国際比較法制論A 第12回授業 2006年7月6日 阿川尚之 憲法と私の権利 「言論の自由」 言論の自由: 憲法の規定(修正第1条) 『Congress shall make no law . . . Abridging the freedom of speech or press』 人権宣言(Bill of Rights) (最初の修正10条)の背景 1787年憲法案に対する反論の1つ ハミルトンの反論 人権保護に関する規定がない:圧制の恐れ 連邦政府に与えない権限はすべて州と人民のもの したがってわざわざ人民の権利を列記する必要はな い 人権保護規定を設けることを条件に、憲法案を 批准 人権宣言(Bill of Rights) (最初の修正10条)の背景 人権宣言の起草と最初の憲法修正手続き 1789年最初の議会に人権宣言案を提出 マディソンによる人権宣言の起草 ヴァージニア人権宣言を参考 ジョージ・メーソンの思想 議会がこれを可決(各院それぞれ3分の2の賛成) 13州における批准 1791年発効 人権宣言(Bill of Rights) (最初の修正10条)の背景 Congress shall make no law 連邦議会が対象 新しく成立した連邦政府への不信 州には適用されない 第1次大戦まで判例がほとんどない 1798年外国人・煽動取締法 連邦党による同法の制定 親フランス革命派へのおそれ 反政府分子の取り締まり 民主党の反発 ジェファーソンとマディソンのケンタッキー・ ヴァージニア決議 1800年の選挙と同法の廃止 第1次世界大戦と言論の自由 修正第1条の解釈 事前規制の禁止 Bad Tendencyの理論 第1次世界大戦と言論の自由 防諜法・スパイ防止法の制定と判例 パターソン事件 シェンク事件(「明白かつ現在の危険」) ファイティングワーズの法理 アブラムズ事件 ホームズ判事の反対意見 アブラムズ事件[1919] ホームズ判事の反対意見 「反対意見の抑圧は、論理的な行動である。自分の議論 や力に絶対の自信があり、目標実現を心から望む者は、 誰でも反対論を排除しようとするだろう。(中略)しかし もっとも戦闘的な信念でさえ、時間の経過と共に間違っ ていたとわかるときがある。そこで人は、自分の考えを押 しつけるより、異なった考え方を自由に交換してこそ、好 ましい結果が得られると気づくかもしれない。ある命題が 真であるかどうかを決定する最良の基準は、その命題が 市場での競争を通じて受け入れられる力を有するかどう かである。真実のみが、自らの願望の実行に正統性を与 える。少なくともこれが憲法の理論である」 第2次世界大戦・ 冷戦と言論の自由 ゴビティス事件[1940] バーネット事件[1943] 同様の法律を違憲とする ドウズ事件[1951] 「エホバの証人」信者である児童2人による国旗への 敬礼拒否を罰する州法は合憲 共産党員でないことの宣誓を義務付けるタフト・ハート レー法は合憲 デニス事件[1952] スミス法(破壊活動防止法)にもとづく共産党員の訴 追は合憲 ベトナム戦争と言論の自由 ティンカー対デモイン教育委員会事件 合衆国対ニューヨークタイムズ事件 オブライエン事件 公民権運動と言論の自由 ニューヨークタイムズ対サリバン事件(1964) <背景> 1960年3月29日付のニューヨーク・タイムズ紙上 に、マーティン・ルーサー・キングJr.らのグループ がアラバマ州モントゴメリー市警察の暴力を訴え る意見広告を載せたのに対して、同市警察本部 長のサリバンが名誉毀損でニューヨーク・タイム ズ社を訴えた事件。 公民権運動と言論の自由 <判決> ブレナン裁判官は、「公共問題に関する討論は 禁圧されず、力強く、かつ広範囲になされなけれ ばならない」という原則を打ち出し、公務員に対 する名誉毀損が成立するには、「現実の悪意(= 言明が虚偽であることを認識して行なわれるこ と)」によってなされた場合に限られるとして、 サリバンの賠償請求を棄却した。 言論の自由:現代 国旗を燃やす自由 テキサス対ジョンソン事件 ストリッパーの権利 グレンシアター事件 「信教の自由:政教分離」 アメリカ殖民の歴史 イギリス国教への抵抗 メイフラワー誓約と信教の自由 マサチューセッツ植民と「丘の上の町」 国教の樹立と異端の思想 憲法修正第1条と 信教の自由・政教分離 Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof. カトリックの迫害と政教分離 プロテスタントの国教化 新しい移民とカトリックの迫害 日本国憲法第89条 「公金その他の公の財産は、(中略)又は公の 支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事 業に対し、これを支出し、又はその利用に供し てはならない」 ブレイン修正と州憲法の規定 宗教の尊重か、宗教の排除か ダグラス意見[1952] エンジェル対ビタレ事件[1962] アビントン学区対シェンプ事件[1963] 公立学校における無宗派の祈祷は違憲 公立学校における聖書の暗唱は違憲 日本国憲法第20条3項 「国およびその機関は、宗教教育その他い かなる宗教的活動もしてはならない」 宗教をめぐる現在の憲法問題 リー対ワイズマン事件 公立学校における無宗派の祈祷の合憲性 忠誠誓約「神のもと」の合憲性 公共の場に立てたクリスマスツリーや キリスト生誕像の合憲性 公共の場に展示した モーセの十戒の合憲性 「新しいデュープロセスと避妊、 同性愛、妊娠中絶、死ぬ権利」 実体的デュープロセス理論の 終焉 ロックナー事件と契約の自由 ドイツ語を学ぶ権利 私立学校へ通う権利 メイヤー対ネブラスカ[1923] ピアス対ソサイティー・オブ・シスターズ [1925] ニューディールと実体的デュープロセス理 論の否定 憲法修正第14条と新しい人権 インコーポレーション・ドクトリン 最初の修正10条のうち、基本的な人権のみを 14条に組み込む 最初の修正10条のすべてを14条に組み込む 最初の修正10条以外の基本的人権も14条で 守られる (修正第9条) グリズウォルド対 コネティカット事件[1965] 憲法上の避妊の権利 修正10条の半影としてのプライバシーの権利 (ダグラス) 修正14条に組み込まれた権利(ハーラン) 修正9条の残余の権利(ゴールドバーグ) ロー対ウェード事件 憲法上の妊娠中絶を行なう権利 この事件に対する1973年の判決で米国の 連邦最高裁判所は、 条件付きで人工妊娠中絶を認める州法の 合憲性を初めて認めた。 その他のプライバシーの権利 同性愛の権利 死ぬ権利
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