PowerPoint プレゼンテーション

子どもの変化についての理解
~子どもの発達に関する脳科学・心理学と
特別支援教育の理解~
<資料提供> 東京学芸大学 准教授
澤隆史
1
発達と脳科学
発達と脳科学
2
発達と脳科学
子どもの「気になる」行動
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
身のまわりを片付けられない。
忘れ物が多い。
姿勢が悪い。
授業中にボーッとしてしまう。
・小さいことを気にしても仕方ないね。
手先を使う作業を嫌がる。
・大きくなればなおるでしょ。
体育の授業でみんなと一緒の動きがとれない。
授業中、立ち歩いたり教室を出て行く。
授業中のおしゃべりが多い。
・勉強が足りないんだよ。
・もっと真面目にならないと。
授業中、座ってはいるが落ち着かない。
・しつけがなってないのだ。
すぐにカッとする。
・先生がもっとちゃんと指導して。
約束を守らない。
何を言いたいのかわからない。
文字の形が取れない。
音読ができない。
繰り上がりや繰り下がりの計算ができない。
3
などなど
個の成長
環境
発達と脳科学
発達を規定する要因
4
発達と脳科学
脳の区分
5
発達と脳科学
脳機能の局在論
脳機能局在論とは、脳が部分ごとに違う機能を担って
いるとする説のことである。
19世紀初頭
ガルの骨相学:脳の特定の部位が特定の機能を担い、
その機能が発達するとその部位が肥大して頭蓋骨の
ふくらみとなって現れるとする説→科学的根拠なし
19世紀中葉~後半
ブローカやウェルニッケの失語症と脳損傷の関係調査
によって言語中枢とされる部位の推定が行われる
6
→脳機能の局在論が実証
発達と脳科学
脳機能の局在論
■ペンフィールドの脳地図
・てんかんの手術に伴い、局所麻酔の効果を確かめるため
に患者の脳を電極で刺激した。→特定の部位を刺激す
ると部位に固有の精神活動が起こることから、機能局在
の大まかな地図が作られた。
■ブロードマンの脳地図
・大脳皮質組織の神経細胞を染色して可視化し、組織構造
が均一である部分をまとめて、52個に区分する。
7
発達と脳科学
ペンフィールドの脳地図
ブロードマンの脳地図
8
発達と脳科学
9
発達と脳科学
ニューロン・シナプス
約100億以上の神経細胞と10兆以上の結合による情報の処理
と伝達を行っている。
10
発達と脳科学
神経伝達物質
• 神経細胞間(シナプスー神経細胞間)の情
報伝達に関与する化学物質
• 数十種類あるといわれ、脳の部位によって
異なる
– アセチルコリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、
アドレナリン、セロトニンなど
発達障害(ADHD,自閉症等)では、
代謝の変化が起こっている・・・。
薬物投与
物質の代謝をコ
ントロールする
11
発達と脳科学
神経科学から脳科学へ
• 神経科学
– (脳の)神経細胞の組織、構造、機能など
の解明
• 脳科学
– 人間の認知、行動、心理面を担う脳全体
の機能、働きの解明
脳の働きを「見る」方法(イメージング)の発展
(CT, MRI, PET, MEG, NIRSなど)
12
発達と脳科学
行動と脳
(理化学研究所脳科学総合研究センター「脳研究の最前線」, 2007より)
13
発達と脳科学
言語と脳
14
発達と脳科学
理性・思考と脳
-前頭前野-
15
発達と脳科学
脳科学の発展と教育
• コンポーネントの考え方
– 人間の(ある)行動等について、幾つかの下位能力(下
位要素)を想定して、モデル化して説明する考え方。
• 脳科学の発展
– 機能局在論
• 情報処理科学の発展
cf. 知能検査
認知検査
• 医療的介入
– 薬物処方などによるコントロール
– 外科的対応
学習や行動等における課題を明確化
16
発達と脳科学
脳科学に基づく学習の個人差の理解
(D.H.Rose & A.Meyer, 2002)
認識ネットワーク
刺激をとらえ、「何」であるのか
を理解する。
方略ネットワーク
自分の心、体の動き、働きを生
み出し、監視、調整する。
感情ネットワーク
刺激を理解し、感情的な意味を
持たせる。周囲の事物や人と関
わる。
17
発達と脳科学
脳科学に基づく学習の個人差の理解
(D.H.Rose & A.Meyer, 2002)
クリスマスカードを書く
認識ネットワーク
・「クリスマス」の概念の理解。
・「クリスマスカード」「ペン」などが分かる。
方略ネットワーク
・「カード」を書くという目的を設定する。
・作業の進み具合を監視する。
・書き方の工夫をする。 など
感情ネットワーク
・相手への自分の気持ちをとらえる。
・動機付けを維持して、作業を続ける。
各ネットワークは関連しつつも独立しており、いずれかが得意・不得意な
子どもがいる。
18
発達障害とは
発達障害とは
19
発達障害とは
発達障害とは・・・
発達障害者支援法(第二条)
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症
