ソシオメトリック・テスト 人間関係の分析

社会心理学(GED231)
-対人関係の分析-
(ソシオメトリック・テスト)
このクラスで理解すべきこと
1.ソシオメトリーとはどういうテストなのか。
2.ソシオメトリック・テストが有効であるための条
件三つを挙げよ。
3.ソシオメトリック・テストのデータを分析する二つ
の方法を説明せよ。
4.ソシオメトリック・テストの結果からどの様にして
集団のモラールの高低を判断できるか。
5.牧会におけるソシオメトリーの効用性について
述べよ。
対人関係の構造分析

対人関係(Interpersonal Relationship)の複雑性
 交換モデル(G.C.Hommans, 1974)


基本的に利己的であるため、他所との相互作用
から生じる利益を最大化しようとする動機による
人間関係
均衡モデル(E.Walster,1976)

自己の報酬とコストを考慮するとともに、相手の
それと比較しながら均衡を保とうとする人間関係
対人関係の構造分析

対人関係(Interpersonal Relationship)の複雑性

投資モデル(C.E.Rusbult, 1980)

現在の関係から得る報酬からコストを差し引
いた利得の大きさに依存する関与度

互恵モデル(奥田秀宇、1994)

相互に報酬を与えあう互恵性による人間関係
対人関係の構造分析

対人関係(Interpersonal Relationship)の複雑性
 共同体モデル(M.S.Clark、1979)


共同体における一体感を確立つるために、相
手からの見返りを期待しないで、相手の要求に
応えようとする人間関係
役割期待交換モデル(若林満、1987)

組織(会社、学校、家庭)における役割期待の
交換過程の中で生まれる人間関係
対人関係の構造分析

対人関係(Interpersonal Relationship)の複雑性
 聖書的モデル
 有機体的モデル
(エペ4:1-16、ピリ2:1-5)
 犠牲的モデル(1ヨハ3:16)
対人関係の構造分析

対人関係(Interpersonal Relationship)の複雑性
 哲学的思索の不十分性
 科学的研究方法による十全的解明不可能
 多岐にわたる対人関係構成要因
 心理的特徴(性格、熟知性、親近性)
 生理的特徴(人種、DNA、体型)
 社会的特徴(社会環境、文化環境)
 宗教的特徴(宗教的価値観)
対人関係の構造分析

ソシオメトリー(Sociometry)

発案者モレノ(J.L.Moreno)

Sociometric Instututeを創設(1942)

対人関係分析の有効な理論

現在もなお用いられている実験方法

社会集団における対人関係についての現実的な
社会心理学的実態の把握

ロール・プレイ心理劇の創始者
対人関係の構造分析

ソシオメトリー(Sociometry)




抽象的分析ではなく、実際の状況を的確に
把握可能
社会構成における成員の行動、判断、影響、
コミュニケーションの診断
対人関係の向上、変革に寄与
成員間の軋轢の矯正に貢献
対人関係の構造分析

ソシオメトリーの方法論

簡単明晰なデーター収集方法

シンプルであればあるほど真実に近づきやすい

経済的なデータ収集

具体的で信頼性の高いデータ

簡単な分析方法

超文化的特徴を有する方法

一般的観察では見えない対人関係の解明
対人関係の構造分析

ソシオメトリック・テストの構成
 対象集団のテスト条件
 親密度(互いによく知っている度合)
 継続性(一過性的な集団でないこと)
 小集団(30名以下)
対人関係の構造分析

ソシオメトリック・テストの構成

同一対象におけるテストの領域
 仕事に関する領域
 学習に関する領域
 スポーツ関連の領域
 レジャー関連の領域
対人関係の構造分析

ソシオメトリック・テストの手順


小集団すべてのメンバーに質問
アンケート形式もしくは面接
「誰と何をしたいか」(希望関係)
 「誰と勉強していますか」(現実関係)


