日食を観測しよう この資料は、7月22日の日食を教育的な目的に利用しようとす る方を想定して作成しました。子供から大人まで楽しめる日食の 「観測」方法をいくつか説明しています。 参考資料は以下にあります。 http://www.astro.sci.yamaguchi-u.ac.jp/~kenta/eclipse/ ・日食観測を教育に使う方法(PDF) ・日食の計算(PDF) ・日食計算ワークシート(エクセル) 藤沢健太 (山口大学理学部 物理・情報科学科) 2009年2月24日 日食とは 部分日食 太陽 月 本影 半影 皆既日食 地球 • 観測者から見て、月が太陽をかくす現象 – 太陽を全部かくすと皆既日食 – 一部かくすと部分日食 • 2009年7月22日の日食 – 鹿児島県の南側で皆既日食、日本の全部で部分日食が見られる – 山口でも太陽の85%以上かける 2009年7月22日の日食 © NASA 皆既日食はインド、中国、日本の一部で見ら れる。日本全国で部分日食が見られる。 © 国立天文台 屋久島、トカラ列島、奄美大島などで皆既 日食が見られる。南西日本ほど大きくかけ た部分日食が見られる。 日本で見られる日食は9時半頃に始まり、 12時過ぎに終わる。 日食の予習(1) • 太陽を通過する月の動き – 月が太陽の前を通過していく様子を、予報値を使って描いてみよう • 太陽に対する月の位置を(先生が)計算して表にする • 分度器、定規、コンパスで月の位置を描く – 出来上がった図を見ると • 太陽の前を月が動いていく様子がはっきりとわかる • 観測結果(スケッチ)と比べられる 北 太陽 月 0時0分 1時0分 2時0分 3時0分 4時0分 1時間毎の月の動き 日食の予習(2) 月の動きの図の描き方 • 必要な数値は3つ • 手順 – P、qd、qm ①初めに太陽を描く。半径qs はいくつでも良いが、 qs=3cm程度が描きやす い。北の方向の線も描く。 ②北から左回りに分度器で 角度Pだけはかって、太 陽の中心から線を引く。 この方向に月がある。 ③太陽の中心からqd離れた 位置に月の中心点を描く。 太陽の半径をqs=3cmと した場合、qd=1.57なら 4.7cm(=3cm x 1.57)と する。 ④半径qmの円をコンパスで 描く。これが月である。太 陽の半径をqs=3cmとした 場合、qm=1.08なら 3.2cm(=3cm x 1.08)と する。 北 ① qs = 3.0cm ③ qd= 4.7cm ② P = 279° ④ qm= 3.2cm 月 太陽 P、qd、qmの計算方法は次に説明 日食の予報値 かけた割合 スケッチから測定した値と比べる スケッチ用紙を作るときに使う 観測地点の緯度と 経度を入力すると、 自動計算できる この値が正になると、部分日食 時刻 前ページの月の動き の図を作るときに使う かけた面積の割合 明るさ・気温の変化と比べる 日食の予報値の計算方法(1) “日食計算ワークシート”の使い方:前ページの表の作り方 観測地点の名前、 経度、緯度を入力 する 1. • • • 2. これだけ! 標高は適当でよい 経度・緯度を知る 方法は、資料「日 食の計算」に記載 下のタブ 「Results」をクリッ クすると、前頁の 表ができている。 これを印刷すれば よい。 日食の予報値の計算方法(2) 「日食開始時刻」の計算方法 • 方法1.「日食の計算」の手 順どおりに高次の補間計算 をする – 良い点 • 手順を細かく書いたので、よ く読めば誰でもできる – 悪い点 • 本文をよく読まなくてはなら ない • 計算がかなり面倒 • 方法2.直線補間(比例配 分)で計算する – やり方 • 「日食計算ワークシート」の 下のほうをたどると、1分毎 のQ1の値が示されている。 この値がマイナスからプラス に変化(またはその逆)する 時刻を、前後の値から比例 配分して計算する。時間間 隔が1分間なので、誤差は1 秒以下。 – 良い点=簡単 – 悪い点=この説明だけでわ かる? さらに簡単な方法(計算しないでインターネットの利用・・・) 国立天文台の天文情報センター 暦計算室のサービスを利用する http://www.nao.ac.jp/koyomi/ の中の日食各地予報に入る 太陽の正しい観察方法 太陽の観察は目に対する障害の危険性があります。決して、望遠鏡や双 眼鏡で太陽を見てはいけません。肉眼で直接太陽を見るのも危険です。 (せんだい宇宙館HPより) (ビクセンHPより) • 肉眼で観察する場合 – 専用の「日食グラス(日食フィル ター)」を通して、目で観察する – 良い点 • 誰でも観察できる • 手軽に観察できる – 悪い点 • 細かいところがわからない • 長時間、観察すると、やはり目に悪い • (ビクセンHPより) 望遠鏡の投影法 – 望遠鏡を使って、投影板に太陽の像 をうつす – 良い点 • 多人数で観察できる • 細かい部分も観察できる – 悪い点 • 機材の準備・調整が面倒 • 間違って望遠鏡をのぞいてしまう危 なさがある 日食の観測あれこれ • 日食を観測する 1. 