バリアフリーのための心理学 2010 (1)社会参加とはどういうこと? 望月昭 [email protected] HP: 望月昭のホームページ ブログ:対人援助学のすすめ 1 バリアフリー (Wikipedia!) • バリアフリー(Barrier free)とは、広義の対 象者としては障害者を含む高齢者等の社 会生活弱者、狭義の対象者としては障害 者が社会生活に参加する上で生活の支障 となる物理的な障害(障碍)や精神的な障 壁を取り除くための施策、若しくは具体的 に障害を取り除いた状態をいう。一般的に は障害者が利用する上での障壁が取り除 かれた状態として広く使われている。 2 「社会生活に参加する」とは • ノーマリゼーション • 行動の成立 • 他立的自律 • 「できる」を成立させるための 支援 3 ノーマライゼーションの思想(方向性) 社会が、障害を持つ人を、生まれながらの権利と してそして個人差のままに受け入れることを要請 する・・・ (Nirje, in Shaddock & Zigler, 1991) 行動的に翻訳すると・・・・・・・ 個体的(反応形態的)差異によらず、 社会の中で 行動(正の強化で維持される)の 成立を保証する 4 行動が成立するとは? • 本人が好んで行いたいことが実際に可能 =「できる」状態 そうでない場合もある: 「いやいや行う」 5 「できる」とは、単独で行動が 成立することか? • 「社会参加」とは援助なしで参加できることか。 バリアからフリーということは、 単独で行動ができるということか? 「自立」と「自律」 6 「行動の成立」のありかた 単独遂行 援助つき遂行 自己決定 自立的自律 他立的自律 他者指示 自立的他律 他立的他律 7 他立的他律から他立的自律へ Lim Hyunjong・坂明恵・丹生卓也・中鹿直樹・ 望月昭(2009) 「重複障害児における電動車椅子の操作ス キル獲得によるQOLの向上に関する考察」. 日本対人援助学会第1回大会 発表ポスターセッションWEB論文.15. http://humanservices.jp/pdf/15imu.pdf 目的:進行性の障害のある生徒に、電動車椅 子での移動によるridingの楽しみを実現したい8 記録者 課題提示者 ぬ い ぐ る み 参加者 訓練者 机 図 1-1.前進と停止の訓練のセッティング。ぬいぐるみを取りに行く課題を設定した。 記録者 机 ぬ い ぐ る み 障 害 物 課題提示者 参加者 訓練者 図 2-1.障害物を置いてぬいぐるみを取りに行く課題のセッティング。 9 表1.訓練1の課題分析ステップ ステップ 課題 1 ジョイスティックをつかむ。 2 ジョイスティックを倒す。 3 ぬいぐるみの前に行く。 4 ジョイスティックを戻す。 5 ジョイスティックを離す。 6 ぬいぐるみをとる。 7 ジョイスティックをつかむ。 8 ジョイスティックを倒す。 9 課題提示者の前に行く。 10 ジョイスティックを戻す。 11 ジョイスティックを離す。 12 ぬいぐるみを渡す。 10 成果報告会でのエピソード 「この子が、ひとりで電動車椅子を使えるように なったら、どこへ行ってしまうか。そんな危ない ことの指導を依頼した覚えはない」 「え!!」 自立=自律 ではない。 援助つきの自律(他立的自律)によるQOL の拡大(楽しみの拡がり)を。 必要なのは緊急停止用のキルスイッチ 11 「できる」を成立させるための支援 12 13 確認 • われわれが社会生活をする上で、 自立している、という場合、単独で できているか? 14 バリアフリー概念の問題 ●多数派と異なる反応形態を持つ個人が、 1)多数派と同じ資源へのアクセスを求めることと想 定するのは正しいか? 2)単にアクセスできればよいのか? 15 こういう援助はどうだ ろう? http://www.kobe16 np.co.jp/kobenews/sougou/031206ke2880.html ユニバーサルデザイン(Wiki) • ユニバーサルデザイン(Universal Design、UD と略記することもある)とは、文化・言語・国籍 の違い、老若男女といった差異、障害・能力の 如何を問わずに利用することができる施設・製 品・情報の設計をいう。 17 まとめ • バリアフリーの概念や実践が目標とする 「社会参加」とはどういうことか? • 「他立的自律」とは何を意味しているか? • 「できる」を実現する支援にはどういうもの が考えられるか? • バリアフリーとユニバーサルデザインの違 いは? 18
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