フォレストリーダー育成研修 ー OJT指導のしかた ー 職業能力開発総合大学校 能力開発専門学科 新井吾朗 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 1 研修の到達目標 技能指導の原則に基づき技能を指導できる ①作業毎の指導項目を明確にできる 目的・目標・指導項目を一貫するように記述できる 指導項目を網羅できる ②指導項目毎に適した指導方法を計画できる 導入・展開・まとめの設定 指導項目毎に動機づけ・提示・適用・評価を設定 ③計画に基づいて指導を実践できる Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 2 OJTとは何か ・OJT = On the Job Training ・仕事をする場所で、仕事のやり方を教える ・日本人が仕事のやり方を覚える主要な方法 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 3 OJTとは何か “教える” ことへの批判 先輩のやり方を盗んで覚えてきた 教えられたことは身につかない 仕事の本質は教えられない 日本のOJTは、 OJL= On the Job Learning だった? Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 4 環境の変化 ・脱落による選抜を前提とした人材確保を許容できない ・入職後は、早急に一人前の仕事をしてほしい ・将来への期待の変化( 親より収入が少なくなる世代) ( 経済的充足 → 仕事のやりがい ) ・仕事について学習しなければならない事項の増大 ( 工夫で仕事を開拓 → 膨大なマニュアル+工夫 ) 教える側と教わる側の価値観のギャップ ( 苦労して目標に到達する ←→ 合理的に目標に到達したい ) Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 5 教育・訓練とは何か 目的 ・社会の意図の主体化 ・社会(国・地方・企業・個人)が抱える課題を 人の能力を高めることで解決する手段 方法 ・学習者の学習に対する意図的な支援 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 6 教えるときに考えること 何を教えるか どのように教えるか どの順で教えるか Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 7 指導計画の構成要素 考え方の表現 様式上の表現 目的 何を教えるか 到達目標 指導項目 どのように教えるか 指導の展開 どの順で教えるか Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 8 到達目標と指導項目 到達目標 1週間 1日 60分 ・刈り払いに必要な服 装、保護具を着用でき る 安全に刈り ・刈り払い機を正しく 刈払機を 払 い 作 業 が 装着できる 扱える できる ・刈り払い機を安全に 始動、停止できる 指導項目 ・作業場所の危険 ・服、履物の種類と必要な性能 ・服、履物の着方(ボタン・袖・裾・ 手ぬぐいの処理方法) ・保護具の着用方法(ヘルメット、保 護めがね、耳栓、防振手袋) ・服、履物、保護具の確認方法 ・肩、腰バンドの装着方法(装着方法、 安全・楽な長さの見つけ方) ・刈り払い機の始動方法(始動の手順、 安全な始動の配慮(姿勢・刃の回転・ 周囲のガソリン)) ・刈り払い機の止め方(刃の回転の止 め方、エンジンの止め方) ・安全な姿勢で刈り払 いができる Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 9 指導項目と指導の展開 指導項目 指導の展開 ・刈り払い作業する場所の危険を説明する ・作業場所の危険 ・服、履き物の種類と必要な性能を説明する ・服、履物の種類と必要な性能 ・服、履物の着方を説明する ・服、履物の着方(ボタン、袖、裾、 ・服、履物を着させる 手ぬぐいの処理方法) ・服、履き物の着方を評価する ・保護具の種類と着用方法を説明する ・保護具の着用方法(ヘルメット、 ・保護具をつけさせる 保護めがね、耳栓、防振手袋) ・保護具のつけ方を評価する ・服、履物、保護具の確認方法を説明する ・服、履物、保護具の確認方法 ・2人一組で、服、履物、保護具を確認させ る (・全体) ・服、保護具を外して、再度着させ、確認さ せる Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 10 何を教えるか:目的・到達目標 ・指導項目の一貫性 目的 到達目標 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 指導項目 11 POCEの一貫性 P: Purpose 目的 なぜその事業を実施するのか。 事業で解決しようとしている課題は何か。 O: Objectives 目標 どのような状態になれば、 その事業が成功したと判断できるか。 C: Contents 内容 事業を成功させるために、 どのようなことに取り組むか。 E: Evaluation 評価 事業の成功を評価するために、 どのような方法で測定するか。 POCE : ⓒ2006 新井 Copyright 2010 G.AraiCopyright All 2011 G.Arai All Right Reserved 12 教育・訓練のPOCEの一貫性 P: Purpose 目的 なぜその教育・訓練を実施するのか 教育・訓練で解決しようとしている課題は何か O: Objectives 目標 受講生をどの程度の目標に到達させれば それによってどのような成果(課題の解決)が出れば その教育・訓練が成功したと判断できるか C: Contents 内容 目標に到達するために、 指導項目・方法・順序をどうするか E: Evaluation 評価 目標に到達したことをどのように測定するか POCE : ⓒ2006 新井 Copyright 2010 G.AraiCopyright All 2011 G.Arai All Right Reserved 13 目的:何のためにそれを学習するのか 仕事の場面で使うから 良い仕事をするため 困らないようにするため 上位の目標に到達するため どんな場面・どんな仕事・どんな困難があるのか を学習者が想像し納得できるように記述する Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 14 刈り払い作業の服・保護具を学習する目的 どんな場面・どんな仕事・どんな困難があるのか を学習者が想像し納得できるように記述する Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 15 到達目標:何ができるようになるのか 目標記述の基本: ○○ できる 目標に到達したことを測定できるように記述する = 観察可能な行動を記述する ×理解できる 目標記述の基本: 対象 + 行動 ・刈り払いに必要な服装、保護具を着用できる 対象 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 行動 16 到達目標の種類 成否 手順 コスト 態度 安全 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 17 目標:詳細に検討してみよう 作業場所・条件に応じて刈り払いができる ・ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 18 指導項目:何を教えるのか 知識・技能・態度 安全・成否・やりやすく 手順・判断・感覚 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 19 能力の種類 技能 知識 既知の技術・方法・ 判断基準の体系 次の働きかけを 選択する方向性 経験から得る 要 因 と 結 