食生活の工夫でダイオキシンは排出で きる どれだけ気をつけても、100% ダイオキシンを避けることができ ないニッポン社会。しかし、食生 活を工夫することで、これらの害 を少なくすることもできる。 食物繊維を多くとる 食物繊維を含む食品は、大腸ガンや動脈硬化の予防につながると言 われているが、最近、ダイオキシンなどを体外に排出するはたらきもあ ると注目を浴びている。 体内に蓄積されているダイオキシン類は、少量ずつだが肝臓で代謝さ れて腸に排出されている。しかし再び、小腸から吸収されて体内に 戻っていってしまうという繰り返しが行われているのだ。 ところが、小腸で食物繊維と出会うと、ダイオキシンは食物繊維に吸着 され、便として体外に排出されるというのである。食物繊維の多い食品 は下表の通り。 ダイオキシンをよく吸着する食物繊維(数値は吸着 率) ただし、野菜などには残留農 薬やダイオキシンそのものが 付着している可能性がある。よ く洗って皮をむき、念を入れる ならさっと下ゆでするなど、 下 ごしらえにも工夫が必要だ。 また、多種類の食品を上手く 組み合わせてとるようにすると よいだろう。 米ぬか繊維 86.6% はくさい繊維 51.6% そば繊維 71.9% 大豆繊維 49.1% ほうれん草繊維 71.6% 大麦繊維 47.8% 大根の葉繊維 70.2% 大根の根繊維 44.8% ごぼう繊維 53.8% コーン繊維 42.2% キャベツ繊維 52.5% にんじん繊維 38.7% 緑黄色野菜などを多くとる 体内には、口から入った食品添加物などの化学物質を 「解毒・排出」するはたらきがある。その働きを助ける重要 な栄養素がビタミンやミネラルだ。これらが多く含まれてい る食品は、穀物や緑黄色野菜、海草類、種実、豆類。 特に緑黄色野菜や海草類などに含まれる葉緑素は、それ 自体に体内の掃除をする効果(スカベンジャー効果)があ り、ダイオキシンなどの有害物質を体内から排出する効果 は、食物繊維より強いと言われている。 ビタミンや葉緑素というと、ビタミン 剤や葉緑素入りの錠剤などに頼っ てしまいがちだが、1種類だけを過 剰に取りすぎる可能性が高くお勧 めできない。 ごぼうやにんじんなど根菜類の煮 物に、小松菜のおひたし、豆腐とワ カメのみそ汁に納豆ご飯…。 メイン の魚や肉に汚染の不安があるとい うものの、結局は、日本の伝統的な 料理たちがダイオキシンからも身を 守ってくれるのである。 [日本の食卓] 私たちは毎日ダイオキシンを食べている 狭い国土で大量のゴミを燃やしているニッポン。 ダイオキシン類による汚染は、ほかの国の10倍は 高いと言われている。ゴミ焼却場は近くにないとい う人も例外ではない。ダイオキシンが私たちの身 体に入る経路の約98%は食物からと言われてい るからだ。 ダイオキシン摂取・約60%は魚から 1990年、大都市地域に住む人が1日に摂取するダイオキ シン類の量を調査したところ、 ダイオキシンとポリ塩化ジベ ンゾフラン(ダイオキシンと似た分子構造を持ち、毒性もあ る物質)の合計は体重1kgあたり3.72pg(ピコグラム。1兆 分の1グラム)だった。 ただしこの調査は、やはりダイオキシンと似た構造で毒性 もあるコプラナーPCBの摂取量を加えていなかったため批 判が多いようだ。ある研究者がこのデータにコプラナー PCBの摂取量を加えてみたところ、体重1kgあたり 12.45pgという結果が出ている。 ダイオキシンの摂取経路 ダイオキシンの摂取経路は、約98%が食物だと言われて いる。では、どのような食物からの摂取が多いのだろうか。 その内訳は円グラフのようになっている。なんと、約60%を 魚から摂取しているのである。ゴミ焼却の煙とともにダイオ キシンは、川を流れ雨に混じって近海を確実に汚染してい るのだ。 沿岸魚と市販魚のダイオキシン類を分析したところ、海岸 に近いところに住んでいて、海の水の汚れに強い魚の濃 度が高くなっているという報告もある。 日本とドイツの食物経由のダイオキシンと ポリ塩化ジベンゾフランの構成比 問題がある日本の基準 日本の厚生労働省が決めた10pgは、動物実験で 毒性がないと認められている1000pg/kg/日を、さら に安全を期すために、100で割って(安全係数と呼 ばれている)出した数値。 また、ダイオキシンについてはまだわからないこ とも多いため、この数字は「当面のものとする」との ことわり付きだ。 ダイオキシンの1日摂取量 日本の場合、耐容1日摂取量の対象となっているダイオキ シン類は、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランのみ。コ プラナーPCBは含まれていない。しかし、日本ではコプラ ナーPCBが環境を汚染している量が特に多いため、研究 者の間ではコプラナーPCBも対象に含めるよう求める声 があがっている。 