卵子提供 異文化コミュニケーション論 中司真貴 4年 アジェンダ 2 1.卵子提供とは 2.日本の状況 卵子提供とは / 二人のアクター / 報酬とリスク 法律とガイドライン / なぜ法整備が進んでいないのか 3.諸外国の状況 中国 / 韓国 / アメリカ / フランス / まとめ 4.提言・論点 5.参考 1.卵子提供とは 3 卵子提供とは不妊治療のひとつ。 第三者の卵子と、夫の精子とを体外受精させた後、受精卵を 妻の子宮に戻す方法。 卵子提供を受けて出産した女性の数… ・国内で卵子提供を受けた出産は、 1997年から2012年までに72件あり、計81人生まれている。 ・海外で卵子提供を受け日本で生まれた子どもは、 過去5年間で少なくとも130人いる。 ・国内提供分と合わせ合計211人以上が出生した。 (読売新聞2012年5月) 1.卵子提供とは 4 二人のアクター ①不妊治療患者(レシピエント) 不妊治療を受けている女性。30歳代後半~50歳まで。自分の卵 子に問題がある人が多い。 ②卵子提供者(ドナー) 自分の卵子を他人の不妊治療のために提供する女性。有償で提 供する場合と無償で提供する場合がある。だいたい20歳~30歳 すぎまで。学生が多い。 1.卵子提供とは 5 ①不妊治療患者の報酬とリスク 報酬:念願の子ども リスク:成功する保証なし(高くて30%)。不妊治療にかかる お金は多額。妊娠に伴う合併症。生まれた子どもの心理的問題 (出自の問題)。子どもが低体重や障碍を持つ可能性高い。 例)野田聖子元郵政相が2010年にアメリカで卵子提供を受け、 男児を出産。 ・50歳という超高齢出産。 ・卵子提供に500万円、不妊治療に500万円。 40歳から10年間の不妊治療生活。 ・重篤の障碍を持った子ども。 1.卵子提供とは 6 ②卵子提供者の報酬とリスク 方法 自分が持っている卵子のうち、排卵されない(一生、受精の機会 を得ない)卵子を薬、または薬+外科手術によって取り出す。 報酬:善意。現金収入(有償の卵子提供の場合)。 リスク:薬による副作用(腹水が溜まったり、卵巣の嚢腫や子 宮がんの発症率が上がる)。麻酔をする外科手術にともなうリ スク。 2.日本の状況 7 法律、ない。(違法でも合法でもないグレーゾーン?) ガイドライン 日本産婦人科学会「精子提供は匿名の提供で無償に限る。卵子 提供は法が整備された場合に認める。その場合、匿名の提供の みで、近親者間は認めない」 厚生労働省「精子提供・卵子提供を認めるが、匿名の提供の み。」 日本生殖医学会「匿名でない提供(近親者・知人から)を認める。 卵子提供を受ける女性は45歳まで。」 精子提供のみが学会で公認されている。卵子提供は学会公 認でないが、すでにおこなわれている。 2.日本の状況 8 実際の現場では、医療機関によって方針がバラバラ。 卵子提供は、国内のごく一部の医療機関でしか行われてい ない。 病気のため自分の卵子で子どもを持つことができない女性を主 な対象としている。(cf.閉経後。同性愛者。) 国内での卵子提供では無償が基本。事実上自分で提供者を見つ けなければならない。難しい。 =実際はほとんどが姉妹間 2.日本の状況 9 進んでいない法整備 厚生労働省は2003年、「精子・卵子・胚の提供等による生殖補 助医療制度の整備に関する報告書」をまとめた。 ①匿名の第三者からの精子・卵子の提供による体外受精を条件 付きで認めること、②それを実施するために法整備を進めるこ と、を提言した。 しかし法整備はほとんど進んでいない。 2.日本の状況 10 なぜ法整備が進んでいない? 厚生労働省「価値観にかかわる問題で役所が主導することはな じまない」 →議員立法での法制化に期待 しかし、議員の中に消極的意見が多い。 生殖補助医療は「法による規制にそぐわない」、「票にならな い」など無関心さがある。法案提出されていない状態。 野田聖子「夫婦制度による家族を廃止して、自分の価値観で” 家族”と認める多様化の実現。」 法を整備すること自体に反対。(法案化を阻止した…?) 生殖補助医療を牽引する機関がない 3.諸外国の状況 11 中国 ~法律未整備だが卵子売買行う~ 名門大学の女子学生、小遣い稼ぎの「卵子提供」 女子学生の卵子提供者 →業者による面接判定や身体検査を通じて“良好”と判断 →医療機関で採卵 →「栄養費」と称する高額報酬(24万~36万円)。 