事業リスクマネジメント学習支援教材 事業リスクマネジメント参考資料 NO.4 事業リスクマネジメントの導入に当たって ~総合商社のリスクマネジメントの経験をもとに~ ティーチングノート 学習にあたって 学習のポイント 事業リスクマネジメントの重要性について理解する 実務上のリスクの区別(定量化できるもの、定量化できないもの、など) とその取扱いについて理解する 実務に事業リスクマネジメントを導入する際の難しさ、課題、留意点等 について理解する 1 目 次 1.事業リスクの分類、管理方法 ・・・・・ 3 2.リスク評価・管理体制 ・・・・・ 6 3.事業案件の審議体制、意思決定基準 ・・・・・ 8 4.事業リスクの抽出/分析/評価 ・・・・・ 9 5.事業ポートフォリオの最適化 ・・・・・ 12 6.事業リスク評価における課題 ・・・・・ 13 7.まとめ ・・・・・ 16 本資料の作成について: 本資料は、平成15年12月に開催された 「事業リスク評価・管理人材育成システム開発事業」実証プログラムにおける 住友商事株式会社岩沢英輝氏のご講演 「まとめー事業リスクマネジメントの導入にあたって-」 の内容を要約したものです。挿入されております 図表等も原則として講師に提供していただいたものです。 2 1.事業リスクの分類、管理方法 (1)リスクマネジメントとは? ■リスクとは? ・「将来の不確実性」 結果は、プラス(収益)/マイナス(損失)の双方あり ■リスクマネジメントとは? ・収益の源泉としてリスクを捉え、事業が抱えるリスクを抑えつつ、リターン の最大化を追求するプロセス ⇒管理手法/管理の目的の観点から、 「定量化可能リスク」と「定量化困難なリスク」 に区分して取扱う。 3 1.事業リスクの分類、管理方法 (2)定量化可能なリスク ■定量化可能なリスク (市場リスク、信用リスク)=収益の上ブレ/下ブレ要因 -- 的確にリスクを定量化 -- リスクに対する十分なリターンを確保 -- リスクの総量を体力(Equity)の範囲内でマネージ リスク アセット = 自己保有 リスク 保険 他者へ リスク移転 ART Equity オフバランス 資本 証券化 4 1.事業リスクの分類、管理方法 (3)定量化困難なリスク ■定量化困難なリスク (オペレーショナルリスク、自然災害、レピュテーションリスク等) =収益の下ブレ要因 ----- 回避 予防(内部管理の徹底) 早期に発見/対処する仕組み作り 移転 ⇒ 損失の未然防止、損失拡大の抑制 5 2.リスク評価・管理体制 (1)リスクマネジメントの枠組み 全社の基本方針、 管理の枠組み 各営業組織の autonomy(自主性)尊重 : 専門組織による分散型管理 (財務、経理、総務、法務、 人事、審査等) 連結ベースで 如何にリスクマネ ジメントのグリップを効かせるか。 権限移譲等による、活性化/ 効率化も必要。 取締役/経営者層 の管理責任 経営の舵取り 失敗が命取りに 6 2.リスク評価・管理体制 (2)リスクマネジメントの方向性 コーポレートガバナンス、内部統制システム、 リスクマネジメントの枠組みの妥当性がテストされる時代に 「COSO Enterprise Risk Management Framework」(2003/7) 経済産業省ガイドライン (2003/6) 専門組織による分散管理(ルール/ガイドライン策定、社内啓蒙/ 助言、モニタリング)から 『統合リスクマネジメント』 へ 組織の狭間で玉が落ちていないか? 複数組織で類似の管理をしていないか(無駄は無いか)? 7 3.事業案件の審議体制、意思決定基準 ■審議体制 -- 案件のExposureに応じた決裁権限 -- 投融資委員会 (大口案件の審議) ■意思決定基準 -- ハードルレート < 一律のD/E ratioベースのWACC(加重平均資本コスト) > -- Exit Rule < 過去業績に基づくアセスメント > ■今後の課題 事業毎の適正D/E ratio・WACCの算定 =リスクの的確な把握 事業の将来性予測 =将来cash flowの推定 8 4.事業リスクの抽出/分析/評価 (1)定量的評価手法(その1) ■ Value at Risk (VaR) 資産価値の変動リスク (過去の価格データを基に算出) ⇒ 市場リスク・信用リスクの計測に利用 (Market VaR / Credit VaR) ■ Earnings at Risk (EaR) 将来cash flowの変動リスク (Value Driverの変動) ⇒ 事業リスク(事業価値の変動)の計測 = 将来cash flowの現在価値合計額 ⇒ 事業価値向上のためのツール 9 4.事業リスクの抽出/分析/評価 (2)定量的評価手法(その2) ■事業評価を行う際の課題 -- Value Driverの的確な抽出 -- Value DriverとCash Flowとの関係分析 -- Value Driverの将来の確率分布の予測 ■Earnings at Riskの意義と効果 -- 事業価値向上のためのツールとしての活用 -- 撤退の意思決定の迅速化 10 4.事業リスクの抽出/分析/評価 (3)定量化困難なリスクへの対応 <事前対応> リスクファクター抽出 + 発生頻度/リスクマグニチュード推定 ⇒ 内部牽制/社内啓蒙の強化 ⇒ 第三者へのリスク移転 ⇒ 発生頻度/リスクマグニチュードが 大きい場合は極力回避 <リスク顕在化後の事後対応> 早期に発見し対応(モニタリング/対応体制の構築) ~法務/人事/広報の重要性 (対外信用の回復、社内不安の除去) ~ 11 5.事業ポートフォリオの最適化 多角化経営 vs コア事業への特化 事業多角化 コア事業への特化 リスク分散 =リスク削減効果 リターン極大化 (集中リスク<追加収益) Portfolio Managementによる リスク・リターン極大化へ 12 6.事業リスク評価における課題 (1)定量的評価普及のための課題 ■ EaR手法の普及・拡大 - Value Driverの特定 -- Value Driverのhistorical recordの欠如 ⇒ 官庁主導でのデータベース構築に対するニーズ大 ・現場の納得感の醸成 ・各企業でのEaR手法の活用 デファクト・ スタンダードに 13 6.事業リスク評価における課題 (2)モデル化の難しさ EaR手法をリアルビジネスに適用する際の困難性 -- ビジネスモデルが不変というケースは稀 -- 「変化への対応」の評価モデルへの組込み option性の組込みが必要(難解) 《対応策》 モデル化が困難な事業より、ビジネスモデルが固定的な事業に 優先対応し現場への浸透を図り、 徐々に複雑なビジネスのモデル化を手掛けていく Cash Flowの安定したプロジェクト・ファイナンス、ストラクチャード・ファイナンス の案件評価における実践例の積み上げが有効 14 6.事業リスク評価における課題 (3)総合商社特有の課題 総合商社としての悩み -- ビジネスラインが多種多様 -- 業種や業態のvariationが千差万別 -- 個々の事業でも業態変革が頻繁 ビジネススコープを絞り易い業態(鉱工業・流通業等) からモデリング → 徐々に複雑な業態へ移行 各社で評価事例を共有し、手法のbrush upを! 15 7.まとめ ① 「定量化困難なリスク」「定量化可能なリスク」への対応 ② 専門部署による分散型管理 + 組織横断的な統合リスクマネジメント ③ 事業案件の審議体制、 ハードルレート / Exit Rule ④ 事業リスクの抽出/評価/分析の有用性 Earning at Risk手法の意義 ⑤ EaR手法の活用によるPortfolio Management ⑥ EaR手法のデファクト・スタンダート化に向けて 16
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