X線天文学と 宇宙の高エネルギープラズマ 名古屋大学KMI 現象解析研究センター 松本浩典 金沢大学集中講義 1 集中講義の内容 • • • • X線、X線放射過程 超新星残骸プラズマ 天の川銀河中心プラズマ 銀河団プラズマ 金沢大学集中講義 2 超新星1987A 1987年2月24日 1987年2月23日 大マゼラン星雲 大マゼラン星雲 金沢大学集中講義 3 新星(nova)・超新星(supernova) 突然明るく発生する星。 光度 新星 … 太陽の~105 倍 9 超新星 … 太陽の~10 倍 新しい星の誕生と思われていた。 金沢大学集中講義 4 新星 ©Wikipedia 白色矮星周辺の降着円盤(恒星+白色矮星) 金沢大学集中講義 5 超新星Ia型 白色矮星+連星系。核反応の暴走。 金沢大学集中講義 6 超新星II型 大質量星の重力崩壊。後に中性子星やBH。 金沢大学集中講義 7 ぎんが衛星 ちなみに 1987/2/5打ち上げ SN1987A: 1987/2/24 あすか衛星 M81 1993/2/20打ち上げ SN1993J: 1993/3/28 金沢大学集中講義 8 超新星爆発のタイプ 本来は、スペクトルや光度曲線で分類 • Type I … スペクトルに水素無し • Ia, Ib, Ic etc • Type II … スペクトルに水素有り • IIP, IIL etc 研究現場では、多くの場合は、 Type Ia = 白色矮星連星系起源 Type II = 重力崩壊起源 を意味する。 金沢大学集中講義 9 放出エネルギー概算: Type Ia 質量降着でChandrasekhar限界を超える。 白色矮星中心部の温度が上がる。 核反応暴走。 核反応…1MeV/核子の放出を仮定。 Cf: 原子の世界 … 数keV 分子の世界(化学エネルギー … 数eV) 金沢大学集中講義 10 恒星の釣り合い 重力エネルギー=粒子の運動エネルギー 基本的な量 𝑀 核子数𝑁𝑝 =電子数𝑁𝑒 = 𝑚𝑝 核子数密度𝑛𝑝 =電子数密度𝑛𝑒 ∼ 半径R, 質量M 金沢大学集中講義 𝑀 𝑚𝑝 𝑅 3 11 恒星の重力エネルギー 𝑀2 𝐸𝐺 ∼ −𝐺 𝑅 半径R, 質量M ln |𝐸𝐺 | 2 ∝𝑀 𝑅 金沢大学集中講義 −1 ln 𝑅 12 縮退星の粒子の運動エネルギー 密度が高く、不確定性関係で激しく暴れる (縮退圧>>熱エネルギー密度) 粒子数密度𝑛𝑒 ∼ 𝑛𝑝 ∼ 1 − 3 半径R, 質量M 𝑀 𝑚𝑝 𝑅 3 1 − 3 1 3 粒子間隔𝑙 = 𝑛𝑒 ∼ 𝑀 𝑚𝑝 𝑅 ℏ 𝑙 1 3 1 − 3 不確定性関係 𝑝 ∼ ∼ ℏ𝑀 𝑚𝑝 𝑅 金沢大学集中講義 −1 13 縮退星粒子の運動エネルギー 1 3 1 − 3 運動量𝑝 ∼ ℏ𝑀 𝑚𝑝 𝑅 電子が光速に近い 電子が遅い 𝜖𝑒 = 𝑝2 2𝑚𝑒 ∼ ℏ𝑀 (𝜖𝑒 ≫ 𝜖𝑝 ) 𝐸𝐾 = 𝑀 𝜖 𝑚𝑝 −1 2 3 2 −3 𝑚𝑝 𝑚𝑒−1 𝑅 −2 5 3 5 −3 ∼ ℏ𝑀 𝑚𝑝 𝑚𝑒−1 𝑅−2 (𝐸𝑒 ≫ 𝐸𝑝 → 𝐸𝐾 = 𝐸𝑒 + 𝐸𝑝 ∼ 𝐸𝑒 ) 𝜖𝑒 = 𝑝𝑐 ∼ (𝜖𝑒 = 𝜖𝑝 ) 𝐸𝐾 = 𝑀 𝜖 𝑚𝑝 1 −1 ℏ𝑐𝑀3 𝑚𝑝 3 𝑅−1 ∼ ℏ𝑐𝑀 4 3 4 −3 𝑚𝑝 𝑅 −1 (𝐸𝑒 = 𝐸𝑝 → 𝐸𝐾 = 2𝐸𝑒 ) 金沢大学集中講義 14 縮退性粒子の運動エネルギー ln 𝐸𝐾 ∝ 4 𝑀3 𝑅−1 金沢大学集中講義 or 5 −5 = ℏ𝑀3 𝑚𝑝 3 𝑚𝑒−1 𝑅 −2 4 −4 = ℏ𝑐𝑀3 𝑚𝑝 3 𝑅 −1 ∝ 5 −2 3 𝑀 𝑅 𝐸 ln 𝑅 15 通常の白色矮星 ln 𝐸 𝐸𝑘 ∝ 4 −1 3 𝑀 𝑅 |𝐸𝐺 | 2 −1 ∝𝑀 𝑅 ∝ 5 𝑀3 𝑅−2 釣合半径 金沢大学集中講義 ln 𝑅 16 ちょっと重い白色矮星 ln 𝐸 𝐸𝑘 ∝ 4 −1 3 𝑀 𝑅 |𝐸𝐺 | 2 −1 ∝𝑀 𝑅 ∝ 釣合半径 金沢大学集中講義 5 −2 3 𝑀 𝑅 ln 𝑅 17 重い白色矮星 ln 𝐸 𝐸𝑘 ∝ |𝐸𝐺 | 2 −1 ∝𝑀 𝑅 4 𝑀3 𝑅−1 ∝ 5 𝑀3 𝑅 −2 釣合うところがない! 金沢大学集中講義 ln 𝑅 18 ちょうど重なる白色矮星 ln 𝐸 𝐸𝑘 ∝ |𝐸𝐺 | 2 −1 ∝𝑀 𝑅 4 𝑀3 𝑅−1 ∝ 5 𝑀3 𝑅 −2 Chandrasekhar質量と呼ぶ 金沢大学集中講義 ln 𝑅 19 Chandrasekhar質量 電子が光速に近い条件で、|𝐸𝐺 | = 𝐸𝐾 2 𝑀 𝐺 = 𝑅 ℏ𝑐 𝑀= 𝐺 3 2 4 −4 ℏ𝑐𝑀3 𝑚𝑝 3 𝑅−1 𝑚𝑝−2 ∼ 3.7 × 1033 𝑔 ∼ 1.9𝑀⊙ 詳しく計算して、𝑀 = 1.4𝑀⊙ 金沢大学集中講義 20 放出エネルギー概算: Type Ia 33 白色矮星 𝑀 ∼ 2 × 10 g 核子数 2×1033 𝑔 2×10−24 𝑔 57 = 10 個 放出エネルギー 57 63 51 1MeV/個× 10 個 = 10 eV = 10 erg 白色矮星の重力束縛エネルギー 𝑀2 −𝐺 𝑅 50 𝐸𝑔 = ∼ 4 × 10 (𝑅 ∼ 6 × 108 cm) 金沢大学集中講義 erg 吹っ飛ぶ。 21 Type Ia重元素合成 理論計算の例(Nomoto + 1984, Thielemann + 1996) 金沢大学集中講義 22 SN1006 (1006年の超新星爆発) 藤原定家 明月記 すざく衛星X線画像 23 大量の鉄原子。Type Ia確定? X線の到来数 ネオン 硫黄 アルゴン 鉄 酸素 マグネ シウム シリコン カルシウム エネルギー(KeV) 24 Type Ia光度 最大光度はどれも同程度らしい標準光源 金沢大学集中講義 25 観測的宇宙論で活躍 見かけの明るさ 距離 距離 vs 赤方偏移 宇宙論パラメター ダークエネルギー を示唆 金沢大学集中講義 26 放出エネルギー概算: Type II 中性子星の重力エネルギー 33 M~1.4Msun=3 × 10 g 6 R~10km=10 cm 2 53 E~− 𝐺𝑀 𝑅 = 6 × 10 erg このぐらいのエネルギーが放出されるが、 99%をニュートリノが持ち去る。 小柴氏ノーベル賞 普通の物質には 1%の∼ 1051 erg 金沢大学集中講義 27 エネルギー放出量 タイプに関わらず、E~1051erg ほとんどが物質の運動 光に行くのは数% 金沢大学集中講義 28 超新星爆発の影響 星間物質の運動エネルギー 1 𝑀 𝑉 2 57 𝑀𝑉 ~10 𝑒𝑟𝑔 2 1010 𝑀 100𝑘𝑚/𝑠 2 超新星爆発 1発 10 59 10 𝑒𝑟𝑔 × × 10 年~10 𝑒𝑟𝑔 100年 51 金沢大学集中講義 29 超新星残骸 E~1051ergで星がふっとぶ。 