果の 関 係 の体系 態度 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 20 能力を発揮する目的 安全 けがをしない、けがをさせない、 設備・器具を破損しない、製品を傷つけない 成否 条件・品質・仕様のクリア、作業の終了 やりやすく 早く、楽に、効率よく Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 21 能力の性質 手順 手順を守ることで、求める結果を得る 判断 判断することで、求める結果を得る (場面、方法、基準) 感覚 手腕のカン、雰囲気をかぎ取ることで、 求める結果を得る Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 22 指導項目の表現のしかたの例 カップラーメンをつくる手順 袋ラーメンをつくる際の麺のゆであがりの判断基準 火加減と時間 ・ 麺の固さ 麺のゆであがりの固さの感覚 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 23 指導項目の表現のしかたの例 安全に○○する手順 ○○を決める判断基準 ○○の状態を見る感覚 ○○を○○する手順 ○○をやりやすくする見かた・押しかた・切りかた Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 24 指導項目:詳細に検討してみよう 目標:作業場所・条件に応じて刈り払いができる ・ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 25 指導の3段階 導入 学習する準備 目的・目標・学習の進め方 展開 指導項目を順に指導 動機づけ・提示・適用・評価 わかりやすくする工夫 時間のまとめ まとめ 指導項目・目標への到達の整理 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 26 指導の4活動 動機づけ 学ぶ気持ちにさせる 提示 指導項目を示す 適用 指導したことを使わせる 評価 できるようになったか確かめる Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 27 指導の3段階と4活動を組合せた指導の計画 動機づけ 提示 適用 評価 導入 指導項目① 展開 指導項目② 指導項目①+② まとめ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 28 動機づけ : やりたい気持ちにさせる 原則1 動機 = 行動 を起こす気持ち 原則2 人は得たい(避けたい)ものを 得る(避ける)ために行動する 原則3 動機 = 得る快感 × 得られる可能性 ー 失敗の痛手 × 失敗の可能性 原則4 内発(充実・受容・賞賛)>外発(報償・優遇) 原則5 人によって、得たいものは異なる Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 29 動機づけの方法を考える 原 則 動機 = 行動 を起こす気持ち 1 原 人は得たい(避けたい)ものを 則 得る(避ける)ために行動する 2 ・得たいものに気づかせる ・避けたいものが 本当に避けるべきものか気づかせる 原 動機= 則 得る快感×得られる可能性 3 ー 失敗の痛手×失敗の可能性 ・得るものの価値を実感させる ・得られそうだと実感させる ・うまくいってる経過を伝える ・失敗の痛手の小ささを実感させる ・失敗の可能性の小ささを実感させる 原 内発(充実・受容・賞賛) 則 >外発(報償・優遇・勝敗) 4 ・学習者が得たいものをつかむ ・内発(全体)と外発(部分)を組み合わせる 原 則 人によって、得たいものは異なる 5 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 30 動機づけを検討してみよう 目標:作業場所・条件に応じて刈り払いができる 指導項目: ・ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 31 提示のポイント • 理解できる範囲 • 安全 → 成否 → やりやすく • はじめはおおざっぱに じょじょに細かく • はじめはヒントを出し、じょじょにヒントを減らす • 今、何を指導しようとしているか意識し、意識させる (特に感覚:完全に言語化する必要はない、 何を感じるべきかを伝える。) Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 32 提示を検討してみよう 目標:作業場所・条件に応じて刈り払いができる 指導項目: ・ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 33 適用 それぞれの練習で何を指導するか このコースを 2 周走行しなさい。その際、交通法規にしたがうこと。 なおコース図に示した線は、実際に走行すべき場所を示した線とは限りません。 練習 1 練習 2 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 34 法規走行の練習 練習 1 次のコースの走り方を計画しなさい。 特に、交差点を曲がるとき、 ①交差点前の車線上の自車の位置 ②通過時の自車の位置 ③通過後の車線上の自車の位置 練習 2 計画したとおりにコースを走りなさい。 まず、①交差点前・中・後の自車の位置 に注意しなさい。 これが十分できるようになったら、 ②制限速度までの加速、交差点手前で の安全な速度までの減速のメリハリをつ けて練習しなさい。 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 35 適用を検討してみよう 目標:作業場所・条件に応じて刈り払いができる 指導項目: ・ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 36 評価のポイント • 目標に到達しているか確認する • 目標に到達したと言える基準をはっきりさせておく • 目標に到達したことは、学習者に伝える Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 37 評価を検討してみよう 目標:作業場所・条件に応じて刈り払いができる 指導項目: ・ Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 38 指導の計画 指導項目 動機づけ 提示 適用 評価 展開 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 39 指導の計画 指導項目 動機づけ 提示 適用 評価 展開 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 40 指導の計画 指導項目① ●次のように動機づけをする 動機づけ ●次のように説明する 提示 展開 ●次のように作業させる 適用 ●次の視点で判定する 評価 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 41 OJTとOff-JTの違い OJT Off-JT 実務的 モデル的 場当たり的 体系的 Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 42 OJTの短所を克服する 短所 対応 ・現実の仕事は多くの指導項目を含んでいる。 その日の仕事で学習すべきことを明確にする 場当たり的 ・指導項目の中で何を学習しているかを意識させる ・指導項目を網羅できるように仕事を計画する ・その仕事で学習できた指導項目が何かを確認する Copyright 2011 G.Arai All Right Reserved 43
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