候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障
害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常
低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
文部科学省が挙げる主な発達障害
自閉症、高機能自閉症、学習障害、注意欠陥/多動性障害
・厳密な区別は難しい。
・中枢神経系の機能不全によるもの
環境要因,成熟の個人差とは区別する。
参考サイト:文部科学省 発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第百六十七号)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/05011301.htm
20
発達障害とは
主な発達障害の定義(文部科学省)
参考サイト:文部科学省 特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
21
発達障害とは
発達障害とは(千住,2014より抜粋)
参考文献:「自閉症スペクトラムとは何か-人の「関わり」の謎に挑む」 千住淳 ちくま新書 2014
22
発達障害とは
通常学級で支援の必要な子ども
-発達障害が疑われる子どもの割合-
2002年調査 370校 4328学級
対象
「通常の学級に在籍する特別な
教育的支援を必要とする児童生
徒に関する全国実態調査」
2012年調査
1,164校 52,272人対象
「通常の学級に在籍する発達障害の可能
性のある特別な教育的支援を必要とする
児童生徒に関する調査結果について 」
学習面
の困難
4.5%
男児:女児=9.3%:3.6%
参考サイト:文部科学省「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告) 」 内
参考資料 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」
調査結果 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.htm
行動面
の困難
3.6%
学習・行動面の困難
1.6%
全体で
6.5%
23
発達障害とは
通常学級で支援の必要な子ども
-学年別の割合(%) -(文部科学省,2012)
参考サイト:文部科学省
「特別支援教育の現状について 」 平成25年6月4日 障害のある児童生徒の教材の充実に関する検討会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/100/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/09/10/1339412_1.pdf
24
発達障害とは
(松村・廣瀬、2004を参考に作成)
LDとは・・・具体的な行動として
25
発達障害とは
(松村・廣瀬、2004を参考に作成)
ADHDとは・・・
不注意
注意や集中が持続しない。
目的を持った行動が困難。
多動性
興味や関心が変わりやすい。
目的なく動き回る。
衝動性
思いつきの行動。
刺激に反応して即座に行動。
※複数の場面で,これらの特徴がすべて現れること。
※幼児期(7歳以前)で,これらの様子が認められること26
発達障害とは
(松村・廣瀬、2004を参考に作成)
ADHDとは・・・具体的な行動として
27
発達障害とは
自閉症スペクトラム障害
• 社会的相互作用の障害
• コミュニケーションの障害
• 想像力の障害
• 著しいこだわり
28
発達障害とは
自閉症スペクトラム障害
(Autism Spectrum Disorder:ASD)
DSM-5(2013)による基準の改定
カテゴリー
自閉症
アスペルガー障害
非定型自閉症
(特定不能の)広汎性発達障害
診断基準
①対人相互作用の困難
②コミュニケーションの困難
③こだわり
自閉症スペクトラム障害
①対人コミュニケーションや
対人行動の困難さ
②限局的、反復的な行動や
興味のパターン
同一個人に対し、複数の診断を可能とする。
(自閉症+LD、自閉症+ADHD など)
29
発達障害とは
自閉症スペクトラム障害
(Autism Spectrum Disorder:ASD)
DSM-5(2013)による基準の改定
①対人コミュニケーションや対人行動の困難さ
・人との社会的なやりとりや、気持ちの伝え合いが困難
・ことばを使わないコミュニケーションの発達の困難
・社会的な関係を築き、維持し、理解することの困難
②限局的、反復的な行動や興味のパターン
・「常同的な行動」の繰り返し
・同じであることへの強いこだわり
・特定の物事への強いこだわり
・感覚に対する敏感さ・鈍感さ
有・無の2択から、
3つのレベルによ
る査定へ変更
30
発達障害とは
児童用AQ指数
(若林・東條,2004)
■50項目の質問に対し、4段階で評定
1. 何かをするときには,一人でするより
も他の人といっしょにすることを好む.