爆風速度 1 2 1 2 E M 2E 9 V ~ ~ 10 cm / s 51 33 M 10 erg 2 10 g 音速(~105 cm/s)を超えて物質が飛ぶ。 衝撃波発生で高温プラズマ発生。 超新星残骸 (Supernova Remnant; SNR) 金沢大学集中講義 30 1 2 Chandra X-ray image: Shell Cassiopeia A SN1006 金沢大学集中講義 ©CXC 31 Chandra X-ray image: Plerionic Crab 3C58 パルサー風星雲と関連 ©CXC 金沢大学集中講義 32 Chandra X-ray image: Composite Kes 75 SNR0540-69.3 金沢大学集中講義 ©CXC 33 Chandra X-ray image: Mixed Morphology IC443 Kes 79 赤:可視光 緑:電波 青:X-ray Seward et al. 2003 ©CXC 電波でシェル型、X線で中心集中 金沢大学集中講義 34 SNRの進化(1): Ejecta 自由膨張期 星間物質 ejecta 金沢大学集中講義 35 SNRの進化(2): 断熱膨張期 掃き集めた星間物質質量 > ejecta質量 星間物質 順行衝撃波 加熱された 接触不連続面 星間物質 加熱された ejecta 逆行衝撃波 金沢大学集中講義 36 衝撃波の位置 金沢大学集中講義 37 Seward & Charles “Exploring the X-ray Universe” SNRの進化(3): 放射冷却期 51 E0(~10 erg)に比べて、放射で失った エネルギーが無視できない。 金沢大学集中講義 38 有名なSNRの例 名前 年 齢 距離 直径 視直径 段階 タイプ kyr kpc pc 分角 Cas A 3.4 3 3.5 4 1-2 シェル 38 Kepler 0.40 5? 4.4? 3 1-2 シェル 10 Tycho 0.43 3 7.0 8 1-2 シェル 6 SN1006 1.00 1 9 30 1-2 シェル 1 Lx 1035 erg/s E0102-72.3 1 60 13 0.73 1-2 シェル 210 W44 7 3 26 30 2 MM 20 Kes79 7 7 22 11 2 MM 25 Cyg Loop 20 0.8 40 170 2~3 シェル 11 金沢大学集中講義 1.自由膨張 2.セドフ 3.放射冷却 Mixed Morphology 39 断熱膨張期: Sedov解 時刻t ρ E r 定性的導出 1 75 𝑟 𝑡 = 8𝜋 5 1 1 2 − 5 𝐸 𝜌 5𝑡5 2 75 𝑣 𝑡 = 5 8𝜋 1 5 1 1 3 − − 𝐸5𝜌 5𝑡 5 金沢大学集中講義 40 さらなる詳細は坂下・池内「宇宙流体力学」など 衝撃波 実験室系 衝撃波静止系 V2 V1 V1 質量保存 𝜌1 𝑉1 = 𝜌2 𝑉2 エネルギー保存(単位質量あたり) 𝑃1 𝜌1 + 𝑉12 2 + 1 3 𝑘𝑇1 𝑚 2 運動量保存 = 𝑃2 𝜌2 + 2 𝜌1 𝑉金沢大学集中講義 1 + 𝑃1 𝑉22 2 = + 1 3 ( 𝑘𝑇2 ) 𝑚 2 2 𝜌2 𝑉2 + 𝑃2 41 強い衝撃波 実験室系 衝撃波静止系 V2 V1 V1 音速<<衝撃波速度 𝑃1 ≪ 𝑉1 𝜌1 金沢大学集中講義 𝑘𝑇1 ≪ V1 𝑚 42 強い衝撃波の近似 実験室系 衝撃波静止系 V2 V1 V1 質量保存 𝜌1 𝑉1 = 𝜌2 𝑉2 エネルギー保存 𝑉12 𝑃2 𝑉22 1 3 = + + ( 𝑘𝑇2 ) 2 𝜌2 2 𝑚 2 運動量保存 2 2 𝜌1 𝑉金沢大学集中講義 1 = 𝜌2 𝑉2 + 𝑃2 43 解 𝑃= 𝜌 𝑘𝑇と組み合わせて解くと、 𝑚 𝜌2 = 4𝜌1 1 𝑉2 = 𝑉1 4 3 3 2 2 𝑘𝑇2 = 𝑚𝑉1 ~ 𝑚𝑝 𝑉1 16 32 (主成分水素原子) 金沢大学集中講義 44 Sedov解と組み合わせる 75 𝑟 𝑡 = 8𝜋 2 75 𝑉 𝑡 = 5 8𝜋 1 5 1 5 1 1 2 − 5 𝐸 𝜌 5𝑡5 1 1 2 − 5 ~1.24𝐸 𝜌 5 𝑡 5 1 1 3 − − 5 𝐸 𝜌 5𝑡 5 1 1 3 − − 5 0.50𝐸 𝜌 5 𝑡 5 ∼ 2 2 6 3 − − 2 5 𝑘𝑇 𝑡 = 𝑚𝑝 𝑉 ∼ 0.023𝑚𝑝 𝐸 𝜌 5 𝑡 5 32 金沢大学集中講義 45 現実のSNR 51 −24 𝐸 ∼ 10 𝑒𝑟𝑔, 𝜌 ∼ 10 𝑟 𝑡 1 1 2 − ~1.24𝐸 5 𝜌 5 𝑡 5 𝑉 𝑡 ∼ 1 1 3 − − 0.50𝐸 5 𝜌 5 𝑡 5 𝑘𝑇 𝑡 = 3 10 𝑔 𝑐𝑚 , 𝑡 ∼ 3 × 10 𝑠 19 ∼ 1.9 × 10 𝑐𝑚 ∼ 6𝑝𝑐 ∼ 2.6 × 108 𝑐𝑚 𝑠 2 2 6 − − 5 0.023𝑚𝑝 𝐸 𝜌 5 𝑡 5 ∼ 6.4𝑘𝑒𝑉 温度が少し高めだが、いい線いってる。 金沢大学集中講義 46 電離非平衡プラズマ Tycho: すざくXISスペクトル 連続成分 kT=3.48+0.59-1.19keV 鉄ライン 中心エネルギー 6.445+0.001-0.001keV Tamagawa et al. 2009 Hayato et al. 2010 金沢大学集中講義 高階電離して いない! 47 電離には時間がかかる。 • Ejectaや星間物質は中性。 • 原子同士の衝突で徐々に電離する 12 3 𝑛𝑒 × 𝑡 ∼ 10 𝑠 𝑐𝑚 で 𝑇𝑒 ∼ 𝑇𝑧 それ以下の場合は 𝑇𝑒 > 𝑇𝑍 𝑛𝑒 : 電子数密度 𝑡: 電離開始からの時間 𝑇𝑍 : 電離の度合いを示す温度 𝑇𝑒 : 電子の運動を示す温度 Masai et al. 1994 金沢大学集中講義 48 各種温度の時間発展 温度 陽子温度 数百年 電子温度 数万年 イオン化温度 ショック通過後の時間 金沢大学集中講義 49 Non-Equilibrium Ionizationモデル計算例 kT=3keV, Ab=1solar nt=1e10 s/cm^3 nt=1e11 s/cm^3 nt=1e12 s/cm^3 金沢大学集中講義 50 NEIモデル計算例 鉄輝線のアップ nt=1e10 s/cm^3 nt=1e11 s/cm^3 nt=1e12 s/cm^3 kT=3keV Ab=1solar 金沢大学集中講義 51 NEI plasma 多くのSNRで、NEI plasmaが発見されている。 