2006年1月26日 情報誌・クーポン付き フリーペーパーの利用実態 ~知的好奇心・外食頻度から見る利用頻度~ 香川大学経済学部経営システム学科 川西 謙 1.目的 ① 地域ごとの情報を取り扱っているタウン情 報誌、フリーペーパーの利用にはどのよう な要因が影響を与えているのか ② 影響を与えられたことによって、タウン情 報誌、フリーペーパーの利用にはどのよう な違いが出てくるのか 2.定義 • フリーペーパー(以下クーポン付きフリーペーパー) →タウン情報を扱うクーポン付きのもの • タウン情報誌(以下情報誌) →地元のさまざまなジャンルの情報を扱う雑誌 ※ここで、ジャンル別の情報誌(旅雑誌、飲食店専門) 求人情報のフリーペーパは調査対象外とする。 3.両者の相違点 情報誌 クーポンつき フリーペー パー 掲 載 店 舗 取 折り 得 値 ペー たた 場 段 ジ数 み 所 記 事 の 大 き さ 少 な い 限 有 不 定 多い 料 可 的 大 き い 大き 有り く 綺麗 多 い 広 無 範 料 囲 小 少な 可 さ い い 小さ 無し く 粗い 新 店 情 報 写真 4.要因 ① 自分の知らない飲食店の名前やその店の 詳細について知りたいかどうか ② 外食の頻度が多いか少ないか ①を「知的好奇心」、②を「外食頻度」とする。 5.知的好奇心の3タイプ ⅰ:名前を知っている飲食店が少ないので新 らしい飲食店を知りたい→「店舗名必需」 ⅱ:飲食店の名前は多く知っているが、さらに新 しい飲食店を知りたい→「知的好奇心旺盛」 ⅲ:新しい飲食店を探すのではなく、店や料理 の雰囲気を詳しく知りたい→「詳細情報」 5.外食頻度の4タイプ ⅰ:外食の回数の多い自宅生 ⅱ:外食の回数の多い下宿生 ⅲ:外食の回数の少ない自宅生 ⅳ:外食の回数の少ない下宿生 6.仮説Ⅰ(知的好奇心) ア:店舗名必需はクーポン付きフリーペーパー を利用する。このタイプには自宅生よりも下 宿生が含まれる。 イ:知的好奇心旺盛は情報誌・クーポン付きフ リーペーパーの両方を利用する。このタイプ には自宅生、下宿生ともに含まれる。 ウ:詳細情報は情報誌を利用する。このタイプ には下宿生よりも自宅生が含まれる。 知的好奇心と情報誌の利用 店舗名必需 知的好奇心旺盛 詳細情報 知的好奇心とクーポン付き フリーペーパーの利用 店舗名必需 知的好奇心旺盛 詳細情報 7.仮説Ⅱ(外食頻度) ア:外食の頻度の多い下宿生はクーポン付きフ リーペーパーを最も利用する。 イ:外食頻度の少ない自宅生・下宿生はフリー ペーパーを利用する。ただし、外食の頻度の 多い下宿生に比べるとその利用は少ない。 ウ:外食頻度の多い自宅生はほかのパターン に比べ明らかにクーポン付きフリーペーパー の利用が少ない。 外食頻度の4タイプによる利用 自宅 下宿 少ない 多い 外食回数 8.調査方法 • 調査日時:12月15日(木) • 調査対象:香川大学経済学部学生150名 調査は無記名式の質問紙調査で行った。問1で 調査対象の属性と情報誌・クーポン付きフリー ペーパーの利用、問2で外食頻度、問3で金銭 的余裕、問4で店舗数と知的好奇心について 尋ねた。 9.タイプ分け(知的好奇心) 「z必需」「z旺盛」「z詳細」「店舗(10点満点)」 の 各得点について行う。 ・店舗名必需:z必需≧z旺盛∩z必需≧z詳細 ∩店舗5点以下 ・知的好奇心旺盛:z旺盛≧z必需∩z旺盛≧z詳細 ∩店舗6点以上 ・詳細情報:z詳細≧z必需∩z詳細≧z旺盛 10.タイプ分け(外食頻度) 「生活形態(1自宅生、2下宿生)、「外食回数」 (1少ない、2多い)について行う。 ・少ない自宅生:生活形態=1∩外食回数=1 ・少ない下宿生:生活形態=2∩外食回数=1 ・多い自宅生:生活形態=1∩外食回数=2 ・多い下宿生生活形態=2∩外食回数=2 : 11.