進化ゲームと微分方程式 第15章 n種の群集の安定性 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 知識システム基礎学専攻 遺伝子知識システム論講座 佐藤研究室 亀谷 聡 [email protected] ロトカ・ヴォルテラ方程式とは 捕食者と被食者の相互作用による個体群数のダイナミクスを記述する方程式 n xi r i aij x j xi j 1 (15.1) x i :個体群密度 ri :n種類の種内種間の相互作用を無視した場合のiの成長率 aij :一単位の種jが種iの個体数成長率に与える影響 この方程式は、種iの増加率( x i / x i )を表しており、内的増加率( ri )と種jの影響からなる (定理15.1.1) 全ての i j に対して aij 0 を満たす(15.1)を考える。これが内部休止 点 を持つと仮定する。この時次の性質は同値といえる n (M1) R 内の全ての軌道は t の時一様有界である (M2) 行列Aが安定である(Aの全ての固有値が負の実部を持つ) (M3) Aの主座小行列式の符号が (1) k det(aij )1i , j k 0 で与えられる (M4) 全ての c 0 に対して X 0 が存在し AX C 0 (M5) X 0 が存在し を満たす AX 0 を満たす (M6) 休止点は Xˆ は大域的漸近安定であり、全ての(境界上の)軌道は (M7) Xˆ t の時一様有界である は大域的に安定である (M8) (15.1)はパーマネンスである (M9) 全ての内部軌道は (M10) A 1 t の時一様有界である が存在し、その成分は全て非正である (M11) 全ての X 0 (ただし、X 0 )に対して, ( AX )i 0 となるiが存在する (定理15.2.1) 行列Aに対して次の条件は同値である (B1) 全ての (B2) r R n に対して、ロトカ・ヴォルテラ方程式(1)の解は t の時一様有界である R n における x i x i ( AX i ) の解に対して、原点0は大域的に漸近安定である (B3) ある X 0 (ただし、 0 )に対して、 が成り立つ時、 x i ( AX i ) x i 0 i 1,...,n である 同値な条件(B1)~(B3)行列のどれかが成り立つ時、AはB行列と呼ばれる (定理15.2.4)行列AがB行列であることと次の条件は同値である (B4) X 0 を満たす全ての X 0 に 対して、 xi 0 かつ( AX )i 0 を満たす i が存在する ⇒この条件は生物学的には、全ての状態 0において、少なくとも1つの種iの成長率が種の相互 作用によって減らされることを意味する (B5) 正の対角行列Dおよび X 0 ( X 0 )に対して、 AX DX が成り立つ時、 0 であり、Aの全ての主 小行列も同じ性質を持つ (B6) 全ての非負の対角行列 D 0 について、A-D は X 0の方向に0固有値を持たず、Aの全ての主小行列 も同じ性質を持つ (B7) AX 0 を満たす X 0 が存在し、全ての主小行列も同じ性質を持つ (B8) ある r R に対して、ロトカ・ヴォルテラ方程式 (15.1) は aij は の小さな摂動に対してロバストである n rR (B9) 全ての n t で全ての軌道が有界となり、この性質 に対して、(15.1)は、飽和休止点を持ち、同様な性質が全てのサブシステムに対して 成り立つ (B10) 全ての r 0 に対して、(15.1)は唯一の飽和休止点、即ち、0を持つ (定理15.2.11)Aの全ての真主小行列はB行列であり,det(-A)>0であるならば、A自身がB行列である ヴォルテラ・リアプノフ安定(VL安定) 行列Aについて、対称行列 DA d a i ij At D が負定値となるような正の対角行列 D 0 が存在する時 xi x j 0 (全ての X 0) i, j が成り立つような正の数 d i が存在する時、Aはヴォルテラ・リアプノフ安定と呼ぶ (定理15.3.1) AがVL安定ならば、全ての r R n に対してロトカ・ヴォルテラ方程式は大域的 に安定な不動点を持つ 行列Aは、すべての主小行列式が正である時、P行列と呼ばれる (定理15.4.1) P行列の以下の性質は全て同値である (P1) AがP行列である (P2) 全ての対角行列D 0に対して、A+DはP行列である (P3) 全ての 0 に対して、 i ( AX ) i (P4) 全ての 0 に対して、X 0 を満たすiが存在する DAX DX AX 0 を満たす対角行列D>0が存在する (P5) Aの主小行列の全ての実固定値は正である (定理15.4.5)ロトカ・ヴォルテラ方程式が全ての r R に対して一意な飽和休止点を持つ ための必要十分条件は、-AがP行列となることである n 0 または a ji 0 の時、iとjを辺で結ぶことによ G(A) が得られ、 a ij 0 の時、矢印j→iを引くことにより有向グラフ G ( A) が得られる。 Aを(1)でモデル化される生態系の相互作用行列とする。a ij り無向グラフ 相異なる添え字の組み合わせ i1 , i2 , ik に対して積 a i ,i a i ,i a i 1 2 2 3 k ,il が零とならないものをAのサイクルと呼 ぶ。このサイクルの長さはkである。 (定理15.5.1) Aが長さ3以上のサイクルを持たないとする。この時、AがVL安定と ための必要十分条件は-AがP行列となることである G (定理15.5.3) ( A) が長さ3以上のサイクルを持たず、a ii 0 かつ全ての i j に対して aij a ji 0 を満たすと仮定する。この時AはVL安定である aij →この定理の特殊な例が食物連鎖である。相互作用の係数 の符号(+、0、 -) のみがわかっている場合に安定性が保証される a ii 0 と長さが2以上のAの全てのサイクルが正であるという条件を満たす (定理15.5.8) Aが、 時、AがVL安定であるための必要十分条件は、-AがP行列となることである D安定性と全安定性 X をロトカ・ヴォルテラ方程式(15.1)の内部不動点とする。 X るので、成長率 におけるヤコビアンは ( xi aij ) で与えられ ri に依存する。 X が常に漸近安定であることを保証するには、相互作用行列AがD安定、 すなわち、全ての対角行列 D 0 に対してDAが安定であればよい。 D安定性という概念は非常に難しいものであり,ロトカ・ヴォルテラ方程式に対して-驚くべきことに-あ る種の大域的意味を持っている。 (定理15.6.5) Aが全安定であるための必要十分条件は、各rに対して、(15.1)が飽和不動点を唯一 つだけ持ち、かつ、この点がその辺内で漸近安定となることである
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