ちなみに、WHO(世界保健機構)では、1998年に耐容1日 摂取量を10pgから1~4pgに引き下げると同時に、コプラ ナーPCBも対象に含めるようになった。 ●アメリカの基準が厳しいのは、「発がん 性」を認めているため 日本やヨーロッパ各国に比べ、アメリカの基準が ケタ違いに厳しいのは、ダイオキシン類を「発がん 性物質」と評価しているためである。「発がん物質」 になると、安全基準の計算の仕方がかなり厳しく なるのである。一方日本やヨーロッパでは、ダイオ キシン類は直接がんを引き起こすのではなく、ほ かの物質と一緒になってがんを引き起こすのでは ないか(助がん作用)としているため、このような違 いが出てくるのだ。 ●我々の食生活は安全なのか 1990年の調査では、ダイオキシン類(ダイオキシ ン+ポリ塩化ジベンゾフラン)の摂取は1日体重1kg 当たり3.72pgと推定されている。これなら日本の ダイオキシン類の安全基準(耐容1日摂取量)内と、 ひとまずほっとしたいところだが、コプラナーPCB を含めると一気に12.5pgになってしまうのだ。 しかし、1996年に調査したところ、コプラナーPCB を加えても1日体重1kg当たり約2pgと、ダイオキシ ン類の摂取量が急減していることがわかった。 減った分のほとんどは、食物からの摂取量である。 1990年の調査と比べると、ダイオキシン+ポリ塩 化ジベンゾフランが約5分の1に、コプラナーPCB は約10分の1になっているのだ。 この理由について、ダイオキシン汚染そのものが 減ったというよりは、汚染されていない地域からの 輸入食品が増えたせいだと考えられている。 ●将来のことを考えた、真剣なダイオキ シン対策が必要 ダイオキシンは簡単には分解しない非常に安定し た物質だ。しかも、脂肪によく溶けるため、人の身 体に入ると脂肪組織に蓄積し、なかなか排出され ない。1度体内に取り込まれると半分になるまでに 5~10年もかかるのだ。 だから、最近の調査で摂取量が減ったからと言っ て、そうそう安心していられない。1990年頃摂取し ダイオキシンはしっかり身体の中に残っているの である。 ダイオキシンの将来性 将来的に食品すべてを輸入に頼れるとは考えにく いし、海洋汚染を広がるに任せておけば、ほとん ど魚が食べられないということも考えられる。ダイ オキシンについては、我々は被害者でもあり、ゴミ を捨てているという点では加害者でもある。他人事 ではなく、自分の問題として考えていかなくてはな らないのではないだろうか。 身近なものからできてしまうダイオキシン ダイオキシンの正式名称はドイツ語で、ポリクロロ ジベンゾ-パラ-ジオキシンという。難しげに見える が、この名前こそがダイオキシンの正体なのだ [ダイオキシンの構造] 図1はダイオキシンの基本的な分子構造。名前通 り炭素と水素でできた2つのベンゼン環が2つの酸 素で結び付けられている。 さらに、水素が塩素と置き換わったものもダイオキ シンの仲間。これらは、水素と塩素が置き換わる 位置と数によって、それぞれ2,8-二塩化ダイオキ シン(図2)、2,3,7,8-四塩化ダイオキシン(図3)など と名づけられている。 中でも2,3,7,8-四塩化ダイオキシンの毒性は史上 最高と形容されるぐらいに強力だ。 ダイオキシンの構造 手近にある物からのダイオキシン つまり、史上最強と言われる毒は、「塩素、炭素、 水素、酸素」といった、私たちの身近にある物に含 まれる元素からできてしまうのである。 ただし、この構造を持つ物質すべてが毒性をもつ わけではないし、毒性の強さにも差がある。例えば 図1のダイオキシンや、2,8-二塩化ダイオキシンに はほとんど毒性がないとされている。 ダイオキシン類 ダイオキシンと似た構造を持ち、同じように毒性 の強い物質がある。ポリ塩化ジベンゾフランとコプ ラナーPCBという物質だ。学問的にこの3つをまと めてダイオキシン類と呼んでいる。 ダイオキシン類はどれも、私たちの身の回りにあ る塩素を含んだ化学工業製品(ポリ塩化ビニル、 ポリ塩化ビニデリンを含む製品)を燃やすことに よって発生する。 ゴミ焼却場から離れていれば安心なの か 「ダイオキシン類がゴミ焼却場から出るのなら近く に住まなければいい」 と考える人もいるだろう。しかし、問題はそれほど 単純ではない。 大都市に住む人のダイオキシン類の摂取内訳は、 大気からが1.5%、水からが0.01%、土壌からが 0.36%と報告されている。後の98%は食物からな のだ。 しかも、そのうち60%が魚からだという。 ダイオキシンはめぐりめぐって、確実に 私たちの口に入っている 発生 ゴミ処理&リサイクルの情報に敏感にな る ダイオキシンやゴミ処理に関する情報には常に一 通り目を通すようにしたい。 特に、自分が住んでいる自治体の広報誌などは 要チェックしておく。身近なところのゴミ行政がどう 進んでいるか把握しておきたい。
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