企業家論 ⑪ 鈴木敏文 (セブンイレブン・ジャパン創業者) 企業経営は経済学でなく、心理学である。必要 なことは本当のような嘘を見抜く統計学である。 環境変化の激しい今日には、正しい回答は無 いので、日々「仮説⇒検証」の繰り返しが必要。 樋口徹 1 日本の生活におけるコンビニ 1.日本全国にコンビニは何店舗? 約4万4千店舗(平成23年12月末日時点) 2.全国のコンビニの一店舗当たりの一日の平均販売額は? 54万円 3.セブンイレブンの店舗数は? 14,005店舗(平成23年度末) 4.セブンイレブンの一日当たりの平均売上は? 66万円(平成23年度) 5.セブンイレブン1店舗あたりの一日の来客者数は? 965人(平成19年度) 2 コンビニの歴史 • 1927年アメリカテキサス州の小さな 氷 屋さんから始まる 氷を買う人の目的は? - 冷蔵庫 - • お客さんが一緒に購入したいものは? ー 牛乳、卵(生鮮食料品)- ⇒便利⇒コンビニ • 夏季の営業時間は?週7日・16時間(何時~) • フランチャイズ(サウスアイランド・アイス社)? セブンイレブンの店長は社員・個人事業主? 直営店とフランチャイズの違いは?(経営責任の取り方) ※FCとは、本部(フランチャイザー)が多数の加盟店(フランチャイジー)に 商標や商売に必要なものを提供する代わりに、加盟料及び経営指導料 等(売上や利益等に比例)を受け取るビジネスの形態。セブンイレブンの 店長は個人事業主(少額資本)が基本で、加盟店(フランチャイジー)は 商標(看板)や品揃えが共通。加盟店が赤字を出した場合は加盟店側 の責任。 • 日本の一号店は1973年に江東区 3 売上の推移 売上高(億円) 1店舗月当たり(千円) 店舗数(右縦軸) 30,000 14,000 25,000 12,000 10,000 20,000 8,000 15,000 6,000 10,000 4,000 5,000 2,000 0 0 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 4 鈴木敏文の年表(偶然?場当たり的?) 1932年 12月1日長野県生まれ 中央大学法学部卒業(学生自治会書記長、政治家志望)、株式投資 出版取次の東京出版(トーハン)に入社(ジャーナリスト志望)、書記長 1962年 イトーヨーカ堂入社(テレビ番組制作会社の設立に向けたスポンサー 探し中に勧誘された) ※当時は5店舗のみのスーパー 1970年 イトーヨーカ堂に労働組合結成 1971年 米国出張(バスでの移動中にセブンイレブンに立ち寄る)、取締役就任 1972年 イトーヨーカ堂を株式上場させる 1973年 ㈱ヨークセブン(イトーヨーカドー系)設立;米国サウスアイランド社から イトーヨーカ堂がエリアサービスおよびライセンス(FCの日本国内で の事業展開)の権利を獲得。 ※15名の素人集団から開始 1974年 5月に江東区に第一号店を出店(店舗数を着々と増やし、2011年2月末 日で13233店に到達) 1976年 ベンダーを集約化し、共同配送開始(物流センター経由の小分け配送) 1982年 POS(販売時点管理)システム始動 1987年 米飯共同配送(一日3便制)開始 2005年 11月9日に米国法人の7-Eleven, Inc.を完全子会社化 5 セブンイレブン(コンビニ)の便利さ ・品揃え 店頭商品のアイテム数は? 約 2800 アイテム 毎週約 100 種類は新製品登場 毎年 70% の商品が入れ替わる ※独立のお店では対応しきれない。 ・24時間オープン 昔の営業時間(朝7時から夜11時まで) ・公共料金の支払い ・宅配の取次 6 OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)の活用 • 加盟店の経営指導効率改善を目的として、1人当たり7~8店 舗を担当。 • 約1万4千店の店舗があるので、2千人弱のOFCがいる。 • 隔週の火曜日の午前中に全OFCを本社(四谷)に集めて集 会(以前は毎週) ※鈴木敏文は経営の基本を叩き込み、「みんなわかったね」や「約束し てくれるね」と確認。OFCは「(わかり)ました」と応答。 鈴木敏文 鈴木敏文 別室の モニター 会場 600人のOFC (Face to Faceのコ ミュニケーション) ① 別室の モニター 会場 以前の会議場は手狭だったので、 順番で会場を入れ替えていた。 ② ③ ④ ⑧ ⑫ 現在は会議室が大きくなり、 12ブロックに8×15人、合計 7 1万4400人収容 最近購入した商品は? 温度帯 -20℃ 5℃ 20℃ 常温 書籍 配送頻度と必要設備が異なるので、製品の温度帯別に物流セン ターを設置し、そこから配送する。(本書籍は別) ドミナント出店(高密度他店舗出店方式) 物流センター 最初の一店舗(品揃えは多い) 在庫を抑えな (小分け;必要な量) 一日トラック 70 便(4便/時) がら豊富な品 揃えを確保 直ぐに陳列(保管不要) • ダンボール箱単位で輸送 • 在庫スペース一杯 ドミナント(多数)出店 • 品物が見つからない 確実かつ効率的なトラック輸送 温度帯別配送 国内1号店開店当初(1973年)の配送状況 • 物流センターは未整備であったので、一日70台のトラックがばら ばらに商品を箱単位で配達した。 • 当時の営業時間は7時から23時の16時間であったので、一時間 当たり4~5台配達(近隣住民からの苦情)。 • トラックの配達ごとに、荷物の数量や品質を確認し、受領する必 要があった(対応するための人員が必要)。 • 同じ製品が箱単位で到着しているから一旦倉庫に保管する必 要が生じた。必要に応じて、倉庫内を探し、商品を運搬し、商品 棚に陳列していた(手間がかかるし、在庫ロス発生)。 10 現時点の物流センターからの配送 常温(加工食品共同配送センターや雑貨共同配送センター)、20℃ 管理(米飯共同配送センター)、5℃管理(チルド共同配送センター)、 -20℃管理(フローズン共同配送センター)の温度帯別配送を行っ ている。物流センターでは、店舗ごとに小分けにされた商品(例え ば、特定のボールペン3本と特定の消しゴム2個など)をルート配送 しているので、個別店舗への配送は1日7~10回程度に抑えられて いる。 ※常温配送センターの担当に関しては、配送距離は60(首都圏は35)km以 内、大都市の最大担当店舗数は200(中小都市は100)店 ※20℃管理の商品を配送する場合には、 米飯共同配送センターに集め、一 日3回のセブンイレブンの小売店に個別に配送するのが一般的である (200店舗に一拠点)。新鮮な物は配送時間の制約が厳しいので、一つの ルートの店舗数は少なくなり、配送エリアが狭くなる。米飯共同配送セン ターの数他のセンターに比べて多くなる。 11 ドミナント出店(高密度多店舗出店方式); 12 狭い範囲にたくさんの店を出店 • • • • • • 配送効率が良い(店舗間のトラックの輸送時間が短い) 配達時間の制約充足(お弁当やサラダなどは配達時間が重要) 知名度の向上(セブンイレブンが強いエリアという印象を与える) 競争上有利(競合他社が参入を躊躇) 宣伝効果の向上(動線が違えば、奪い合いにならない?開拓) 加盟店の経営指導効率改善(OFC;オぺレーション・フィールド・カ ウンセラー;7~8店の加盟店を担当) ⑦ ⑦ ⑦ ⑦ ⑦ ⑦ ⑦ 4店舗で毎日合計320万円の売り上げ ⑦ ⑦ 5店舗で毎日合計380万円の売り上げに おにぎりから見えるセブンイレブン(鈴木敏文) • 1号店で最初に売れたのは 「サングラス」 ⇐洋風のイメージ • 1978年におにぎり(庶民的)の販売を開始したが、売れたのは平均 で一日当たり1~2個/店であった。