国際比較法制論A 第1回授業 2006年4月13日 阿川尚之

国際比較法制論A
第12回授業
2006年7月6日
阿川尚之
憲法と私の権利
「言論の自由」
言論の自由:
憲法の規定(修正第1条)
『Congress shall make no law . . .
Abridging
the freedom of speech or press』
人権宣言(Bill of Rights)
(最初の修正10条)の背景
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1787年憲法案に対する反論の1つ
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ハミルトンの反論
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人権保護に関する規定がない:圧制の恐れ
連邦政府に与えない権限はすべて州と人民のもの
したがってわざわざ人民の権利を列記する必要はな
い
人権保護規定を設けることを条件に、憲法案を
批准
人権宣言(Bill of Rights)
(最初の修正10条)の背景
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人権宣言の起草と最初の憲法修正手続き
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1789年最初の議会に人権宣言案を提出
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マディソンによる人権宣言の起草
ヴァージニア人権宣言を参考
ジョージ・メーソンの思想
議会がこれを可決(各院それぞれ3分の2の賛成)
13州における批准
1791年発効
人権宣言(Bill of Rights)
(最初の修正10条)の背景
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Congress shall make no law
連邦議会が対象
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新しく成立した連邦政府への不信
州には適用されない
第1次大戦まで判例がほとんどない
1798年外国人・煽動取締法
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連邦党による同法の制定
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親フランス革命派へのおそれ
反政府分子の取り締まり
民主党の反発
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ジェファーソンとマディソンのケンタッキー・
ヴァージニア決議
1800年の選挙と同法の廃止
第1次世界大戦と言論の自由
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修正第1条の解釈
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事前規制の禁止
Bad Tendencyの理論
第1次世界大戦と言論の自由
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防諜法・スパイ防止法の制定と判例
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パターソン事件
シェンク事件(「明白かつ現在の危険」)
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ファイティングワーズの法理
アブラムズ事件
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ホームズ判事の反対意見
アブラムズ事件[1919]
ホームズ判事の反対意見
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「反対意見の抑圧は、論理的な行動である。自分の議論
や力に絶対の自信があり、目標実現を心から望む者は、
誰でも反対論を排除しようとするだろう。(中略)しかし
もっとも戦闘的な信念でさえ、時間の経過と共に間違っ
ていたとわかるときがある。そこで人は、自分の考えを押
しつけるより、異なった考え方を自由に交換してこそ、好
ましい結果が得られると気づくかもしれない。ある命題が
真であるかどうかを決定する最良の基準は、その命題が
市場での競争を通じて受け入れられる力を有するかどう
かである。真実のみが、自らの願望の実行に正統性を与
える。少なくともこれが憲法の理論である」
第2次世界大戦・
冷戦と言論の自由
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ゴビティス事件[1940]
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バーネット事件[1943]
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同様の法律を違憲とする
ドウズ事件[1951]
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「エホバの証人」信者である児童2人による国旗への
敬礼拒否を罰する州法は合憲
共産党員でないことの宣誓を義務付けるタフト・ハート
レー法は合憲
デニス事件[1952]
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スミス法(破壊活動防止法)にもとづく共産党員の訴
追は合憲
ベトナム戦争と言論の自由
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ティンカー対デモイン教育委員会事件
合衆国対ニューヨークタイムズ事件
オブライエン事件
公民権運動と言論の自由
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ニューヨークタイムズ対サリバン事件(1964)
<背景>
1960年3月29日付のニューヨーク・タイムズ紙上
に、マーティン・ルーサー・キングJr.らのグループ
がアラバマ州モントゴメリー市警察の暴力を訴え
る意見広告を載せたのに対して、同市警察本部
長のサリバンが名誉毀損でニューヨーク・タイム
ズ社を訴えた事件。
公民権運動と言論の自由
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<判決>
ブレナン裁判官は、「公共問題に関する討論は
禁圧されず、力強く、かつ広範囲になされなけれ
ばならない」という原則を打ち出し、公務員に対
する名誉毀損が成立するには、「現実の悪意(=
言明が虚偽であることを認識して行なわれるこ
と)」によってなされた場合に限られるとして、
サリバンの賠償請求を棄却した。
言論の自由:現代
国旗を燃やす自由
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テキサス対ジョンソン事件
ストリッパーの権利
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グレンシアター事件
「信教の自由:政教分離」
アメリカ殖民の歴史
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イギリス国教への抵抗
メイフラワー誓約と信教の自由
マサチューセッツ植民と「丘の上の町」
国教の樹立と異端の思想
憲法修正第1条と
信教の自由・政教分離
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Congress shall make no law
respecting an establishment
of religion,
or prohibiting the free
exercise thereof.
カトリックの迫害と政教分離
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プロテスタントの国教化
新しい移民とカトリックの迫害
日本国憲法第89条
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「公金その他の公の財産は、(中略)又は公の
支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事
業に対し、これを支出し、又はその利用に供し
てはならない」
ブレイン修正と州憲法の規定
宗教の尊重か、宗教の排除か
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ダグラス意見[1952]
エンジェル対ビタレ事件[1962]
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アビントン学区対シェンプ事件[1963]
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公立学校における無宗派の祈祷は違憲
公立学校における聖書の暗唱は違憲
日本国憲法第20条3項
「国およびその機関は、宗教教育その他い
かなる宗教的活動もしてはならない」
宗教をめぐる現在の憲法問題
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リー対ワイズマン事件
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公立学校における無宗派の祈祷の合憲性
忠誠誓約「神のもと」の合憲性
公共の場に立てたクリスマスツリーや
キリスト生誕像の合憲性
公共の場に展示した
モーセの十戒の合憲性
「新しいデュープロセスと避妊、
同性愛、妊娠中絶、死ぬ権利」
実体的デュープロセス理論の
終焉
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ロックナー事件と契約の自由
ドイツ語を学ぶ権利
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私立学校へ通う権利
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メイヤー対ネブラスカ[1923]
ピアス対ソサイティー・オブ・シスターズ
[1925]
ニューディールと実体的デュープロセス理
論の否定
憲法修正第14条と新しい人権
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インコーポレーション・ドクトリン
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最初の修正10条のうち、基本的な人権のみを
14条に組み込む
最初の修正10条のすべてを14条に組み込む
最初の修正10条以外の基本的人権も14条で
守られる
(修正第9条)
グリズウォルド対
コネティカット事件[1965]
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憲法上の避妊の権利
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修正10条の半影としてのプライバシーの権利
(ダグラス)
修正14条に組み込まれた権利(ハーラン)
修正9条の残余の権利(ゴールドバーグ)
ロー対ウェード事件
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憲法上の妊娠中絶を行なう権利
この事件に対する1973年の判決で米国の
連邦最高裁判所は、
条件付きで人工妊娠中絶を認める州法の
合憲性を初めて認めた。
その他のプライバシーの権利
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同性愛の権利
死ぬ権利