2. 同じことや同じやりかたを,何度もく
りかえすことが好きだ.
3. 何かを想像しようとすれば,その映
像(イメージ)を簡単に思い浮かべるこ
とができる.(目を閉じて自分の学校の
教室などをイメージさせ,見えるものを
答えさせる.なお,この場合,記憶の確
認ではないことに注意する)
4. 一つのことに夢中になって,ほかの
ことがぜんぜん目に入なくなる(気がつ
かなくなる)ことがよくある.
・・・省略
Cut Off
Line
スペクトラム・・・
自閉症児、健常児ともに幅がある
参考文献: 「児童用AQ(日本語版)の作成と標準化について」若林明雄・東條吉邦 国立特殊教育総合研究所分室一般研究報告 2004
31
発達障害とは
発達障害者の身体症状(高橋ら,2011)
• 発達障害者62名(大学
生対象群:93名)の身
体症状について665項
目のチェックリストによ
り検討。
⇒269項目において有意
差あり。
身体における種々の
敏感さ・鈍感さがある。
DSM-5より、診断項目と
して含まれる
参考文献: 「本人調査からみた発達障害者の「身体症状(身体の不調・不具合)」の検討」
高橋智・石川衣紀・田部絢子
東京学芸大学紀要総合教育科学系,62(2),73-107 2011
32
発達障害とは
脳の構造・機能と発達障害
-社会脳ネットワーク(千住,2013より改) -
相手の心の推測
側頭頭頂接
合部
前頭葉内側
部
上側頭溝
動き・視線・意図の把
握
紡錘状回
相手の顔の認識
参考文献:「社会脳とは何か」 千住淳 新潮新書 2013
社会脳・・・他者理解、コミュニケーシ
ョンに専門化した部位・ネットワーク
⇒各部位の働きが弱い?
33
発達障害とは
脳の構造・機能と発達障害
-脳の大きさ(千住,2013より改)-
1~2歳頃、平均的に20%ほど脳が大きい。
⇒神経細胞間のつながり、脳の機能局在に
影響?
参考文献:「社会脳とは何か」 千住淳 新潮新書 2013
離れた部位をつなげる
長い軸索を有するシナ
プスの形成が不十分?
34
発達障害とは
脳の構造・機能と発達障害
-遺伝子・シナプス・神経伝達物質-
•
•
•
•
ドーパミン代謝異常
セロトニン代謝異常
オキシトシンによる扁桃体活動の活性化
シナプス構造の維持の異常(ニューレキシン、
ニューロリギン遺伝子異常)
など
AD/HD、自閉症の原因?
⇒遺伝子の種類の数、組合せ、変異(デノボ変異)等より、原因の
特定化はできない。
自閉症で約3000、ADHDで約300の関連遺伝子?