Tycho, Cas A, E0102-72.3 など多数 イオン化温度<電子温度の NEI イオン化温度>電子温度のNEIは 存在しないのか? 金沢大学集中講義 52 すざく衛星 IC433観測 Yamaguchi et al. 2009 カラー: X線、緑:可視光 金沢大学集中講義 スペクトル 53 不思議な残差 CIEプラズマモデル+Si, S, Ar Ly α+Si Ly β 金沢大学集中講義 54 Radiative Recombination Continuum Mg, Si, Sの水素状イオンのfree-bound 金沢大学集中講義 55 Free-bound放射 0 電子の 運動E の範囲 光子数 E スペクトル 電子の運動E の範囲 -Eb Eb F-B放射からも温度がわかる。 金沢大学集中講義 E 56 パラメター RRCの幅 =プラズマモデル のkTe 金沢大学集中講義 57 イオン化温度 実線: 過電離プラズマモデル、点線:CIE 観測値 Si 𝑇𝑍 ∼1.0keV S 𝑇𝑍 ∼1.2keV 𝑇𝑒 ∼0.6keV 金沢大学集中講義 58 アバンダンス イオン化温度=電子温度を仮定し、He状イオン Kαから 決まった値。 Si 𝑘𝑇𝑍 =1.0keV, S 𝑘𝑇𝑍 =1.2keVなので、He状イ オンの存在比異なる。修正すると、 𝑍𝑆𝑖 ~ 2.2 solar 𝑍𝑆 ~2.6 solar 金沢大学集中講義 59 プラズマ量 𝐹𝑅𝑅𝐶 = 𝛼1 𝑇𝑒 𝐴𝑍 𝑓0 × 𝐸𝑀 −3 −1 𝛼1 :K殻RRC割合 (𝑝ℎ𝑜𝑡𝑜𝑛 𝑐𝑚 𝑠 ) 𝐴𝑍 : アバンダンス 𝑓0 : fully ionized ionの割合 2 −5 EM: emission measure (/4𝜋𝐷 ) (𝑐𝑚 ) Si RRCから: 𝐸𝑀 ∼ 9.9 × 1012 𝑐𝑚−5 S RRCから: 𝐸𝑀 ∼ 9.4 × 1012 𝑐𝑚−5 12 −5 Bremsから: 𝐸𝑀 ∼ 6.4 × 10 𝑐𝑚 大雑把に一致する 金沢大学集中講義 60 過電離プラズマの発見 • 水素状イオン輝線が強い • Radiative Recombination Continuum –RRC幅が、制動放射の電子温度と一致 –EMが、制動放射から求めたものと一致 なぜか電子温度<イオン化温度 になっている。 金沢大学集中講義 61 IC443 過電離プラズマSNR W28 W49B Yamaguchi et al. 2009 W44 Sawada et al. 2012 Ozawa et al. 2009 G359.1-0.5 全てすざく衛星 の成果 Uchida et al. 2012 金沢大学集中講義 Ohnishi et al.2011 62 過電離プラズマSNRの観測的特徴 • 全てMixed Morphology型 • Historicalな記録なし –爆発当時は暗かったのか? • 多くがガンマ線天体 –IC443, W28, W49B, W44 金沢大学集中講義 63 過電離プラズマの原因 まだよくわかっていない。 