1400 F (10 h) E (10 h) F E 1200 1000 0 A: 未処理 A B C D E F G 500 1000 1500 Distance From Outside (m) C (5 h), D (10 h) B (5h) 2.HIDランプの点灯 使用サンプル 点灯時間の違うHIDランプ (小型1cm) 点灯時間 1 2 10分 2000時間 2.OH濃度の測定結果 OH cont. (ppm) 150 100 点灯2000h 50 点灯10分間 0 0 500 1000 1500 Distance From inside ( m) 2.仮想温度の測定結果 Fictive Temprature TF (K) 1800 1600 点灯10分間 約1450K 1400 1200 1000 0 点灯2000h 約1250K 500 1000 1500 Distance From inside ( m) 3 .HIDランプに封入したシリカガラス ・使用したランプ管球 ショートアーク水銀ランプ(10cm) ・サンプル 試料名 材質 製造方法 OH量(ppm) ED-A 合成石英ガラス スート法 N 有水溶融石英ガラス 火炎溶融 100~200 HR 無水溶融石英ガラス 電気溶融 ES 合成シリカガラス 直接法 80 700~1500 片面を酸水素火炎処理 3.OH濃度の測定結果 200 200 ED-A (70ppm) 100 0 0 OH cont. (ppm) OH cont. (ppm) 300 1000 2000 3000 Distance From Surface (m) 2000 N (110ppm) 100 1000 2000 3000 Distance From Surface (m) OH cont. (ppm) OH cont. (ppm) 100 0 0 1000 2000 3000 Distance From Surface (m) 200 0 0 HR (10ppm) ES (1000ppm) 1000 0 0 1000 2000 3000 Distance From Surface (m) 3.仮想温度の測定結果 1300 HR 1350~1450K 1200 1100 0 1000 2000 3000 Distance From Surface(m) Fictive Temprature TF (K) ED-A 1300~1400K 1300 1200 1100 0 1300 N 1350~1450K 1200 1000 2000 3000 Distance From Surface(m) 1500 1500 1400 1400 1100 0 1000 2000 3000 Distance From Surface(m) Fictive Temprature TF (K) Fictive Temprature TF (K) 1400 Fictive Temprature TF (K) 1500 1500 1400 ES 1200~1300K 1300 1200 1100 0 1000 2000 3000 Distance From Surface(m) まとめ ・HIDランプの熱処理による構造変化 ・HIDランプの点灯による構造変化 ・OH基の除去には限界がある ・長い間点灯すると内側にOH基が入り込む ・シリカガラスの種類によって構造変化の様子が違う 今後の課題 ・構造変化に対する点灯時間依存性の把握
© Copyright 2024 ExpyDoc