35
発達障害とは
発達障害と二次障害
36
発達障害とは
参考文献:「イラストで分かる子どもへの支援」東京学芸大学特別支援教育時代の教員養成システム開発推進委員会,2010
37
発達障害とは
二次障害
への対応
参考文献:「イラストで分かる子どもへの支援」東京学芸大学特別支援教育時代の教員養成システム開発推進委員会,2011
38
特別支援教育とは
特別支援教育とは
39
特別支援教育とは
特別支援教育の在り方について(最終報告)
2003.3.28
特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
特別支援教育とは・・・
従来の特殊教育の対象の障害だけで
なく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて
障害のある児童生徒の自立や社会参加に
向けて、その一人一人の教育的ニーズを
把握して、その持てる力を高め、生活や学
習上の困難を改善又は克服するために、
適切な教育や指導を通じて必要な支援を
行うものである。
40
特別支援教育とは
特別支援教育の位置づけ
特別ニーズ教育
虐待、経済的困難、外国人など
特別支援教育
・従来の障害児教育
(視覚、聴覚、知的、肢体、病弱、言語、情緒)
・障害領域の拡大
(発達障害:LD,ADHD,自閉など)
41
特別支援教育とは
特殊教育から特別支援教育へ(1)
1979
1993
1997
1999
養護学校義務制実施
通級による指導の制度化
特殊教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議
学習障害児に対する指導について( 報告)
2001.1 21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)
2003.4 学校教育法施行令
の一部改正について
2002.5 障害のある児童
生徒の就学について
2003.3 今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)
2004.12 特別支援教育を推進するための制度の
在り方について(中間報告)
2005.4 特殊教育免許の総合化について(報告)
2005.4 発達障害のある児童生徒等
への支援について(通知)
42
特別支援教育とは
特殊教育から特別支援教育へ(2)
2005.12 特別支援教育を推進するための制度の
在り方について(答申)
2006.3 学校教育法施行規則の一部改正等
について(通知)
2006.3 通級による指導の対象とすることがaな
自閉症者、情緒障害者、学習障害者又は
注意欠陥多動性障害者に該当する児童生
徒について(通知)」
2006.6 学校教育法等の一部を改正する法律案
2007.4 同法施行→特別支援教育体制へ
2007.4.1 特別支援教育の推
進について(通知)
2009.3 特別支援学校学習指導要領改訂
43
特別支援教育とは
特別支援教育に係わる具体的手立て
•
•
•
•
•
•
•
•
校内委員会の設置
特別支援学校
実態把握の実施
コーディネーターの配置
専門家
個別の指導計画の作成
医療・福祉・労働
個別の教育支援計画の策定
巡回指導の実施
専門家チームの設置 特別支援学級・通級指導教室
研修の実施
44
特別支援教育とは
特別支援教育に関する調査の結果について
(H25年度)(文部科学省,2014)
個別の指導計画・教育
支援計画の遅れ
外部との連携・情報入手
の不足
参考サイト:文部科学省「平成25年度特別支援教育体制整備状況調査 調査結果」 内
集計項目(1)年度別推移http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/03/14/1345100_1.pdf
45
特別支援教育とは
特別支援教育に関する調査の結果について
(H23年度)(文部科学省,2012)
• いずれの項目でもH19 ~H25 にかけて数
値が上昇。
• 校内支援委員会の開催、コーディネーター
の配置、実態把握は約90%
• 個別の指導計画は約70%、教育支援計画
は60%
• 外部連携は約50%
体制はほぼ完了、運用や実施は?
