生物学基礎 第4回 細胞の構造と機能と 細胞を構成する分子 和田 勝 東京医科歯科大学教養部 細胞の構造 すべての生物は細胞から構成され ていることがわかったので、すこし動 物の細胞の構造を見ていこう。 基本的な構造を知らないと、これか らの話が理解できないので、正確に 覚えて欲しい。 細胞像の変遷 フックの細胞(実際は抜け殻)から、光 学顕微鏡を経て電子顕微鏡まで。 動物細胞の構造 これらの構造を細胞小器官という。 原核細胞と真核細胞 例にあげたのは、真核生物の細胞 原核生物の細胞は、これとは異なり 核膜がない、細胞小器官が発達して いない。 核と細胞質 核 細胞質 細胞小器官 サイトゾール(液体部分) サイトゾールと細胞小器官 上の図は模式図であり、実際はサイ トゾールは細胞小器官で満たされて いる。 核 核の構造 核膜(nuclear envelope) 染色質(chromatin) 核小体(nucleolus) 核膜には、核膜孔(nuclear pore)がた くさん開いている。 核 核 核小体 染 色 質 核膜 染色質(クロマチン) ふだんの核の染色質は無定形に見 える(実際は遺伝情報の読み出しが おこなわれている)。 細胞分裂の時には、染色体という構 造をとる。 ヌクレオソーム クロマチンの構造は、ヒストン八量体 にDNA鎖が巻きついたヌクレオソーム が基本構造。 ヌクレオソーム ヌクレオソームが下のような繊維 構造を取る。これがクロマチン。 染色体 DNAと染色体 染色体の数は種によって決まって いる。ヒトの染色体の数は46本(23 対)で、半数は父親、半数は母親 から。 1本の染色体は一続きのDNA分 子なので、46本のDNA分子が、ふ だんはクロマチン繊維の形で核の 中に分散して。 DNAと染色体 細胞分裂の時には凝集して染色 体という形をとる。 なお真核生物では、必ずしもDNA =遺伝子ではない。 小胞体とリボソーム 小胞体(ER)の構造 細胞内に発達した膜系 粗面小胞体(rER) 滑面小胞体(sER) があり、連続している。 粗面小胞体にはリボソームが付 着しているので、この名がある。 小胞体とリボソーム 粗面小胞体は、 袋状の膜が積み 重なっていて中に 腔所がある。 滑面小胞体は管 状の構造。 リボソームの構造 リボソームは大顆粒と小顆粒が ダルマ状になったもの。 リボソームの機能 リボソームはタンパク合成の場 リボソームの表面で、遺伝情報を もとにタンパク質が合成される。 小胞体は、付着したリボソームで 作られたタンパク質を修飾してゴ ルジ体へ送るはたらき。 ゴルジ装置 平たい袋状の構造が積 み重なったような構造。 ゴルジ装置は、小胞体から送られ てきたタンパク質をパックして、分 泌顆粒を作るはたらき。 ゴルジ装置 したがって、粗面小胞体とゴルジ装 置は、分泌活動のさかんな細胞で はよく発達している。 ミトコンドリア 内外、二枚の膜からなる 棒状の小器官。 ミトコンドリア 細胞の活動に必要なエネルギーを 供給するパワープラント。ATP を生 産する。 ミトコンドリアの基質には、独自の DNAとリボソームが含まれている。 自立的に分裂して数を増やす。 細胞骨格 3種類ある。左からアクチンフィラメ ント、微小管、中間径フィラメント。 細胞骨格 微小管 アクチンフィラ メント 中間径フィラメ ント 構造 中空の管、13個 のチューブリン で管壁を構成 2本のアクチン 繊維が縒り合 わさっている 繊維状タンパ ク質が縒り合 わさった繊維 直径 25nm ( 管 腔 は 15nm) 7nm 8-12nm 単位 αとβチューブリ ン アクチン ケラチンなど 細胞骨格 細胞が一定の形を保つ、分泌顆粒を 分泌する、細胞小器官を動かせるの は細胞骨格のはたらき。 細胞膜 細胞の外側を区切る一枚 の膜。下の図は、2個の 細胞が隣り合っている部 分の電子顕微鏡写真。 細胞膜 細胞膜 細胞膜は外界とのインターフェイス。 細胞膜に埋め込まれた膜タンパク質 がさまざまな機能を発揮する。 次の図は、物質の輸送に関するタンパク質。 動物細胞の構造 ちゃんと覚えておくように サイズの感覚 化学の基礎知識 生物学を理解するためには、化学や 物理の知識が必要。ここではこれか ら先、学ぶために最低限の化学の 知識について話しておこう。 3つある。 1)水の性質、 2)タンパク質、 3)核酸 である。 水の性質 水はH2O 電荷の偏りがある 水の性質 そのため2個の水分子が近づくと H+-O----H+-O--H+ 水分子のこのような性質のために、分子量が小さいにもかかわらず水分子はきわめて 粘性が高く、また沸点も氷点も高い。 水の性質 タンパク質のような大きな分子も 水和して溶けることができる タンパク質 タンパク質はアミノ酸のポリマー アミノ酸は脱水縮合で鎖上につ ながる これをペプチド結合 という H2O これはジペプチドの場合 タンパク質 これはテトラペプチドの場合 タンパク質 アミノ酸の配列をタンパク質の一 次構造という それでは二次構造は? ペプチド結合を作っている>C=Oと >NHの間で、水素結合によって形 成される部分的な規則的繰り返し構 造を二次構造という タンパク質の二次構造 αヘリックス構造 タンパク質の二次構造 βシート構造 タンパク質の高次構造 卵白リゾチーム タンパク質のはたらき タンパク質のこの形がさまざまな機 能を生み出す 生体の機能はタンパク質分子が作 り出す 核酸 塩基ATGCが直線状に配列している 核酸 塩基の配列が遺伝情報となっている 核酸とタンパク質 塩基の配列とアミノ酸の配列が対応 している 遺伝情報がタンパク質を通して機能 を実現している
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