中国・衛生部では、卵子の提供は「体外受精の治療で行う採卵 の過程で余った卵子のみ」と規定。卵子の“商業化”は禁止。 だが法律は未整備。 3.諸外国の状況 12 韓国1 ~法整備成功~ 2001年、不妊患者と提供者を仲介する業者「DNAバンク」設立。 卵子売買が公然と行われる。 2年後から日本人の斡旋も始め、日本人が韓国に渡航して不妊治 療をうけるようになる。 「04年末までに600人の日本人が渡航、500人の子どもが生まれ た」 3.諸外国の状況 13 韓国2 ~法整備成功~ 05年、韓国政府は生命倫理法を施行。卵子の売買を禁じ、無償 による提供のみ認めた。 それでも、文書を偽り仲介を続ける業者がいたので、 11年2月韓国政府は、外国人であっても処罰する通知を送付。警 察が業者を摘発。 現在、韓国での治療をあきらめた日本人不妊治療患者は、タイ やインドへ… 3.諸外国の状況 14 アメリカ ~自由市場~ 保険もきく一般的な不妊治療として定着。 大学にポスター 提供できるのは21~32歳。謝礼は8千ドル(66万円)。有名大学学 生には高い価値がつき3万5千ドル(290万円)の場合も。 背景:養子縁組が多く、遺伝的つながりのない親子関係に抵抗 が少ない。規制も少ない。(倫理委員会は「1万ドルを超える謝 礼は不適切」という指針を出してはいるが…) サンフランシスコで日本人相手に卵子提供・代理出産のコー ディネートを行うIFCという仲介業者は今年で18年目。「850組 以上を斡旋し、95%以上が妊娠」(同社HP)。受精卵を子宮に移植 する費用は5万ドル(410万円) 3.諸外国の状況 15 フランス ~堅実な法整備~ 1982年 初めて体外受精によって子どもが生まれる 国家が諮問委員会を設置。「指針よりも立法によって規定すべ き」という議論が多勢。 1994年に生命倫理法を定め、その後2004年に改正し、 移植・生殖に関する管理を行う機関“先端医療庁”を設置。 法律による規則が現場で実行力を持つように。 法律で明確に倫理規定を定めている。 あいまいな行政指導ではなく、倫理規定に基づいた行政処分を 明確に行うことができる。 4.諸外国の状況 16 諸外国の状況 まとめ 法整備は諸外国によっていろいろだが、ヨーロッパでは進んで おり、アメリカでは自由、アジアでは法整備途中だといえる。 法整備をする、法に権限をもたせるには年月が必要。 (韓:法制定後も実行力なし、6年後から厳しい処分・摘発) (仏:法制定から10年後に大幅改正し、現場で実行力もつ。) 法整備することの功罪 法律制定 ・社会的コンセンサス形成 ・行政処分や罰則が可能 ・予算確保 ・親子のケアや情報基盤などインフラが整う ガイドラインのみ ・フレキシブル(法は改変しにくい) ・倫理的な価値観の多様性を尊重 ・難しい社会的コンセンサス形成を避ける (先端医療の是非・家族の形など) ・規制強化による海外流出を防ぐ 4.提言・論点 17 提言 明確なルールやペナルティがないまま放任状態が一番の問題。 改正する前提で、法整備を急ぐ。 匿名・匿名でないに限らず卵子提供を認める。 無償にするべき。 現状把握と情報インフラの形成、提供者と患者を結ぶ「コー ディネーター」を設ける(cf. 臓器移植コーディネーター)。 論点 ◇卵子提供について法案化すべきか? ◇規制は強化するべきか、緩和するべきか? 5.参考 18 舘かおる『ジェンダー研究のフロンティア4 テクノ/バイオポリティ クス ―科学・医療・技術のいま』2008、作品社 A・キンブレル『すばらしい人間部品産業』福岡伸一訳、2011、講談社 2010年12月6日 朝日新聞「求ム卵子 読売online yomiDr. 「卵子提供 医師の意見(1)~(4)」(2012.5.24) http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/ 「国内卵子提供で81人出生…ほとんどが姉妹間」(2012.5.1) 「海外における生殖補助医療の現状」林かおり http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/pdf/024304.pdf <最終閲覧日:2012年11月12日> 謝礼8000ドル]
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