46
特別支援教育とは
学習指導要領(小学校H20年告示)
障害のある児童への配慮
第1章総則
第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項
(7) 障害のある児童などについては,特別支援学校等の助言又は
援助を活用しつつ,例えば指導についての計画又は家庭や医療,
福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別
に作成することなどにより,個々の児童の障害の状態等に応じた指
導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。特に,特別
支援学級又は通級による指導については,教師間の連携に努め,
効果的な指導を行うこと。
個別の指導計画は義務化されていない。
参考サイト:文部科学省「現行学習指導要領・生きる力」
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/tokushi/1284527.htm
47
特別支援教育とは
個別の指導計画、個別の教育支援計画
全障害児教育法(1975)米国
IEPの義務化
個別障害者教育法(1997)米国
個別障害者教育法(2004)米国
RTIモデルへ
いずれも特別
支援学校のみ
■個別指導計画Q&A(1999)
東京都教育庁指導部
■学習指導要領改訂(1999)
自立活動及び重複障害者への指導に対する「
個別の指導計画」作成義務化
■障害者基本計画 新障害者プラン(重点施
策実施5カ年計画)(2002)
(今後の特別支援教育の在り方について(最
終報告)(2003))
2005までに「個別の教育支援計画」の作成
■学習指導要領改訂(2009)
各教科等における「個別の指導計画」作成義
務化
48
特別支援教育とは
IEPと個別の指導計画
• IEP(個別指導計画、個別教育プログラム)
–
–
–
–
個人に対応した計画である。
法律に基づいて作成される“契約書”
参加者、内容項目、評価方法等に規程がある。
“障害種”という観点が強い。
• 個別の指導計画(日本の場合)
–
–
–
–
–
自立活動から開始。
個人に対応した計画である(が学級での活動がベース)。
法的根拠(指導要領、通知、報告書)を有する“同意書”
参加者、内容項目、評価方法等に規準がある。
“学校種”という観点が強い。(通常学校では義務化されていない)
≑“配慮”の義務化
49
特別支援教育とは
Response to Intervention(RTI)
(川合,2009を参考)
教育的介入(指導)
に対する効果がある
かどうかを調査する
前に、効果が現れな
いリスクのある児童
のサブグループを特
定する。
第3次教育的介入
第3層
(~5%)
特別な教育的ニーズのあ
る児童生徒のための個別
化した指導
第2次教育的介入
第2層(~15%)
「気になる」児童生徒のた
めに特別編成された、少
人数グループに夜指導
第1次教育的介入
第1層(~80%)
一般的な児童生徒を対象
とした、学校または教室全
体レベルの一斉指導
ユニバーサルな支援方法の必要性
参考文献: . 広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要, 7, 59-68.
川合紀宗 (2009) IDEA 2004の制定による障害判定・評価の在り方の変容に関する研究
50
特別支援教育とは
ユニバーサルな支援方法
• 教室環境の整備、教材教具の工夫
– 静音環境を整える。
– 掲示物等の統制、分かりやすい掲示。板書の工夫
– 座席配置の工夫。机の整理
• コミュニケーション・行動への配慮
– 発言におけるルール設定
– 音声以外の伝達手段
• 相談・協議体制の整備と充実
– みんなで話し合うことの習慣
参考文献: 「イラストで分かる子どもへの支援」東京学芸大学特別支援教育時代の教員養成システム開発推進委員会,2010
51
今後に向けて
ノーマライゼーションに向けての動き
•
•
•
•
•
1981
1983-1992
1993
1994
1993-2002
国際障害者年
国連・障害者の十年
障害者基本法
サラマンカ宣言 特別なニーズ教育に関する行動大綱
アジア太平洋障害者の十年
2002 障害者基本計画
新障害者プラン(重点施策実施5カ年計画)
2004 障害者基本法の改正
2005 発達障害者支援法、障害者自立支援法
2007 国連「障害者の権利に関する条約」署名
2010 障がい者制度改革推進本部(H21.12.8設置)
2011 障害者基本法の一部を改正する法律案
53
今後に向けて
障害者権利条約
国連 「障害者の権利に関する条約」
(CONVENTION ON THE RIGHTS OF PERSONS WITH
DISABILITIES(H18.12.13採択、H19.9.28署名)
批准に
向けて
2009年12月 障がい者制度改革推進本部設置
「障害者の権利に関する条約」の締結に必要な国内法の整備、障害者
に係る制度の集中的な改革を行う。
2011年8月 障害者基本法(改正)
2012年6月 障害者総合支援法(成立)
2013年6月 障害者差別解消法(成立),障害者雇用促進法(改正)
参考サイト:外務省
「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html