例えば… 濃い分子雲中で爆発したSNが、分子雲を突 き破り、急速に広がる。急速な断熱膨張で 電子だけ冷えた?(Itoh & Masai 1989) 金沢大学集中講義 64 シンクロトロンX線 Koyama et al. 1995 輝線がない 輝線 金沢大学集中講義 65 電波シンクロトロンとつながる 金沢大学集中講義 66 シンクロトロン放射だろう 𝐸𝑠𝑦𝑛𝑐 𝐵 𝐸𝑒 = ℏ𝜔𝑐 ∼ 6.6𝑘𝑒𝑉 10𝜇𝐺 10𝑇𝑒𝑉 高エネルギー電子の存在! 金沢大学集中講義 2 67 フィラメント状のシンクロトロン放射 ©CXC Bamba et al. 2003 金沢大学集中講義 68 I(E)∝E-α 宇宙線 • 主成分:陽子 • Knee 以下: 銀河 Knee~1015eV 系起源 α~2.7 • Ankle以上:銀河系 外起源 α~3.0 • Knee~ankle:両方 の混合 Ankle~1018 eV α~2.8 金沢大学集中講義 ©Wikipedia 69 宇宙線のエネルギー収支 エネルギー密度: ~1eV/cc 銀河全体 2 66 3 𝑉 ∼ 𝜋 20𝑘𝑝𝑐 × 100𝑝𝑐 ∼ 3 × 10 𝑐𝑚 66 54 𝐸 ∼ 3 × 10 𝑒𝑉 = 5 × 10 𝑒𝑟𝑔 7 宇宙線の年齢:∼ 10 yr (同位体比など) エネルギー供給: 1048 erg/yrが必要 超新星爆発: 100年に1発1049 erg/yr (宇宙線の超新星起源説の根拠の一つ) 金沢大学集中講義 70 X線シンクロトロンの意味 電子がknee近くまで超新星残骸で加速 電子が加速されていれば、陽子も加速され ているだろう(これは推測だが…) 銀河系宇宙線の起源(の一つ)は、超新星残骸 金沢大学集中講義 71 電子のスペクトル フィラメントのX線のphoton index Γ=2.1~2.3 加速電子のスペクトルもpower-law 電子のエネルギー分布 N(E)∝𝐸 −𝑝 𝑝+1 Γ= p~3 2 Power-lawを生みだす機構は? 金沢大学集中講義 72 統計加速 磁場を持つ分子雲が粒子を弾き飛ばす。 正面衝突が多いので、全体として加速。 金沢大学集中講義 73 散乱による加速 実験室系 V 散乱体静止系 𝜖′ 𝑐 𝜖 𝑐 𝑝 𝑝′ 𝜖′ 𝑐 ′ =𝛾 𝜖 +𝛽𝑝 𝑐 𝑝 =𝛾 𝑝+ 𝜖 𝛽𝑐 ∼ 𝜖 +𝛽𝑝 𝑐 ∼𝑝+ 𝛽 = 𝑉 𝑐 ≪ 1, 金沢大学集中講義 𝜖 𝛽𝑐 𝛾=1 1 − 𝛽2 ∼ 1 74 散乱による加速 散乱体静止系 実験室系 𝜖′′ 𝑐 𝜖’ 𝑐 −𝑝′′ −𝑝′ 𝜖′′ 𝑐 =𝛾 ′′ V 𝜖′ +𝛽𝑝′ 𝑐 ′ 𝑝 =𝛾 𝑝 + ∼ 𝜖′ 𝛽𝑐 𝜖′ 𝜖 𝜖 ′ +𝛽𝑝 ∼ +2𝛽𝑝∼(1+2𝛽) 𝑐 𝑐 𝑐 ′ ∼𝑝 + 𝜖′ 𝛽𝑐 ∼𝑝+ 𝛽 = 𝑉 𝑐 ≪ 1, 𝛾 = 1 金沢大学集中講義 𝜖 2𝛽 𝑐 1 − 𝛽2 ∼ 1 75 エネルギーゲイン 先の例: Δ𝜖 = 2𝛽𝜖 1回の散乱で得るエネルギーが、 Δ𝜖 = 𝛼𝜖 になっているとする。 金持ち勝つ! 平均の衝突時間を𝑡𝑐𝑜𝑙 として、𝑑𝜖 = 𝛼𝜖 × 𝛼 𝜖 𝑡 = 𝜖0 𝑒 𝑡𝑐𝑜𝑙 金沢大学集中講義 𝑑𝑡 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑡 76 落ちこぼれもいる 変な方向に散乱されて、系から逃げ出す粒子もい る。