選択肢の決定
①一人だけ ②第1、第2、第3選択
 否定選択は回避すること

ソシオメトリック・テスト

質問例(1)
1.運動会でリレーをすることになりました。自分の組
に入って欲しい人を一人選んで下さい。___
2.遠足にいったとき誰と一緒にお弁当を食べたいで
すか。 ___
3.二人組でクイズ競争に出ることになりました。誰と
ペアになりたいですか。___
ソシオメトリック・テスト

質問例(2)
1.寮生の誰を学生会長に選びたいか。__
2.誰に個人的な問題を打ち明けたいか。__
3.誰に学習の助けを求めたいか。__
ソシオメトリック・テスト

データの分析

ソシオマトリックス(Sociomatrix)
マトリックス(方眼紙)を作成
 選択肢に負荷値を割り当て
 データを入力(X)または(負荷値)
 被選択総数から優先順位を付与
 順位相関係数を算出

ソシオマトリックス(Sociomatrix)
1
2
3
1
2
4
5
X
X
3
X
4
X
5
X
6
X
7
6
7
例
1→4
2→1
3→5
4→5
5→3
6→3
ソシオメトリック・テスト

データの分析

ソシオグラム(Sociogram)

男子○・女子△で選択ネットワークを図にする

個人のソシオメトリック指数を算出

集団の相互、連鎖型、輪型、車軸型選択を判別

リーダー、フォロワー、孤立者を判別
ソシオグラム(Sociogram)
5
4
6
3
2
1
ソシオグラム(Sociogram)
連鎖型構造

課題解決早く正確

組織化遅いが安定

リーダーの所在確認困
難

モラール低い

変化に対する対応不良

成員満足度低い
ソシオグラム(Sociogram)
輪型構造

課題解決遅く、不正確

組織化困難で不安定

リーダーの所在確認困
難

高いモラール

変化対応最良

高い成員満足度
ソシオグラム(Sociogram)
車軸型構造

課題解決速く、正確

組織化速く、安定

リーダーの所在確認
一目瞭然

モラール最低

変化に対する対応
最悪

成員満足度最低
ソシオグラム(Sociogram)

多数分離構造






結合関係ほとん
ど無し
個々が孤立
組織化不可能
リーダー無し
モラール不在
成員満足度ゼロ
ソシオグラム(Sociogram)

一部集中構造






特定の成員に結合集中
その部分だけ車軸型
組織化可能
リーダーの所在一目瞭然
モラール最低
成員満足度も最低
(G. 心理学p.213)
ソシオグラム(Sociogram)

分断分離構造







複数の下位集団存在
集団間の離反的関係
下位集団間の競合
集団全体の組織化不可能
集団全体のリーダー確認不可能
下位集団のリーダー確認可能
高い下位集団のモラールと成員満足度
ソシオグラム(Sociogram)

分団結合構造

下位集団間相互にわずかな結合

集団全体のリーダー確認困難、しかし可能

下位集団のリーダー確認可能

高い下位集団のモラール

低い集団全体の成員満足度

高い下位集団の成員満足度
ソシオグラム(Sociogram)

統一結合構造

複数のリーダー存在

全成員間に結合関係

非常に高い集団のモラール

非常に高い集団全体の満足度
ソシオグラム(Sociogram)

コミュニケーション構造とソシオグラム

単純な課題の解決
 情報が一人の成員に集中する構造が迅速

複雑な課題の解決
 情報が均等に分散されている構造が有利
ソシオグラム(Sociogram)

学習志気・作業志気(モラール)

集団の階層化の度合に比例

集団の相互選択頻度に比例

集団の結合度(統合度)に比例

集団の集中度に比例
ソシオメトリック・テスト

ソシオメトリック統合度(Sociometric Cohesiveness)
S I
Co= ――――
dN/2
Co: グループの統合度(親密度)
I : 相互選択の頻度
d: メンバーの選択肢の数
N: メンバーの人数
ソシオメトリック・テスト

ソシオメトリック指数(Sociometric Indices)
SI
SS = ――― ± Sd
N-1
I : 相互関係強度(The intensity of an
interpersonal attitude)
Sd: 標準偏差値(Standard deviation)
N : グループ全員の数