ドイツにおける 戦略的環境アセスメント制度の導入 -都市計画での適用- 水原渉(環境計画学科/環境・建築デザイン専攻 はじめに • EU諸国の環境アセスメントはEU(ECC、 EC)指令の大きな影響を受けている。 • 最近では2001年の計画・プログラム(戦略 的)環境検査指令が出された →2004年にEU各国で導入義務 • このEU指令の国内法化について、ドイツを 例に見ていきたい。 1.EUの計画・プログラム指令(2001/42/EG(EC))の概要 2.適用範囲 適用範囲は「甚大な環境影響を持つと予想される計画と プログラム」: 農林漁業、エネルギー、工業、国土計画、土地利用などの 分野で作成され、 指令85/337/EWGの付録Ⅰ(環境甚大性判定のための基 準)とⅡ(環境報告書の内容)で述べられているプロジェクト の将来の許可の枠組となる全計画・プログラム、 あるいは、 FHH指令92/43/EWGの第6条(FFH-地域の保全対策な ど)に基づく検査が必要な全ての計画とプログラム, などとしている(以上、第3項2項)。 3.ドイツでのEU指令の 国内法化 既存の環境親和性検査法 (Umweltverträglichkeitsprüfungsgesetz;1990年制 定)に計画・プログラム環境 検査を組み込んだ(第3章 の第14a条~14n条;2005 年)。 独自の計画策定手続きに EUの要請規則を組み込ん だ。 3(続き).環境親和性検査法での戦略的環境検査の規則 4.ドイツで環境検査が必要とされる計画・プログラム 国土計画図 建設誘導計画図(※) などで義務づけられ た。 ※建設誘導計画図は土利 用計画図(F-Plan)と地 区詳細計画図(B-Plan) から構成されている。本 報告ではB-Planについ てみていく。 5.ドイツの空間計画のシステム(その1) 6.ドイツの都市計画の手続きと環境検査 ドイツでは都市計画 への市民参加は2段階 で行われている(早期 市民参加と正式市民参 加)。これとは別に官庁 参加も行われている。 環境報告書の作成、 公衆・官庁参加など既 存の都市計画の手続き に組込んだ。 7.環境報告 書の内容 8.都市計画での環境検査のこれまでと今後 • 既に80年代から幾つかの都市では都市計画(建設誘導計画) の中で環境アセスメントを進めている。 • それには比較衡量という手続きが重要な意味を持っていた。 • これからは全ての都市計画で環境アセスメントを行う必要が ある。 9-1 なぜ都市計画で既に環境検査を行っていたか -比較衡量の持つ意味(その1)- • 改定建設法典の第1条「建設誘導計画の課題および概 念、原則」の第6項では(旧第5項)「建設誘導計画図の 作成に際して、特に考慮すべきもの」として比較衡量の 視点(計画原則)を与えている。 • この第6項の計画原則は、特に公的利益に関わるもの である(このシステムは1960年の連邦建設法から受け継 がれている)。 • この計画原則は、比較衡量という手続きと合わせて、 計画の質を確保する非常に大きな役割を果たしている。 これは、建設誘導計画全体に影響評価が法的に求めら れていなかった最近までも環境影響の視点で重要な意 味を持っていたし、今後も持つことになる。 9-2 なぜ都市計画で既に環境検査を行っていたか -比較衡量の持つ意味(その2)- この第6項では、 ・居住事情、 ・労働事情、 ・社会的、文化的要求、 ・既存の地域の保全や発展、 ・記念建造物や歴史的に重要な地域、 ・道路、 ・地域・自然景観、 ・経済、 ・エネルギー・水の供給、 ・資源の確保など、他の利益と並んで、 同7号で「自然保護と自然地保全を含む環境保護の利益」として、次頁の 9利益(計画原則)が挙げられている。 以前の当該原則と比べてかなり詳細に環境保護利益が列挙され、より慎重 に、きめ細かく環境配慮点に注意する事が求められている。 9-3 なぜ都市計画で既に環境検査を行っていたか -比較衡量の持つ意味(その3)- それらは: a)動物と植物、土地/土壌、水、大気、気候、および、これらの間の影響構造、 ならびに自然地[Landschaft]と生物多様性、 b)ヨーロッパの共同体的に重要な地域、およびヨーロッパ鳥類保護地域の保 全目標と保護目的(NATURA 2000地域)、 c)人間とその健康ならびに住民全体に対する環境関連の影響、 d)文化財とその他の保護財に対する環境関連の影響、 e)汚染の回避、ならびに実態に適った廃棄物と排水の処理、 f)再生可能エネルギーの利用ならびにエネルギーの節約的で効果的な利用、 g)自然地計画図およびその他の、特に水・廃棄物・汚染防止法規の計画図の 表示、 h)ヨーロッパの共同体の拘束的決議の遵守に向けての法令で確定された汚染 制限値を超えては ならない地域の最大限の大気質の保全、 i)上記aとc、dに基づく環境保護の個々の利益の間の相互作用、 である。 10.おわりに • 空間計画での環境影響評価は、今後、重要になる。 • 空間計画の環境影響評価に対しては評価できる計画の仕 組みが必要。 • 都市計画の環境影響評価では自然的土地の消失が重要な 視点になる。環境の原因者原理は自然的土地の消失に対し ても該当する。 • 環境評価を行う場合には環境情報が重要で、中でも都市計 画の場合には自然的土地の情報が重要。 →見えてくる原則: 「計画なくして開発なし」+「計画なくして環境保護なし」
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