ミクロ経済学Ⅰ 初級ミクロ経済学 -余剰分析の応用- 2015年7月3日 古川徹也 2015年7月3日 ミクロ経済学 1 余剰分析の応用 余剰分析によって,様々な政策の効果について 理解を深めることができる。 よく知られているのは(1)従量税(従価税) の影響と死重損失,(2)貿易自由化の影響, などである。 従量税については,弾力性との関係が面白い。 2015年7月3日 ミクロ経済学 2 従量税と従価税 従量税:「1単位あたり何円」という税金がか かる。例:タバコ税,ガソリン税 従価税:「1円あたり何円」という税金がかか る。結局これは「価格のx%」と言っているの と同じだから日本の消費税と同じである。 税込価格を式であらわすと, p T 従量税 (1 t) p 従価税 2015年7月3日 ミクロ経済学 3 たばこ税について http://www.tioj.or.jp/o thers/ 2015年7月3日 ミクロ経済学 4 従量税を課した場合(1) p 課税後 S1 S0 課税前 供給側に納税義務が ある場合→価格に上 乗せされる T X 2015年7月3日 ミクロ経済学 5 従量税を課した場合(2) p S1 E1 p1 p0 E0 p1 X1 X 0 2015年7月3日 S0 「均衡」はE1に移動。買い 手の直面する価格は上昇す るが,売り手が実際に受け 取る価格は下落する。 X ミクロ経済学 6 弾力性と従量税(1) p S1 E1 p1 p0 E0 S0 需要の価格弾力性が大きい 場合,p1はあまり上がらず, p’1は大きく下落する。 p1 X1 2015年7月3日 X0 X ミクロ経済学 7 弾力性と従量税(2) p S1 E1 p1 p0 E0 p1 X 1X 0 2015年7月3日 S0 需要の価格弾力性が小さい 場合p1は大きく上昇するが, p’1はあまり下がらない。 X ミクロ経済学 8 余剰の大きさの比較:課す前 p S0 CS CSとPSの合計がSS E0 p0 PS X0 2015年7月3日 X ミクロ経済学 9 余剰の大きさ:課した場合 p S1 CS p1 p0 p1 E1 E0 税収 S0 CSとPSに,税収を加えたも のをSSと考える。 PS X1 X 0 2015年7月3日 X ミクロ経済学 10 余剰の大きさ:死重損失 p S1 E1 p1 p0 E0 p1 X1 X 0 2015年7月3日 S0 課税によって,左の赤い三 角形の分だけSSが減少する。 これを死重損失と呼ぶ。 X ミクロ経済学 11 余剰分析からわかること 税のない場合には「限界便益=限界費用」が成立 するので,余剰は最大化される。 しかし税が導入されると,「限界便益>限界費用 」となり,余剰は最大化されない。死重損失が生 まれる。 しかし税金は徴収せざるをえない。したがって, 「死重損失を最小化するような課税方法はないか 」というのが次の目的となる。 2015年7月3日 ミクロ経済学 12 弾力性と死重損失(1) p S1 S0 E1 p1 p0 E0 p1 X1 2015年7月3日 X0 X ミクロ経済学 13 弾力性と死重損失(2) p S1 S0 E1 p1 p0 E0 p1 X 1X 0 2015年7月3日 X ミクロ経済学 14 弾力性と死重損失 需要の価格弾力性の絶対値が小さい(需要曲線が 垂直に近い)ほうが,死重損失は小さくなる。 従価税が大きく(重く)なればなるほど死重損失 は大きくなるので,様々な財に従価税をかけるの であれば,絶対値の小さい財に重く,大きい財に 軽くかけるべきである。 絶対値の小さい財は,必需品である傾向がある。 したがって,この論理だけでは「必需品に重く」 となって軽減税率の議論とは矛盾する。 2015年7月3日 ミクロ経済学 15 自由貿易の利益 自由貿易の利益については,以下の2つのケース をモデルで考えることが多い。 (1)輸入を可能にしたことの効果 (2)関税を導入したことの効果 輸入を可能にすると,輸入がなかったときに比べ 消費者余剰が増大,生産者余剰が減少し,結果と して社会余剰が増大する場合がある。 輸入品に関税をかけると,関税がないときに比べ 死重損失の分社会余剰が減少する。 2015年7月3日 ミクロ経済学 16
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