結果(情報誌-知的好奇心) SPSSによる1要因の分散分析 〈情報誌の利用〉 平均値 店舗名必需 2.1 知的好奇心旺盛 3.0 詳細情報 2.0 標準偏差 1.01 .72 .84 F(2,110)=11.38,p=.000より、3つのタイプのいず れかで利用に差があると言える。 多重比較(TuckyのHSD) ・店舗名必需と知的好奇心旺盛 →p=.001となり有意な差が見られる ・詳細情報と知的好奇心旺盛 →p=.000となり有意な差が見られる 3タイプの利用の比較 3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 店舗名必需 知的好奇心旺盛 詳細情報 12.結果(クーポン付きフリーペーパー -知的好奇心) SPSSによる1要因の分散分析 〈クーポン付きフリーペーパーの利用〉 平均値 標準偏差 店舗名必需 2.6 .95 知的好奇心旺盛 3.3 .78 詳細情報 2.5 1.05 F(2,110)=5.70,p=.004となり、3つのタイプのいず れかで利用に差があるといえる 多重比較(TuckyのHSD) ・店舗名必需と知的好奇心旺盛 →p=.037となり有意な差が見られる ・詳細情報と知的好奇心旺盛 →p=.003となり有意な差が見られる 3タイプの利用の比較 3.4 3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 店舗名必需 知的好奇心旺盛 詳細情報 13.結果(クーポン付きフリーペーパー -外食頻度) • SPSSで2要因の分散分析。この時店舗名必需のタ イプの人は除外して検証する。 少ない自宅生 少ない下宿生 多い自宅生 多い下宿生 平均値 2.4 2.4 2.8 3.1 標準偏差 .81 1.02 .97 1.07 分散分析 ・外食回数と生活形態の交互作用 →F(1,116)=0.33,p=.565となり有意でない ・生活形態の主効果 →F(1,116)=1.21,p=.274となり有意でない ・外食回数の主効果 →F(1,116)=9.71,p=.002となり有意である 外食頻度による利用 3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 自宅 2.2 少ない 外食回数 下宿 多い 14.仮説の検証(仮説Ⅰ) ア:店舗名必需がクーポン付きフリーペーパーを利用 するとは言えない→立証されず イ:知的好奇心旺盛は、情報誌・クーポン付きフリー ペーパーともに利用すると言える→立証 ウ:詳細情報が情報誌を利用するとは言えない →立証されず 仮説の検証(仮説Ⅱ) ・外食頻度と生活形態の交互作用は有意でない →2つの条件の組み合わせは利用に影響を与えない ・生活形態の主効果は有意でない →生活形態の違いは利用に影響を与えない ・外食頻度の主効果は有意である →外食頻度の高低が利用に影響を及ぼす 仮説Ⅱは全て立証されなかった 15.考察(仮説Ⅰ) 〈情報誌〉 ・知的好奇心旺盛は新規開店の店を最も知り たがっている ・情報誌は読むのに費やす時間が短く、じっく り読まずにパラパラと読む(久保 2003) とい う特徴を持つ 〈クーポン付きフリーペーパー〉 ・知的好奇心旺盛は外食頻度が最も高い 考察(仮説Ⅱ) 〈行きつけの店〉 ・生活形態と行きつけの店の有無には有意な 連関は見られなかった 〈経済的余裕〉 ・下宿生のほうが自宅生よりも経済的に余裕 がある 16.マーケティング的示唆 ・外食頻度の高い学生にアプローチ →飲食店の情報を多めにする • 約6割の学生が自分を一貫した存在であると 思っていない(三浦 2001) →全ての情報をそのまま発信するのではなく、 いくつかの情報をチョイスして発信する必要 がある。
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