修士論文 最終発表 多層的な知人関係に基づく 自己情報コントロールの実現 政策・メディア研究科 修士課程2年 仲山 昌宏 目的 • 多層的な知人関係を組み込んだ 知人ネットワークモデルの提案 – 多層的な知人関係 – 知人ネットワーク 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.2 例:「公私の分離」 • 作品「釣りバカ日誌」の鈴木一之助氏 – 鈴木建設の社長「鈴木社長」 – 釣りバカ「スーさん」 • 要求事項 1. 社長としての行動を社の内外に対してSNSで 見せている 2. ある平社員を師匠に、日々釣りに出かけている 3. 平社員と特別の関係があることは伏せたい 4. この平社員とのやりとりにもSNSを使いたい 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.3 事例の考察 • 社長として社内外へのつながりが存在する • プライベートのつながりも存在するが、社長と は切り離していることを明らかにしておきたい プライベートの 知人 社長としての 知人 鈴木一之助 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.4 要件定義 • 自分の秘密を守りたい – 自分のプロフィールを秘密にしたい – 自分の知人関係を秘密にしたい – 自分の行動を秘密にしたい • 特定の相手以外に対して秘密にしたい – 知人(あるいは知人の知人)以外には見せない – 一部の知人以外には見せない – 完全に隠せない情報は別人として見せたい • 自分以外にも秘密を守って欲しい – どの情報が誰に対して秘密なのかを、秘密を共有する知 人に分かっていて欲しい 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.5 知人ネットワーク • 知人関係に基づく公開性の制御 例:IM, SNS 秘密にしたい情報(住所) 2015/09/30 修士論文 最終発表 公開範囲の設定 Page.6 多層的な知人関係 • 人間の知人関係は多層的である – 「公私混同」 – 知人関係の「背景」の違い A B プライベートの 知人 C 会社の社員と しての知人 D E F 自分 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.7 問題点(一つの利用者) • 自分を表す利用者を一つだけ登録して使う – 秘密が守れない 会社の社員と しての知人 プライベートの 知人 自分 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.8 問題点(別の利用者) • 全く別の利用者登録を使い分ける – 自分が複数に分かれてしまい、管理できない – 知人ネットワークを辿ることで秘密が漏れてしまう プライベート の知人 鈴木一之助 (2) 2015/09/30 修士論文 最終発表 平社員 (釣りの師匠) 社長としての 知人 鈴木一之助 (1) 課長 Page.9 複数人格モデルの提案 • 複数人格モデル – 利用者は複数の識別子を持つ→「人格」 – 知人関係の「層」ごとに一つの人格 • 「人格」が行動主体の 単位となる 知人 人格 A’ – 属性情報 – 知人関係 知人 人格 A 2015/09/30 修士論文 最終発表 自分 Page.10 複数の人格の管理 • 全ての人格も、自分の一部として管理できる • 「人格」間の関係を特殊なリンクとして表現 人格間リンク A’の知人 他人として見える 同一人物として見える Aの知人 自己 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.11 実装 • 目的 – 本モデルの実現可能性の評価 – 参照実装による本モデルの普及 • 概要 – 環境:Linux (CentOS 4.2) on IA32 – 言語:Perl 5.8 – フレームワーク:Catalyst – RDBMS:MySQL 5.0.17 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.12 モジュール構成 • MVCアーキテクチャ – Model: DBIx::Class ORM – View: Template-Toolkit • 今回の主な実装部分 – Controller – Model – ViewのHTMLテンプレート 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.13 Screenshot(1) 自分の人格の一覧 人格1の 知人 (全ての人格における) 知人の日記 人格2の 知人 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.14 Screenshot(2) 人格1のプロフィール 人格1の 知人 人格1として書いた日記 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.15 評価方針 1. 必要性の確認 2. 要件の実現 3. 実現可能性 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.16 先行実験(概要) • 目的:問題意識および方針の確認 • 手法: 1. 実装のプロトタイプ版の公開 2. 既存の人脈に基づく実験参加者の募集 3. システム内のアナウンスにより、ウェブ回答の アンケートを実施 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.17 先行実験(結果) • 利用者数:30 • 登録された人格の数:47 – 3人格を登録: 4 – 2人格を登録: 9 • 同一人物リンク:11 • アンケート回答数:13 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.18 先行実験(問題意識) • 問題意識の確認 (振る舞いの使い分けの必要性) – 「将来的にSNSのユーザ数が増えて会社の人と のやり取りが避けられなくなったら必要」(Aさん) – 「相手によって分けたい部分もあるし、ハンドルと 実名では交流関係も違う。 実名を明らかにしな い方がうまくいく関係もある」(Bさん) 結論:多層的な知人関係が問題となっている 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.19 先行実験(方針) • 方針の確認 – 「GREEみたいに名刺管理、mixiのネタ系、そんな感じが 1つのSNSで使い分けられれば良い」(Cさん) – 「参加に制約のあるネットワークであれば、複数の独立人 格を持たせてもらった方が、意見表明も含めて使いやす い」(Dさん) – 「SNSが巨大になればなるほど欲しい」(Eさん) – 「悪いことをすると、複数の人格が一気に使えなくなるとい うのは抑止効果」(Aさん) 結論:複数人格モデルは正しい方針 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.20 要件の確認(1) • 自分の秘密を守りたい – 自分のプロフィールを秘密にしたい → これまで通り可能 – 自分の知人関係を秘密にしたい → 一部のSNSではこれまでも可能 – 自分の行動を秘密にしたい → 複数人格の使い分けにより可能 結論:十分に要件を満たしている 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.21 要件の確認(2) • 特定の相手以外に対して秘密にしたい – 知人(あるいは知人の知人)以外には見せない → これまで通り可能 – 一部の知人以外には見せない → 一部のSNSではこれまでも可能 – 完全に隠せない情報は別人として見せたい → 複数人格の使い分けにより可能 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.22 要件の確認(3) • 自分以外にも秘密を守って欲しい – どの情報が誰に対して秘密なのかを、秘密を共 有する知人に分かっていて欲しい → 複数の人格を使い分けていることを敢えて明 かすことで可能(同一人物リンク) 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.23 問題点(別の利用者)の解決 • 層が分かれることで、知人ネットワークをた どって秘密が漏れることもなくなる プライベートの 知人 社長としての 知人 平社員 (釣りの師匠) 2015/09/30 鈴木一之助 修士論文 最終発表 課長 Page.24 規模性の評価(1) • 実装内の処理に対して、どのような計算量が 発生するかを分析 • もっとも複雑なものは「知人かどうか」 – 「自分が持つ人格のどれか」が相手の知人 – 「自分が持つ人格のどれか」が、「相手の知人の 同一人物リンクの先」と知人 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.25 規模性の評価(2) • O(logL+m・logM+logN) – L: システム内の利用者の総数 – M: システム内のリンクの総数 (従来同様) – m: 利用者あたりの人格の個数 (ほぼ定数) – N: システム内の同一人物リンクの総数 • 既存: O(logM) • もっとも増分が多いのはリンクの総数(M) 結論:従来と同様の規模性を持つ 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.26 まとめ • 目的:複数人格モデルの提案 – 多層的な知人関係に応じた秘密を守れる – 様々な知人関係の使い分けを管理できる • 評価 – モデルの有効性を評価 – 先行実験による必要性の評価 – 本実装による規模性の評価 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.27 今後 • Deployment – 参照実装のSNSとしての完成度向上 – オープンソース化してリリース • 分散化 – 異なるSNS間で複数人格を関連づけ – 完全分散化 2015/09/30 修士論文 最終発表 Page.28
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