1回の散乱で漏れ出す確率をPとして、 𝑑𝑡 𝑑𝑁 = −𝑁𝑃 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑁 𝑡 = 𝑁0 𝑒 金沢大学集中講義 − 𝑃 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑡 77 粒子エネルギー分布 𝜖 𝑡 = 𝜖0 𝑑𝑁 𝑑𝑁 = 𝑑𝜖 𝑑𝑡 𝛼 𝑒 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑡 𝑑𝜖 − ∝𝑒 𝑑𝑡 𝑁 𝑡 = 𝑁0 𝑒 𝑃 𝛼 + 𝑡 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑑𝑁 ∝𝜖 𝑡 𝑑𝜖 = − 𝑃 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝑡 𝛼 𝑃 − 𝑡(1+ ) 𝑡 𝛼 𝑒 𝑐𝑜𝑙 𝑃 −(1+ ) 𝛼 「金持ち勝つ」と、「落ちこぼれ」がポイント 金沢大学集中講義 78 日本の貯蓄額分布(H23年) 1000万円以上 べき-1.3のpower-law 中央値991万円 平均値1664万円 この国は「金持ち勝つ」か? 金沢大学集中講義 79 Fermi 2次加速 V 正面衝突と、背面衝突の頻度の差で加速。 Δ𝜖 ∝ 𝑉 𝑐 2 𝜖。Fermiの2次加速。効率良くない。 金沢大学集中講義 80 効率をあげるには? Fermi 2次加速 正面衝突と背面衝突の差 正面衝突ばかり起こる状況はないか? 金沢大学集中講義 81 衝撃波加速 衝撃波静止系 衝撃波は、互いに迫り V/4 V よる「壁」を実現。 正面衝突だけ発生。 下流静止系 3V/4 V/4 実験室系=上流静止系 3V/4 金沢大学集中講義 V 82 衝撃波加速 金沢大学集中講義 83 衝撃波加速 (Fermi 1次加速) Δ𝜖 = 4𝑉 𝜖 3𝑐 (𝛼 = 4𝑉 ) 3𝑐 4𝑉 𝑃= 3𝑐 高原文郎「天体高エネルギー現象」など 𝑑𝑁 ∝𝜖 𝑡 𝑑𝜖 𝑃 − 1+ 𝛼 =𝜖 −2 SNR電波シンクロトロンΓ=(p+1)/2~1.5 p~2を示唆 SNR X線シンクロトロン Γ~2.5p~4 金沢大学集中講義 84 フィラメントの幅 フィラメント射影 2-10keV 0.4-0.8keV rL ~ 1 pc[ E B 1 ][ ] 10TeV 1mG ショック上流~4秒角(0.04pc) 下流~20秒角(0.2pc) E B 1 rL ~ 1 pc[ ][ ] ラーマー半径 10TeV 1mG 金沢大学集中講義 85 磁場と最大エネルギーの推定 Yamazaki et al. 2004 フィラメントの幅 …shock速度、拡散係数、粒子の最大エネル ギー、拡散時間 金沢大学集中講義 86 加速にいくエネルギーの割合 フィラメント中で、 熱的n1_e~0.45cm^-3 非熱的n2_e~6.2e-4cm^-3 効率 n1/n2 ~ 1.4e-3 (Bu=10uG, Bd=40uG) エネルギー密度 磁場 6.4e-11 erg/cm^3 熱的 2.6e-10 非熱的 6.9e-11 金沢大学集中講義 87 SNR RXJ1713.7-3946 Chandra image Uchiyama et al. 2007 X線フィラメントが数年で点いたり消えたりする。 