日食の開始と終了の時刻 を測る • • • 時刻を測るだけ 簡単でシブい やってみると面白い 2. 日食の様子をスケッチする • • • 月が動いていく様子がはっ きりとわかる スケッチから食分(欠ける 割合)を測定できる 全部スケッチすると、ちょっ と時間がかかる • 日食と一緒に起きる現象 を観測する 1. 明るさの変化、気温の変化 • • • 日食のときにどれくらい暗 くなるのか 雲は変化するか? 気温は下がるのか? 2. 動物の行動も変化する? • 鳥や獣の行動は? 日食の開始と終了の時刻を測る • 観測内容 – 日食の最初の欠け始め(第一接触)、欠け終り(第四接触)の時刻を測定 – 予報値(自分で計算できる)と比較してみる • 必要なもの – 時計(できるだけ正確な時計、文字盤が大きなものが良い。電波時計やGPS 機能付き携帯電話は好都合) – 望遠鏡(太陽投影板のついた望遠鏡で投影法で観測する) • 測定方法 – – – – 時計の時刻あわせ(電波時計なら不要) 望遠鏡の設定、太陽像の投影 予定の時刻のちょっと前から、誰かが毎秒の時間を読み上げる 欠け始めたことに最初に気づくのは誰か、みんなで競う • 注意点 – 観察方法:決して望遠鏡を通して太陽を見ない – 測定データ:できるだけ正確に、しっかりと自分の観察を行う – ○時○分○秒に開始・終了と、秒まで正確に記録する 広い範囲で観測 ○時○分○秒 △時△分△秒 ×時×分×秒 ◇時◇分◇秒 あちこちの観測結果 を集めて地図の上に 描いてみる。 同じ時刻に日食が始 まった場所を線で結 ぶと、月の影の形が 描ける。 時間とともに『月の影 が地上を動いていく 様子』もわかる。 全国で測定した結果 を集めると、もっと面 白い! 日食の様子をスケッチする • 観測内容 – 10分に1枚のスケッチを描き、日食の様子を記 録する • 必要なもの – 日食グラス(目で観察)、または望遠鏡と太陽投 影板 – スケッチ用紙はあらかじめ「天頂」「天の北極」 の線を描いておく • 測定方法 – 見たままの姿をスケッチする – スケッチ用紙の「天頂」の線が頭の真上に向くよ うにして描く • 注意点 – 長時間なので、疲れないように注意する • 観測の後 – 「天の北極」の線をそろえて、スケッチを重ねる – 「予習」で作った図と比べてみる 10時00分 天の北極 天頂 10時10分 天の北極 天頂 10時20分 天の北極 天頂 スケッチについて • スケッチ用紙の作り方 – 右図のように作る – 「天頂」と「天の北極」 • 「天頂」の線に対する「天の北極」の線の角 度=q’ • 日食計算ワークシートの計算結果を使う • 「月の型紙」を使うと良い – フリーハンドでスケッチすると、粗雑になる – 月の大きさ(今回の日食では太陽の大きさ の1.08倍)の丸い型紙を用意して、それをあ てがってスケッチすると良い 10時20分 天の北極 天頂 q’ スケッチから食分を計算する • 食分=かけた程度 – 太陽の直径に対して、かけた部分のもっ とも太い幅の割合 – あらかじめ計算できるので、計算値(表の 食分D)と観測値を比較してみよう 欠けた部分 直径 1.0 食分 D 0.8 0.6 太陽 0.4 0.2 0.0 0 9 3600 10 7200 10800 11 12 9時0分0秒からの秒数 時刻 14400 13 18000 14 スケッチから測定した食分を 計算値と比較する 明るさの変化、気温の変化 • 明るさの変化 – 太陽がかけると、光の 量は少なくなるはず – 実際にどれくらい少なく なっているだろうか – 「照度計」で測定できる – 計算値(表の食の面積 R)と比較できる • 気温の変化 – 光の量が少なくなるなら、 気温も低くなるはず – 実際にどれくらい気温が 低くなっているだろうか – 温度計で測定できる – 温度の低下を計算で推 定するのはとても難しい。 そもそも本当に温度は 下がるのか? 日食の後の夕方の月 • 日食の後、夕方の空に見える月 月の軌道 – 日食のとき、月は太陽にちょうど重なっていた けれど、毎日、だんだん太陽から遠ざかる – 月は地球の周りを回っているんだ! 毎日の月の動き 沈んだ太陽 日食の観察の指導 • 教師が知っておくべき こと – 正しい観察方法 • 日食グラスの使い方 • 太陽の投影法による観察 – 日食の計算 • エクセルの表を使えば簡 単 • 事前準備 – 望遠鏡の使い方練習 • 太陽投影板を使うのは練 習が必要 – 様々な計算 • エクセルで一発です – スケッチ用紙 • 「天頂」と「天の北極」 その他 • 木漏れ日と鏡で日食観察 木漏れ日も日食になる (せんだい宇宙館HPより) 鏡で写した太陽も日食になる 小さな平面鏡 歪んでいないことが大切 事前に太陽を写して、丸い姿に 見えることを確かめておくと良い 壁 • 次の日食は、2012年5月20日、東京を含む広い地域で金 環日食が見られる。日本全国で部分日食が見られる。
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