54
今後に向けて
障害者権利条約
国連 「障害者の権利に関する条約」
(CONVENTION ON THE RIGHTS OF PERSONS WITH DISABILITIES)
障害者の人権や基本的自由の享有を確保し,障害者の
固有の尊厳の尊重を促進するため,障害者の権利を実現
するための措置等を規定。
◆障害に基づくあらゆる差別(合理的配慮の否定※を含む。)の禁止
◆障害者の社会への参加・包容の促進
◆条約の実施を監視する枠組みの設置,等
H18.12.13採択、H19.9.28署名
H26.1.20(現地時間)
ニューヨークにおいて,批准書を国際連合事務総長に寄託
H26.2.19より、効力を生ずる。
参考サイト:外務省「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html
55
今後に向けて
障害者権利条約
• 第24条 教育
「締約国は、教育についての障害者の権利を
認める。締約国は、この権利を差別なしに、か
つ、機会の均等を基礎として実現するため、障
害者を包容するあらゆる段階の教育制度及び
生涯学習を確保する。」
特別支援教育体制の
整備・充実
参考サイト:外務省「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html
56
今後に向けて
合理的配慮
共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築の
ための特別支援教育の推進(報告) 2012(H24).7
「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利
」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学
校が必要かつ適当な変更・調整 を行うことであり、障害のある
子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個
別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対し
て、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を
課さないもの」
「教育支援委員会(仮称)」の設置・審議
参考サイト:文部科学省「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321669.htm
57
今後に向けて
特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告(案)
2012.5.25-「教育支援委員会(仮称)」の役割-
「教育支援委員会」(仮称)については、以下のように機能を拡充し、一貫した支援を目
指す上で重要な役割を果たすことが期待される。
(ア)障害のある子どもの状態を早期から把握する観点から、教育相談との連携によ
り、障害のある子どもの情報を継続的に把握すること。
(イ)就学移行期においては、教育委員会と連携し、本人・保護者に対する情報提供を
行うこと。
(ウ)教育的ニーズと必要な支援について整理し、個別の教育支援計画の作成につい
て助言を行うこと。
(エ)市町村教育委員会による就学先決定に際し、事前に総合的な判断のための助言
を行うこと。
(オ)就学先の学校に対して適切な情報提供を行うこと。
(カ)就学後についても、必要に応じ「学びの場」の変更等について助言を行うこと。
(キ)後述する「合理的配慮」について、その提供の妥当性についての評価や関係者
間の意見が一致しない場合の調整について助言を行うこと。
参考サイト:文部科学省「特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第18回) 配付資料」
資料2-2:特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告(案)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321575.htm
58
今後に向けて
“合理的配慮”の具体例(別表)
別表1~11までに配慮事項を列記
参考サイト:文部科学省「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ 報告 別表」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/046/attach/1316185.htm
59
今後に向けて
教育の場の決定
共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のため
の特別支援教育の推進(報告) 2012.7(H24).7
「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則
就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態
、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心
理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた
総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当で
ある。」
学校教育法施行令の一部改正(2013.9施行)
参考サイト:文部科学省「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321669.htm
60
今後に向けて
学校教育方施行令の一部改正へ
• 「学校教育方施行令の一部を改正する政令」
– H25年9月1日施行
– (1)就学先を決定する仕組みの改正
• 視覚障害者等(・・・で、その障害が、同令第22条の3の表に規定する程度のものをい
う。)について、特別支援学校への就学を原則とし、例外的に認定就学者として小中学校
へ就学することを可能としている現行規定を改め、個々の児童生徒等について、市町村
の教育委員会が、その障害の状態等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕
組みとする。
– (2)視覚障害者等による区域外就学等
• 視覚障害者等が、その住所の存する市町村の設置する小中学校以外の小学校、中学
校又は中等教育学校に就学することについて、規定の整備を行う。
– (3)保護者及び専門家からの意見聴取の機会の拡大
• 市町村教育委員会による保護者及び専門家からの意見聴取について、現行令は、視覚
障害者等が小学校又は特別支援学校小学部へ新入学する場合等に行うこととされてい
るところ、これを小学校から特別支援学校中学部への進学時等にも行うこととするよう、
規定の整備を行う。
参考サイト:文部科学省「学校教育法施行令の一部を改正する政令の概要」
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1339336.htm
61
今後に向けて
学校として考えること
• “合理的配慮”に関する具体的な手立て
– 教育の場に応じた配慮の違い。
– 具体化に際して、誰が、何を、どこまで決定できるのか。
– 相談に対応する際、障害による影響の実態、推測される困
難、発達への見通しなどについての情報提供。
– できるだけ具体的な手立ての用意(教科毎にどうなるか、活
動に応じてどうなるか など)
– 支援者の確保
• 教育の場に関する手立て
– 他校との連携
– 校内支援委員会
62
今後に向けて
環境やシステムの構築・工夫
「協同」による教育を目指した支援
•
•
•
•
•
先生同士の連携
親と教師の連携
親同士の連携(コミュニティ) お互いに学び
合う場としての
学校間の連携
学校作り
学校(学級)と地域の連携
63
今後に向けて
文献・資料・WEB
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
「脳研究の最前線 上・下」理化学研究所脳科学総合研究センター,講談社ブルーバック,
2007
「カラー版徹底図解 脳のしくみ」 中村克樹監修 新星出版社
「言語の脳科学」 酒井邦嘉 中公新書,2002.
「心の脳科学」 坂井克之 中公新書, 2008.
「児童用AQ(日本語版)の作成と標準化について」若林明雄・東條吉邦 国立特殊教育総合
研究所分室一般研究報告 2004
「自閉症スペクトラムとは何か-人の「関わり」の謎に挑む」 千住淳 ちくま新書 2014
「特別支援教育 多様なニーズへの挑戦」 柘植雅義 中公新書, 2013.
「本人調査からみた発達障害者の「身体症状(身体の不調・不具合)」の検討」 高橋智・石川
衣紀・田部絢子 東京学芸大学紀要総合教育科学系,62(2),73-107 2011
「多動性障害児 「落ち着きのない子」は病気か?」 榊原洋一 講談社+α新書 2000
「社会脳とは何か」 千住淳 新潮新書 2013
「脳科学の教科書 こころ編」 理化学研究所脳科学総合研究センター編 岩波ジュニア新書
2013
「学習障害(LD) 理解とサポートのために」 柘植雅義 中公新書 2002
64
今後に向けて
文献・資料・WEB
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
「脳科学と発達障害」 榊原洋一 中央法規, 2007.
「国立特別支援教育研究所 発達障害教育情報センター」
http://icedd.nise.go.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=13
「LD・ADHD・高機能自閉症の子どもの指導ガイド」 国立特殊教育総合研究所 東洋館出版
社, 2005.
「地域・家庭・学校のためのよくわかる個別の教育支援計画Q&A」 全国特殊学校長会編著
ジアース教育新社, 2005.
「すぐに役立つ自閉症児の特別支援Q&Aマニュアル」 廣瀬由美子ほか編著 東京書籍,
2004.
「<教室で気になる子> LD・ADHD・高機能自閉症への手立てとヒント」 黒川君江編著 小
学館, 2005.
「楽しく体験ソーシャルスキル」 http://www.e-kokoro.ne.jp/ss/
雑誌 「発達」 ミネルヴァ書房
雑誌 「そだちの科学」 日本評論社
「「気になる子ども」の配慮と支援」 松村多美恵・廣瀬由美子監修 中央法規,2004
「イラストで分かる子どもへの支援」東京学芸大学特別支援教育時代の教員養成システム開
発推進委員会,2010
65