金沢大学集中講義 88 Coolingで消えるのか? エネルギーEの電子のシンクロトロン放射 2 4𝑒 𝑒𝛾𝛽𝐵 𝑃= 3 9𝑐 𝑚 𝑡𝑐𝑜𝑜𝑙 2 E = 2.54 × 10 𝑒𝑉 𝑠 1TeV 3 𝐸 𝐵 ∼ 𝐸 𝑃 = 12.5𝑦𝑟𝑠 1𝑇𝑒𝑉 1𝑚𝐺 2 −2 B 1mG 2 シンクロトロン放射でエネルギー𝜖𝑥 の光子を 出す電子の寿命 −1.5 −0.5 𝜖𝑥 𝐵 𝑡𝑐𝑜𝑜𝑙 ∼ 3.2𝑦𝑟𝑠 1𝑘𝑒𝑉 1𝑚𝐺 ミリガウスの磁場が必要 金沢大学集中講義 89 加速で点くのか? 𝑙 𝑉 往復のタイムスケール 𝑡𝑐𝑜𝑙 ∼ l: 平均自由行程、𝑉: ショック速度 高原文郎「天体高エネルギー現象」など 加速のタイムスケール 𝑡𝑎𝑐𝑐 ∼ 𝑡𝑐𝑜𝑙 𝛼 ∼ (𝑙 𝑉)/(𝑉 𝑐) = 𝑙𝑐 𝑉 2 ∼ 𝐷/𝑉 2 拡散係数𝐷 ∼ 𝑙𝑐 ∼ 𝑡𝑎𝑐𝑐 𝐵 ∼ 0.36𝑦𝑟𝑠 1𝑚𝐺 −1 𝐸 𝑒𝐵 𝑐 𝐸 𝑉 1𝑇𝑒𝑉 3000 𝑘𝑚 𝑠 金沢大学集中講義 −2 90 加速で点くのか? 加速のタイムスケール 𝑡𝑎𝑐𝑐 𝐵 ∼ 0.36𝑦𝑟𝑠 1𝑚𝐺 ∼ 1.4𝑦𝑟𝑠 −1 𝐸 𝑉 1𝑇𝑒𝑉 3000 𝑘𝑚 𝑠 −2 −2 𝐵 −1.5 𝜖𝑥 0.5 𝑉 1𝑚𝐺 1𝑘𝑒𝑉 3000𝑘𝑚 𝑠 ミリガウスの磁場が必要 金沢大学集中講義 91 いま発展中の研究 ここまでの話は、かなり単純化された ものです。 • 磁場の増幅機構 • 宇宙線による衝撃波へのフィードバック • 宇宙線の逃げ出しの詳細 など。 金沢大学集中講義 92 一番の問題は 宇宙線: 主成分陽子 SNR: 電子の加速 陽子はどこで加速されているのか? 金沢大学集中講義 93 ヒント TeVガンマ線天体 Chaves et al. 2009 arXiv:0907.0768v1 金沢大学集中講義 94 TeVガンマ線起源 • 高エネルギー電子起源 –電子が低エネルギー光子(CMBなど)を逆 コンプトン散乱で蹴飛ばして、TeVガンマ線 –電子は、磁場に巻きついてX線を出す • 高エネルギー陽子起源 –陽子が星間物質と衝突。 –π0粒子発生 –π0粒子が崩壊して、TeVガンマ線 金沢大学集中講義 95 X線で非常に暗いTeV天体がある HESSJ1616-508 X-ray TeV F(TeV)=1.7e-11 erg/s/cm2 F(X)<3e-13 erg/s/cm2 Matsumoto et al. 2007 電子がない。TeVは陽子起源か? 金沢大学集中講義 96 SN1006にまつわる最近の話題 内部のスペクトル: 原子の特性X線 すざく衛星 金沢大学集中講義 Uchida et al. 2013 97 ケイ素の分布 重元素は非対称分布非対称爆発 Type Iaは本当に標準光源か? 金沢大学集中講義 98
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