見込み違いと言われていた。 ※原因としては以下が考えられていた;和風のイメージとミスマッチ、美味しくな かった(一日一回作って売り切るので味が落ちる)、誰でも作れる。家内工業 的に作っていたので、味や品質の保証が出来なかった(問題が発生したら連 帯責任になる)。 • 味や品質の均一化のためにNDF(日本デリカフーズ協働組合;事務 局はセブンイレブン)を設立し、武蔵野フーズやわらべやなどのベン ダーとともに製品開発・生産・配送体制を構築。複数社による納品 体制(競争とリスク管理⇒東日本大震災時に供給できる余力) ※「高尾山に登るつもりでいたら、エベレストであった」(武蔵野フーズ談) • 1983年武蔵野フーズがツナおにぎりを開発⇒大ヒット。 • ベンダー側が米飯共同配送センターを全国展開 • ドミナント出店によって、配送時間を短くしたことによって、事故や渋 滞などによる欠品率を下げ、長時間売り場で販売可能にした。 13 セブンイレブンを支える情報システムの進歩 第4次総合情報システム(1992年)時のデータ(地区単位での集計値分析) POSデータ;販売時点のデータ(売れ筋商品と経営指導料の把握) 品切れデータ;欠品が発生した時のデータ(機会損失の把握) 発注データ;商品の発注に関するデータ(関係者と情報共有) 第5次総合情報システム(1998年~)から追加(個店単位の前年との比較) 在庫データ;店舗にある在庫量に関するデータ 天気データ;天気に関するデータ(天気と売れ行きの因果関係分析) システム利用状況データ;情報システムの利用頻度等に関するデータ 第6次総合情報システム(2006年~)から追加(立地特性を考慮した分析) 立地データ;店舗周辺の世帯数および従業員数 施設データ;店舗周辺の学校、病院、行楽地に関するデータ 長期データ;1997年以降の集計データ ※取り扱う情報の内訳(2009年2月時) POSデータ(3500万件/日);販売に関するデータ 料金収納(2574万件/日);公共料金や各種振込 発注データ(600万件/日);加盟店からの注文情報 14 セブンイレブンジャパンの特徴(資産をできるだけ持たない) • リスク回避 現金や現金等価物を除いてできるだけ持たない(不動産と機器はリース、 商品は所有しない)。不要なものは持たずにリスクを減らしながら、資本 の回転率を高める。 • 加盟店から売上総利益(=売上高-売上原価)にチャージ ※売上原価に廃棄分は含まれない!! セブンイレブンの看板を掲げて、セブンイレブンジャパン提供の商品を セブンイレブンジャパンが構築した流通・情報システムで仕入れ、販売 • メーカーからセンターフィーを徴収 日本の商習慣では、卸売りあるいはメーカーが小売に販売する価格に 店舗までの輸送価格が含まれる(蔵出価格)。物流センターを構築した 場合に、店舗まで輸送しない代わりに、マージンを要求。商社あるいは 他の卸売に物流センターの依頼を獲得したマージンより安く委託。 15 セブンイレブン・ジャパン(本部)の主な儲け方 配送センター (運営は卸連合) メーカーA メーカーB メーカーC A B C 輸送 (小分け) ABC ABC ABC ABC ABC ABC ABC ※ 各店舗まで納入 ※ ピンハネ? しない代わりに、 本部の仕入れ センターフィーを 値は明らかに メーカーから徴 されてない。各 収 店舗に販売す るのと同じ? 直営店舗 利益=売上-売上原価 FC店舗(オーナー) 輸送 保管・ 陳列 販売 廃棄やロス ※ 売り上 げは毎 日集金。 (運用) ※ 在庫に利子? ※仕入れた分全て 本部には商品 にチャージされる。 の所有権は移 廃棄やロスの分 転していないが、 までチャージされ 決済する際に、 る(ロスチャージ)。 利子徴収? 16
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